ケアマネジャー21名の居宅介護支援事業所が、1件45分かかっていた記録の入力を5分まで縮め、2026年度の内閣総理大臣表彰を受けました。使ったのは、面談の音声を文字にして要約するAIと、パソコンの作業を自動にする仕組みです。介護のAIは、大きな法人だけのものではなくなっています。厚生労働省の推計では、必要な介護職員は2026年度に約240万人、2040年度に約272万人で、2022年度より約25万人・約57万人多く確保しなければなりません(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)。

そこで本記事では、介護のAI活用事例を15件、記録・議事録、見守り・転倒予防・認知症ケア、ケアプラン作成、シフト作成・送迎・書類の4つの業務に分けて紹介します。すべて2024年10月以降に事業者や官公庁が公表した事例で、事業所の規模・使ったAI・効果の数字・出典をそろえて載せました。施設の種類ごとに向いているAI、費用と補助金、注意点、導入の進め方もあわせてまとめています。

この記事でわかること

  • 業務別の介護のAI事例がわかる
  • 小さな事業所の始め方がわかる
  • 費用と使える補助金がわかる
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介護のAI活用事例 一覧

介護のAI活用事例 一覧

本記事で紹介する15件を、1つの表にまとめました。事業者名を押すと、それぞれの事例の説明に移ります。規模の欄は、出典に職員数・床数・事業所数などが書かれているものだけを載せています。

会社 規模 業務 AI 効果 発表
おはなリハ ケアマネステーション 中小(ケアマネ21名) 記録・議事録 音声認識・生成AI 記録入力 45分→5分 2026年9月
青祥会 中堅(ケアマネ18名) 記録・議事録 生成AI 議事録 1件22.7分→12.2分 2026年8月
シーユーシー 実証2拠点・27名 介護記録 生成AI 記録時間 約20%短縮 2026年3月
東京海上日動ベターライフサービス 大企業 記録・議事録 生成AI 数値の公表なし 2026年7月
SOMPOケア 大企業 記録・議事録 生成AI 1事業所 月約10時間短縮 2026年7月
スマイルテラスきよたけ 中小(33床) 見守り 画像認識 夜間のトラブルを3日に1回程度予防 2025年9月
SENSTYLE 210床 見守り・転倒予防 画像認識 転倒 約70%減少 2024年11月
弘陵福祉会 公表なし 認知症ケア 予測AI 記録等 1日9.1分減(間接業務は増加) 2026年3月
高知県香美市 自治体 ケアプラン 生成AI 下書きが当日中に完成 2025年9月
静岡県 13事業所 ケアプラン ケアプラン作成支援AI 負担軽減と答えた人が53% 2025年3月
尾道さつき会 中小(定員70人) シフト作成 最適化AI 毎月14〜15時間→約7時間 2026年2月
いろどり福祉会 中小(職員7名) 訪問スケジュール 最適化AI 週9.5時間→5.8時間 2026年3月
善光会 公表なし 書類の送付 AIによる書類の仕分けと宛先の判別 実証中 2026年8月
水光会 中小(定員40名) 送迎 最適化AI 週6.4時間→2.5時間 2026年3月
アイニコグループ 中小 送迎ルート 生成AI 介護部門で年170時間削減 2026年7月

介護でAIが求められる背景

介護でAIが求められる背景

介護の現場でAIの活用が広がっている背景には、人手と時間、そして国の制度をめぐる3つの事情があります。

介護職員が足りない

厚生労働省の推計では、必要な介護職員の数は2026年度に約240万人、2040年度に約272万人です。2022年度の約215万人と比べると、2026年度までに約25万人、2040年度までに約57万人を新たに確保しなければなりません(出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024年7月))。

採用も簡単ではありません。2026年6月の有効求人倍率は、職業全体の1.01倍に対して、介護関係の職種は3.76倍です(出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第263回 資料1)。一方で、65歳以上の人口は2026年9月時点で3,624万人、総人口に占める割合は29.6%と過去最高を更新しました(出典:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」)。人を増やして解決するのが難しいからこそ、今いる職員の時間をAIで空ける考え方が広がっています。

