社員が生成AIに顧客の情報を貼り付けていないか心配だ。無料版を使ってよいのか、法人プランにすべきなのかがわからない。社内ルールを作りたいが、何をどこまで書けばよいのか見当がつかない。生成AIの業務利用が広がるなかで、情報漏洩の対策に悩む企業は少なくありません。総務省の『令和8年版 情報通信白書』によると、生成AIの活用で懸念されるリスクとして、日本企業が最も多く挙げたのは「社内情報の漏洩などのセキュリティリスク」(46.4%)でした。一方で、生成AIへの入力データを学習に使えない仕組みを導入している企業は19.9%にとどまります(出典:総務省『令和8年版 情報通信白書』懸念されるリスク及びリスク対策のための取組状況)。

そこで本記事では、生成AIで情報漏洩が起こる原因と、企業がとるべき対策を、すぐに使える形でまとめました。入力してよい情報の線引き、ChatGPT・Gemini・Claude・Microsoft Copilot で学習に使わせない設定の手順、法人プランで確かめる項目に加えて、そのまま使える社内ルールのひな形、導入前の確認項目の表、情報漏洩が疑われるときの初動まで解説します。

この記事でわかること

  • 情報漏洩が起こる原因がわかる
  • すぐ使える社内ルールがわかる
  • 学習させない設定の手順がわかる
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生成AIの情報漏洩とは|企業の懸念と対策の現状

生成AIの情報漏洩とは

生成AIの情報漏洩とは、ChatGPT などの生成AIに入力した社内の情報や個人情報が、AIの学習やサービス側の保存、不正なアクセスなどを通じて、社外の人の目にふれる状態になることです。メールの誤送信やUSBメモリーの紛失と違い、入力した本人に「外に出した」という意識がないまま起こりやすいのが特徴です。

データで見る企業の現状

総務省の調査では、生成AIの活用で懸念されるリスクとして「社内情報の漏洩などのセキュリティリスク」を挙げた日本企業が46.4%と最も多く、米国(36.9%)・ドイツ(31.7%)・中国(42.7%)よりも高い結果でした。ところが、リスクへの取り組みを見ると、中小企業ほど手が回っていないことがわかります。

リスク対策の取り組み 日本全体 大企業 中小企業
全社的な指針やガイドラインを整備している 41.1% 44.9% 29.1%
AIガバナンスを進める部署や責任者が明確になっている 35.9% 36.0% 35.4%
生成AIへの入力データを学習データとして利用できない仕組みを導入している 19.9% 19.8% 20.3%
特に実施している施策はない・把握していない 16.3% 13.8% 24.1%

出典:総務省『令和8年版 情報通信白書』第Ⅰ部 第2章 第1節(4)(図表Ⅰ-2-1-8・Ⅰ-2-1-9 をもとに作成)

中小企業では、ガイドラインを整備している会社が3割に満たず、4社に1社は対策を何もしていないか把握していません。情報漏洩を心配しているのに、ルールも設定も手つかずという会社が多いのが今の状況です。

公的機関の注意喚起

情報処理推進機構(IPA)が2026年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威の3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれました(出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」)。IPA は、AIにもセキュリティにも詳しくない利用者向けに、最低限の対策をまとめたスライド「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」も公開しています。社内勉強会の教材として使えます(出典:IPA「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」)。

個人情報保護委員会も、生成AIサービスに個人情報を入力するときの注意点を公表しています。くわしくは「個人情報を入れるときの確認」で解説します。

情報漏洩以外のリスクとの関係

生成AIのリスクには、情報漏洩のほかに、事実と違う内容をもっともらしく答える誤り(ハルシネーション)や、他人の著作物に似たものを作ってしまう権利侵害などもあります。白書の調査でも「出力結果の精度に問題がある」(35.3%)、「著作権等の権利を侵害する可能性がある」(31.3%)が続きました。本記事では、このうち情報漏洩とその周りのセキュリティに絞って解説します。社内ルールのひな形には、誤りや権利への備えも1条ずつ入れています。

生成AIで情報漏洩が起こる6つの原因

情報漏洩が起こる6つの原因

生成AIの情報漏洩は、AIそのものの問題よりも、使い方と設定、管理の抜けから起こります。原因ごとに打つ手が違うため、まずは6つに分けて整理しておきましょう。

入力内容が学習に使われる

個人向けの生成AIサービスの多くは、初期設定のままだと、入力した会話がAIモデルの改善(学習)に使われることがあります。学習に使われた内容がそのまま他人への回答に出てくるとは限りませんが、個人情報保護委員会も、入力された個人情報が学習に使われ、ほかの情報と結びついて出力されるリスクがあると注意を呼びかけています。設定で学習を止められるサービスがほとんどなので、まずはここを確かめます。

会話の履歴が保存される

学習に使わない設定にしても、会話の履歴はサービス側にしばらく保存されます。たとえば ChatGPT の一時チャットは安全上の理由で最大30日、Gemini はアクティビティの保存をオフにしても72時間、アカウントに保持されます。サービス側の不具合や不正アクセスがあれば、保存された履歴が見られるおそれがあります。「学習されない」と「どこにも残らない」は別の話だと押さえておきましょう。

