従業員17名のうち、半数以上が65歳を超える岐阜県の金属加工工場。この工場が、ChatGPT や Claude Code を使って、製品の傷を見つけるアプリや多言語の作業マニュアルを自分たちで作っています。AIの活用は、大手メーカーだけのものではなくなりました。経済産業省などの「2026年版ものづくり白書」では、製造事業者の70.9%が事業に影響する変化として「人材・労働力不足」を挙げ、将来の技能の継承に不安がある企業は85.5%にのぼります(出典:経済産業省ほか『2026年版ものづくり白書』)。
そこで本記事では、製造業のAI活用事例を20件、品質検査・技能伝承・設備保全と設計・事務の4つの業務に分けて紹介します。すべて2024年10月以降に各社や官公庁が公表した事例で、会社の規模・使ったAI・効果の数字・出典をそろえて載せました。中小企業の事例から見える始め方、費用と期間の目安、導入の進め方もあわせてまとめています。
この記事でわかること
- 業務別の製造業のAI事例がわかる
- 中小企業の始め方がわかる
- 費用と期間の目安がわかる

この記事の監修者
AIBUILDERZ編集部
AI導入支援サービス「AIBUILDERZ」を運営するチームです。AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、企業のAI導入を一気通貫で支援しています。
製造業のAI活用事例 一覧
本記事で紹介する20件を、1つの表にまとめました。会社名を押すと、それぞれの事例の説明に移ります。規模の欄は、出典に従業員数などが書かれているものだけを載せています。
| 会社 | 規模 | 業務 | AI | 効果 | 発表 |
|---|---|---|---|---|---|
| サイベックコーポレーション | 中小(84名) | 外観検査 | 画像認識 | 数値の公表なし | 2025年9月 |
| 樋口電子 | 中小(20名ほど) | 外観検査 | 画像認識 | 数値の公表なし | 2026年1月 |
| 豊田自動織機 | 大企業 | 品質の分析 | 機械学習 | 欠陥を約25%削減 | 2026年6月 |
| 東洋鋼鈑 | 公表なし | 外観検査 | 画像認識 | 試験運用の段階 | 2026年1月 |
| 日本精工(NSK) | 大企業 | 品質トラブルの参照 | 生成AI | 要約が約30秒で出る設計 | 2025年6月 |
| 日立製作所 | 大企業 | 品質保証 | 生成AI・AIエージェント | 原因の分析 16時間→3時間 | 2026年6月 |
| 田中工業 | 中小(17名) | 検査・マニュアル・受注管理 | 生成AI | 数値の公表なし | 2026年6月 |
| HIGUCHI | 中小 | 技術の伝承 | AI | 数値の公表なし | 2026年3月 |
| 黒田製作所 | 中小(150名) | 工程の管理 | 生成AI | 取り組みの途中 | 2026年5月 |
| 旭鉄工 | 中堅(425名) | 生産ラインの改善 | 生成AI | 数値の公表なし | 2026年8月 |
| スズキ | 大企業 | 作業の解析 | 動画解析AI | 数値の公表なし | 2025年12月 |
| ダイキン工業 | 大企業 | 設備保全 | 生成AI・AIエージェント | 10秒以内・精度90%以上 | 2025年4月 |
| パナソニック コネクト | 大企業 | 図面の照合 | 生成AI・AIエージェント | 50〜340分→10分 | 2026年2月 |
| 旭化成 | 大企業 | 研究開発・危険予知 | 生成AI | 月2,157時間を削減 | 2024年12月 |
| 鬼怒川ゴム工業 | 公表なし | 帳票の入力・マニュアル | AI-OCR | 工数を約75%削減 | 2025年6月 |
| フクシマガリレイ | 公表なし | 議事録 | 生成AI | 社員の7割が役立つと回答 | 2026年1月 |
| エナジーウィズ | 中堅(1,028名) | 知財・文書 | 生成AI | 月1,600時間を削減 | 2025年8月 |
| マブチモーター | 大企業 | 間接業務 | 生成AI | 3カ月で9,500時間以上 | 2025年1月 |
| AGC | 大企業 | 全社の業務 | 生成AI | 年11万時間以上(見積もり) | 2025年3月 |
| パナソニック コネクト | 大企業 | 全社の業務 | 生成AI | 年78.8万時間を削減 | 2026年7月 |
製造業でAIが求められる背景
製造業でAIの活用が広がっている背景には、現場の人手と技能をめぐる3つの事情があります。
若い働き手が減っている
製造業で働く人は、2002年の1,202万人から、2025年には1,033万人に減りました。34歳以下の割合は31.4%から25.0%に下がっています。中小の製造業では、従業員が「足りない」と感じる会社が「多すぎる」と感じる会社を大きく上回る状態が続いています(出典:『2026年版ものづくり白書』概要)。
同じ白書の調査では、製造事業者の70.9%が、事業に影響する変化として「人材・労働力不足」を挙げました。人を増やして解決するのが難しいからこそ、今いる人の時間をAIで空ける考え方が広がっています。
技能の継承がうまくいっていない
自社の技能の継承が「うまくいっている」「ややうまくいっている」と答えた企業は、合わせて33.3%にとどまります。将来の技能の継承に不安がある企業は85.5%で、不安の中身として最も多いのは「熟練技能者の高齢化・退職」(63.0%)でした(出典:『2026年版ものづくり白書』第1部第2章第3節(労働政策研究・研修機構の調査))。