国が介護テクノロジーの活用を後押ししている

国は、介護ロボットやICT、AIなどを「介護テクノロジー」と呼び、活用を進めています。2024年6月には、それまでの「ロボット技術の介護利用における重点分野」を「介護テクノロジー利用の重点分野」に改め、認知症のケアを支える機器などの3分野を加えて9分野16項目にしました(出典:経済産業省・厚生労働省「介護テクノロジー利用の重点分野」の改訂(2024年6月))。

2024年度の介護報酬改定では「生産性向上推進体制加算」ができ、見守り機器などのテクノロジーを1つ以上入れて業務の改善を続ける事業所は(Ⅱ)で月10単位、複数のテクノロジーを入れて成果が確かめられた事業所は(Ⅰ)で月100単位を算定できます(出典:厚生労働省「生産性向上推進体制加算について」)。テクノロジーを入れることが、報酬の面でも評価されるようになりました。

記録をデータとして使う「科学的介護」が進んでいる

国の科学的介護情報システム「LIFE」では、事業所が利用者のADLや体重、口腔の状態などのデータを出し、返ってくるフィードバックを使ってケアの質を上げるPDCAの流れを進めています(出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第264回 資料3)。記録を紙や手入力のまま抱えていると、こうしたデータの活用にも手が回りません。記録の負担をAIで減らすことは、データを使ったケアに進むための土台づくりでもあります。

介護でAIができること

介護でAIができること

今回の15件と国の資料を見ると、介護でのAIの使い道は、大きく次の6つに分けられます。

記録・議事録の作成

面談や会議、日々のケアの様子を話した音声を、AIが文字にして要約し、記録や議事録の下書きを作ります。今回の事例でいちばん多い使い道で、ケアマネジャーの支援経過や会議録、施設の介護記録、委員会の議事録まで広がっています。外国人の職員が母語や短い言葉で話した内容を、日本語の記録の文章に整える使い方も出てきました。

見守り・転倒の予防

居室のカメラやセンサーの情報から、AIが起き上がりや離床、転倒などの動きをとらえて、職員のスマートフォンに知らせます。映像で様子を確かめてから動けるので、要らない訪室が減り、転倒のあとに原因を確かめることもできます。

体調の変化や認知症の人の行動の予測

ベッドのセンサーやウェアラブル端末のデータから、体調の変化の兆しや、認知症の人の行動を予測して、職員に知らせたりケアの方法を提案したりします。病気の診断ではなく、職員の観察を助ける参考の情報という位置づけです。研究や実証の段階のものが多い分野です。

ケアプランの作成

アセスメントの情報や面談の録音から、ケアプランの原案や下書きをAIが作ります。時間の削減に加えて、経験の浅いケアマネジャーが、どんな視点でプランを考えるのかを学ぶ材料としても使われています。

シフト作成・送迎ルート・書類の事務

人員配置基準や職員の希望を踏まえたシフトの原案づくり、利用者の送迎ルートの最適化、FAX・メール・郵送が入り混じる書類の仕分けなど、ケアの外側の業務です。毎月・毎日くり返す仕事ほど、減った時間がはっきり見えます。

ロボット・排泄の予測など、AI以外の介護テクノロジー

移乗や入浴を助けるロボット、排泄のタイミングを知らせるセンサー、会話をするコミュニケーションロボットなども、国の「介護テクノロジー」の重点分野に入っています。これらはAIを使うものと使わないものがあり、本記事では、出典でAIを使っていると確かめられた事例だけを載せています。

記録・議事録のAI活用事例

記録・議事録のAI活用事例

面談や会議の音声から記録・議事録の下書きを作る事例です。今回の事例でいちばん多く、居宅介護支援のケアマネジャーから施設の介護職まで広がっています。

おはなリハ ケアマネステーション|ケアマネ21名の事業所が、1件45分の記録入力を5分に

会社 オハナ・リハ株式会社(おはなリハ ケアマネステーション、茨城県つくば市)
規模 ケアマネジャー21名
業務 居宅介護支援の記録入力、支援経過・議事録の作成
AIの種類・ツール 音声認識・生成AI(ミルモレコーダー)とRPA(ミルモオートメーション)/ウェルモ
効果 1件あたりの記録入力は平均45分(手入力)→15分(音声入力AI)→5分(RPA導入後)。支援経過・議事録の作成は職員1人あたり月20時間→5時間(約75%削減)。職員1人あたりの利用者数(要介護換算)34.1人→40.8人(2024年12月と2025年12月の比較、事業所調べ)
発表 2026年9月
出典 ウェルモ プレスリリース