社員が機密情報を入力する

最も多いのは、社員が悪気なく入力してしまうケースです。会議の議事録を要約させる、顧客からのメールに返信文を作らせる、エラーが出たプログラムを直させる、といった日常の作業の中で、顧客名や取引条件、ソースコードがそのまま入力されます。入力してよい情報の線引きが決まっていないと、判断は社員一人ひとりに任されてしまいます。

会社が把握していないAIを使う(シャドーAI)

会社が認めていない生成AIを、社員が個人のアカウントで業務に使うことを「シャドーAI」と呼びます。会社が法人プランを契約していても、使いにくかったり、使える人が限られていたりすると、社員は手元の無料版やブラウザの拡張機能に流れます。会社からは設定も履歴も見えないため、漏洩があっても気づけません。

アカウントの乗っ取りと連携機能

生成AIのアカウントが乗っ取られると、過去の会話の履歴がまとめて見られてしまいます。パスワードの使い回しや、ウイルスに感染したパソコンからのパスワードの盗み出しが入口になります。また、メールやクラウドストレージとつなぐ連携機能、ブラウザの拡張機能は、AIが読める範囲を広げるため、何をつないでいるかを会社が把握しておく必要があります。

社内データを読むAIの権限とプロンプトインジェクション

Microsoft Copilot や Gemini in Workspace のように社内のファイルやメールを読むAI、社内の資料を検索して答えるAI(RAG)は、使う人が閲覧できる範囲の情報をもとに答えます。共有フォルダの閲覧権限が広すぎると、本来見るべきでない人事や給与の資料が、AIの回答を通して目にふれることがあります。さらに、文書やWebページに仕込まれた指示でAIをだまし、情報を引き出したり外に送らせたりする「プロンプトインジェクション」という攻撃もあります。

6つの原因と主な対策をまとめると、次のとおりです。

原因 主な対策 本記事の章
入力した内容が学習に使われる 学習に使わせない設定、法人プランの利用 学習させない設定・法人プラン
会話の履歴が保存される 保持期間の確認、一時チャットの活用、入力する情報の線引き 線引き・法人プラン
社員が機密情報を入力する 入力してよい情報の区分、社内ルール、教育 線引き・社内ルール・教育
シャドーAI 使いやすい公式の環境を用意する、利用状況の把握 社内ルール・技術的な対策
アカウントの乗っ取り・連携機能 会社のアカウントで管理、多要素認証、連携の許可制 技術的な対策
社内データを読むAIの権限・攻撃 閲覧権限の見直し、組み込むときの設計 技術的な対策

生成AIの情報漏洩の主な型と実際に起きたこと

情報漏洩の主な型と実例

生成AIをめぐる情報漏洩は、大きく3つの型に分けられます。どの型も、ツールを禁止するだけでは防げない点が共通しています。

社員の入力から広がる型

社内の会議資料や開発中のソースコード、顧客の一覧などを、社員が個人向けの生成AIに貼り付けてしまう型です。入力した時点で情報は社外のサービスに渡り、設定によっては学習にも使われます。入力してよい情報の線引きと、学習に使わせない設定の2つで、多くを防げる型です。

サービス側の不具合で見える型

利用者に落ち度がなくても、サービス側の不具合で情報が見えてしまうことがあります。OpenAI の公表によると、2023年3月、ChatGPT で使っていたオープンソースのライブラリの不具合により、一部の利用者に、ほかの利用者のチャット履歴の題名が見える状態になりました。同じ不具合で、特定の9時間に使っていた ChatGPT Plus 会員の1.2%について、氏名やメールアドレス、クレジットカードの下4桁と有効期限などが、ほかの利用者に見えた可能性があるとされています(出典:OpenAI「March 20 ChatGPT outage: Here’s what happened」)。

この型は利用者の側で完全には防げません。サービス側に残っても困らない情報だけを入力する、という線引きが最後の守りになります。

アカウント情報が盗まれる型

パソコンがウイルスに感染し、ブラウザに保存されたIDとパスワードが盗まれると、生成AIのアカウントにも入られてしまいます。会話の履歴が残っていれば、過去に入力した内容がまとめて見られます。個人のアカウントを業務に使っていると、会社はパスワードの強さも多要素認証の有無も確かめられません。会社のアカウントで一括して管理することが、この型への備えになります。

入力してよい情報・いけない情報の線引き

入力してよい情報・いけない情報の線引き

生成AIの情報漏洩対策で最初に決めたいのが、生成AIに入力してよい情報の線引きです。「機密情報は入力しない」だけでは、何が機密なのかの判断が人によって分かれます。社内の情報を区分に分け、区分ごとに使ってよいサービスを決めておきましょう。