技能の継承にデジタル技術を使っている企業のうち、AIを使っているのは35.1%で、従業員300人以上の企業では65.6%に上がります。
中小の製造業のAI活用は、まだ2割台
「2026年版中小企業白書」によると、2019年以降に売上を伸ばす目的でAIの活用に取り組んだ中小の製造業は21.6%、省力化の投資の一環としてAIの活用に取り組んだ会社は24.9%でした(出典:中小企業庁『2026年版中小企業白書』)。
言いかえれば、中小の製造業の多くは、まだAIを使い始めていません。同じ規模の会社がどの業務から始めたのかを知ることが、最初の一歩を決める近道になります。
製造業でAIができること
今回の20件を見ると、製造業でのAIの使い道は、大きく5つに分けられます。
外観検査・品質管理
カメラで撮った製品の画像から、傷や不良をAIが見分けます。最近は、良品の画像だけで学習できる製品や、検査機が拾った欠点を「問題あり・なし」に仕分ける使い方も出てきました。工程のデータを分析して、不良が出る原因を絞り込む使い方もあります。
技能の伝承・社内の知識の検索
過去のトラブルの記録や作業のマニュアル、ベテランのノウハウを生成AIに読み込ませ、若手が質問すれば答えが返ってくる仕組みです。作業の動画をAIで解析し、熟練者と若手の動きの違いを見つける使い方もあります。人がいなくなる前に、知識を引き出せる形で残しておくことが、技能の伝承でAIを使う目的です。
設備保全・故障の診断
設備の不具合の内容から、考えられる原因と対策をAIが示します。熟練の保全担当者が少ない工場や海外の拠点でも、同じ水準の対応がしやすくなります。
設計・研究開発
図面と仕様書を見比べて食い違いを探したり、素材の新しい用途の候補を洗い出したりします。人が目で確かめていた照合の作業は、AIで時間を大きく縮めやすい業務の1つです。
事務・全社の業務
議事録づくり、翻訳、文書の要約、帳票の読み取りと入力など、工場の外の業務です。生成AIのツールを全社員に配る使い方が中心で、製造業でも削減した時間を数字で公表する会社が増えています。
品質検査・品質保証のAI活用事例
外観検査や品質の分析、品質トラブルの記録の活用など、品質にかかわる事例です。
サイベックコーポレーション|社員84名のプレス部品メーカーが、1日約15,000個の目視検査にAIを足す
| 会社 | 株式会社サイベックコーポレーション(長野県) |
|---|---|
| 規模 | 84名 |
| 業務 | プレス加工品の全数検査 |
| AIの種類・ツール | 画像認識(AdaInspector Cloud/アダコテック) |
| 効果 | 数値の公表なし |
| 発表 | 2025年9月 |
| 出典 | アダコテック 導入事例 |
金型の設計からプレス加工までを一貫して手がけ、主に自動車向けの超精密部品をつくるサイベックコーポレーション。全数検査では、検査員1人が1日に約15,000個を目で見ており、大きな負担になっていました。
同社は、正常な製品の画像を学習させる外観検査AI「AdaInspector Cloud」を入れました。これまでのルールベースの検査をやめるのではなく、両方を組み合わせて動かしています。
公開されている範囲では効果の数字は出ていませんが、1人の目に頼っていた全数検査に、AIという2つ目の目が加わりました。
今ある検査の仕組みを置き換えるのではなく、横に並べて使い始めると、現場の不安を抑えながら試せます。
樋口電子|社員20名ほどの基板メーカーが、記録の残らない目視検査にAIを足す
| 会社 | 株式会社樋口電子 |
|---|---|
| 規模 | 20名ほど |
| 業務 | 基板の検査(はんだの不良、部品の極性・向き・位置) |
| AIの種類・ツール | 画像認識(POKAMIRU/アダコテック) |
| 効果 | 数値の公表なし |
| 発表 | 2026年1月 |
| 出典 | アダコテック 導入事例 |
月に200機種を扱う少量多品種の現場で、目視の検査では記録が残りませんでした。AIの製品の多くは学習に百枚程度の画像が必要で、導入費用も数百万円クラスと、小さな会社には重い条件でした。
選んだのは、良品1枚から学習できる目視検査の補助AI「POKAMIRU」です。修正検査と最終検査のあいだに置き、社員もパートも全員で使っています。2026年7月の続報では、マスキングの工程の検査や、はんだ付けのあとの写真による記録にも使い道を広げたとしています。
公開されている範囲で効果の数字は出ていませんが、記録が残らなかった検査を、写真で履歴を追える形に変え始めています。
少量多品種の現場では、性能より先に、学習に必要な画像の枚数と導入費用を確かめると候補を絞りやすくなります。
豊田自動織機|塗装工程の約400の変数をAIで分析し、欠陥の原因を1日以内に絞り込む
| 会社 | 株式会社豊田自動織機 |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 自動車用バンパーの塗装工程の品質 |
| AIの種類・ツール | 機械学習(Microsoft Azure、Sight Machine) |
| 効果 | 粒子による欠陥を約25%削減。日々の打ち合わせの準備時間を80%短縮 |
| 発表 | 2026年6月 |
| 出典 | Microsoft News Center |
塗装工程の品質は、目視の検査と熟練者の経験に頼っていました。その熟練者が減り、原因の分析は手作業で数週間かかっていました。
