AIを使えば人手不足や残業を減らせそうだと感じていても、どこに相談すればよいのかがわからない。ITベンダーに聞けば製品をすすめられそうで、コンサルティング会社は費用が高そうに見える。専任の担当者もいない中小企業の経営者や担当者から、よく聞かれる悩みです。中小機構の調査では、AIを導入している中小企業は20.4%にとどまります。また、「適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある」に当てはまらないと答えた企業は79.8%、「成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている」に当てはまらないと答えた企業は83.3%にのぼりました(出典:中小機構『中小企業のAI等の利活用に係る実態調査』2026年3月)。
そこで本記事では、中小企業がAI導入を相談できる先を、無料で使える公的な窓口と民間の支援先の8タイプに分けて、費用や得意なことを比べます。あわせて、3つの問いで自社に合う相談先がわかる簡易診断、相談先を選ぶ5つの基準、相談の前に用意することとそのまま使える質問リスト、さらに導入の進め方・費用・補助金・事例まで、はじめての相談で知っておきたいことをまとめました。
この記事でわかること
- 公的窓口と民間の相談先の違い
- 3問で自社に合う相談先がわかる
- 相談前の準備と聞くべき質問

この記事の監修者
AIBUILDERZ編集部
AI導入支援サービス「AIBUILDERZ」を運営するチームです。AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、企業のAI導入を一気通貫で支援しています。
中小企業のAI導入の現状

相談先を選ぶ前に、中小企業でAIの導入がどこまで進んでいるのかを、公的な調査の数字で確かめておきましょう。ここで紹介する数字は、中小機構が全国の中小企業を対象に2025年11月から12月に行った調査(回答1,647社)によるものです。
AIを導入している中小企業は約2割
AIを「全社的に導入している」「一部の業務で導入している」中小企業は、合わせて20.4%でした。まだ少数派ではありますが、導入を検討している企業(18.6%)を加えると39.0%になり、およそ4割の中小企業がAIの導入に前向きです。
言いかえると、いま始めれば、同じ規模の企業の中では早いほうに入れる段階です。周りが使い始めてから慌てて追いかけるより、小さく試して社内に慣れた人を育てておくほうが、あとで差がつきにくくなります。
導入が進んでいるのは総務・管理の業務
AIを導入した企業に、どの業務で使っているかを聞いた結果は次のとおりです。書類や数字を扱う事務の仕事から、導入が進んでいることがわかります。
| 業務の分野 | AIの導入率 | 主な業務 |
|---|---|---|
| 総務・管理 | 68.3% | 経理・人事・書類の作成などのバックオフィス |
| 営業・販売・サービス | 60.3% | 顧客対応・提案書の作成など |
| 経営・企画 | 58.5% | 経営の判断・計画づくり |
| 製造・生産 | 34.9% | 開発・調達・在庫の管理など |
使われているAIの8割以上は生成AI
AIを導入した中小企業で最も使われているのは、文章や資料を作る「生成AI」で、82.6%にのぼります。次に多い「音声認識・音声対話AI」(議事録の作成や自動応答など)は29.8%で、生成AIが大きく引き離しています。画像認識AI(11.2%)や需要予測AI(8.1%)のように、専用の仕組みづくりが必要なAIは、まだ一部の企業にとどまっています。
ChatGPTのような生成AIは、月額の利用料だけで今日から使い始められます。中小企業のAI導入が生成AIから始まっているのは、費用も準備も小さく済むためです。
導入が進まない理由は「情報が足りない」
一方で、社内に「AIが必要だ」という理解はある程度あるものの、導入に必要な情報が足りていない企業が多いこともわかりました。
| 足りていない情報・環境 | 「当てはまらない」と答えた割合 |
|---|---|
| 成功事例や活用事例などの情報が十分に入手できている | 83.3% |
| 適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある | 79.8% |
国に求める支援でも、「導入費用などの助成」(77.9%)に次いで「導入事例などの情報提供」(70.5%)が多く挙がっています。何に使えるのか、どこに頼めばよいのかがわからないことが、導入の一番の壁になっています。本記事では、この2つに答えられるよう、まず相談先の種類と選び方を、そのあとで業務別にできることと事例を順に解説します。
中小企業のAI導入の相談先は8タイプ|無料の公的窓口と民間の支援先