社内の情報を4つの区分に分ける

情報漏洩を防ぐための区分は、はじめは4つで十分です。区分の名前と例を自社の言葉に直して使ってください。

区分 例 個人向けの無料版 会社が契約した法人プラン
公開情報 自社サイトに載っている会社概要・製品情報、公開済みのプレスリリース 入力してよい 入力してよい
社内情報 社内向けの手順書、一般的な会議メモ、公開前でない企画のたたき台 入力しない 入力してよい
機密情報 取引先との契約条件、見積の金額、未発表の製品、ソースコード、顧客名の入った資料 入力しない 伏せ字にすれば入力してよい(部署の責任者が判断)
極秘情報・特別な個人情報 個人情報の一覧、健康診断の結果、人事評価、パスワード・APIキー、M&Aなどの重要な経営情報 入力しない 入力しない(専用の環境を別に検討)

ポイントは、使ってよいサービスと区分を組み合わせて決めることです。迷ったときは1つ上の区分として扱う、と決めておくと判断がぶれません。パスワードやAPIキーのような認証情報は、どのサービスにも入力しないと明記しておきましょう。

個人情報を入れるときの確認

個人情報保護委員会は2023年6月、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しました。企業(個人情報取扱事業者)に向けては、次の2点を挙げています。

注意点 社内での対応
個人情報を含むプロンプトを入力するときは、その個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認する 顧客から預かった目的と関係のない作業に、顧客の個人情報を使わない
本人の同意なく個人データを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法に違反する可能性がある。入力する場合は、サービス提供者が個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認する 個人データを入れてよいのは、学習に使わないことを契約や公式の説明で確かめた法人プランに限る

出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(別添1 をもとに作成)

同じ注意喚起では、利用者に向けて、サービス提供者の利用規約やプライバシーポリシーを十分に確認し、入力する情報の内容をふまえて使うかどうかを判断するよう求めています。

伏せ字(マスキング)で入力するときのコツ

機密情報をAIで扱いたいときは、固有名詞や数字を記号に置き換えてから入力します。文章の構成を整える、言い回しを直すといった作業なら、伏せ字にしても結果はほとんど変わりません。

置き換えるもの 入力前 入力する形
会社名・人名 株式会社〇〇商事の田中様 A社のX様
金額・数量 見積金額 1,280万円 見積金額 N円
製品名・案件名 新製品「△△」の発売計画 新製品Pの発売計画
日付・場所 11月5日に大阪本社で D日にL拠点で
連絡先・ID メールアドレス・電話番号・社員番号 入力しない(削る)

伏せ字にした対応表は手元に残し、AIの回答を受け取ってから元に戻します。複数の記号を組み合わせると相手が特定できてしまう場合もあるため、文脈から誰のことかわかる情報も一緒に削りましょう。

主な生成AIで学習に使わせない設定の手順

学習に使わせない設定の手順

学習に使わせない設定は、生成AIの情報漏洩対策の基本です。ここでは、業務でよく使われる4つのサービスについて、入力した内容を学習に使わせない設定の手順をまとめます。手順と既定の扱いは、2026年10月時点で各社の公式ヘルプに書かれている内容です。画面の名前は変わることがあるため、設定するときは各社の公式ページもあわせて確かめてください。

サービス 個人向けプランの設定 法人向けプランの既定
ChatGPT(OpenAI) 設定 → データコントロール →「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ Business・Enterprise などは、既定で学習に使わない
Gemini(Google) Gemini アプリ アクティビティで「アクティビティの保存」をオフ Google Workspace では、許可なくドメイン外の学習に使わない
Claude(Anthropic) 設定 → プライバシー →「AIモデルの改善を支援する」をオフ Team・Enterprise(Claude for Work)と API は、既定で学習に使わない
Microsoft Copilot (本記事では職場のアカウントでの利用を扱う) プロンプト・応答・社内データは基礎となるモデルの学習に使わない

ChatGPT(OpenAI)

個人向けのプラン(無料版・Go・Plus・Pro)では、次の手順で学習をオフにします。サインインしていれば、設定はどの端末でもアカウント全体に適用されます。

端末 手順
Web アカウントメニュー →「設定」→「データコントロール」→「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにして「完了」
iOS・Android サイドバー → プロフィールアイコン →「データコントロール」→「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ

オフにしても、チャット履歴は残ります。履歴に残したくない会話は「一時チャット」を使うと、履歴に表示されず、モデルの改善にも使われません(安全上の理由で最大30日保持される場合があります)。ChatGPT Business・Enterprise などの会社で管理するワークスペースは、既定でコンテンツを学習に使わないとされています(出典:OpenAI ヘルプセンター「ChatGPT のデータ管理」、OpenAI「エンタープライズプライバシー」)。

Gemini(Google)

個人の Google アカウントで Gemini アプリを使う場合は、「Gemini アプリ アクティビティ」のページで「アクティビティの保存」をオフにします。このページでは、履歴の確認と削除、自動削除の期間の変更もできます。Google は、人間のレビュアーが会話の一部を確認することがあるとして、見られたくない機密情報は入力しないよう案内しています。オフにしても、会話は応答や保護のために72時間アカウントに保持されます(出典:Gemini アプリのプライバシー ハブ)。

