1日に約4,000件。愛知県の碧海信用金庫で、営業店から本部に寄せられていた庫内の問い合わせの数です。同金庫はこの問い合わせに、規程や手順書を根拠に答える生成AIを入れました。銀行のAI活用は、メガバンクだけのものではなくなっています。日本銀行が2026年8月に公表した調査では、生成AIを「利用中」の金融機関は79.3%で、2年前の31.0%から大きく増えました。試行中を含めると9割を超えます(出典:日本銀行『金融機関における生成AIの利用状況とリスク管理』)。
そこで本記事では、銀行・信用金庫・証券会社のAI活用事例を20件、融資審査・法人営業・行内の問い合わせ・コールセンター・不正対策・事務とシステム開発の6つの業務に分けて紹介します。すべて2024年10月以降に各社やベンダー、報道が公表した事例で、地方銀行と信用金庫の事例を14件入れ、使ったAI・効果の数字・発表の年月・出典をそろえて載せました。金融庁と日本銀行が示す論点、費用と期間の目安、導入の進め方もあわせてまとめています。保険会社の事例は保険のAI活用事例で紹介しています。
この記事でわかること
- 業務別の銀行のAI事例がわかる
- 地銀・信金の始め方がわかる
- 金融庁が示す論点がわかる

この記事の監修者
AIBUILDERZ編集部
AI導入支援サービス「AIBUILDERZ」を運営するチームです。AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、企業のAI導入を一気通貫で支援しています。
金融・銀行のAI活用事例 一覧
本記事で紹介する20件を、1つの表にまとめました。会社名を押すと、それぞれの事例の説明に移ります。効果の欄の「見込み」「目標」「検証」は、本番の運用の前の数字であることを表しています。
| 会社 | 規模 | 業務 | AI | 効果 | 発表 |
|---|---|---|---|---|---|
| あいち銀行 | 地方銀行 | 融資稟議書 | 生成AI・RAG | 指摘数を約25%削減(試行) | 2026年7月 |
| 京都銀行 | 地方銀行 | 融資稟議書 | 生成AI・RAG | 作成時間が約半分(試行) | 2026年2月 |
| 横浜銀行 | 地方銀行 | 融資稟議書 | 生成AI | 年19,500時間の見込み(実証) | 2024年11月 |
| 三十三銀行 | 地方銀行 | 面談記録 | 音声認識・生成AI | 記録作成を10〜30分短縮(検証) | 2026年5月 |
| 山陰合同銀行 | 地方銀行 | 法人営業の提案 | 生成AI・RAG | 数値の公表なし | 2026年3月 |
| 三菱UFJ銀行 | メガバンク | 提案書の作成 | AIエージェント | 作成時間を最大9割削減(目標) | 2026年2月 |
| 三井住友銀行 | メガバンク | 法人営業の提案 | 生成AI・AIエージェント | 数値の公表なし | 2026年4月 |
| 碧海信用金庫 | 信用金庫 | 庫内の問い合わせ | 生成AI・RAG | 年85,000時間を期待(見込み) | 2025年2月 |
| 三島信用金庫 | 信用金庫 | 庫内の問い合わせ | 生成AI・RAG | 電話の問い合わせが約半分に | 2025年7月 |
| 山形銀行 | 地方銀行 | 規程・マニュアルの検索 | 生成AI | 数値の公表なし | 2026年8月 |
| 青森みちのく銀行 | 地方銀行 | 文書作成・規程の検索 | 生成AI・RAG | 数値の公表なし | 2026年8月 |
| 城南信用金庫 | 信用金庫 | お客さま向けチャットボット | 生成AI | 有人の稼働時間を約35%削減 | 2026年6月 |
| 京葉銀行 | 地方銀行 | コールセンター | 生成AI・RAG | 正答率58%→86%(検証) | 2025年10月 |
| SBI証券 | 証券 | コールセンター | 生成AI | 月2,933時間の応対時間を削減 | 2026年10月 |
| みずほ銀行 | メガバンク | コンタクトセンター | 生成AI | 通話時間を2割程度削減(目標) | 2024年12月 |
| 鳥取信用金庫 | 信用金庫 | 特殊詐欺の防止 | 画像認識 | 数値の公表なし | 2025年2月 |
| りそなホールディングス | 地方銀行グループ | マネロン対策 | 機械学習・AIエージェント | 全体の約10%の調査を簡素化 | 2026年7月 |
| 百五銀行 | 地方銀行 | 住宅ローンの事務 | 生成AI・AIエージェント | 1件約20分→7分以下(検証) | 2026年2月 |
| 七十七銀行 | 地方銀行 | 本部の業務 | 生成AI | 年約32千時間の見込み | 2024年11月 |
| ソニー銀行 | ネット銀行 | システム開発 | 生成AI・AIエージェント | 開発期間を30%短縮 | 2026年9月 |
金融機関でAIが求められる背景
銀行や信用金庫でAIの活用が急に広がった背景を、日本銀行と金融庁の調査から見ていきます。
生成AIを使う金融機関は2年で約3割から約8割に
日本銀行が取引先の金融機関150先に行った2026年度の調査では、生成AIを「利用中」と答えた先が79.3%、「試行中」が11.3%で、合わせて9割を超えました。2024年度の調査では、利用中は31.0%、利用も試行もしていない先が41.9%でした。業態別に見ると、この1年は第二地銀での増え方が目立つとしています(出典:日本銀行『金融機関における生成AIの利用状況とリスク管理―2026年度アンケート調査結果から―』)。
メガバンクだけでなく、地方銀行や信用金庫でも、生成AIは「試すもの」から「使うもの」に変わりつつあります。
使い道は事務から融資・営業の「コア業務」へ
同じ調査では、文書の作成や議事録の文字起こしのような事務では大半の先が生成AIを使い、融資稟議書の作成、お客さまのニーズに合わせた営業の支援、システムの開発でも相応に使われているとしています。一方で、お客さま向けのチャットボットのように、AIの出力をお客さまに直接見せる使い方はまだ少数で、慎重な姿勢が見られたとしています(出典:日本銀行(2026年8月))。
まず行員の手元で使い、お客さまに直接見せる使い方は慎重に進める、という順番が、いまの金融機関の標準的な進め方です。
金融庁は「チャレンジしないリスク」を指摘
金融庁が2024年10〜11月に行ったアンケート(銀行・証券会社・保険会社など130の事業者が回答)では、9割以上が従来型のAIか生成AIをすでに使っていました。生成AIを幅広く一般の社員に使わせている先は約7割です。金融庁はこの調査をもとにした「AIディスカッションペーパー」で、金融機関は技術革新に取り残される「チャレンジしないリスク」を強く意識すべき局面にあると述べています(出典:金融庁『AIディスカッションペーパー(第1.0版)』概要)。
金融機関でAIができること