中小企業がAI導入を相談できる先は、無料で使える公的な窓口が3タイプ、費用をかけて頼む民間の支援先が5タイプの、あわせて8タイプに分けられます。公的な窓口は、特定の製品に偏らずに課題を整理してくれる一方、AIの仕組みを実際に作る作業は行いません。民間の支援先は、作るところまで頼める一方、費用がかかり、得意な範囲も会社ごとに違います。課題を整理する段階は公的な窓口、実際に作って定着させる段階は民間の支援先、と役割で使い分けるのが基本です。
よろず支援拠点|無料で何度でも相談できる国の窓口
よろず支援拠点は、国が設置した無料の経営相談所です。47都道府県に置かれており、何度でも無料で相談できます。多様な分野の専門家が相談に応じます(出典:よろず支援拠点 公式サイト)。
AIに限らず、売上の伸び悩みや人手不足など、経営の困りごとをまとめて話せるのが強みです。一方で、AIの設定や仕組みづくりを代わりに行う場所ではありません。「何から手をつければよいかわからない」という段階で、課題を整理する最初の相談先として使うのが向いています。
IT経営サポートセンター|ITの専門家にオンラインで相談できる
IT経営サポートセンターは、中小機構が運営するIT活用の相談窓口です。相談は無料・1回60分・オンライン形式で、何度でも利用できます。実務経験の豊富なITの専門家が、特定のITツールやベンダーに偏らない中立的な立場から助言します(出典:中小機構 IT経営サポートセンター)。
ツールを売る立場ではないため、「この業務にAIは本当に必要か」という手前の段階から相談しやすい窓口です。予約はカレンダーから日時を選ぶ形なので、会社を離れにくい経営者でも使いやすいでしょう。
商工会議所・商工会|地元で経営の相談ができる
商工会議所は、地域の事業者の経営相談に応じています。日本商工会議所は、対象の地域で事業を営む人や創業を予定している人なら、法人・個人を問わず原則無料で利用できるとしています。「IT化を推進したい」といった悩みには、生産性の向上につながるデジタルツールの導入をサポートするとしています(出典:日本商工会議所「経営相談」)。
地元の事情をよく知る担当者に、顔を合わせて相談できるのが利点です。AIの技術面の細かい判断は、ほかの専門家につないでもらう形になることもあります。各地の商工会議所が独自にデジタル化の相談窓口を設けている場合もあるので、最寄りの窓口に確かめてみましょう。
IT導入支援事業者・ITベンダー|ツールの導入と補助金の手続きに強い
ITツールの販売や導入・設定を仕事にしている会社です。ふだん付き合いのあるITベンダーや、デジタル化・AI導入補助金の事務局に登録された「IT導入支援事業者」がこれにあたります。補助金を使ってツールを入れる場合は、登録されたIT導入支援事業者と一緒に進める仕組みです。
自社のパソコンやソフトの事情を知っている相手なら、話が早く進むのが強みです。ただし、自社で扱う製品をすすめる立場でもあります。ほかの製品との違いや、「今はAIを使わない」という選択肢も含めて、遠慮なく聞いてみるとよいでしょう。
AIコンサルティング会社・中小企業診断士|経営の課題から使い道を考える
経営の課題や事業の計画から、AIをどこに使うかを一緒に考えてくれる相談先です。中小企業診断士は、中小企業の経営の助言を行う国家資格を持つ専門家です。AIコンサルティング会社には、戦略づくりだけを行う会社から、導入の支援まで行う会社まであります。
方針や優先順位を決める段階では頼りになる一方、提案書を受け取ったあと、作る作業や社内への定着は別の会社に頼むことになる場合もあります。どこまでを支援の範囲に含むのかを、最初に確かめておきましょう。費用の目安は AIコンサル費用の相場 で詳しく解説しています。
AI導入支援・AI研修の専門会社|業務の整理から定着まで伴走する
業務の洗い出しから、AIを使う仕組みの構築、社員への研修、導入したあとの改善までを、まとめて頼める相談先です。当社AIBUILDERZもこのタイプにあたります。社内にITに詳しい人がいない会社でも、相談先と一緒に進めながら、使い方を社内に残していけるのが強みです。
一方で、基幹システムの大規模な作り直しのように、開発の量が大きい案件では、システム開発会社と組んで進めることもあります。研修だけ、構築だけといった頼み方ができるかどうかも、会社ごとに違います。社員向けの研修を中心に考えている場合は 企業向けAI研修 もあわせてご覧ください。
システム開発会社|自社専用の仕組みを作る
製造現場の画像検査や、独自の需要予測のように、既存のツールでは足りない専用のシステムを作る相談先です。作るものがはっきりしていれば、要件に合わせて確実に形にしてくれます。
反対に、「何に使えばよいか」を整理するところから頼むと、費用も期間もかかりがちです。開発の相談は、既存のツールや組み込みで足りないことがわかってからにすると、無駄が出にくくなります。
フリーランス・個人の専門家|小さな相談を手軽に頼める
生成AIの使い方の指導や、小さな自動化の作成などを、個人の専門家に頼む方法です。スキルを売り買いするサイトなどで探せ、短い時間の相談や、範囲の小さい作業を手軽に頼めます。
ただし、担当者が1人のため、連絡が取れなくなったときや、長く保守を頼みたいときの備えが弱くなります。頼む作業の範囲と、作ったものの引き継ぎ方を、書面で決めておきましょう。
相談先8タイプの比較と、自社に合う相談先の見つけ方

8タイプの相談先は、費用も得意なことも違います。ここでは比較表で違いを確かめたうえで、3つの問いに答えるだけで自社に合う相談先がわかる簡易診断と、検討の段階ごとの使い分けを紹介します。支援会社を1社ずつ比べたい場合は AI導入支援とは?おすすめ会社の比較と選び方 で詳しく解説しています。
PR|AIBUILDERZ AI導入支援サービス
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AIBUILDERZ|AI導入支援サービス
システム構築は成果報酬型。AI研修から導入・構築・定着まで一気通貫で支援

AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、一気通貫で支援するサービスです。業務アプリの構築費は事前にいただかず、実際に稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。成果報酬型での対応は、当社が小規模と定義するシステムが対象です。
- 業種・規模を問わず支援どの業務からAIやシステムに置き換えるかを一緒に決め、効果の大きい業務から順に進めます。
- システム構築は成果報酬型業務アプリの構築費は事前にいただきません。稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。
- AI導入の効果を可視化置き換える業務を一覧にし、導入前後の時間から、空いた時間とかからなくなった費用を毎月記録します。
- 小さく始めて、リスクを管理影響の小さい業務から始め、AIの実行結果は担当者が確認・承認してから反映します。
費用・得意なこと・苦手なことの比較表
8タイプの違いを、1つの表にまとめました。民間の支援先の費用は、頼む範囲や会社によって大きく変わるため、相談の前に確かめてください。
| 相談先 | 相談の費用 | 得意なこと | 苦手なこと | 向いている段階 |
|---|---|---|---|---|
| よろず支援拠点 | 無料(何度でも) | 経営の課題をまとめて整理する | AIの設定や構築そのもの | 何から始めるか決まっていない |
| IT経営サポートセンター | 無料(1回60分・オンライン) | 中立の立場からのIT活用の助言 | 現場での作業や構築 | 課題を整理し、使うツールの見当をつけたい |
| 商工会議所・商工会 | 原則無料 | 地元での経営相談、デジタルツールの導入のサポート | AIの技術面の細かい判断 | 身近な窓口で話を聞きたい |
| IT導入支援事業者・ITベンダー | 会社により異なる | ツールの導入・設定、補助金の申請の手続き | 自社で扱う製品以外との比較 | 使うツールの見当がついている |
| AIコンサルティング会社・中小企業診断士 | 有料 | 経営の課題からAIの使い道と計画を考える | 作ったあとの運用や定着 | 方針や優先順位を決めたい |
| AI導入支援・AI研修の専門会社 | 有料 | 業務の整理から構築・研修・定着まで | 基幹システムの大規模な作り直し | 業務に組み込み、社内に根づかせたい |
| システム開発会社 | 有料 | 自社専用のシステムの開発 | 何に使うかの整理から始めること | 作るものが決まっている |
| フリーランス・個人の専門家 | 人により異なる | 小さな相談や作業を手軽に頼める | 長く続く体制、担当者が抜けたときの備え | 小さく試したい |
無料の窓口の内容は、各窓口の公式サイトの記載によるものです(よろず支援拠点・IT経営サポートセンター・日本商工会議所)。
3つの問いでわかる、相談先の簡易診断
どこに相談すればよいか迷ったら、次の3つの問いに上から順に答えてみてください。「はい」で止まったところが、最初に相談するとよい先です。
| 問い | 「はい」なら最初の相談先 | 「いいえ」なら |
|---|---|---|
| 問1 AIに任せたい業務が、まだ決まっていない | よろず支援拠点・IT経営サポートセンター・商工会議所などの無料の窓口で、課題を整理する | 問2へ |
| 問2 既存のAIツールを社員が使いこなせれば、目的を果たせそう | AI研修の会社、またはツールを扱うITベンダー | 問3へ |
| 問3 会計・顧客管理など、社内のシステムやデータとつなぐ必要がある | AI導入支援の専門会社。専用のシステムが要るならシステム開発会社 | 経営の計画から見直したいなら、AIコンサルティング会社・中小企業診断士 |
補助金を使うことを考えている場合は、どの問いの答えであっても、相談先が補助金の事務局に登録されたIT導入支援事業者かどうかを早めに確かめておきましょう。相談先は、会社の規模より「いま自社がどの段階にいるか」で選ぶと外れにくくなります。
検討の段階で変わる、向いている相談先
AI導入は、情報を集める段階から社内に根づかせる段階まで、進むにつれて必要な相談相手が変わります。1つの相談先にすべてを頼むより、段階に合わせて組み合わせるほうが、費用も時間もむだになりにくくなります。
| 段階 | よくある状態 | 向いている相談先 |
|---|---|---|
| 情報を集める | AIで何ができるのかを知りたい | 無料の公的な窓口 |
| 課題を決める | 任せたい業務を1つに絞りたい | 無料の公的な窓口、AIコンサルティング会社・中小企業診断士 |
| 小さく試す | 数人でツールを使ってみたい | ITベンダー、AI研修の会社 |
| 業務に組み込む | 社内のシステムやデータとつなぎたい | AI導入支援の専門会社、システム開発会社 |
| 社内に根づかせる | 使う部署と人を増やしたい | AI導入支援・AI研修の専門会社 |
相談先選びで起きやすい3つの失敗
1つめは、製品を扱う会社に最初に相談し、ほかと比べないまま決めてしまう失敗です。その製品が自社に合っていれば問題ありませんが、業務の整理より先にツールが決まると、使い道が見つからないまま利用料だけを払い続けることになりがちです。
2つめは、無料の窓口だけで、作るところまで進めようとする失敗です。公的な窓口は課題の整理や助言が役割のため、仕組みを作る段階では民間の支援先が必要になります。相談したあとで手が止まってしまったら、次の段階に進む合図と考えましょう。
3つめは、大きな提案を受けて、小さく試す前に多額の費用をかけてしまう失敗です。最初の契約は1つの業務・短い期間に絞り、効果を確かめてから広げる形を相談先に提案してみてください。
失敗しない相談先の選び方|5つの基準

民間の支援先は、同じタイプでも会社ごとに得意なことや進め方が違います。候補が2〜3社にしぼれたら、次の5つの基準で比べてみましょう。
自社の業種と現場の仕事をわかっているか
同じ「請求書の処理」でも、建設業と小売業では書類の形も確認の手順も違います。自社と近い業種の支援をしたことがあるか、現場の仕事の流れを聞いたうえで提案してくれるかを確かめましょう。業界の言葉が通じる相手なら、説明にかかる時間も短くなります。
導入したあとの運用・定着まで見てもらえるか
AIは入れただけでは効果が出ず、社員が毎日使うようになって初めて作業時間が減ります。研修や使い方の相談、うまくいかなかったときの見直しまで支援の範囲に入っているかを確かめてください。導入して終わりではなく、社員が使い続けられる状態まで一緒に見てくれるかが、相談先を比べるときの大事な分かれ目です。
費用の内訳と契約の条件がはっきりしているか
見積もりが「一式」になっていると、何にいくらかかっているのかがわからず、ほかの会社と比べられません。初期費用・月額費用・ツールの利用料・保守費が分けて書かれているか、契約の期間と途中でやめるときの条件が決まっているかを確かめましょう。費用の内訳の見方は AI導入の費用相場 で詳しく解説しています。
ITに詳しい社員がいなくても進められるか
中小企業では、AI導入の担当者が本業と兼務していることがほとんどです。専門用語を使わずに説明してくれるか、社内で用意するものを具体的に示してくれるか、担当者が少ない時間でも進められる段取りを組んでくれるかを見ておきましょう。
実績を事実で確かめられるか
支援の実績は、会社名や取り組みの中身が書かれた事例、公的機関の事例集への掲載など、事実で確かめられるかを見ます。根拠のわからない数字だけを示された場合は、どの会社で、どの業務を、どう変えたのかを聞いてみましょう。補助金を使う場合は、相談先が登録されたIT導入支援事業者かどうかを、補助金の公式サイトで確かめておくと安心です。
自社で進めるか、外部に相談するか|相談前の準備と質問リスト