会社の Google Workspace のアカウントで使う場合は、プロンプトや社内のコンテンツが、許可なくドメイン外で生成AIモデルの学習に使われることはなく、人間がレビューすることもないとされています。会話の履歴を残すかどうかと保存期間(3か月・18か月・36か月、既定は18か月)は、管理者が決められます(出典:Google Workspace 管理者ヘルプ「Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ」)。

Claude(Anthropic)

個人向けのプラン(Free・Pro・Max)では、パソコンの場合、名前のメニューから「設定」→「プライバシー」を開き、「AIモデルの改善を支援する」をオフにします。スマートフォンのアプリでも同じ順番で設定できます。オフにすると、新しいチャットは今後のモデルの学習に使われません。シークレットチャットは、この設定にかかわらず改善に使われないとされています(出典:Anthropic プライバシーセンター「モデル改善のプライバシー設定を変更するにはどうすればよいですか?」)。

Team・Enterprise(Claude for Work)や API などの商用の製品では、既定で入力と出力を学習に使わないとされています。組織のオーナーは、組織の設定の「Data and Privacy」で、メンバーが評価ボタンからフィードバックを送れないようにすることもできます(出典:Anthropic Privacy Center「Is my data used for model training?」)。

Microsoft Copilot

職場のアカウントで使う Microsoft Copilot(旧称 Microsoft 365 Copilot)は、プロンプトや応答、Microsoft Graph を通じて読む社内のデータを、基礎となる大規模言語モデルの学習に使わないとされています。設定で学習を止める必要はありませんが、Copilot は使う人が閲覧できる社内のデータをもとに答えるため、SharePoint などの共有の権限を正しく設定しておくことが大切だと案内されています(出典:Microsoft Learn「Microsoft Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」)。個人の Microsoft アカウントで使う Copilot は扱いが異なるため、業務では職場のアカウントに限ると決めておくと安心です。

設定だけでは防げないこと

学習をオフにしても、情報漏洩につながる次の3つは残ります。社内ルールと教育の対策で補いましょう。

残ること 内容 補い方
評価ボタンからのフィードバック OpenAI と Anthropic は、回答に「いいね」「よくないね」などの評価を送ると、その会話全体が学習に使われることがあると案内している(Anthropic は最大5年保存) 業務の会話では評価ボタンを押さない。法人プランでは管理者が止められるか確かめる
サービス側での保存 学習に使わなくても、履歴は一定の期間サービス側に残る 保存期間を確かめ、残って困る情報は入力しない
設定の戻し忘れ・個人任せ 個人向けプランは社員が自分で設定するため、会社から確かめられない 業務では会社が管理する法人プランを使う

個人の設定に頼るのではなく、会社が管理できる法人プランに業務の利用を集めることが、いちばん確実な対策です。

法人プランを選ぶときに確かめる項目

法人プランで確かめる項目

法人プランは、情報漏洩の対策として、学習に使わない扱いが既定になっているだけでなく、会社がアカウントや設定、履歴を管理できる点に価値があります。どのサービスを選ぶにしても、契約の前に同じ項目を確かめておくと比べやすくなります。

個人向けと法人向けの違い

観点 個人向けプラン 法人向けプラン
学習への利用 初期設定では使われることがあり、本人がオフにする 既定で使わないとしているサービスが多い
アカウント 社員が個人で作る。退職後も本人の手元に残る 会社が発行・停止できる。シングルサインオンに対応するものもある
設定の管理 社員ごとにばらばら 管理者が組織全体に適用できる
履歴・保存期間 本人しか見られない 管理者が保存期間を決められるものがある
利用状況 会社からは見えない 管理画面で利用者や利用の推移を確かめられるものが多い

契約前に確かめる8項目

次の8項目を、各社の公式の説明や利用規約、契約書で確かめます。営業担当の口頭の説明だけで済ませず、書かれている場所を控えておきましょう。

項目 確かめること
1 学習への利用 入力と出力を学習に使わないことが、規約や公式の説明に書かれているか
2 保存期間 会話やファイルがどれだけ保存されるか、管理者が期間を決められるか
3 アカウント管理 会社がアカウントを発行・停止できるか、シングルサインオンや多要素認証に対応しているか
4 管理者の設定 連携機能や外部のツール、評価ボタンなどを管理者が止められるか
5 利用状況とログ 誰がどれだけ使っているかを管理画面で確かめられるか
6 データの置き場所 データがどの国・地域で保存・処理されるか
7 第三者の認証 セキュリティの第三者認証や監査報告書を公開しているか
8 事故のときの連絡 情報漏洩などがあったとき、いつ・どのように知らせるか

APIで組み込むときの注意

OpenAI や Anthropic は、API で送ったデータも既定で学習に使わないとしています。ただし、API で自社の業務システムにAIを組み込む場合は、どの社内データをAIに渡すか、誰がその回答を見られるかを、自社の設計で決めることになります。開発を外部に頼むときも、上の8項目に加えて、渡すデータの範囲とログの扱いを決めておきましょう。

生成AIの社内ルールのひな形

生成AIの社内ルールのひな形

ここでは、中小企業がそのまま使える生成AIの社内ルール(利用規程)のひな形を紹介します。情報漏洩を防ぐための決まりと、使ってよい範囲を1つにまとめています。〔 〕の部分を自社に合わせて書き換えてください。禁止事項だけを並べず、使ってよい範囲と相談先を先に示すと、ルールが守られやすくなります。