今回の20件を見ると、金融機関でのAIの使い道は、大きく6つに分けられます。あわせて、ニュースで目にすることが増えた「AI銀行」という言葉についても説明します。
融資審査・稟議書の作成
取引先の概況や財務の情報を行内のシステムから集め、融資の判断に必要な観点に沿って稟議書の素案をAIが作ります。時間を減らすだけでなく、書き漏れを減らし、行員ごとの書き方のばらつきをそろえる目的で使われています。
法人営業・提案の準備
顧客の情報や業界の情報から、取引先ごとの経営課題を整理し、提案書の素案を作ります。商談の音声から面談記録を作る使い方もあります。経験の浅い行員でも、早くお客さまに提案できるようにすることが狙いです。
行内の問い合わせ・規程の検索
行内の規程やマニュアルを読み込ませ、営業店の質問に生成AIが答えます。社内の文書を検索してから答えを作る「RAG(検索拡張生成)」という仕組みを使い、回答の根拠になった文書を一緒に示すのが一般的です。地方銀行や信用金庫で、最初の一歩に選ばれることが多い業務です。
コールセンター・お客さま対応
通話の文字起こしと回答の候補の表示でオペレーターを支える使い方と、チャットボットや音声のAIがお客さまに直接答える使い方があります。直接答える使い方では、答えられない質問を人に引き継ぐ仕組みが欠かせません。
不正の検知・マネロン対策
取引のデータから疑わしい取引を見つける機械学習は、生成AIより前から金融機関で使われてきたAIです。最近は、アラートの調査をAIエージェントに手伝わせる取り組みや、ATMのカメラの画像で特殊詐欺を防ぐ取り組みも出てきました。
事務・システム開発・本部の業務
住宅ローンの書類の転記、文書の作成や要約、データの集計、システムの設計やプログラムの作成などです。全行員が使える生成AIの環境を整え、本部の業務から広げていく銀行が多く見られます。
「AI銀行」とは
「AI銀行」は、決まった定義のある言葉ではありません。最近では、AIを前提に銀行の業務やサービスを作り直す構想を指して使われています。たとえばGMOあおぞらネット銀行は2026年5月の事業戦略の説明会で「AI銀行」を目指すと掲げ、既存の業務を50のチーム、2,800の業務に分解し、1,100のAIエージェントに置き換えることを決めたと説明しました。お客さまごとにインターネットバンキングの画面をAIが作り分ける計画も示しています(出典:Impress Watch(2026年5月28日))。
多くの銀行は、ここまで一度に作り変えるのではなく、本記事の事例のように、業務を1つずつ選んでAIを入れています。
融資審査・稟議書のAI活用事例
融資の稟議書の素案をAIが作り、作成の時間と書き方のばらつきを減らす事例です。
あいち銀行|2行の統合で書き方がそろわなかった融資稟議書を、AIの素案で標準化する
| 会社 | 株式会社あいち銀行(愛知県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 法人向け融資の稟議書の作成 |
| AIの種類・ツール | 生成AI・RAG(LITRON Generative Assistant on finposs/NTTデータ) |
| 効果 | 試行で、審査役からの指摘数を約25%削減。最大で年間13,400時間の業務削減の見込み |
| 発表 | 2026年7月 |
| 出典 | NTTデータ ニュースリリース |
あいち銀行は2025年1月に2つの銀行が統合して生まれました。統合前の2行では、事務の運用や審査の進め方、融資を判断する観点が違っていたため、稟議書の書き方や中身の粒度がそろわないことが課題でした。
同行は、行内に分散する顧客の概況や財務の情報をAIが集めて要約し、融資判断に必要な観点に沿って稟議書の素案を作るサービスを、2026年7月27日から使い始めました。営業店の行員を対象に試行したうえでの採用です。
試行では、一から書く場合と比べて作成時間が減り、審査役による評価では指摘の数が約25%減りました。最大で年間13,400時間の業務削減を見込んでいます。
AIに素案を作らせるときは、先に「何を書けば合格か」という観点を整理しておくと、時間だけでなく書き方のばらつきも減らせます。
京都銀行|若手が一から書いていた稟議書を、AIの素案で合格ラインの到達率約30%から約95%へ
| 会社 | 株式会社京都銀行(京都府) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 法人向け融資の稟議書の作成 |
| AIの種類・ツール | 生成AI・RAG(LITRON Generative Assistant on finposs/NTTデータ) |
| 効果 | 試行で、稟議書の作成時間が約半分に。審査役の評価で合格ラインに届く割合が約30%から約95%に。最大で年間11,700時間の業務削減の見込み |
| 発表 | 2026年2月 |
| 出典 | NTTデータ ニュースリリース |
法人への融資では、取引先ごとに稟議書を作ります。若手の行員にとっては、判断に必要な観点を漏れなく書くのが難しく、書き漏れによる差し戻しや、お客さまへの追加の聞き取りが起き、承認までの時間が長くなっていました。
同行はNTTデータと共同で「融資判断で押さえるべき観点」を整理し、行内のデータを集めて稟議書の素案まで自動で作る仕組みを、2026年7月から使う形で導入を決めました。
若手の行員による試行では、作成時間がおよそ半分になりました。審査役の評価で合格ラインに届いた割合は、手作業の約30%から約95%に上がっています。最大で年間11,700時間の業務削減を見込んでいます。
稟議書のAIは、時間を減らす道具であると同時に、若手が「何を聞き、何を書くべきか」を身につける教材にもなります。
横浜銀行|6週間の実証で、稟議書のAIが「お客さまへの聞き取り不足」まで見える化
| 会社 | 株式会社横浜銀行(神奈川県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 融資審査の稟議書の作成 |
| AIの種類・ツール | 生成AI(融資稟議書作成支援AI/日本IBM) |
| 効果 | 最大で年間19,500時間の業務効率化の見込み(融資担当の行員1人あたり最大で月約8時間)。実証実験の段階 |
| 発表 | 2024年11月 |
| 出典 | 日本IBM ニュースリリース |
融資審査では、行員がお客さまのニーズを深く聞き取る力と提案の力の底上げが欠かせません。一方で、そのための時間をつくる業務の効率化も強く求められていました。
同行は日本IBMと、稟議書の作成を生成AIで支援するプロトタイプを作り、6週間の実証実験を行いました。AIが作った稟議書で、審査項目の網羅率・文章の質・削減できる時間を確かめています。
業務に組み込んだ場合、最大で年間19,500時間の効率化が見込めるとしています。融資担当の行員1人あたりでは、最大で月約8時間です。与信の判断に必要な項目のうち、お客さまへの聞き取りが足りない点がわかる効果も確認されました。