長草工場では、Azure の上に工場のデータを集める基盤をつくり、AIと機械学習で約400の変数を分析して、欠陥につながる要因を絞り込みました。製造と生産技術のチームが、同じダッシュボードで同じデータを見られるようにしたことも特徴です。
温度を安定させたことで、粒子による欠陥は約25%減りました。日々の打ち合わせの準備時間は80%短くなり、数週間かかっていた分析が1日以内でできるようになっています。
部署ごとに別の資料を見ていると原因の議論が長引くため、同じデータを同じ画面で見る場をつくることが近道です。
東洋鋼鈑|検査機が拾う「欠点」の仕分けをAIに任せ、人による判断のばらつきを減らす
| 会社 | 東洋鋼鈑株式会社 |
|---|---|
| 規模 | 化成品事業全体で180名超 |
| 業務 | 光学フィルムの外観検査 |
| AIの種類・ツール | 画像認識(Shiwaketter/アダコテック) |
| 効果 | 数値の公表なし(試験運用の段階) |
| 発表 | 2026年1月 |
| 出典 | アダコテック 導入事例 |
ディスプレイ用の光学フィルムでは、自動の表面検査機が拾う欠点が増えていました。そのうち本当に問題になるものを人が見分ける作業は負担が大きく、判断が人によってばらつくことで、余分なロスと工数が出ていました。
同社は、検査機が撮った欠陥の画像を、有害なものと無害なものに仕分けるAI「Shiwaketter」を試しています。数千点の画像で仕分けられるかを確かめたうえで、試験運用に進みました。
品質の担当者と同じ基準で仕分けられ、人が見る欠点の数が大きく減ることが見えてきています。
検査機を入れたあとに「拾いすぎ」が課題になったら、見つけるためではなく、仕分けるためにAIを使う方法があります。
日本精工(NSK)|約4,000件の品質トラブルの記録を、生成AIで要約して引けるようにする
| 会社 | 日本精工株式会社(東京都) |
|---|---|
| 規模 | 国内の約5,000名以上の社員が利用の対象 |
| 業務 | 品質(過去の品質トラブルの参照) |
| AIの種類・ツール | 生成AI(自社で開発した品質トラブル参照アプリケーション) |
| 効果 | 要約が約30秒で出るように設計 |
| 発表 | 2025年6月 |
| 出典 | NSK ニュースリリース |
過去の品質トラブル約4,000件は、データベースやレポートの形で管理していました。ただ、何が原因で何が起きたのかという因果関係を読み解くのは簡単ではありませんでした。
同社は、品質トラブルの情報を見える形にし、生成AIで要約するアプリを自社で開発しました。2024年10月に技術の検証を始め、約半年後の2025年6月には本運用に移っています。
要約は約30秒で出るように作られ、国内の約5,000名以上の社員が使える状態になりました。
検証の期間を半年などと先に区切って始めると、試したまま判断が先延ばしになるのを防げます。
日立製作所|熟練者の探し方をAIに組み込み、品質トラブルの原因分析を16時間から3時間に
| 会社 | 株式会社日立製作所(大みか事業所/茨城県日立市) |
|---|---|
| 規模 | 連結で約29万人 |
| 業務 | 品質保証(過去の事例の検索、対応レポートの作成、原因の分析) |
| AIの種類・ツール | 生成AI・AIエージェント(品質ナレッジシステム) |
| 効果 | 事例の検索 60分→5分、対応レポートの作成 120分→15分、原因の分析 16時間→3時間(大みか事業所での先行導入) |
| 発表 | 2026年6月 |
| 出典 | 日立製作所 ニュースリリース(2026年6月) 日立製作所 ニュースリリース(2025年6月) |
社会インフラ向けの制御システムをつくる大みか事業所では、トラブルの問い合わせに答えるとき、膨大な資料と過去の事例から必要な情報を探す熟練者の勘に頼っていました。若手がすぐに対応するのは難しい状況でした。
日立は熟練者に、どんな順番で、どんな言葉で情報を探しているのかを聞き取り、生成AIへの指示に落とし込みました。2024年10月から鉄道システムの分野で実証したあと、100件以上の業務の知見を組み込んだAIエージェントとして事業所に先行導入しています。
先行導入では、過去の事例の検索が1件あたり60分から5分に、対応レポートの作成が120分から15分に、不具合の原因の分析が16時間から3時間に縮みました。
AIに覚えさせるのは資料だけではありません。熟練者がどう探し、どう判断しているのかを言葉にして組み込むと、若手でも同じ動きができるようになります。
技能伝承・現場の改善のAI活用事例
ベテランの技能やノウハウを残し、現場の作業を改善する事例です。
田中工業|従業員17名・半数以上が65歳超の金属加工工場が、検査アプリとマニュアルを自作
| 会社 | 田中工業(岐阜県) |
|---|---|
| 規模 | 17名 |
| 業務 | 傷の検査、作業マニュアル、受注から請求までの管理 |
| AIの種類・ツール | 生成AI(ChatGPT、Claude Code、Google AI Studio) |
| 効果 | 数値の公表なし |
| 発表 | 2026年6月 |
| 出典 | Seizo Trend(ビジネス+IT) |
大型の金属部品を加工する田中工業は、従業員17名のうち半数以上が65歳を超えています。技能やノウハウは人についたままで、引き継ぎが進んでいませんでした。