そのまま使える生成AI利用規程のひな形

条 条文
第1条(目的) この規程は、当社の役員・従業員(派遣社員・業務委託先を含む。以下「従業員等」)が業務で生成AIを使うときの決まりを定め、業務の効率を高めつつ、情報漏洩や権利の侵害を防ぐことを目的とする。
第2条(対象) この規程は、文章・画像・音声・プログラムなどを作る生成AIを、業務のために使う場合に適用する。私物の端末や個人のアカウントから業務の情報を扱う場合も含む。
第3条(使ってよいサービス) 業務で使ってよい生成AIは、会社が契約し、〔情報システム担当〕が別表1に載せたサービスに限る。別表1にないサービスを使いたいときは、〔情報システム担当〕に申請し、許可を受ける。
第4条(アカウント) 業務では会社が発行したアカウントを使う。個人で作ったアカウントで業務の情報を扱ってはならない。アカウントの共有、パスワードの使い回しは禁止し、多要素認証を設定する。
第5条(入力してよい情報) 生成AIに入力してよい情報は、別表2の区分に従う。極秘情報・特別な個人情報、パスワードやAPIキーなどの認証情報は、どのサービスにも入力してはならない。区分に迷うときは、1つ上の区分として扱い、〔所属部署の責任者〕に相談する。
第6条(個人情報) 個人情報を含む情報を入力するときは、その個人情報の利用目的の範囲内であることを確かめる。個人データは、学習に使わないことを確かめたサービスにだけ入力できる。
第7条(設定) 〔情報システム担当〕は、使ってよいサービスごとに、学習への利用、履歴の保存期間、連携機能などの設定を決め、従業員等に周知する。従業員等は、決められた設定を変えてはならない。
第8条(出力の確認) 生成AIの出力は、事実・数字・出典を人が確かめてから使う。社外に出す文書は、〔作成者の上長〕が内容を確認する。
第9条(権利への配慮) 他人の著作物や商標、人物の写真などを生成AIで加工・模倣して使ってはならない。出力が既存の作品に似ていると気づいたときは使わない。
第10条(連携機能・拡張機能) 生成AIとメール・ストレージ・社内システムをつなぐ機能、ブラウザの拡張機能は、〔情報システム担当〕が許可したものに限って使う。
第11条(事故の報告) 入力してはならない情報を入力した、アカウントに心当たりのないログインがあったなど、情報漏洩のおそれに気づいた従業員等は、すぐに〔報告先〕に報告する。報告した本人を、報告したことを理由に不利に扱わない。
第12条(教育) 会社は、生成AIを使う従業員等に、この規程と使い方の研修を行う。研修を受けた者にアカウントを発行する。
第13条(見直し) 〔情報システム担当〕は、この規程と別表を〔3か月〕ごとに見直し、変更したときは従業員等に周知する。

別表1には、使ってよいサービスの名前・プラン・使える人・設定の内容を、別表2には「社内の情報を4つの区分に分ける」の表を自社に合わせて載せます。条文は規程の本体、別表はよく変わる部分、と分けておくと、ツールが増えても規程を作り直さずに済みます。

自社に合わせて直すところ

ひな形をそのまま配る前に、次の点を自社の事情に合わせて決めておきましょう。

決めること 決め方の目安
担当と報告先 専任がいなければ、総務や情報システムの兼務でよい。報告先は、休日でも連絡がつく人を2人決める
使ってよいサービス 最初は1〜2つに絞る。社員が使いたいサービスを聞いてから選ぶと、シャドーAIを減らせる
情報の区分の例 自社でよく扱う書類の名前(見積書・図面・カルテなど)を例に書く
取引先との約束 秘密保持契約で、預かった情報を外部のサービスに入れることを制限していないか確かめる
就業規則とのつながり 違反したときの扱いは、就業規則の情報管理の規定に合わせる

取引先から預かった情報は、自社の情報よりも厳しく扱う必要があります。秘密保持契約の範囲を確かめずに、預かった資料をAIに入力しないことを、規程とは別に強く伝えておきましょう。

公的なガイドラインの使い方

総務省と経済産業省がまとめた「AI事業者ガイドライン」は、2026年3月31日に第1.2版が公表されました。AIを業務で使う事業者が気をつける点が整理されており、チェックリストとワークシート(別添7)も公開されています。社内ルールを作ったあと、抜けがないかを確かめるときに役立ちます(出典:総務省「AI事業者ガイドライン」掲載ページ)。

AIを組み込んだシステムを自社で作る、または開発を頼む場合は、総務省が2026年3月に公表した「AIのセキュリティ確保のための技術的対策に係るガイドライン」も参考になります。AIに不正な出力をさせたり、AIを使ったシステムを止めたりする攻撃への技術的な対策がまとめられています(出典:総務省 報道資料(令和8年3月27日))。