AIの出力を「どこが足りないか」を知らせる道具として使うと、時間の削減に加えて、行員の審査の力を伸ばす使い方ができます。
法人営業・提案のAI活用事例
法人営業の面談の準備、提案書づくり、面談記録の作成にAIを使う事例です。
三十三銀行|帰店後に最大30分以上かけていた面談記録を、AIが商談の音声から書き起こす
| 会社 | 株式会社三十三銀行(三重県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 営業の面談記録の作成(会議の議事録にも利用) |
| AIの種類・ツール | 音声認識・生成AI(bellSalesAI/ベルフェイス) |
| 効果 | 検証で、営業店では30〜45分かかっていた記録の作成が10〜30分短縮。本部では平均30〜60分の削減 |
| 発表 | 2026年5月 |
| 出典 | IT Leaders(2026年5月) |
同行の行員は、面談の最中に手書きでメモを取り、帰店してから手入力で面談記録を作っていました。1件で最大30分以上かかることもあり、長い面談では会話に集中しながらメモを取る負担も大きく、記録の質も行員によってばらついていました。
同行は、商談の音声から必要な項目をAIが抜き出し、Salesforce への入力を効率化する「bellSalesAI」を入れました。検証では、離れた位置での音声認識の精度や要約の速さを確かめ、スマートフォンのアプリの使いやすさも現場から評価されました。
営業店では、30〜45分かかっていた記録の作成が10〜30分短くなりました。本部では平均30〜60分減り、60分を超えて減った行員も複数いたといいます。投資信託や保険の面談を想定していましたが、実際には法人の担当者や本部での利用が多く、会議の議事録にも使い道が広がっています。
記録のAIは、想定とは違う部署で使われることがあります。最初に用途を決めすぎず、使われ方を見て広げると定着しやすくなります。
山陰合同銀行|1年半の検証を経て、取引先ごとの提案の素案をAIが用意する
| 会社 | 株式会社山陰合同銀行(島根県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 法人営業の提案の準備 |
| AIの種類・ツール | 生成AI・RAG(法人営業高度化AIサービス/NTTデータ) |
| 効果 | 数値の公表なし(検証で、顧客理解の深まり・訪問準備の効率化・若手行員の提案力の向上が見込めると確認) |
| 発表 | 2026年3月 |
| 出典 | NTTデータ ニュースリリース |
地方銀行には、融資だけでなく、取引先の経営の課題を一緒に解く「コンサルティング型」の営業が求められています。ただ、提案のための情報集めと分析には時間がかかり、提案の質が担当者の力量に左右されることが課題でした。
同行とNTTデータは、営業店と行員を絞った検証を約1年半かけて行いました。顧客の情報、財務の情報、業界の情報を行内の複数のシステムから集め、取引先ごとに合わせた提案の素案をAIが作る仕組みで、2026年4月から法人営業の担当者に広げて本格運用しています。
検証では、提案の質と量が上がることが確かめられ、顧客への理解が深まる、訪問の準備が速くなる、若手の提案力が上がるといった効果が見込めるとしています。
営業のAIは、限られた営業店と行員で時間をかけて検証してから広げると、現場で使われる形に仕上げやすくなります。
三菱UFJ銀行|約500名の提案書検索から始め、AIエージェントが提案書を作る段階へ
| 会社 | 株式会社三菱UFJ銀行(東京都) |
|---|---|
| 規模 | 利用者は行員2,500名 |
| 業務 | 法人営業の提案書の作成 |
| AIの種類・ツール | AIエージェント(Ai Workforce/LayerX) |
| 効果 | 提案資料の作成時間を最大9割削減、銀行全体で約20万時間の創出を目指す(目標) |
| 発表 | 2026年2月 |
| 出典 | LayerX プレスリリース(PR TIMES) |
銀行の中で提案のノウハウを共有するには、機密情報を厳しく管理しながら使えるようにする必要があります。
同行は2024年10月、法人営業の担当者ら約500名で「Ai Workforce」を使い始めました。最初の用途は、過去の提案資料や行内の知識を探して取り出すことです。生成AIによる自動のマスキングとタグ付けで、機密を守りながら共有できるようにしました。2026年2月には、AIエージェントが行内外のデータから情報を集めて整え、同行の形式の提案書を作る機能を加えています。
利用者は2,500名に広がりました。提案資料の作成時間を最大9割減らし、銀行全体で約20万時間を生み出すことを目指しています。
まずは「過去の資料を探す」用途で使い始め、データの整備が進んでから「資料を作らせる」段階に進むと、無理なく広げられます。
三井住友銀行|面談の準備から提案書づくりまで、法人営業の流れにAIを入れる
| 会社 | 株式会社三井住友銀行(東京都) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 法人営業(面談の準備、提案書の作成) |
| AIの種類・ツール | 生成AI・AIエージェント(営業推進AIアプリケーション/ACESと共同開発、提案書自動生成アプリケーション/Sakana AI) |
| 効果 | 数値の公表なし |
| 発表 | 2026年4月 |
| 出典 | 三井住友銀行 ニュースリリース(2026年4月24日) 三井住友フィナンシャルグループ ニュースリリース(2026年4月30日) |
法人のお客さまの経営課題や、銀行が提供する解決策は複雑になっています。提案に向けた調査と準備に時間がかかり、提案の質と速さが担当者の経験に左右されやすい構造が課題でした。
同行は、長年ためてきた顧客との接点のデータと営業の知見にAIを組み合わせた「営業推進AIアプリケーション」をACESと共同で開発し、2026年4月に使い始めました。お客さまの属性や対話の内容から想定される経営課題を整理し、最新の商品の情報も示します。続いて、情報収集・仮説づくり・ファクトチェックを複数のAIエージェントが分担する「提案書自動生成アプリケーション」も、Sakana AIと開発して導入しました。
数値は公表されていませんが、経験の浅い担当者や異動したばかりの担当者でも、すぐにお客さまに提案できるようにすることを狙っています。
営業のAIは、面談前の「論点の整理」と面談後の「資料づくり」を分けて考えると、どこから入れるかを決めやすくなります。
行内の問い合わせ・規程検索のAI活用事例
営業店から本部への問い合わせや、規程・マニュアルの検索を生成AIに任せる事例です。信用金庫や地方銀行が最初に選ぶことの多い業務です。
碧海信用金庫|1日約4,000件の庫内の問い合わせに、規程を根拠に答えるAIを入れる