AI導入は、既存のツールを使う段階なら自社だけでも進められます。一方で、業務のシステムに組み込む段階になると、外部の力を借りたほうが早く確実に進むことが多くなります。自社の状況に合わせて判断し、相談すると決めたら、準備を整えてから相談先と話しましょう。
外部に相談したほうがよいケース
| 状況 | おすすめの進め方 |
|---|---|
| 文章作成などを社員が使えるようにしたい | 自社で既存のツールを導入し、必要なら研修だけ外部に頼む |
| 何から始めればよいかわからない | 無料の公的な窓口や外部の支援先に、業務の洗い出しと最初の業務選びを相談する |
| AIを会計や顧客管理などの仕組みにつなぎたい | 外部に設計と構築を頼み、運用は自社に引き継いでもらう |
| 社内にITに詳しい人がいない | 導入後の保守や改善まで含めて外部に頼む |
相談するのがよい時期の目安
次のような状態になっていたら、外部に相談する時期です。社員が生成AIを試してみたものの、使う人と使わない人に分かれて広がらない。AIに任せたい業務は思い浮かぶが、どう仕組みにすればよいかわからない。ツールの営業を受けているが、自社に合うのか判断できない。どれも、自社だけで考え続けるより、外の目を入れたほうが早く進みやすい場面です。
反対に、AIで何をしたいのかがまだ何も浮かばない段階なら、まずは経営者や担当者が自分で生成AIを触ってみるのも一つの方法です。民間の支援先に頼むのは、そのうえで「この業務で使いたい」が見えてからでも遅くはありません。迷う段階の相談なら、無料の公的な窓口を使えます。
相談の前に用意しておくこと
相談の前に次の5つを書き出しておくと、話が早く進み、見積もりも正確になります。この表をそのまま準備シートとして使い、右の列を埋めてから相談に臨んでください。
| 用意するもの | 内容 |
|---|---|
| 任せたい業務と今の作業時間 | 誰が、月に何件、1件に何分かけているか |
| 使っているソフトとデータ | 会計・顧客管理・表計算など、業務で使っているもの |
| データのある場所と形 | パソコンの中か、紙か、ソフトの画面からしか見られないか |
| 社内の担当者と決める人 | 相談先とやりとりする担当者と、導入を決める人が誰か |
| 予算と期間の目安 | 月にいくらまでなら続けられるか、いつまでに効果を見たいか |
相談先に聞いておきたい質問
支援会社と話すときは、次の質問をそのまま使ってみてください。答え方で、中小企業の導入に慣れているかどうかがわかります。
| 質問 | 確かめたいこと |
|---|---|
| 最初はどの業務から始めるのがよいと思いますか | ツールの話より先に、業務の話をしてくれるか |
| 既存のツールで足りない理由は何ですか | 開発ありきの提案になっていないか |
| 効果はどうやって測りますか | 作業時間などの数字で確かめる仕組みがあるか |
| 導入後の保守や改善は、誰がいくらで行いますか | 運用の費用と担当がはっきりしているか |
| 契約をやめたとき、作ったものやデータはどうなりますか | 自社に残るか、使い続けられるか |
| 社内では誰が、どのくらいの時間を使う必要がありますか | 兼務の担当者でも進められる段取りか |
初回の相談で確かめること
初回の相談は、相談先が自社に合うかを見極める場でもあります。準備シートをもとに自社の業務を説明し、相談先がどんな質問を返してくるかに注目してください。今の作業の手順や、困っている場面を詳しく聞いてくる相談先は、業務に合わせた提案をしてくれる可能性が高いといえます。
初回の相談で、ツールの話より先に自社の業務について質問してくれるかどうかが、相談先を見極めるいちばんの手がかりです。あわせて、次に何をすればよいか、見積もりまでにどれくらいかかるかも確かめておくと、社内での検討を進めやすくなります。
見送ったほうがよい提案
次のような提案は、中小企業のはじめての導入には合わないことが多いため、いったん立ち止まって考えましょう。
| 提案の内容 | 見送ったほうがよい理由 |
|---|---|
| 業務の話を聞く前に、特定のツールや開発をすすめる | 自社の業務に合うかどうかが確かめられていない |
| 最初から全社・全業務への導入をすすめる | 失敗したときの損が大きく、社内にも定着しにくい |
| 効果の測り方の説明がない | 続けるべきかどうかを判断できない |
| 長期の契約が前提で、途中でやめられない | 効果が出なかったときに見直せない |
相談から導入までの進め方|5つのステップ

中小企業のAI導入は、大きな計画を立てるより、1つの業務で小さく試して広げていくほうがうまくいきます。外部に相談する場合も、次の5つのステップで進めましょう。
目的を決め、担当者を1人置く
「請求書の入力の時間を半分にする」のように、何のためにAIを入れるのかを1文で決めます。あわせて、社内で旗を振る担当者を1人決めます。専任でなくてもかまいませんが、経営者が後押しすることをはっきり伝えておきます。
業務を書き出し、最初の1業務を選ぶ
社員がふだん時間を使っている作業を書き出し、その中からAIに任せる最初の1業務を選びます。選び方は次の章のチェック表を使ってください。迷うときは、ここで無料の公的な窓口や支援先に相談します。
社内のルールを決めて、小さく試す
AIに入力してよい情報・いけない情報など、最低限の使い方のルールを決めてから、1つの部署・数人で1〜3か月試します。試す前に、今の作業時間を測っておきます。
効果を測って、続けるかを決める
試す前と比べて、作業時間やミスがどれだけ減ったかを数字で確かめます。効果が出ていれば広げ、出ていなければ使い方か業務を見直します。
ほかの業務・部署へ広げる
うまくいった使い方を手順書にまとめ、社内で共有しながら、次の業務・部署へ広げます。必要に応じて社員向けの研修を行い、使う人を増やしていきます。
試す前に今の作業時間を測っておかないと、効果があったのかどうかを判断できません。「1件あたり何分」「月に何件」の2つだけでもよいので、必ず記録しておきましょう。社員向けの研修の進め方は 企業向けAI研修 で解説しています。
相談先と一緒に小さく試す
外部の支援先に頼む場合も、最初の契約は1つの業務と短い期間に絞るのがおすすめです。試す期間の長さと、「作業時間が何割減ったら次に進むか」という基準を、始める前に相談先と決めておきます。基準を先に決めておけば、試したあとに続けるか、やめるか、やり方を変えるかを迷わずに判断できます。
導入したあとの定着と見直し
導入した直後は使われていても、時間がたつと元のやり方に戻ってしまうことがあります。月に1回は、使っている人数と減った作業時間を確かめ、使われていない理由を現場に聞きましょう。相談先には、その結果をもとに設定や手順を見直してもらいます。こうした見直しを支援の範囲に含めておくと、AIが社内に根づきやすくなります。
最初にAIに任せる業務の選び方