茨城県つくば市の居宅介護支援事業所です。以前は紙・FAX・メールが混ざり、事務作業をケアマネジャー自身が抱えていたため、残業や持ち帰りの仕事が当たり前になっていました。子育て中の職員が仕事を続けられなくなることもあったといいます。

2024年12月から、面談や会議の音声をAIが文字にして要約する「ミルモレコーダー」と、パソコンの作業を自動にするRPA「ミルモオートメーション」を入れました。初回の面談や会議のあいだも相手との会話に集中でき、その場で記録ができあがります。若手の職員を「ICTリーダー」にして、職員の手で改善を続けています。

1件あたりの記録入力は、手入力の平均45分から、音声入力AIで15分、RPAを足して5分になりました。支援経過と議事録の作成は職員1人あたり月20時間から5時間に減り、1人が担当する利用者は34.1人から40.8人に増えています。この取組で、2026年度の介護職員の働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰を受けました。

音声で記録の下書きを作ったあとの「転記」まで自動にすると、AIだけを入れたときより時間がもう一段減ります。

青祥会|厚労省の実証で、ケアマネの議事録づくりが1件22.7分から12.2分に

会社 社会福祉法人青祥会(滋賀県)
規模 居宅介護支援のケアマネジャー18名(実証の対象は8名)
業務 居宅介護支援の会議録・支援経過の作成
AIの種類・ツール 生成AI(音声の文字起こしと要約、noman/scoville)
効果 議事録の作成は1件あたり22.7分→12.2分(46%短縮)。残業のない職員の割合は63%→88%。担当件数はケアマネジャー1人あたり平均約35名→約39名(法人へのヒアリング)
発表 2026年8月
出典 scoville プレスリリース(PR TIMES)
厚生労働省 介護テクノロジー等による生産性向上の取組に関する調査及び効果測定事業 報告書Ⅲ

居宅介護支援のケアマネジャーは、訪問やサービス担当者会議に加えて、会議録や支援経過も書きます。記録が帰社後に持ち越されやすく、時間だけでなく気持ちの負担も大きい仕事です。

同法人の2つのケアプランセンターは、厚生労働省の令和7年度の実証事業で、会議の録音から文字起こしと要約を行う介護向けのAI「noman」を使いました。AIが作った下書きを、ケアマネジャーが要点を確かめながら整える形です。

議事録の作成は1件22.7分から12.2分へと46%短くなり、残業のない職員の割合は63%から88%に上がりました。法人によると、ケアマネジャー1人あたりの担当件数も平均約35名から約39名に増え、浮いた時間を新しい依頼の受け入れや地域への広報に回しています。

記録の時間を減らすことは、残業を減らすだけでなく、新しい利用者を受け入れる余力をつくることにもつながります。

シーユーシー|ホスピス型住宅の介護記録を Gemini で下書きし、システム投資なしで約20%短縮

会社 株式会社シーユーシー(東京都港区)
規模 実証はホスピス型住宅「ReHOPE」2拠点・スタッフ27名(ReHOPE は全59拠点)
業務 介護記録の作成
AIの種類・ツール 生成AI(Google の Gemini アプリ「ケア記録アシスト」)
効果 平均の記録時間 4.0分→3.3分(約20%短縮)。スタッフ1人あたり月約3.5時間の削減。全59拠点に広げた場合は年間約3万時間の削減の見込み
発表 2026年3月
出典 シーユーシー プレスリリース(Digital PR Platform)
Google Japan Blog

介護の記録は、業務全体の中でも大きな時間を占めます。外国人のスタッフにとっては、専門用語や決まった言い回しで日本語の記録を書くこと自体が高い壁で、日本人のスタッフが確認と手直しに時間を取られていました。