| 会社 | 碧海信用金庫(愛知県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 営業店から本部への問い合わせ対応、文書の作成・検索 |
| AIの種類・ツール | 生成AI・RAG(LITRON Generative Assistant on finposs/NTTデータ) |
| 効果 | 問い合わせの件数の削減で、年間85,000時間の短期的な効果を期待(見込み) |
| 発表 | 2025年2月 |
| 出典 | NTTデータ ニュースリリース(2025年2月12日) NTTデータ Data Insight(2026年1月27日) |
営業店の職員は、わからないことがあると本部の担当部署に電話で問い合わせたり、金庫内に散らばる文書を手で探したりしていました。こうした庫内の問い合わせは、毎日約4,000件にのぼります。
同金庫は2025年2月3日、規程や要領など金庫の独自の情報を格納し、それをもとに回答を作るRAGの仕組みを導入しました。回答には根拠の文書が並べて示されるため、職員はその場で正しさを確かめられます。PoCを省いて業務の中にそのまま入れ、全職員がふだんの業務端末から使えるようにしています。
問い合わせの件数が減ることで、年間85,000時間の短期的な効果を期待しています。今後は通達の作成や、融資稟議・補助金申請の資料づくりにも広げる計画です。
行内の問い合わせのAIは、回答と一緒に根拠の文書を見せる形にすると、誤った回答への不安を抑えながら使い始められます。
三島信用金庫|年1回しか更新できなかったチャットボットを、文書を置くだけで答えるAIに替える
| 会社 | 三島信用金庫(静岡県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 庫内の問い合わせ対応(金融商品・IT)、文章の作成・要約 |
| AIの種類・ツール | 生成AI・RAG(Alli LLM App Market/Allganize) |
| 効果 | 金融商品に関する庫内の電話の問い合わせ(1日約30件)が約半分に |
| 発表 | 2025年7月 |
| 出典 | Allganize プレスリリース(PR TIMES・2025年7月30日) Allganize 導入事例 |
同金庫は以前から庫内のチャットボットを使っていましたが、FAQの手入れが大変で、回答の見直しは年1回程度しかできませんでした。最新の情報が反映されないため使われなくなり、質問の数は月に10件以下まで落ちていました。
同金庫は、全庫の生成AIの基盤として「Alli LLM App Market」を採用しました。FAQを作らず、置いた文書から回答を作るRAGで動かし、問い合わせの多い金融商品とITの2つの業務から使い始めています。回答と一緒に、根拠になった文書の該当箇所が示されます。信用金庫向けの専用のネットワーク経由で使えることも選んだ理由です。
それまで1日約30件あった金融商品についての電話の問い合わせは、約半分に減りました。手数料の確認のような簡単な問い合わせはほぼなくなり、電話は本当に確認が必要なものに絞られています。
チャットボットが使われなくなる原因が手入れの重さなら、FAQを作らず文書から答えるRAGに替えることで、運用の負担ごと減らせます。
山形銀行|規程とマニュアルを探す時間と、本部への電話の照会をAIで減らす
| 会社 | 株式会社山形銀行(山形県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 行内規程・業務マニュアルの検索 |
| AIの種類・ツール | 生成AI(neoAI Chat/neoAI) |
| 効果 | 数値の公表なし |
| 発表 | 2026年8月 |
| 出典 | 山形銀行 ニュースリリース |
行内規程や業務マニュアルを調べるとき、膨大な資料から必要な情報を見つけるのに時間がかかっていました。見つからなければ本部に電話で照会することになり、営業店と本部の両方の負担になっていました。
同行は2026年8月10日、行内のデータを読み込ませて同行に固有の情報に沿って答える生成AI「neoAI Chat」を使い始めました。主な用途は、規程やマニュアルを参照した情報検索です。
数値は公表されていませんが、全社で使えるようにすることで、お客さま対応などの本来の業務に時間を回せる環境を整えるとしています。
「本部への電話の照会」のように、営業店と本部の両方の時間を使っている業務は、AIで減らす効果が二重に出やすい業務です。
青森みちのく銀行|合併から5カ月でDX推進室をつくり、生成AIを全営業店へ広げる
| 会社 | 株式会社青森みちのく銀行(青森県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 文書の作成・要約、行内規程の検索、情報収集 |
| AIの種類・ツール | 生成AI・RAG(neoAI Chat/neoAI。導入支援はNTTデータ東北) |
| 効果 | 数値の公表なし |
| 発表 | 2026年8月 |
| 出典 | IT Leaders(2026年8月24日) |
青森みちのく銀行は、2025年1月1日に青森銀行とみちのく銀行が合併してできた銀行です。設立から5カ月後の2025年6月にDX推進室を立ち上げ、生成AIを業務に使う検討を始めました。
社内の文書を参照して答えるRAGの構成の「neoAI Chat」を選び、Microsoft Azure の上に環境をつくって閉域網でつなぎました。DX推進室での試行、本部の行員への展開を経て、2026年8月に全営業店へ広げています。
数値は公表されていませんが、行員は文書の作成・要約、行内規程の検索、情報収集、アイデア出しから使い始めました。今後は行内の報告資料や提案書の作成、企画の立案の支援にも広げる予定です。
推進室での試行、本部、全営業店と、使う範囲を段階的に広げると、使い方の例を積み上げながら定着させられます。
コールセンター・お客さま対応のAI活用事例
コンタクトセンターやチャットボットで、お客さまへの応対にAIを使う事例です。
城南信用金庫|問い合わせが通常の約4倍になった時期を、生成AIのチャットボットで乗り切る
| 会社 | 城南信用金庫(東京都) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | お客さま向けのチャットボット、コンタクトセンターの運営 |
| AIの種類・ツール | 生成AI(AIチャットボット Tetory/ビーウィズ) |
| 効果 | 問い合わせが通常月の約4倍になった局面で、チャットの対応件数が通常期の2倍超に。有人の稼働時間を約35%削減 |
| 発表 | 2026年6月 |
| 出典 | ビーウィズ プレスリリース(PR TIMES) |
スマートフォンのアプリの利用が広がり、問い合わせが増えることを見込んで、同金庫はお客さま対応の体制を強めようとしていました。ところが、それまでのチャットボットでは、お客さまが必要な答えにたどり着きにくく、FAQの作成・更新・見直しの手間も課題でした。