同社は、ChatGPT・Claude Code・Google AI Studio を使い、社内で使う道具を自分たちで作り始めました。製品の表面の傷を見つけるアプリ、作業の手順を動画にした多言語のマニュアル、受注から請求までをまとめて管理する仕組みを内製しています。
公開されている範囲で効果の数字は出ていませんが、取り組みの中には数百万円規模の費用対効果が見込めるものもあるとされています。
生成AIを使えば、小さな工場でも自社の業務に合わせた道具を自分たちで作れます。まず困っている作業を1つ選んで作ってみることが出発点です。
HIGUCHI|現場とITの両方がわかる「ブリッジエンジニア」が、熟練者の知見をAIで引き継ぐ
| 会社 | 株式会社HIGUCHI |
|---|---|
| 規模 | 公表なし(岐阜県の資料で中小のものづくり企業として紹介) |
| 業務 | 技術の伝承、社内の知識の共有 |
| AIの種類・ツール | AI(ツール名の公表なし) |
| 効果 | 数値の公表なし |
| 発表 | 2026年3月 |
| 出典 | 岐阜県 AI活用中間報告(概要版) |
少子高齢化で技術の伝承が難しくなり、ノウハウが特定の人に偏っていました。生産性や品質の改善も求められていました。
同社は、熟練者の技能や知識をAIで引き継ぐ仕組みをつくりました。推進役は、現場とITの両方に通じた「ブリッジエンジニア」です。若手や海外の拠点のエンジニアが、いつでも最新の知見を引けるようにしています。
若手の教育にかかる時間が減り、海外を含むすべての拠点で知識を共有できるようになったとされています。
現場の言葉とITの言葉を通訳できる人を1人決めておくと、AIの仕組みが現場で使われるものになります。
黒田製作所|社員150名の会社が、自社の工程管理システムの上に生成AIを載せる
| 会社 | 株式会社黒田製作所(岐阜県) |
|---|---|
| 規模 | 150名 |
| 業務 | 工程の管理、技能の伝承 |
| AIの種類・ツール | 生成AI(自社の工程管理システム「Grow」と組み合わせる。AIの製品名は公表なし) |
| 効果 | 数値の公表なし(取り組みの途中) |
| 発表 | 2026年5月 |
| 出典 | 岐阜県DX推進コンソーシアム 先進事例調査の案内 |
複雑な工程や飛び込みの依頼に対応しながら、ベテランのノウハウや暗黙知を次の世代に引き継ぐ必要がありました。
同社はまず、自社で開発した工程管理システム「Grow」で進み具合をその場で共有し、図面やマニュアルもためて、ベテランの知見を見える形にしました。そのうえで、指示書を読み取り、過去の実績から工程を自動で組む生成AIの取り組みを、産学官の連携で進めています。
取り組みはまだ途中で、効果の数字は公表されていません。
AIの前にデータをためる仕組みがあると、生成AIを載せるときに「何を読ませるか」で迷わずに済みます。
旭鉄工|従業員425名の製造業の会社が、自社のノウハウを答える「AI製造部長」をつくる
| 会社 | 旭鉄工株式会社(愛知県) |
|---|---|
| 規模 | 425名(2024年5月) |
| 業務 | 生産ラインの改善、社内のノウハウの活用 |
| AIの種類・ツール | 生成AI(自社で作った「AI製造部長」など) |
| 効果 | 数値の公表なし(AIだけの効果) |
| 発表 | 2026年8月 |
| 出典 | ビジネス+IT |
製造現場のノウハウや判断は、勘と経験に頼る部分が多く、言葉にするのが難しいものでした。
同社は、生産ライン向けの「AI製造部長」をはじめ、自社のノウハウや暗黙知をもとに答える複数のAIを自分たちでつくっています。AIの答えは人が確かめ、どこがおかしいのかを言葉にして直すことで、少しずつ完成度を上げています。
AIだけの効果を示す数字は公表されていません。
AIの誤りを人が直す作業は、それ自体がベテランの判断を言葉にする機会になります。
スズキ|作業の動画をAIで解析し、月に一度しか起きない不良の原因に迫る
| 会社 | スズキ株式会社 |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 製造現場の作業(技能の伝承、不良の対策) |
| AIの種類・ツール | 動画解析AI(Ollo Factory/Ollo) |
| 効果 | 数値の公表なし |
| 発表 | 2025年12月 |
| 出典 | スズキ ニュースリリース |
国内の工場の技術を引き継ぎ、グループ全体で作業をそろえる必要がありました。月に一度、一台だけといった頻度で起きる慢性的な不良も、根本から解決したい課題でした。
同社は、作業の動画をAIで解析する「Ollo Factory」を、2025年7月に相良工場の組立工場、12月にエンジン工場へ正式に導入しました。
効果の数字は公表されていませんが、2つの工場で正式に使い始め、ほかの国内の工場にも順に広げる計画です。
まれにしか起きない不良は、人の記憶より記録が頼りになります。作業を動画で残しておくことが、AIで原因を探す前提になります。
設備保全・設計・研究開発のAI活用事例
設備の故障の診断、図面の照合、素材の用途の探索など、保全と設計・研究開発の事例です。
ダイキン工業|日立と共同で、設備の故障原因を10秒以内に答えるAIエージェントを開発
| 会社 | ダイキン工業株式会社(日立製作所と共同で開発) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 設備保全(故障の診断) |
| AIの種類・ツール | 生成AI・AIエージェント(設備故障診断AIエージェント) |
| 効果 | 回答まで10秒以内、精度90%以上(発表時点) |