社員教育と周知の進め方

社員教育と周知の進め方

ルールを配っただけでは、現場の判断は変わらず、情報漏洩も減りません。生成AIの情報漏洩対策としての教育は、使い方の研修とセットにし、役割ごとに必要なことを短く伝えるのが効果的です。

役割ごとに教える内容

対象 教える内容 時間の目安
全社員 使ってよいサービス、入力してよい情報の区分、伏せ字の方法、事故の報告先 30分〜1時間
部署の責任者 区分に迷う情報の判断、部下からの相談への答え方、社外に出す文書の確認 1時間
情報システム担当 法人プランの管理画面、設定の変更、利用状況の確認、事故のときの手順 2〜3時間
経営層 リスクと対策の全体像、取引先との約束、事故のときの判断と公表 30分

全社員向けの研修では、IPA の「AI利用者のためのセキュリティ豆知識」のような公的な教材を使うと、準備の手間を減らせます。社員向けの生成AI研修の組み立て方は 生成AI研修(企業向け) で解説しています。

ルールを形だけにしない工夫

ルールが守られなくなる一番の理由は、「どうすればよいか」を聞ける場所がないことです。社内チャットに相談の窓口を作り、よくある質問を3か月ごとにルールの別表へ足していきましょう。研修を受けた人にだけアカウントを発行すると、受講の漏れも防げます。迷ったときに入力をやめて相談した社員を、きちんと評価することも大切です。

仕組みで防ぐ技術的な対策

仕組みで防ぐ技術的な対策

ルールと教育に加えて、人のうっかりによる情報漏洩を仕組みで受け止める対策も用意しておきます。大がかりな製品を入れる前に、法人プランの管理機能と、今あるアカウントの管理で始められることから進めましょう。

アカウントを会社で管理する

業務で使う生成AIのアカウントは、会社のメールアドレスで発行し、可能ならシングルサインオン(社内のIDでまとめてログインする仕組み)につなぎます。多要素認証を必須にし、退職や異動のときに当日中に止められるようにしておきます。アカウントを会社で管理すれば、乗っ取りによる情報漏洩と、退職者の手元に履歴が残る問題の両方への対策になります。

利用状況のログと入力の監視

法人プランの多くは、管理画面で利用者や利用の推移を確かめられます。月に1回は、使っていないアカウントの停止と、利用の多い部署への聞き取りを行いましょう。顧客情報を多く扱う会社では、入力の中身を検知して止めるDLP(情報漏洩対策)の機能や製品も選択肢になります。Google Workspace のように、AIの出力に既存のDLPの設定が適用されるサービスもあります。

社内データを読むAIは閲覧権限を先に見直す

Microsoft Copilot や Gemini in Workspace のように社内のファイルを読むAIを入れる前に、共有フォルダの閲覧権限を見直します。「全社員が閲覧できる」設定のまま置かれた人事・給与・契約の資料がないかを確かめ、必要な人だけが見られるように直しておきましょう。社内データを読むAIは、権限の設定どおりに働くため、権限の設定の抜けがそのまま情報漏洩につながります。

自社でAIを組み込むときの備え

社内の資料を検索して答えるAIや、問い合わせに答えるAIを自社で作る場合は、プロンプトインジェクションへの備えが必要です。AIに渡すデータを利用者の権限で絞る、AIが外部に送信できる先を限る、重要な操作の前に人が確かめる、利用のログを残す、といった設計を、開発の最初の段階で決めておきます。業務システムへのAIの組み込みを外部に頼む場合は、こうした設計を見積もりの段階で確かめましょう。

導入前に確かめる生成AIのセキュリティ確認項目

導入前の確認項目

ここまでの情報漏洩対策を、導入の前に確かめる項目の表にまとめました。担当を決めて、1つずつ「済」「未」を付けてください。

確認項目の表

分野 確認項目 担当の例
方針 生成AIを使う目的と、対象の業務が決まっている 経営層
方針 生成AIの担当者と、事故のときの報告先が決まっている 経営層
サービス 使ってよいサービスとプランを決め、一覧(別表1)にした 情報システム担当
サービス 学習に使わない扱いを、公式の説明や規約で確かめ、書かれている場所を控えた 情報システム担当
サービス 履歴の保存期間と、管理者が変えられる設定を確かめた 情報システム担当
情報 入力してよい情報の区分(別表2)を決め、自社の書類の例を書いた 各部署の責任者
情報 個人情報の利用目的と、取引先との秘密保持契約の範囲を確かめた 総務・法務
アカウント 会社のアカウントで発行し、多要素認証を必須にした 情報システム担当
アカウント 退職・異動のときにアカウントを止める手順がある 総務
設定 連携機能・拡張機能・評価ボタンの扱いを決めた 情報システム担当
設定 社内データを読むAIの場合、共有フォルダの閲覧権限を見直した 情報システム担当
ルール 社内ルール(利用規程)を作り、全社員に周知した 総務
教育 研修を受けた人にだけアカウントを発行する流れにした 総務
運用 利用状況を月に1回、ルールを3か月に1回見直す予定を入れた 情報システム担当
事故 情報漏洩が疑われるときの初動の手順を決めた 経営層・総務