約3年にわたって同金庫のコンタクトセンターを運営してきたビーウィズが、生成AIのチャットボット「Tetory」の導入とFAQの設計、運用の改善を、BPOと一体で受け持ちました。AIと人の応対のそれぞれの役割を整理しています。
問い合わせが通常月の約4倍になった局面でも、チャットで対応した件数が通常期の2倍を超え、電話への集中を和らげました。チャットボットが一次対応を受け持ち、お客さまが自分で解決できるようになったことで、有人の稼働時間は約35%減っています。
お客さま向けのAIは、ふだんの効率化だけでなく、問い合わせが急に増えた時期の受け皿として役立ちます。
京葉銀行|聞き返すAIで、コールセンターの回答の正答率を58%から86%に
| 会社 | 株式会社京葉銀行(千葉県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | コールセンターの回答の作成(Webサイトの公開情報に関する問い合わせ) |
| AIの種類・ツール | 生成AI・RAG(日立製作所のユーザー確認技術) |
| 効果 | 技術検証で、回答の正答率が58%から86%に(RAGだけの場合との比較) |
| 発表 | 2025年10月 |
| 出典 | 日立製作所 ニュースリリース |
金融機関のコールセンターでは、非対面の問い合わせが増える一方でオペレーターが足りず、経験の差で応対の質にもばらつきが出ていました。京葉銀行では、Webサイトに載っている情報についての問い合わせが相当な数を占めていました。
同行は2025年5月から9月にかけて、日立製作所と生成AIの技術検証を行いました。使ったのは、質問の情報が足りないときに、AIが途中で確認の質問を返す「ユーザー確認技術」です。たとえば手数料を聞かれたら、ATMの手数料か振込の手数料かを選んでもらってから答えます。
Webサイトの情報をRAGで読ませただけでは正答率は58%でしたが、この技術を使うと86%まで上がりました。今後はコールセンターの実際の業務に使うことを目指し、24時間365日答えられる自動応答の仕組みにつなげる計画です。
お客さまの質問はあいまいなことが多いため、AIに「聞き返させる」仕組みを入れると、答えの精度を大きく上げられます。
SBI証券|入電が約2.5倍に増えた窓口で、AIオペレーターが用件を聞いて振り分ける
| 会社 | 株式会社SBI証券(東京都) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | カスタマーセンターの電話応対(用件の聞き取り・振り分け・自己解決) |
| AIの種類・ツール | 生成AI(AIオペレーター QANT スピーク/RightTouch) |
| 効果 | 振り分けの精度90%超。一部の問い合わせで自己解決率85%。平均通話時間が1件あたり1.6分短縮し、月間2,933時間の応対時間を削減 |
| 発表 | 2026年10月 |
| 出典 | RightTouch プレスリリース(PR TIMES・2026年10月22日) |
新NISAの開始などを背景に、同社のカスタマーセンターへの入電はここ数年で約2.5倍、ピーク時には約5倍に増えていました。専門性の高い証券の業務では、オペレーターの採用と育成が追いつかず、電話のガイダンスの選択肢が多いことも、お客さまの負担になっていました。
同社は、お客さまが自由に話した内容から困りごとをつかみ、適切な窓口や解決方法へ案内するAIオペレーター「QANT スピーク」を入れました。AIが聞き取った要約は、着信と同時にオペレーターの画面に表示されます。問い合わせの分類やフローの見直しを約1カ月かけて集中的に行いました。
用件の振り分けの精度は90%を超え、一部の問い合わせではAIだけで応対が終わる割合が85%になりました。平均通話時間は1件あたり1.6分短くなり、カスタマーセンター全体で月間2,933時間の応対時間を減らしています。
電話のAIは、すべてに答えさせるより、まず用件を聞き取って正しい窓口に渡す役から始めると、効果を出しやすくなります。
みずほ銀行|国内4カ所のコンタクトセンターで、通話の文字起こしと案内資料の提示をAIに
| 会社 | 株式会社みずほ銀行(東京都) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | コンタクトセンターの応対 |
| AIの種類・ツール | 生成AI |
| 効果 | 通話時間を2割程度削減し、全体で3割程度の業務効率化につなげる(目標) |
| 発表 | 2024年12月 |
| 出典 | ニュースイッチ(日刊工業新聞・2024年12月29日) |
お客さまの問い合わせに応じるコンタクトセンターでは、人が応対する業務の生産性をどう上げるかが課題でした。
同行は国内4カ所のコンタクトセンターに、生成AIを使った新しいシステムを入れました。お客さまとのやり取りは生成AIがすべて文字に起こしてパソコンの画面に出し、資産運用のサービスの案内資料などもAIが示します。情報の一元化とペーパーレス化もあわせて進めています。
通話時間を2割程度減らし、全体で3割程度の業務効率化につなげるとしています。今後は入電の量を予測して人の配置を最適にし、お客さまの声を分析して商品やサービスの改善にも生かす計画です。
お客さまに直接AIの答えを返す前に、まずオペレーターの手元でAIを使うと、応対の品質を人が保ったまま時間を減らせます。
不正・マネロン対策のAI活用事例
特殊詐欺やマネー・ローンダリングなど、不正からお客さまの資産を守るためにAIを使う事例です。
鳥取信用金庫|ATMのカメラで「電話しながらの振込」を見つけ、特殊詐欺を止める
| 会社 | 鳥取信用金庫(鳥取県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | ATMでの特殊詐欺の被害の防止 |
| AIの種類・ツール | 画像認識(ATM内蔵カメラのAI画像検知機能/日立チャネルソリューションズ) |
| 効果 | 数値の公表なし |
| 発表 | 2025年2月 |
| 出典 | 鳥取信用金庫 ニュースリリース |
振り込め詐欺や還付金詐欺では、犯人が電話で指示しながら、ATMで振込の操作をさせる手口が多く起きています。
同金庫は2025年2月13日、一部の店舗のATMで、内蔵のカメラが撮った画像をAIが解析する仕組みを動かし始めました。振込の操作中に利用者が携帯電話で通話しているとAIが見つけると、注意を促す画面を出したうえで、取引を止めます。
数値は公表されていませんが、動き方を確かめながら、対象の店舗を順に広げる予定です。
AIは事務の効率化だけでなく、お客さまの預金を守る場面でも、人が見ていられない瞬間を補う道具として使えます。
りそなホールディングス|マネロン対策のアラートにAIがスコアと理由を付け、調査を軽くする