| 発表 | 2025年4月 |
| 出典 | ダイキン工業 プレスリリース |
熟練の技術者が足りず、海外の拠点が増えるなかで技術者を育てるのも難しくなっていました。保全にかかる時間は増え、品質にもばらつきが出ていました。
同社は日立製作所と共同で、生成AIと工場の運用のノウハウを組み合わせた、設備の故障を診断するAIエージェントを開発しました。堺製作所臨海工場で2025年4月から9月まで試験的に運用し、保全の技術者がタブレットで故障の原因と対策を受け取ります。
発表では、10秒以内に、90%以上の精度で答えられるとしています。試験運用のあとは、国内外の生産拠点へ広げる計画です。
保全のように時間との勝負になる業務では、精度とあわせて、答えが出るまでの速さを導入の基準に入れておくと判断しやすくなります。
パナソニック コネクト|図面と仕様書の照合を、50〜340分から10分に縮める
| 会社 | パナソニック コネクト株式会社(東京都) |
|---|---|
| 規模 | 約29,700名(グローバル) |
| 業務 | 設計(図面と設計仕様の照合) |
| AIの種類・ツール | 生成AI・AIエージェント(Snowflake の Cortex AI で内製した Manufacturing AIエージェント) |
| 効果 | 照合の作業を50〜340分から10分に短縮(80〜97%削減) |
| 発表 | 2026年2月 |
| 出典 | パナソニック ニュースルーム |
設計・開発では、複数の文書の仕様が合っているかを人が目で確かめていました。工数が大きく、見落としがあれば後の工程での手戻りや製品の回収につながるおそれもありました。PDFの図面は形がそろっておらず、自動にしにくいものでした。
同社は、PDFの図面から文字を抜き出し、材質や仕上げなどの項目をAIが照合して結果を一覧で示すAIエージェントを内製しました。まずは規格の照合と外装部品の照合の業務から、社内で使い始めています。
目で確かめると50〜340分かかっていた照合が、10分で終わるようになりました。
「見比べて確かめる」作業は、AIが得意な仕事の1つです。社内の照合の業務を洗い出すと、効果の出やすい候補が見つかります。
旭化成|素材の新しい用途探しから現場の危険予知まで、研究と製造の両方で生成AIを使う
| 会社 | 旭化成株式会社 |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 素材の用途の探索、製造現場の危険予知、書類の作成と監査 |
| AIの種類・ツール | 生成AI(Microsoft 365 Copilot、社内の生成AIの基盤、用途を抜き出す自社のAI) |
| 効果 | 6,000以上の用途の候補を抜き出し、選ぶ時間を従来の約40%に。書類の作成などで月2,157時間、書類の監査で年1,820時間を削減 |
| 発表 | 2024年12月 |
| 出典 | 旭化成 ニュース |
熟練の社員の高齢化と退職で、製造現場の技術の伝承が課題になっていました。素材の新しい用途を探す仕事も、専門家の手作業に頼っていました。
同社は、用途を自動で抜き出すAIと、そこから有望な候補を絞る生成AIを開発しました。製造現場では、過去の事例を読み込ませた生成AIで、経験の浅い人でも危険を予知できるようにしています。Microsoft 365 Copilot の個人での利用や、組織ごとに調整できる社内の生成AIの基盤も整えました。
6,000以上の用途の候補を抜き出し、選ぶ時間を従来の約40%に縮めました。書類の作成などで月2,157時間、書類の監査への対応で年1,820時間を減らしています。
研究・現場・事務と使い道を分けながら共通の基盤をそろえると、1つの部門の成功をほかの部門に広げやすくなります。
事務・全社の業務のAI活用事例
議事録、帳票の入力、文書の要約など、工場の外の業務でAIを使う事例です。全社員にAIを配り、削減した時間を公表している会社も多くあります。
鬼怒川ゴム工業|20年以上使ってきた紙のマニュアルと帳票の入力を、AI-OCRと自作のRPAで減らす
| 会社 | 鬼怒川ゴム工業株式会社 |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 帳票のシステムへの入力、現場のマニュアルのデータ化 |
| AIの種類・ツール | AI-OCR(LINE WORKS OCR)と自社で開発したRPA |
| 効果 | マニュアルのデータ化は、手入力で見込んだ約1カ月(140〜160時間)の4分の1ほどで済み、工数は約75%削減。見積書・検収書は年200件で約20万円のコスト削減(見込み) |
| 発表 | 2025年6月 |
| 出典 | LINE WORKS 導入事例 |
製造現場で20年以上使ってきた古いマニュアルのデータ化や、取引先との見積書・検収書、手書きの出来高日報のシステムへの入力に、手間と時間がかかっていました。
同社は、AI-OCRでマニュアルを文字のデータに変えました。帳票は、読み取った内容を自社でつくったRPAに渡し、ロボットがシステムに入力する仕組みにしています。手書きの日報の取り込みも準備を進めています。
マニュアルのデータ化は、手で入力した場合に見込んでいた約1カ月(140〜160時間)の4分の1ほどで終わり、工数は約75%減りました。見積書と検収書は、1件20分の作業を年200件省くことで、約20万円のコスト削減を見込んでいます。
読み取り(AI-OCR)と入力(RPA)を分けて考えると、手持ちの道具を組み合わせて自動にできる範囲が広がります。