AI導入がうまくいくかどうかは、最初に選ぶ業務でほぼ決まります。最初の業務で効果が見えれば社内の協力が得やすくなり、反対に効果が見えないと「AIは使えない」という空気が広がってしまうためです。相談先に話す前に、自社で候補をしぼっておくと、相談の中身も濃くなります。
最初の1業務を選ぶチェック表
候補の業務ごとに、次の5つの問いに「はい」がいくつ付くかを数えてみてください。「はい」が多い業務ほど、最初に任せる業務に向いています。
| 問い | 「はい」の目安 |
|---|---|
| 毎日、または毎週くり返している業務か | 週に何度も同じ作業をしている |
| 時間がかかっている業務か | 1人あたり週に数時間以上使っている |
| 手順を言葉で説明できる業務か | 新人に教えるときの手順が決まっている |
| 間違えても、人が確かめて直せる業務か | 社外に出る前に、人が見る工程がある |
| AIに読ませる材料がデータで手元にあるか | 書類や記録がパソコンの中にある |
5つすべてに「はい」が付く業務の例は、見積書や報告書の作成、議事録のまとめ、よくある問い合わせへの回答文の下書きなどです。反対に、お金の支払いや契約の判断のように、間違えたときの影響が大きい業務は、最初の業務には向きません。
業務の重さもあわせて確かめる
AIを社内のシステムに組み込む場合は、業務の重さによって必要な手間が何倍も変わります。当社AIBUILDERZでは、見積もりのときに次の5つの観点で業務に1〜3点をつけています。
| 観点 | 1点 | 2点 | 3点 |
|---|---|---|---|
| つなぐ外部サービスの数 メール・会計・在庫など |
0〜1つ | 2〜4つ | 5〜7つ |
| ゴールまでの工程数 受け取る→判断する→出す、の数 |
3工程まで | 4〜6工程 | 7〜9工程 |
| 手順の言語化 | 手順書がある | 一部が人の頭の中 | ほぼ人の頭の中 |
| データの整い方 | そのまま読める | 一部が紙・画像 | 未整備、または画面からしか取れない |
| 読み込む書類の種類 規程・様式・過去の案件など |
3種類まで | 4〜8種類 | 9〜12種類 |
合計が5〜7点なら小さい業務、8〜10点なら中くらいの業務、11〜15点なら大きい業務です。はじめての導入では、5〜7点の小さい業務から選ぶと、短い期間で効果を確かめられます。相談の前にこの点数を出しておくと、相談先の提案や見積もりが業務の重さに見合っているかも判断しやすくなります。点数ごとの費用の考え方は AI導入の費用相場 で紹介しています。
AIの導入方法と、相談・導入にかかる費用の目安

AIの導入方法は、大きく3つに分けられます。どれを選ぶかで、費用も準備にかかる期間も、相談すべき先も大きく変わります。中小企業の場合は、上から順に検討していくのが基本です。
| 導入の方法 | 初期費用 | 月額費用 | 始めるまでの期間 | 向いている企業 |
|---|---|---|---|---|
| 既存のAIツールを使う | 0〜30万円 | 2万〜10万円 | 即日〜1か月 | まず試してみたい |
| 業務に合わせて組み込む | 50万〜200万円 | 10万〜30万円 | 1〜3か月 | 特定の業務を自動化したい |
| 自社専用に開発する | 200万〜1,000万円 | 20万〜50万円 | 3か月以上 | 独自のシステムが必要 |
金額は一般的な目安です。依頼する範囲や業務の条件によって変わります。費用の内訳や工程別の相場は AI導入の費用相場 で詳しく解説しています。
既存のAIツールを使う
ChatGPTやMicrosoft 365 Copilotのような、すでにあるAIツールに申し込んで使う方法です。1人あたり月数千円から始められ、準備もほとんどいりません。文章の作成・要約・アイデア出しなど、社員が自分の手で使う仕事に向いています。まずはこの方法で、社内でAIに慣れるところから始めましょう。
業務に合わせて組み込む
既存のAIを、会計ソフトや顧客管理の仕組みなど、社内のシステムとつないで使う方法です。「メールで届いた注文書を読み取って、在庫表に入力し、担当者に知らせる」のように、いくつかの手順をまとめて自動にできます。人がAIに毎回指示を出さなくても仕事が進むため、削れる時間は大きくなります。
自社専用に開発する
自社のデータでAIを学習させ、専用のシステムを一から作る方法です。製造現場の検査のように、既存のツールでは対応できない業務で選ばれます。費用も期間もかかるため、はじめての導入でいきなり開発から入るのは避けたほうが無難です。既存のツールや組み込みで足りないことがはっきりしてから検討しましょう。
相談先のタイプで変わる費用のかかり方
相談そのものにかかる費用と、そのあとに頼む作業の費用は、分けて考えるとわかりやすくなります。公的な窓口は相談が無料ですが、作業はしないため、導入の費用は別にかかります。民間の支援先は、相談から作業までをまとめて頼める代わりに、作業の量に応じた費用がかかります。
| 相談先 | 相談の費用 | 頼んだあとの主な費用 |
|---|---|---|
| よろず支援拠点・IT経営サポートセンター | 無料 | 窓口では作業をしないため、ツールや支援先の費用が別にかかる |
| 商工会議所 | 原則無料 | 同上 |
| IT導入支援事業者・ITベンダー | 会社により異なる | ツールの利用料、導入の設定費、保守費 |
| AIコンサルティング会社・中小企業診断士 | 会社や人により異なる | 月額の顧問料、または案件ごとの費用 |
| AI導入支援・AI研修の専門会社 | 会社により異なる | 月額の支援費、構築費、保守費、研修費 |
| システム開発会社 | 会社により異なる | 開発費と保守費 |
| フリーランス・個人の専門家 | 人により異なる | 時間あたり、または作業ごとの費用 |
戦略づくりやコンサルティングだけを頼む場合の費用は、AIコンサル費用の相場 でまとめています。
構築費と保守費の考え方
AIを業務に組み込む場合の費用は、仕組みを作るときに一度かかる「構築費」と、動かし続けるために毎月かかる「保守費」に分かれます。構築費が安くても保守費が高ければ、数年で総額は逆転します。見積もりは、初年度だけでなく2〜3年の総額に直して比べましょう。
払い方も会社によって違います。構築費を先にまとめて払う形のほか、月額の支援費に含める形、効果を確かめてから払う成果報酬の形などがあります。当社AIBUILDERZでは、システム構築を成果報酬型で行っており、業務アプリの構築費は事前にいただかず、実際に稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。どの払い方でも、何ができたら支払いが発生するのかを、契約の前に確かめておくことが大切です。
中小企業がAI導入に使える補助金