| 会社 | 株式会社りそなホールディングス(りそな銀行・埼玉りそな銀行・関西みらい銀行・みなと銀行) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | マネー・ローンダリング対策(取引モニタリングのアラートの調査) |
| AIの種類・ツール | 機械学習・AIエージェント(SAS Financial Crimes Analytics/SAS Institute Japan) |
| 効果 | 全アラートの約30%にAIがスコアと理由を示し、全体の約10%にあたる低リスクのアラートの調査を簡素化(報道による) |
| 発表 | 2026年7月 |
| 出典 | SAS Institute Japan リリース(2026年7月7日) FinTech Journal(2026年7月10日) |
国際的なマネロン対策の規制が強まるなか、取引の経路の多様化や不正の手口の高度化で、検知のアラートが増え、調査の負担が大きくなっていました。
同社は2024年3月、過去の犯罪の傾向を学習し、アラートごとに疑わしい取引である確率と理由を示すAIスコアリングの本番運用を始めました。2026年7月には、口座・顧客・取引の関係から算出する「ネットワーク特徴量」の検証結果を公表し、アラートの調査にAIエージェントを使う取り組みにも着手しています。
報道によると、全アラートの約30%にAIがスコアと理由を示し、全体の約10%にあたる低リスクのアラートの調査を簡素化しています。AIエージェントの調査結果は、後の工程で必ず人が確かめる設計です。
マネロン対策のAIは、アラートを消すためではなく、人が調べる順番と深さを決める材料として使うと、検知の水準を保ったまま負担を減らせます。
事務・システム開発・本部業務のAI活用事例
住宅ローンの書類の転記、本部の業務、システムの開発など、窓口の外の業務でAIを使う事例です。
百五銀行|住宅ローンの図面や物件資料の転記を、1件約20分から7分以下へ
| 会社 | 株式会社百五銀行(三重県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 住宅ローンの事前審査などでの書類の転記と、申込内容との整合性の確認 |
| AIの種類・ツール | 生成AI・AIエージェント(日立製作所) |
| 効果 | 効果検証で、1件あたりの作業時間を約20分から7分以下へ、約3分の1に短縮 |
| 発表 | 2026年2月 |
| 出典 | 百五銀行・日立製作所 ニュースリリース |
住宅ローンの事前審査では、定型の帳票はAI-OCRなどで入力の自動化が進んでいました。一方で、物件の資料や図面のように形式がばらばらの書類は、行員が手でシステムに入力し、申込の内容と合っているかも確かめていました。
同行と日立製作所は、2025年8月から2026年2月まで、住宅ローンの業務で効果検証を行いました。生成AIが書類から情報を抜き出して登録し、AIエージェントが整合性を判断します。行員は、AIの処理結果を最後に確かめて判断することに専念します。
1件あたりの作業時間は約20分から7分以下へ、約3分の1に短くなりました。AIの出力の品質も一定していたことから、2026年度から住宅ローンの事前審査などの実際の業務に順に使っていきます。
AI-OCRで残った「形式がばらばらの書類」は、生成AIが得意な領域です。定型の帳票の自動化の次の一歩として検討できます。
七十七銀行|本部の55以上の業務に生成AIを入れ、年約32千時間の効率化を見込む
| 会社 | 株式会社七十七銀行(宮城県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 本部の業務(文書作成、情報収集、データの集計・分析) |
| AIの種類・ツール | 生成AI(Microsoft Azure。構築の支援はNTT東日本) |
| 効果 | 本部の55業務以上で約32千時間/年の業務効率化の見込み |
| 発表 | 2024年11月 |
| 出典 | 七十七銀行 ニュースリリース NTT東日本 宮城事業部 お知らせ |
同行は経営計画「Vision 2030」の柱の1つにDXを置き、生成AIで銀行業務の生産性を抜本的に上げる取り組みを、2025年3月から始めると発表しました。
文書の作成や情報収集に加え、データの集計・分析にも生成AIを使います。Microsoft Azure の上に新しく基盤をつくり、NTT東日本が方針づくりから構築・保守までを支援します。行内の情報や他のシステムとつなぐ段階を経て、AIエージェントが業務を最後までこなす段階へ進む3段階の道筋も示しました。
一般の情報に行内の情報も使うことで、本部の55業務以上で年約32千時間の効率化を見込んでいます。
最初に「どの段階でどこまでAIに任せるか」の道筋を示しておくと、部署ごとに使い方を広げるときの目安になります。
ソニー銀行|動いている勘定系システムの開発に生成AIを入れ、開発期間を30%短縮
| 会社 | ソニー銀行株式会社(東京都) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 勘定系システムの開発(基本設計から結合テストまで) |
| AIの種類・ツール | 生成AI・AIエージェント(Amazon Bedrock 上の Claude・Claude Code。富士通と共同) |
| 効果 | 2026年7月時点で、基本設計から結合テストまでの工数を40%削減、開発期間を30%短縮 |
| 発表 | 2026年9月 |
| 出典 | IT Leaders(2026年9月) |
金融業界では、システムの開発の仕組みに原因があって、新しいサービスの企画から提供までに数カ月から年単位の時間がかかり、市場の変化に追いつきにくいことが課題でした。
同行は2025年9月から富士通とともに、稼働中の勘定系システムの実際の開発に生成AIを使っています。PoCを挟まず、設計書からソースコードやテストケースを作るなど、前の工程の成果物を後の工程で使い回す形で、設計・製造・テストの主な工程に入れました。最終判断と品質の保証は人が受け持ちます。
2026年7月時点で、基本設計から結合テストまでの工数は40%減り、開発期間は30%短くなりました。影響調査の工数は最大90%、設計書の作成の工数は最大40%減っています。今後は要件定義や、セキュリティ・運用などの領域にも広げる計画です。
開発のAIは、特定の工程だけに使うより、設計書・コード・テストの成果物を工程をまたいで使い回せるようにすると、効果が大きくなります。
地方銀行・信用金庫の事例から見えること
今回の20件のうち、地方銀行は10件、信用金庫は4件です。地域の金融機関の事例には、共通する始め方が4つあります。
行内の問い合わせから始めている
碧海信用金庫、三島信用金庫、山形銀行、青森みちのく銀行は、いずれも規程やマニュアルを探す業務、本部への問い合わせから生成AIを使い始めています。使うのは行員だけで、お客さまに直接答えを見せないため、始めやすい業務です。営業店と本部の両方の時間を使っている問い合わせは、地域の金融機関が最初に選ぶ業務として理にかなっています。