フクシマガリレイ|役員会の議事録づくりを、録音の聞き直しからAIの要約に変える
| 会社 | フクシマガリレイ株式会社 |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 会議の議事録、要点の整理 |
| AIの種類・ツール | 生成AI(LINE WORKS AiNote) |
| 効果 | トライアルの期間のアンケートで、社員の7割が「生産性の向上に役立つ」と回答 |
| 発表 | 2026年1月 |
| 出典 | LINE WORKS 導入事例 |
役員会や本部の会議の議事録は、ICレコーダーの録音を、会議と同じ時間をかけて聞き直してつくっていました。メモだけでつくると抜け漏れも出やすく、担当者の負担になっていました。
同社は、すでに使っていた LINE WORKS で、録音の文字起こしとAIの要約ができる「AiNote」を使い始めました。業務用の冷凍冷蔵機器の製品名や専門用語を管理者が単語として登録し、精度を上げています。全社員が申請なしで使える形にしたため、日々の打ち合わせのメモにも使われています。
トライアルの期間のアンケートでは、社員の7割が生産性の向上に役立つと答えました。
製品名や社内の専門用語を先に登録しておくと、文字起こしの手直しが減り、使い続けてもらいやすくなります。
エナジーウィズ|一日がかりの特許文献の読み込みが数分に。知財部門は1人月120時間超を削減
| 会社 | エナジーウィズ株式会社 |
|---|---|
| 規模 | 1,028名(2025年3月末) |
| 業務 | 知財(特許文献の読み込みと要約)、全社の文書の業務 |
| AIの種類・ツール | 生成AI(exaBase 生成AI) |
| 効果 | 利用者100人で月1,600時間を削減。知財部門では1人あたり月120時間を超える削減 |
| 発表 | 2025年8月 |
| 出典 | exaBase 生成AI 導入事例 |
生成AIで競争力を高めることが急がれる一方、機密を守れることが条件でした。他社のサービスを試した段階では、機能がすぐ古くなることや、社員が個人向けのAIを勝手に使う「シャドーIT」が心配されていました。
同社は2024年6月に約30名で試し始め、2025年1月から法人向けの「exaBase 生成AI」で本格的に運用しています。文書の要約や資料の作成、情報の分析に使い、知財部門では長い特許文献から特定の技術の記述を抜き出す使い方から始めました。活用の例は Teams の専用チャンネルや社内SNSで共有しています。
利用者100人で月1,600時間が減り、知財部門では1人あたり月120時間を超える削減になりました。人が一日がかりで読んでいた特許文献の読み込みと要約が、数分で終わります。
全社に広げる前に、効果が大きく出る部門の業務を1つ決めて始めると、ほかの部門に説明しやすくなります。
マブチモーター|全社で生成AIを使い始めて3カ月で、9,500時間以上を削減
| 会社 | マブチモーター株式会社(千葉県) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 間接業務(翻訳、集計、コードの作成、文書の添削) |
| AIの種類・ツール | 生成AI(exaBase生成AI) |
| 効果 | 3カ月で9,500時間以上の業務時間を削減(対象者の総労働時間の約2.5%) |
| 発表 | 2025年1月 |
| 出典 | マブチモーター・日鉄ソリューションズ 共同プレスリリース |
ITとAIで間接業務の効率を上げ、生産性を高めることを目指して、日々の業務を支える生成AIの導入を検討していました。
入力したデータがAIの学習に使われないこと、削減できた時間を確かめられることを評価して「exaBase生成AI」を選び、2024年10月から国内の拠点で全社的に使い始めました。海外の拠点とのメールの翻訳、アンケートの集計、VBAのコードづくり、文書や報告書の添削などに使われています。
3カ月で9,500時間以上の業務時間が減りました。対象の社員の総労働時間の約2.5%にあたります。
削減した時間を測れるツールを選んでおくと、導入の効果を社内に示しやすくなります。
AGC|社内のデータとつないだ生成AIで、1年間に11万時間以上を生み出す
| 会社 | AGC株式会社(東京都) |
|---|---|
| 規模 | 公表なし |
| 業務 | 全社の業務 |
| AIの種類・ツール | 生成AI(自社向けの「ChatAGC」) |
| 効果 | 2024年1〜12月で11万時間以上の業務時間を創出(社員へのアンケートから見積もった値) |
| 発表 | 2025年3月 |
| 出典 | AGC ニュースリリース(英語) |
同社は2023年6月に、自社向けの生成AIの環境「ChatAGC」を入れました。
2024年8月には社内のデータとつなぐ機能を加え、ためてきた営業の情報や顧客のデータも引けるようにしました。アイデア出し、要約、翻訳、コードの作成、情報の検索などに使われています。
2024年1月から12月までで、11万時間以上の業務時間を生み出したとしています。この数字は、社員へのアンケートから業務ごとに見積もったものです。
汎用の生成AIに社内のデータをつなぐと、使い道が「調べもの」から「自社の仕事」へ広がります。
パナソニック コネクト|全社員約11,800人に自社のAIを配り、1年で78.8万時間を削減
| 会社 | パナソニック コネクト株式会社 |
|---|---|
| 規模 | グループで約29,100名(国内の全社員約11,800人が対象) |