中小機構の調査で、国に求める支援として最も多かったのが「導入費用などの助成」(77.9%)でした。ここでは、中小企業・小規模事業者がITツールを導入するときの国の制度を、一般的な情報として紹介します。制度の対象になるかどうかは、相談先や導入するツールによって変わります。
デジタル化・AI導入補助金2026
中小企業・小規模事業者が、自社の課題に合ったITツールを導入する費用の一部を補助する制度です。通常枠の内容は次のとおりです。
| 項目 | 通常枠の内容 |
|---|---|
| 補助額 | 1プロセス以上:5万円以上150万円未満 4プロセス以上:150万円以上450万円以下 |
| 補助率 | 1/2以内(令和6年10月から令和7年9月までの間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上であることを示した場合は2/3以内) |
| 補助の対象 | ソフトウェアの購入費、クラウドの利用料(最大2年分)、導入コンサルティング、導入設定、導入研修、保守サポートなど |
出典:デジタル化・AI導入補助金2026 通常枠(公式サイト)
対象になるのは、事務局に登録されたITツールを、登録されたIT導入支援事業者を通して導入する場合です。申請の締切は回ごとに決まっているため、公式サイトで最新のスケジュールを確かめてから準備を始めましょう。
申請から補助金の受け取りまでの流れ
公式サイトでは、申請から報告までの手順が次のように示されています。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 事業の理解 | 制度の内容と公募の要領を確かめる |
| 2. GビズIDの取得・SECURITY ACTIONの宣言 | 申請に必要なアカウントを取り、情報セキュリティへの取り組みを宣言する |
| 3. IT導入支援事業者とITツールの選定 | 登録された事業者と、導入するツールを決める |
| 4. 交付申請 | 事業者と一緒に申請する |
| 5. 交付決定 | 事務局から交付の決定を受ける |
| 6. ITツールの発注・契約・支払い | 交付決定のあとに、発注・契約・支払いを行う |
| 7. 事業実績報告 | 導入と支払いの実績を報告する |
| 8. 補助金額の確認・承認 | 報告をもとに補助金額が確定する |
| 9. 事業実施効果報告 | 導入したあとの効果を報告する |
補助金を使うときの注意点
公式サイトでは、交付決定の前に発注・契約・支払いなどを行った場合は、補助金の交付を受けられないと注意されています。また、ツールの代金を支払ったあとに実績を報告し、補助金額が確定する流れのため、いったんは全額を自社で支払う必要があります。補助金ありきで計画を立てず、使えなくても続けられる予算で考えておくことが大切です。都道府県や市区町村が独自の補助金を出している場合もあるので、地元の商工会議所や自治体の窓口にも確かめてみましょう。
【業務別】中小企業のAI導入事例とできること

AIで何ができるのかがわからないと、相談先に何を頼めばよいのかも決まりません。ここでは、中小企業で取り入れやすい使い方を、業務ごとに紹介します。あわせて、中小企業白書や経済産業省のDXセレクションなど、国や公的機関が公開している中小企業の実際の導入事例も載せました。まずは全体を一覧で確かめ、自社の業務に近いものから読んでみてください。
| 業務 | AIでできること | 使うAI | 始めやすさ |
|---|---|---|---|
| 総務・経理 | 請求書や領収書の読み取り、仕訳の下書き、社内規程への回答 | 生成AI・文字の読み取り | 始めやすい |
| 営業・販売 | 提案書やメールの下書き、商談の記録の要約 | 生成AI・音声認識 | 始めやすい |
| 顧客対応 | よくある問い合わせへの自動回答、回答文の下書き | 生成AI(チャットボット) | ふつう |
| 企画・販促 | チラシや商品説明の案出し、口コミやアンケートの分析 | 生成AI | 始めやすい |
| 人事・採用 | 求人票の作成、応募書類の整理、面接日程の調整 | 生成AI | ふつう |
| 製造・現場 | 外観の検査、在庫や需要の予測、作業手順の検索 | 画像認識・需要予測・生成AI | 準備が必要 |
総務・経理|書類の読み取りと入力を任せる
請求書・領収書・注文書など、紙やPDFで届く書類の内容をAIに読み取らせ、会計ソフトや管理表への入力の下書きを作らせる使い方です。社内規程や就業規則をAIに読ませておけば、「有給の申請はどうするのか」といった社員からの質問にも、AIが一次回答できるようになります。調査で導入率が最も高かった分野で、はじめての導入に向いています。
事例:沖縄県名護市で土産品の卸売を営む琉球ワークス株式会社(従業員35名)は、FAXやメールで届く注文書、手書きの棚卸表などをAIの文字読み取り(AI-OCR)で読み取り、販売管理システムへ自動で取り込むようにしました。読み取りの精度は「大体95%ぐらい」で、違っている部分だけを目で確かめて直せばよくなったといいます(出典:中小機構「ここからアプリ」導入事例 2026年3月)。
営業・販売|提案書やメールの下書きを作る
顧客の業種や課題を伝えて提案書のたたき台を作らせたり、商談の録音から要点と次にやることをまとめさせたりできます。お礼メールや見積もりの送付文など、決まった形の文章はAIの得意分野です。営業担当が書類づくりに使っていた時間を、訪問や電話に回せます。
事例:神戸市で携帯電話の販売代理店などを営む株式会社エヌエスケーケー(従業員61名)は、全社員が生成AIを使える環境を整え、月に1回、全部署に生成AIを使った改善の成果を報告させています。こうした取り組みの成果として、営業提案書の作成と引き継ぎの業務で月300分、請求書の処理で月275分の削減が挙げられています(出典:経済産業省「DXセレクション2026」選定企業レポート)。
顧客対応|よくある問い合わせにAIが答える
営業時間・料金・配送の状況など、くり返し届く質問には、AIのチャットボットが24時間答えられます。回答の元になるよくある質問の一覧や商品の情報を整えておくことが前提になるため、はじめは「AIが回答文の下書きを作り、人が確かめて送る」形から始めると安心です。
企画・販促|アイデア出しとお客様の声の分析
新商品の名前やキャッチコピーの候補を数十案出させたり、SNSの投稿文を作らせたりできます。アンケートの自由回答や口コミを読み込ませて、よく出てくる不満や要望を整理させるのも効果的です。人が読み切れなかった量の声から、次の手を考える材料が得られます。
事例:東京都新宿区で光学機器の輸入販売を行う株式会社オプトサイエンス(従業員33名)は、業界の専門誌に出す広告づくりに生成AIを使っています。載せる商品の選び方、キャッチコピー、訴求する点を生成AIに出させ、営業担当者が手を入れて仕上げる形です。広告への反応は平均で2倍以上になり、月に5件ほどだった問い合わせが、多い月には45件に達しました(出典:中小企業庁『2026年版 中小企業白書』事例2-2-3)。
AIに案を出させ、最後は人が確かめて仕上げる。この分担にすると、はじめてでも品質を落とさずに使えます。同社も、生成AIが示した情報は必ず事実を確かめるようにしています。
人事・採用|求人票の作成と応募者対応
仕事の内容や条件を伝えて求人票の文案を作らせたり、応募書類の要点を一覧にまとめさせたりできます。面接の日程調整の連絡文もAIに任せられます。ただし、合否の判断そのものをAIに任せるのは避け、判断は人が行うようにしましょう。
製造・現場|検査・予測・手順の検索
カメラの画像で製品の傷や汚れを見分ける検査や、過去の販売データから必要な在庫を予測する使い方があります。こうしたAIはデータを集めて学習させる準備が必要なため、費用も期間もかかりがちです。まずは作業手順書をAIに読ませて、現場で手順を聞けるようにするなど、生成AIで済む使い方から始めるのがおすすめです。
事例:金沢市で機械部品の加工・組立を行う岡田研磨株式会社(従業員85名)は、生成AIを使って社内のアプリを自作し、検査の実績・日報・在庫などをまとめて管理する仕組みを作りました。月530時間ほどの労働時間を減らし、AIを使った手順書の管理の仕組みも自作したことで、150件ほどだった手順書が4か月で240件ほど増えました。外注すれば約8,000万円かかる開発を、AIの月額の利用料だけで進めています(出典:中小企業庁『2026年版 中小企業白書』事例2-2-14)。
事例:東京都墨田区でプレス加工を行う株式会社ヨシズミプレス(従業員18名)は、直径5mmほどの部品の傷を見分ける検査に、GoogleのAIツールで作った画像の検査を入れました。6人で10日かけていた50万個の目視検査は、総時間が1か月あたり40%減りました(2022年2月時点の取り組み。出典:東京商工会議所「中小製造業の好事例集」)。
業種ごとの具体的な事例は 中小企業のAI活用事例 で詳しく紹介しています。
中小企業がAIを導入するメリット