合併・統合を、やり方をそろえるきっかけにしている
あいち銀行は、統合前の2行で違っていた稟議書の書き方を、AIが作る素案でそろえようとしています。青森みちのく銀行も、合併から5カ月でDX推進室をつくり、生成AIを全営業店に広げました。仕事の進め方を見直す時期は、AIを入れる時期としても向いています。
金融機関向けの共通のサービスを使っている
京都銀行・あいち銀行・山陰合同銀行・碧海信用金庫は、NTTデータの同じ基盤の上のサービスを使っています。三島信用金庫は信用金庫向けの専用のネットワーク経由で使えるサービスを選びました。一から作るのではなく、ほかの金融機関でも使われているサービスを選ぶことで、セキュリティの確認や導入の手間を抑えています。
試行の範囲を区切ってから広げている
山陰合同銀行は営業店と行員を絞って約1年半の検証を行い、青森みちのく銀行はDX推進室、本部、全営業店の順に広げました。鳥取信用金庫も一部の店舗のATMから始めています。使い方の例を積み上げてから広げることで、現場に定着させています。
金融機関がAIを導入するメリット
今回の事例で公表された効果から、金融機関がAIを入れるメリットを5つにまとめました。
書類づくりと調べものの時間が減る
百五銀行は住宅ローンの書類の転記を1件約20分から7分以下に、三十三銀行は面談記録の作成を10〜30分短くしました。稟議書、提案書、面談記録、問い合わせの回答など、金融機関の仕事には文書を読んで書く時間が多く、AIの効果が出やすい領域です。
書類の質のばらつきが減る
京都銀行では、審査役の評価で合格ラインに届く稟議書の割合が約30%から約95%に上がり、あいち銀行では指摘の数が約25%減りました。AIの素案は、決めた観点に沿って毎回同じ構成で作られるため、書き手による差が小さくなります。
若手の行員が早く一人前になる
横浜銀行の実証では、AIがお客さまへの聞き取りの不足を示し、行員が「何を聞くべきか」に気づける効果が確認されました。山陰合同銀行や三井住友銀行も、経験の浅い担当者の提案を支えることを狙いにしています。
お客さまを待たせない
SBI証券は平均通話時間を1件あたり1.6分短くし、城南信用金庫は問い合わせが通常の約4倍になった時期にもチャットで受け止めました。人が足りない時期でも、お客さまの待ち時間を延ばさずに済みます。
不正からお客さまの資産を守る
鳥取信用金庫はATMでの特殊詐欺を、りそなホールディングスはマネー・ローンダリングを、AIで見つけて止める仕組みを使っています。人の目では追いきれない量の取引や画像を見続けられることも、AIの強みです。
金融庁・日本銀行が示すAIの論点
金融機関がAIを使うときは、一般の企業より厳しい情報の管理と、お客さまへの説明の責任が求められます。金融庁と日本銀行が示している論点を整理します。
金融庁のAIディスカッションペーパー
金融庁は2025年3月に「AIディスカッションペーパー(第1.0版)」を公表し、2026年3月に第1.1版へ改訂しました。法令のような決まりではなく、金融機関がAIを健全に使うための論点を整理し、金融庁と金融機関の対話の土台にするための文書です(出典:金融庁『AIディスカッションペーパー(第1.1版)の公表について』)。
第1.0版では、従来型のAIの主な使い道として、書類のテキスト化(OCR)や情報検索、チャットボット、マーケティング、不正の検知(マネロン対策など)、与信の審査、市場の予測などを挙げています。生成AIは、約半数の金融機関が汎用のサービスをそのまま使っているとしています(出典:金融庁『AIディスカッションペーパー(第1.0版)』概要)。
お客さま向けのAIで求められる4つの局面
第1.1版では、お客さま向けのサービスでAIのリスクを下げる取り組みを、次の4つの局面に分けて整理しています(出典:金融庁『AIディスカッションペーパー(第1.1版)』概要資料)。
| 局面 | 取り組みの例 |
|---|---|
| 設計と事前の検証 | RAGで答える範囲を絞る。AIと人の応対をお客さまが選べるようにする。事務的な手続きから始め、中核の業務へ広げる |
| お客さまへの説明・注意喚起 | 生成AIの回答であることや、誤りが含まれうることを伝える。回答の根拠を示す。いつでも人の応対に移れるようにする |
| 検証・モニタリング | AIとお客さまの会話の記録を残して回答を確かめ、必要ならお客さまに連絡する。偏った勧誘をしていないかを数字で確かめる |
| ガバナンス | 経営陣を含む全社の体制と、現場の職員までのリテラシーの向上。用途に応じたリスクベースの対応 |
本記事の事例でも、碧海信用金庫や三島信用金庫が回答と一緒に根拠の文書を示し、みずほ銀行はAIをオペレーターの手元で使っています。お客さまに直接見せる前に、行員が確かめられる形で使うことが、金融機関のAI活用の出発点になっています。
日銀の調査に見る、リスク管理の課題
日本銀行の2026年度の調査では、情報の管理や実務のルールづくりは相応に進んでいる一方、ガバナンス、外部の委託先(サードパーティ)のリスク管理、セキュリティなどでは「改善の余地がある」「検討中」と答えた先が多くありました。今後の課題としては、事業の推進、人材の育成、ITインフラ・データの整備、サイバー攻撃への対策が挙がっています(出典:日本銀行(2026年8月))。
推進の体制は、DX・IT部門などの特定の部門が全社の導入を主導している先が65.4%、経営の直下の推進組織が全社を統括している先が20.6%でした。
導入にかかる費用と期間の目安
AIの導入にかかる費用は、汎用の生成AIを全行員で使うのか、融資や営業などの業務に合わせた仕組みを入れるのかで大きく変わります。今回の事例に出てきた使い方ごとに、目安をまとめました。
使い方ごとの費用の目安
| 使い方 | 主な形 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 生成AIを全行員で使う | 法人向けの生成AIのサービスを、閉じたネットワークの中で使えるようにする | サービスの利用料に加え、セキュリティの要件に合わせた環境づくりの費用がかかる |
| 行内の問い合わせ・規程の検索 | 規程やマニュアルを読み込ませるRAGのサービスを入れる | 読み込ませる文書の量と、回答の精度を上げる調整の範囲で変わる |
| 融資稟議書・提案書の作成 | 金融機関向けの業務のAIのサービスを入れ、行内のシステムとつなぐ | つなぐシステムの数と、判断の観点の整理にかかる工数で大きく変わる。見積もりで範囲をそろえて比べる |
| コールセンター・チャットボット | 音声のAIやチャットボットを、今の電話やFAQの仕組みとつなぐ | 問い合わせの件数と、運用を外部に任せる範囲で変わる |