結果の読み方

15項目のうち、「サービス」「情報」「アカウント」の7項目は、導入の前に必ず済ませておきたい項目です。ここに「未」があるまま全社に広げると、社員ごとに使い方がばらばらになり、あとから直すのに手間がかかります。それ以外の項目は、試しに使う部署を1つに絞って始め、全社に広げるまでに済ませる形でもかまいません。

情報漏洩が疑われるときの初動

情報漏洩が疑われるときの初動

入力してはいけない情報を入力してしまった、アカウントに心当たりのないログインがあった。そんなときに慌てないよう、情報漏洩が疑われるときの初動の順番を決めておきましょう。

01

すぐに報告する

気づいた社員は、自分で何とかしようとせず、決められた報告先にすぐ伝えます。いつ・どのサービスに・何を入力したか(またはどんな異常があったか)をメモしておきます。

02

広がりを止める

アカウントの乗っ取りが疑われる場合は、パスワードの変更とほかの端末からのログアウト、アカウントの一時停止を行います。共有リンクを作っていた場合は無効にします。

03

何が出たかを確かめる

入力した内容、使ったサービスとプラン、学習の設定、履歴の保存期間を確かめます。会話の削除は、記録を残してから行います。

04

報告や連絡が必要かを判断する

個人データや取引先から預かった情報が含まれる場合は、個人情報保護委員会への報告や、本人・取引先への連絡が必要かを判断します。

05

ルールと設定を直す

なぜ起きたかを確かめ、区分の例、設定、研修の内容を直します。同じことが起きないよう、社内にも共有します。

個人情報保護委員会への報告が必要な場合

個人情報保護委員会は、次のいずれかに当たる個人データの漏えい等(またはそのおそれ)について、報告を義務付けています。

報告が必要な場合 例
要配慮個人情報が含まれる 病歴、健康診断の結果などを含む個人データ
不正に使われると財産的な被害が出るおそれがある クレジットカード番号、送金や決済ができるサービスのIDとパスワード
不正な目的で行われたおそれがある 不正アクセスによる流出、従業員による持ち出し
本人の数が1,000人を超える 1,000人を超える顧客の個人データ

出典:個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」(民間事業者向けの要件をもとに作成)

報告は、発覚したらまず速やかに行うこととされ、不正な目的で行われたおそれがある場合は発覚日から60日以内が期限です。生成AIへの入力がどの場合に当たるかは状況によって変わるため、個人データが含まれていたときは、自社だけで判断せず、委員会の案内や専門家に確かめることが大切です。

中小企業が生成AIの情報漏洩対策を進める順番

情報漏洩対策を進める順番

人手の限られた中小企業では、生成AIの情報漏洩対策をすべて一度に整えるのは現実的ではありません。次の順番で、2〜3か月かけて整えていくのがおすすめです。

01

今の使われ方を聞く(1〜2週間)

社員に、どの生成AIを、どの業務で、どのアカウントで使っているかを聞きます。責めずに聞くことで、シャドーAIの実態がわかります。

02

使ってよいサービスを1つ決めて契約する(2〜4週間)

社員がすでに使っているサービスを中心に、法人プランで確かめる8項目を見て選びます。会社のアカウントを発行し、学習・保存・連携の設定を決めます。

03

ルールと研修をセットで始める(2〜4週間)

ひな形をもとに社内ルールを作り、30分〜1時間の研修のあとにアカウントを配ります。最初は1つの部署から始めてもかまいません。

04

毎月確かめ、3か月ごとに見直す

利用状況と相談の内容を毎月確かめ、3か月ごとにルールと区分の例を見直します。使われ方が見えてきたら、対象の部署と業務を広げます。

セキュリティの対策は、生成AIの導入と切り離さずに進めるのが近道です。安全に使える公式の環境が社内にあることが、シャドーAIを減らすいちばんの対策になります。AI導入の全体の進め方は 中小企業のAI導入ガイド、導入したAIを社内で使い続けてもらう方法は AI導入後の運用定着ガイド で詳しく解説しています。

社内で進めるか外部に頼むか

社内で進めるか外部に頼むか

使ってよいサービスを1つに絞り、ひな形のルールを使うのであれば、社内だけでも十分に始められます。一方で、情報漏洩の対策を任せられる担当を社内に置けない場合や、業務のシステムにAIを組み込みたい場合は、外部の支援を使うと早く安全な形を整えられます。支援会社の選び方は AI導入支援とは?おすすめ会社の比較と選び方 で詳しく解説しています。

PR|AIBUILDERZ AI導入支援サービス

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AIBUILDERZ|AI導入支援サービス

システム構築は成果報酬型。AI研修から導入・構築・定着まで一気通貫で支援

AIBUILDERZ

AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、一気通貫で支援するサービスです。業務アプリの構築費は事前にいただかず、実際に稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。成果報酬型での対応は、当社が小規模と定義するシステムが対象です。