中小機構の調査では、AIの導入目的として「業務効率化/作業時間の短縮」が87.0%と最も多く挙がりました。実際に導入した企業が感じた効果も、同じく「業務効率化/作業時間の短縮」が83.2%で突出しています。ここでは、調査で挙がった効果をもとに、中小企業にとってのメリットを5つに分けて紹介します。相談先に目的を伝えるときの参考にしてください。
作業時間を減らせる
メールの下書き、議事録のまとめ、見積書や報告書の作成など、毎日くり返している作業の多くは、AIに下書きを任せられます。1回あたりは数分の短縮でも、毎日・全員分が積み重なると、月に数十時間の差になります。少ない人数で多くの仕事を回している中小企業ほど、効果を感じやすいメリットです。
人手不足を補える
導入した企業の33.9%が、効果として「人手不足対応」を挙げています。問い合わせへの一次対応や、書類の読み取り・入力など、人を増やさないと回らなかった仕事をAIが受け持つことで、採用が難しい中でも仕事を回しやすくなります。空いた時間を、人にしかできない接客や提案に回せるのも大きな利点です。
品質をそろえ、ミスを減らせる
効果として「品質向上」を挙げた企業は30.6%でした。文書の書き方や確認の手順をAIでそろえると、担当者による出来のばらつきが小さくなります。入力の転記や数字の突き合わせのように、人が見落としやすい作業をAIに確認させると、ミスの防止にもつながります。
新しい価値を生み出せる
調査では、効果として「付加価値創出」を挙げた企業が、AIでは22.3%と、従来のITツール(7.4%)を約15ポイント上回りました。商品説明やチラシの案出し、顧客の声の分析など、これまで手が回らなかった企画の仕事に、AIを使って取り組めるようになるためです。AIは「楽をする道具」だけでなく、売上を伸ばすための道具にもなります。
ベテランの知識を会社に残せる
「この仕事はあの人しかわからない」という状態は、少人数の会社ほど起こりやすく、その人が休んだり辞めたりすると仕事が止まってしまいます。社内の手順書や過去の回答をAIに読ませておけば、ほかの社員もAIに聞きながら同じ仕事を進められます。知識を人ではなく会社に残せるのも、AI導入のメリットです。
中小企業が使いやすい主な生成AIツール

既存のAIツールから始める場合に、候補に挙がりやすい4つの生成AIを紹介します。どれも法人向けのプランがあり、社員ごとにアカウントを管理できます。料金は変わりやすいため、各社の公式ページで最新の金額を確かめてください。主な料金は AI導入の費用相場 でも紹介しています。
ChatGPT(OpenAI)
最も広く使われている生成AIです。文章の作成・要約・翻訳から、表計算のデータの分析、画像の作成まで、1つのツールで幅広くこなせます。使い方の情報が多く、社員が自分で調べながら覚えやすいのも利点です。法人向けには「ChatGPT Business」などのプランがあります(公式サイト)。
Claude(Anthropic)
長い文書を読み込んで、要点をまとめたり、内容に沿って答えたりするのが得意な生成AIです。契約書や規程、マニュアルなど、分量の多い社内文書を扱う仕事に向いています。法人向けには「Team」などのプランがあります(公式サイト)。
Microsoft 365 Copilot(Microsoft)
Word・Excel・PowerPoint・Outlook・Teamsの中で使える生成AIです。会議の要約、メールの下書き、資料の作成を、ふだん使っているソフトから離れずに行えます。すでにMicrosoft 365を使っている会社なら、社員が新しい画面を覚えなくて済むのが利点です(公式サイト)。
Gemini(Google)
Gmail・Googleドキュメント・スプレッドシートなど、Google Workspaceの中で使える生成AIです。Google Workspaceを使っている会社なら、メールや共有ファイルと組み合わせてすぐに使い始められます(公式サイト)。
ツールの選び方
迷ったときは、ふだん使っているメールや文書のソフトと同じ会社のAIを選ぶと、社内に広がりやすくなります。そのうえで、次の3点を確かめましょう。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 入力した情報の扱い | 入力した内容がAIの学習に使われない設定になっているか。法人向けプランの利用規約・データの扱いのページ |
| アカウントの管理 | 社員の追加・削除や、使える機能の制限を管理者ができるか |
| いま使っているソフトとの相性 | メール・文書・チャットなど、ふだんの仕事の画面から使えるか |
AI導入で注意したいリスクと対策