金融機関では、FISC(金融情報システムセンター)の安全対策基準などのセキュリティの要件を満たす環境が前提になるため、一般の企業より環境づくりの費用が大きくなりやすい点に注意が必要です。見積もりの内訳や比べ方は、AI導入の費用相場とAI開発・PoCの費用相場で詳しく説明しています。
事例に見る、試し始めてから本運用までの期間
今回の事例のうち、試し始めた時期と、その後の時期がわかるものを並べました。半年から1年半ほど試行を重ねてから、本運用や全店への展開に進む金融機関が多く見られます。
| 金融機関 | 試し始め | その後 |
|---|---|---|
| 碧海信用金庫 | 2023年夏から生成AIの使い道を検討 | 2025年2月にPoCを省いて本番に導入 |
| 三菱UFJ銀行 | 2024年10月に約500名で提案書の検索から利用 | 2026年2月に提案書の自動作成を追加。利用者は2,500名に |
| 青森みちのく銀行 | 2025年6月にDX推進室を発足し、試行 | 本部への展開を経て、2026年8月に全営業店へ |
| 山陰合同銀行 | 営業店と行員を絞って約1年半の検証 | 2026年4月に本格運用 |
| 百五銀行 | 2025年8月〜2026年2月に効果検証 | 2026年度から実際の業務に順次適用 |
| ソニー銀行 | 2025年9月に実際の開発に適用 | 2026年7月時点で開発期間を30%短縮 |
AIに任せられないこと・導入の注意点
融資や取引の最後の判断は人が持つ
今回の事例で、AIに融資の可否や取引の判断を任せている例はありません。稟議書のAIが作るのは素案で、りそなホールディングスはAIエージェントの調査結果を必ず人が確かめる設計にしています。ソニー銀行の開発でも、最終の判断と品質の保証は人が受け持っています。AIは判断の材料をそろえる役、判断と説明の責任は人が持つ役と、分担を先に決めておくことが大切です。
お客さまの情報を外に出さない環境を選ぶ
金融機関が扱うお客さまの情報は、外に漏れれば信用を大きく損ないます。青森みちのく銀行は閉域網でつなぐ環境を作り、碧海信用金庫はインターネットから切り離した行内のネットワークから使えるようにしました。入力した情報がAIの学習に使われないこと、FISCの安全対策基準などの要件を満たすことを、導入の前に確かめましょう。対策の全体像は生成AIの情報漏洩対策でまとめています。
誤った回答(ハルシネーション)に備える
生成AIは、もっともらしい誤りを答えることがあります。京葉銀行の検証では、Webサイトの情報をRAGで読ませただけでは正答率は58%でした。回答の根拠の文書を一緒に示す、あいまいな質問には聞き返す、行員が確かめてからお客さまに伝えるといった、誤りを前提にした仕組みを組み込むことが欠かせません。
データが散らばっていると効果が出にくい
稟議書や提案書のAIは、顧客の情報や財務の情報を行内の複数のシステムから集めて使います。三菱UFJ銀行は、AIエージェントが使うためのデータの基盤を整えてから提案書の自動作成に進みました。データの置き場や形がばらばらなままでは、AIの答えの質も上がりません。
金融機関でAIを導入する進め方
今回の事例に共通する流れを、5つのステップにまとめました。
AIに任せたい業務を1つ決める
行内の問い合わせ、稟議書、面談記録、書類の転記など、毎日くり返していて時間のかかる業務を1つ選びます。誰が、どれだけの時間をかけているのかも書き出しておきます。
使ってよい環境とルールを決める
お客さまの情報を入れてよいか、どのネットワークから使うか、AIの出力を誰が確かめるかを、情報管理やリスク管理の部署と一緒に決めます。社内のルールづくりは生成AI導入の進め方で詳しく説明しています。
範囲を区切って試す
推進の部署や一部の営業店から使い始め、今の業務と並べて数カ月試します。回答の正しさだけでなく、行員が使い続けられるか、時間がどれだけ減ったかも記録します。
効果を数字で確かめて本運用に移す
減った時間や、審査での指摘の数などを、試す前と比べます。効果が確かめられたら、使うルールを決めて本運用に移します。
ほかの業務・営業店に広げる
うまくいった使い方を、似た業務やほかの営業店に広げます。行内の問い合わせから稟議書の作成へ、本部から全営業店へと、順に範囲を広げていく金融機関が多く見られます。
よくある質問
Q. 銀行ではどの業務でAIが多く使われていますか?
Q. 地方銀行や信用金庫でもAIを導入できますか?
Q. 「AI銀行」とは何ですか?
Q. AIが融資の可否を決めることはありますか?
Q. 金融機関のAI活用に決まったルールはありますか?
Q. 試し始めてから本運用までどのくらいかかりますか?
まとめ
製造業の事例は製造業のAI活用事例、社内の問い合わせに答える仕組みの作り方は社内AIチャットボットの構築方法もあわせてご覧ください。
出典一覧
本記事の事例と数字の出典です。事例は発表の新しい順に並べています。
事例の出典
- SBI証券(2026年10月):RightTouch プレスリリース(PR TIMES・2026年10月22日)
- ソニー銀行(2026年9月):IT Leaders(2026年9月)
- 山形銀行(2026年8月):山形銀行 ニュースリリース
- 青森みちのく銀行(2026年8月):IT Leaders(2026年8月24日)
- あいち銀行(2026年7月):NTTデータ ニュースリリース
- りそなホールディングス(2026年7月):SAS Institute Japan リリース(2026年7月7日)、FinTech Journal(2026年7月10日)
- 城南信用金庫(2026年6月):ビーウィズ プレスリリース(PR TIMES)
- 三十三銀行(2026年5月):IT Leaders(2026年5月)
- 三井住友銀行(2026年4月):三井住友銀行 ニュースリリース(2026年4月24日)、三井住友フィナンシャルグループ ニュースリリース(2026年4月30日)
- 山陰合同銀行(2026年3月):NTTデータ ニュースリリース
- 京都銀行(2026年2月):NTTデータ ニュースリリース
- 三菱UFJ銀行(2026年2月):LayerX プレスリリース(PR TIMES)
- 百五銀行(2026年2月):百五銀行・日立製作所 ニュースリリース
- 京葉銀行(2025年10月):日立製作所 ニュースリリース
- 三島信用金庫(2025年7月):Allganize プレスリリース(PR TIMES・2025年7月30日)、Allganize 導入事例
- 碧海信用金庫(2025年2月):NTTデータ ニュースリリース(2025年2月12日)、NTTデータ Data Insight(2026年1月27日)
- 鳥取信用金庫(2025年2月):鳥取信用金庫 ニュースリリース
- みずほ銀行(2024年12月):ニュースイッチ(日刊工業新聞・2024年12月29日)
- 横浜銀行(2024年11月):日本IBM ニュースリリース
- 七十七銀行(2024年11月):七十七銀行 ニュースリリース、NTT東日本 宮城事業部 お知らせ