  • 業種・規模を問わず支援どの業務からAIやシステムに置き換えるかを一緒に決め、効果の大きい業務から順に進めます。
  • システム構築は成果報酬型業務アプリの構築費は事前にいただきません。稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。
  • AI導入の効果を可視化置き換える業務を一覧にし、導入前後の時間から、空いた時間とかからなくなった費用を毎月記録します。
  • 小さく始めて、リスクを管理影響の小さい業務から始め、AIの実行結果は担当者が確認・承認してから反映します。

外部に相談するとよい場面

場面 外部に頼めること
社内に担当を置けない サービスの選定と設定、ルールづくり、研修をまとめて進める
顧客情報や図面など、扱う情報が重い 情報の区分と使える範囲の線引き、伏せ字の手順づくり
社内データを読むAIや、業務システムへの組み込みを考えている 閲覧権限の見直し、データの渡し方とログの設計、構築と保守
ルールを作ったが使われていない 使いどころの整理、相談の窓口、定例での見直し

相談する前に、社員が今使っている生成AIと業務、扱う情報の種類を書き出しておくと、話が早く進みます。支援が終わったあとも自社で回せるよう、ルールや設定の記録が手元に残るかも確かめておきましょう。

生成AIの情報漏洩対策に関するよくある質問

情報漏洩対策に関するよくある質問
Q. 無料版の生成AIを業務で使ってもよいですか?
公開情報だけを扱うのであれば使える場合もありますが、業務での利用は会社が管理する法人プランに集めるのがおすすめです。無料版は学習の設定やアカウントの管理が社員任せになり、会社から確かめられません。使う場合も、学習に使わせない設定をオンにし、社内情報は入力しないと決めておきましょう。
Q. 学習をオフにすれば、何を入力しても安全ですか?
安全とはいえません。学習に使われなくても、会話の履歴は一定の期間サービス側に保存されます。また、評価ボタンでフィードバックを送ると、その会話が学習に使われることがあります。極秘情報や認証情報は、設定にかかわらず入力しないことが大切です。
Q. 生成AIの利用を全面的に禁止したほうが安全ですか?
禁止しても、社員が個人のスマートフォンや無料版で使い続けると、会社から見えないシャドーAIが増えるだけになりがちです。使ってよいサービスと入力してよい情報を決め、安全に使える環境を用意するほうが、結果として情報漏洩を防げます。
Q. 社内ルールは誰が作ればよいですか?
中小企業では、総務や情報システムの担当者が、本記事のひな形をもとにたたき台を作り、経営層が決める形が現実的です。情報の区分の例は、各部署の責任者に書いてもらうと、現場で迷わないルールになります。
Q. 顧客の個人情報を生成AIで扱ってもよいですか?
利用目的の範囲内であり、学習に使わないことを確かめた法人プランであれば、扱える場合があります。個人情報保護委員会は、本人の同意なく個人データを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われる場合は法律に違反する可能性があるとして、機械学習に使われないことを十分に確認するよう求めています。病歴などの要配慮個人情報は、入力しないと決めておくのが安全です。
Q. 取引先から預かった資料を生成AIに入力してもよいですか?
まず、取引先との秘密保持契約で、外部のサービスに情報を渡すことが制限されていないかを確かめてください。制限がある場合や判断がつかない場合は、取引先の了承を得るまで入力しないのが安全です。
Q. 情報漏洩対策のために、専用の製品を入れる必要がありますか?
まずは法人プランの管理機能、会社でのアカウント管理、社内ルールと研修で始めれば十分な会社も多くあります。顧客情報を大量に扱う、社員が多く利用状況を人の目で追えないといった場合に、入力の監視やDLPの製品を検討しましょう。
Q. 社内ルールはどのくらいの頻度で見直せばよいですか?
3か月に1回を目安に見直しましょう。生成AIのサービスは機能や設定の画面がよく変わります。社員から寄せられた質問と、各社の公式ヘルプの更新をもとに、使ってよいサービスの一覧と情報の区分の例を中心に直していくと、規程の本体を何度も作り直さずに済みます。

まとめ

まとめ

生成AIの情報漏洩は、AIを禁止しても防げません。入力する情報の線引き、会社が管理できる環境、ルールと教育をそろえることで、安全に使いながら業務の効率を高められます。最後に、本記事のポイントを振り返ります。

01
生成AIの情報漏洩は、学習への利用、履歴の保存、社員の入力、シャドーAI、アカウントの乗っ取り、社内データの権限の6つから起こる
02
社内の情報を4つの区分に分け、区分ごとに使ってよいサービスを決める。迷ったら1つ上の区分として扱う
03
ChatGPT・Gemini・Claude は個人向けでも学習をオフにでき、法人プランは既定で学習に使わない。ただし保存や評価ボタンは別に考える
04
社内ルールは、使ってよい範囲と相談先を先に示し、よく変わる部分は別表に分けて3か月ごとに見直す
05
導入前の確認項目で抜けを確かめ、情報漏洩が疑われるときの初動と報告の判断を決めておく

生成AIの導入の進め方は 中小企業のAI導入ガイド、導入後の定着は AI導入後の運用定着ガイド、相談先の選び方は AI導入支援とは?おすすめ会社の比較と選び方 もあわせてご覧ください。