| 業務 | 全社の業務(議事録、コードの作成、提案書、設計書など) |
| AIの種類・ツール | 生成AI(自社向けのAIアシスタント「ConnectAI」) |
| 効果 | 2025年度に78.8万時間を削減(年間の総労働時間の3.4%、前年の2倍) |
| 発表 | 2026年7月 |
| 出典 | パナソニック ニュースルーム |
2023年2月から生成AIを業務で使ってきましたが、個人の作業から業務の流れ全体へと使い道を広げることが、次の課題になっていました。
同社は自社向けのAIアシスタント「ConnectAI」を国内の全社員約11,800人に配り、議事録やコードの作成、提案書づくりなどに使っています。今後は約50の社内システムのデータをつなぐ基盤を整え、経理や営業の業務をAIエージェントに任せる方向へ広げる計画です。
2025年度は78.8万時間を減らしました。年間の総労働時間の3.4%にあたります。利用回数は361万回で、1回あたり33分の削減です。2030年には総労働時間の10%を減らすことを目標にしています。
個人の作業で効果が出たら、次は社内のデータをつなぎ、業務の流れごとAIに任せる段階に進むと、削減の幅が大きくなります。
中小企業の事例から見えること
今回の20件のうち、従業員数がわかる中小・中堅の会社は7社です。規模の小さい会社の事例には、共通する始め方が4つあります。
いちばん負担の大きい作業を1つ選んでいる
サイベックコーポレーションは1日約15,000個の目視検査、樋口電子は記録の残らない基板の検査と、どちらも現場でいちばん負担の大きい作業から始めています。全社の仕組みを一度に変えようとせず、効果がはっきり見える作業を1つに絞ることが、小さな会社の始め方の基本です。
すでにある仕組みや道具の上に載せている
黒田製作所は自社の工程管理システムでデータをためてから生成AIを載せ、フクシマガリレイや鬼怒川ゴム工業は、すでに使っていた LINE WORKS のAI機能を使いました。新しい仕組みを一から入れるより、毎日使っている道具にAIを足すほうが、現場に受け入れられやすくなります。
現場とITをつなぐ人がいる
HIGUCHI では、現場とITの両方がわかる「ブリッジエンジニア」が推進役になりました。旭鉄工でも、AIの答えを人が確かめて直す流れをつくっています。AIの仕組みを現場で使えるものにするには、現場の言葉で直せる人が欠かせません。
社員が自分たちで作っている
従業員17名の田中工業は、検査のアプリやマニュアルを、生成AIを使って社内で作っています。生成AIの登場で、プログラムを書く専門の人がいなくても、自社の業務に合わせた小さな道具を作れるようになりました。
導入にかかる費用と期間の目安
AIの導入にかかる費用は、既存のツールを使うのか、自社の業務に合わせて作るのかで大きく変わります。今回の事例に出てきた使い方ごとに、目安をまとめました。
使い方ごとの費用の目安
| 使い方 | 主な形 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 生成AIのツールを全社で使う | 法人向けの生成AIのサービスを契約する | 1人あたり月数千円程度から |
| 議事録・帳票の読み取り | 使っているグループウェアや業務ツールのAI機能を足す | 今の契約に追加の月額を払う形が多い |
| 外観検査 | 検査用のAIの製品を入れる | 数百万円クラスの製品が多い一方、少ない画像で学習でき、費用を抑えた製品も出ている |
| 社内の知識の検索・AIエージェント | 社内の資料やシステムとつなぐ仕組みを作る | つなぐデータと業務の範囲で大きく変わる。見積もりで範囲をそろえて比べる |
見積もりの内訳や比べ方は、AI導入の費用相場とAI開発・PoCの費用相場で詳しく説明しています。
事例に見る、試し始めてから本運用までの期間
今回の事例のうち、試し始めた時期と本運用の時期がわかるものを並べました。多くの会社が、半年前後の試行を経て本運用や全社への展開に進んでいます。
| 会社 | 試し始め | その後 |
|---|---|---|
| エナジーウィズ | 2024年6月に約30名で試行 | 2025年1月に法人向けのサービスで本格運用 |
| 日本精工(NSK) | 2024年10月に技術の検証 | 2025年6月に本運用 |
| 日立製作所 | 2024年10月〜2025年3月に鉄道分野で実証 | 事業所に先行導入し、2026年4月に社外への販売を開始 |
| ダイキン工業 | 2025年4月〜9月に工場で試験運用 | 国内外の生産拠点へ広げる計画 |
| マブチモーター | 2024年10月に国内拠点で全社の利用を開始 | 3カ月で9,500時間以上を削減 |
製造業のAI導入で使える主な補助金
AIの導入には、国の補助金を使える場合があります。主なものは次の3つです(2026年10月23日時点)。
| 補助金 | 向いている使い方 | 補助の上限 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | AIを組み込んだ設備やシステムで、新しい製品・サービスを開発する | 革新的新製品・サービス枠で750万〜2,500万円(従業員数で変わる) | 中小企業1/2、小規模事業者2/3 |
| 中小企業省力化投資補助金 | AIやロボットを使った設備・システムを入れて、人手不足を補う | カタログ注文型で200万〜1,000万円、一般型で750万〜8,000万円(従業員数で変わる) | 1/2(一般型の小規模事業者は2/3) |