同社は、Google の生成AI「Gemini アプリ」の「ケア記録アシスト」を使い、短い音声メモや単語の並びから介護記録の文章を作る運用を試しました。専用のシステムは作らず、今の介護ソフトもそのまま使い、指示文(プロンプト)の調整だけで進めています。スタッフがAIの文章を確かめてから保存します。

平均の記録時間は4.0分から3.3分へ約20%短くなり、スタッフ1人あたり月約3.5時間が浮きました。全59拠点に広げれば年間約3万時間の削減が見込めるとしています。インドネシア出身の職員からは、母語で話しても正しい日本語の記録になるという声も出ています。

専用のシステムを作る前に、すでにある生成AIと今の介護ソフトの組み合わせで試すと、費用をかけずに効果を確かめられます。

東京海上日動ベターライフサービス|居宅と施設の全事業所に会議記録のAIを入れ、新人の育成にも使う

会社 東京海上日動ベターライフサービス株式会社(東京都世田谷区)
規模 居宅介護支援43事業所(ケアマネジャー約160名)、施設11事業所、訪問介護47事業所
業務 サービス担当者会議・モニタリング面談・委員会などの記録
AIの種類・ツール 生成AI(音声の文字起こしと要約、noman/scoville)
効果 数値の公表なし(担当件数や残業時間を指標に定着を追っている)
発表 2026年7月
出典 東京海上日動ベターライフサービス・scoville プレスリリース(PR TIMES)

記録の負担はケアマネジャーだけのものではありません。施設のカンファレンスや委員会の議事録、訪問介護のサービス提供責任者がつくる手順書など、介護のあらゆる職種に共通する課題でした。

同社は2025年8月に居宅介護支援で先に使い始め、居宅介護支援の全43事業所と施設の全11事業所に、録音から記録の下書きを作るAI「noman」を広げました。今年度中に訪問介護の全47事業所にも入れる予定です。どの場面でいつ使うかをまとめた手引きを作り、今の業務の流れを変えずに組み込んでいます。

効果の数字は公表されていませんが、事業所ごとの利用状況に加えて、担当件数や残業時間も見て定着を追っています。新人のケアマネジャーが、ベテランの会議の進め方を録音と記録で学ぶ使い方も始まっています。

全社に広げるときは、ツールの利用率だけでなく、残業時間や担当件数など「働き方がどう変わったか」の指標も一緒に追うと定着を確かめやすくなります。

SOMPOケア|全国約1,100拠点にAI議事録を入れ、1事業所あたり月約10時間を短縮

会社 SOMPOケア株式会社(東京都品川区)
規模 全国約1,100拠点・約3,500人が導入の対象
業務 会議・面談の議事録や業務記録の作成
AIの種類・ツール 生成AI(音声の文字起こしと要約、noman/scoville)
効果 AI議事録で1事業所あたり月およそ10時間の短縮。ケアプランの原案を作るAIは、初回の作成1回あたり3時間ほどの効率化を見込む(実証中)
発表 2026年7月
出典 介護ニュースJoint
IT Leaders

介護職は日々のケアに加えて、担当者会議やモニタリング面談、カンファレンスの議事録に多くの時間を使っています。1,000を超える拠点に広げるうえでは、居宅介護支援・訪問介護・通所介護・施設で帳票の項目や書式が違い、AIの出力をそのまま使えないことが壁になりました。

同社は2026年3月までに、会議や面談の音声を文字にして要約し、業務ごとのテンプレートで記録の下書きを作る「noman」を全社に入れました。業種ごとに帳票の担当者を交えた分科会をつくってテンプレートを直し、出力を今の書式にそのまま写せるようにしています。希望する事業所への訪問の支援と、専用の問い合わせ窓口も設けました。

AI議事録の効果は、1事業所あたり月およそ10時間です。ケアプランの原案を自動で作るAIの実証も進めており、初回のケアプランなら1回あたり3時間ほどの効率化を見込んで、今年度中の本格導入を計画しています。