AIは便利な一方で、使い方を決めずに広げると、思わぬトラブルにつながることがあります。総務省と経済産業省がまとめた AI事業者ガイドライン でも、AIを使う事業者が気をつける点が示されています。中小企業が特に注意したいリスクと対策は次のとおりです。相談先を選ぶときも、こうしたリスクへの備えを一緒に考えてくれるかを確かめましょう。
| リスク | 起こりうること | 対策 |
|---|---|---|
| 情報の漏えい | 顧客の個人情報や社外秘の情報を、無料のAIに入力してしまう | 法人向けプランを使い、入力してはいけない情報をルールで決める |
| 誤った回答 | AIがもっともらしい誤りを答え、そのまま社外に出てしまう | 社外に出す前に、必ず人が内容を確かめる |
| 著作権 | AIが作った文章や画像が、他人の作品に似てしまう | そのまま使わず、人が手を入れ、似たものがないか確かめる |
| 社内の反発 | 「仕事を奪われる」と感じた社員が使わない | 減った時間を何に使うかを先に伝え、現場の意見を聞きながら進める |
| 効果が出ない | ツールを入れただけで、誰も使わない | 目的と測り方を先に決め、効果を数字で確かめる |
AIで作った文章や画像の著作権の考え方は AIと著作権 で詳しく解説しています。
中小企業のAI導入でつまずく5つのパターン

AI導入がうまくいかない中小企業には、よく似たパターンがあります。先に知っておけば、多くは避けられます。
ツール選びから始めてしまう
「話題のツールを入れてから、使い道を考えよう」と進めると、何に使うかが決まらないまま、利用料だけを払い続けることになりがちです。先に任せたい業務を決め、その業務に合うツールを選ぶ順番にしましょう。
いきなり全社・全業務に広げる
全社員にアカウントを配っても、使い方がわからない社員が多ければ、ほとんど使われずに終わります。まずは数人・1業務で成果を出し、その使い方を手本にして広げるほうが、結果として早く定着します。
担当者に任せきりにする
担当者が1人で進めても、ほかの部署の協力が得られなければ、業務のやり方は変わりません。経営者が目的を示し、「AIを使う時間を仕事として認める」と伝えることで、現場も動きやすくなります。外部の相談先に任せきりにする場合も同じで、社内に窓口となる人を置いておくことが欠かせません。
効果を測らない
導入前の作業時間を測っていないと、続けるべきかどうかを判断できません。「なんとなく便利」のままでは、利用料の見直しのときに真っ先に削られてしまいます。導入前と後で、作業時間を数字で比べましょう。
最初から開発に大きな費用をかける
既存のツールで試さないまま、数百万円をかけて専用のシステムを作ると、完成してから「思ったほど使わない」とわかることがあります。開発の前に、既存のツールで同じことが試せないかを必ず確かめましょう。
AI導入がうまくいく中小企業の共通点

反対に、AI導入がうまくいく中小企業には、次のような共通点があります。
経営者が自分で使っている
経営者が自らAIを使い、「こう使うと便利だった」と社内に話している会社では、社員も使い始めやすくなります。少人数の会社ほど、経営者の姿勢がそのまま社内に伝わります。
小さく始めて、段階的に広げている
1つの業務で成果を出してから次へ進むため、失敗しても損が小さく、うまくいった方法を横に広げられます。一度に大きな費用をかけないので、経営の判断もしやすくなります。
社員が学ぶ時間をとっている
AIは、使う人の聞き方しだいで答えの質が大きく変わります。短い時間でも研修や社内の勉強会を行い、うまい使い方を共有している会社ほど、使う人が増え、効果も大きくなります。
目的と効果の測り方を先に決めている
「何時間減らすか」を先に決めているため、試したあとの判断に迷いません。数字で効果を示せると、社内の理解も、次の投資の判断も得やすくなります。
中小企業のAI導入の相談先に関するよくある質問

Q. AI導入の相談は、無料でできますか?
Q. AIの知識がまったくなくても相談できますか?
Q. 公的な窓口と民間の会社、どちらに先に相談すべきですか?
Q. 複数の相談先に話を聞いてもよいですか?
Q. 相談したら、必ず契約しないといけませんか?
Q. 従業員が10人ほどの会社でも、AIを導入する意味はありますか?
Q. 中小企業のAI導入事例は、どこで探せますか?
Q. AI導入には、最低いくらかかりますか?
Q. 社内にITに詳しい人がいなくても導入できますか?
Q. 無料のAIツールを仕事で使っても大丈夫ですか?
Q. 効果が出るまで、どのくらいかかりますか?
Q. AIを導入すると、社員の仕事がなくなりませんか?
Q. 補助金は、AIツールの利用料にも使えますか?
Q. どの部署から導入するのがよいですか?
まとめ

中小企業のAI導入の相談先は、無料で課題を整理できる公的な窓口と、作って定着させるところまで頼める民間の支援先に分かれます。いまの段階に合う相談先を選び、準備を整えてから相談すれば、少ない人数でも遠回りせずにAIを使い始められます。最後に、本記事のポイントを振り返ります。
導入の費用をくわしく知りたい方は AI導入の費用相場、支援会社を1社ずつ比べたい方は AI導入支援とは?おすすめ会社の比較と選び方 もあわせてご覧ください。