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | AIの機能を持つソフトウェアやクラウドのサービスを入れる | 通常枠で5万円以上450万円以下 | 1/2以内(条件を満たすと2/3以内) |
これまでのものづくり補助金は、2026年5月の23次締切で公募を終えました。新しい受付は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金に移り、第1回の応募締切は2026年10月30日18時です。革新的新製品・サービス枠は、機械を入れるだけで新しい製品やサービスの開発を伴わないものは対象になりません。
省力化投資補助金とデジタル化・AI導入補助金も、賃上げや最低賃金に関する条件を満たすと、上限や補助率が上がります。公募の時期や条件は回ごとに変わるため、申請の前に公式サイトで最新の公募要領を確かめてください。補助金の全体像は、AI導入に使える補助金でまとめています。
AIに任せられないこと・導入の注意点
最後の判断は人が持つ
故障の診断で精度90%以上といっても、残りは外れることがあります。旭鉄工がAIの答えを人が確かめて直しているように、AIは判断の材料を早く出す道具と考え、最後の判断と責任は人が持つ形にしておくことが大切です。
図面や品質の情報を外に出さない
製造業の図面や品質の情報は、会社の競争力そのものです。エナジーウィズやマブチモーターは、入力した情報がAIの学習に使われない法人向けのサービスを選んでいます。社員が個人向けのAIを勝手に使う「シャドーIT」を防ぐためにも、会社として使ってよいツールを先に決めておきましょう。
データがたまっていないとAIは働かない
日本精工は約4,000件の品質トラブルの記録を、黒田製作所は工程管理システムにためたデータを土台にしています。AIに読ませる記録がばらばらだったり、紙のままだったりすると、効果は出にくくなります。まずデータを1か所に集めることから始める会社も少なくありません。
現場が使い続けられる形にする
サイベックコーポレーションは、これまでの検査とAIを併用しています。フクシマガリレイは製品名や専門用語を登録して精度を上げ、全社員が申請なしで使えるようにしました。精度だけでなく、現場が毎日使い続けられるかどうかも、導入の前に確かめておきたい点です。
製造業でAIを導入する進め方
今回の事例に共通する流れを、5つのステップにまとめました。
AIに任せたい作業を1つ決める
検査、記録、照合、議事録など、毎日くり返していて時間のかかる作業を1つ選びます。誰が、どれだけの時間をかけているのかも書き出しておきます。
使うデータを集める
検査なら製品の画像、技能の伝承ならマニュアルやトラブルの記録など、AIに読ませるデータがどこに、どんな形であるのかを確かめ、1か所に集めます。
期間を区切って試す
今の作業と並べて、AIを数カ月試します。精度だけでなく、現場が使い続けられるか、時間がどれだけ減ったかも記録します。
効果を数字で確かめて本運用に移す
減った時間や不良の数を、試す前と比べます。効果が確かめられたら、使うルールを決めて本運用に移します。
ほかの工程や拠点に広げる
うまくいった使い方を、似た作業のある工程やほかの拠点に広げます。活用の例を社内で共有すると、広がる速さが変わります。
よくある質問
Q. 中小の製造業でもAIを導入できますか?
Q. 製造業でAIの効果が出やすいのはどの業務ですか?
Q. 試し始めてから本運用までどのくらいかかりますか?
Q. 社内にAIに詳しい人がいなくても始められますか?
Q. 機密の情報を生成AIに入れても大丈夫ですか?
まとめ
製造業以外の業界の事例や、AI導入の全体の流れは、中小企業のAI導入もあわせてご覧ください。
出典一覧
本記事の事例と数字の出典です。事例は発表の新しい順に並べています。
事例の出典
- 旭鉄工(2026年8月):ビジネス+IT
- パナソニック コネクト(2026年7月):パナソニック ニュースルーム
- 豊田自動織機(2026年6月):Microsoft News Center
- 日立製作所(2026年6月):日立製作所 ニュースリリース(2026年6月)、日立製作所 ニュースリリース(2025年6月)
- 田中工業(2026年6月):Seizo Trend(ビジネス+IT)
- 黒田製作所(2026年5月):岐阜県DX推進コンソーシアム 先進事例調査の案内
- HIGUCHI(2026年3月):岐阜県 AI活用中間報告(概要版)
- パナソニック コネクト(2026年2月):パナソニック ニュースルーム
- 樋口電子(2026年1月):アダコテック 導入事例
- 東洋鋼鈑(2026年1月):アダコテック 導入事例
- フクシマガリレイ(2026年1月):LINE WORKS 導入事例
- スズキ(2025年12月):スズキ ニュースリリース
- サイベックコーポレーション(2025年9月):アダコテック 導入事例
- エナジーウィズ(2025年8月):exaBase 生成AI 導入事例
- 日本精工(NSK)(2025年6月):NSK ニュースリリース
- 鬼怒川ゴム工業(2025年6月):LINE WORKS 導入事例
- ダイキン工業(2025年4月):ダイキン工業 プレスリリース
- AGC(2025年3月):AGC ニュースリリース(英語)
- マブチモーター(2025年1月):マブチモーター・日鉄ソリューションズ 共同プレスリリース
- 旭化成(2024年12月):旭化成 ニュース