AIの出力の形を、現場がいま使っている帳票の書式に合わせておくと、転記の迷いがなくなり使われ続けます。

見守り・転倒予防・認知症ケアのAI活用事例

見守り・転倒予防・認知症ケアのAI活用事例

カメラやセンサーとAIで、夜間の見守りや転倒の予防、認知症の人の行動の予測に取り組んだ事例です。

スマイルテラスきよたけ|33床の施設が開設と同時に全床へAIの見守りを入れ、夜間のトラブルを先回り

会社 学校法人宮崎南学園(スマイルテラスきよたけ、宮崎県宮崎市)
規模 33床
業務 夜間の見守り・転倒への対応
AIの種類・ツール 画像認識(見守りシステム HitomeQ ケアサポート/コニカミノルタ)
効果 夜間の居室での排泄のトラブルを、3日に1回くらい未然に防げた場面がある(施設長の話)
発表 2025年9月
出典 コニカミノルタ HitomeQ 導入事例
テクノエイド協会 介護ロボット全国フォーラム資料(コニカミノルタ)

宮崎保健福祉専門学校を運営する学校法人が、2025年4月に宮崎市清武で開いた施設です。夜間に居室で排泄のトラブルがあると、スタッフ1人がかかりきりで片づけることになり、夜勤の業務を圧迫していました。

開設と同時に全33床へ、AIで人の動きをとらえる見守りシステム「HitomeQ ケアサポート」を入れ、スマートフォン1台で通知とライブ映像を見られるようにしました。転倒したときの映像は、家族への説明や訪問診療の医師への報告にも使っています。

映像からトイレに行く時間帯や傾向が見えるようになり、トラブルの前に駆けつけられる場面が3日に1回くらいあるといいます。映像で様子を確かめてから動くため、要らない訪室も減りました。

見守りの映像は、事故を防ぐだけでなく、家族や医師に事実を見せて説明する材料としても使えます。

SENSTYLE|210床の有料老人ホームが「通知の映像は必ず見る」と決め、転倒を約70%減らす

会社 株式会社SENSTYLE(メディケア癒やしDX京町台。熊本を中心に九州で住宅型有料老人ホーム3施設を運営)
規模 210床(平均要介護度4.2)
業務 見守り・転倒予防・事故後の振り返り
AIの種類・ツール 画像認識(見守りシステム HitomeQ ケアサポート/コニカミノルタ)
効果 転倒が約70%減少
発表 2024年11月
出典 コニカミノルタ HitomeQ 導入事例
テクノエイド協会 介護ロボット全国フォーラム資料(コニカミノルタ)

平均要介護度4.2と、医療と介護の必要度が高い入居者が多い210床の施設です。転倒のあとに開くカンファレンスも、状況を知るための聞き取りに時間がかかり、なかなか開けませんでした。

見守りシステム「HitomeQ ケアサポート」を入れ、通知の映像は必ず見て、訪室するか、どれを先にするかを映像で決めるルールにしました。全員で一斉に使い始めるのではなく、フロアの管理者が先に使いこなし、つまずく点を1つずつルールにしてから広げています。転倒1件ごとに24時間以内にカンファレンスを開く決まりも、映像があることで回るようになりました。

転倒は約70%減り、長い廊下を端から端まで歩く必要も減りました。ナースコールの件数は、入居者のアセスメントや、フロアごとの業務量をそろえる材料にも使っています。

新しい機器は、まず管理者の数人が使いこなして運用のルールを決めてから全員に広げると、現場で使われなくなるのを防げます。

弘陵福祉会|認知症の人の行動をAIが予測する仕組みを特養で試し、記録の時間は減ったが課題も見えた

会社 社会福祉法人弘陵福祉会(特別養護老人ホーム 六甲の館)
規模 公表なし(実証は特養1施設)
業務 認知症ケア(行動の予測とケアの提案)、記録
AIの種類・ツール 予測AI(認知症ケア補助AIシステム DeCaAI、環境センサー・ウェアラブル端末)
効果 「記録・利用者のアセスメント・情報収集等」の時間が職員1人1日あたり事後①で9.1分、事後②で5.1分減少。一方で「間接業務」の時間は事後①で25.5分、事後②で53.7分増加
発表 2026年3月
出典 厚生労働省 介護テクノロジー等による生産性向上の取組に関する調査及び効果測定事業 報告書Ⅲ

認知症の人の行動は日によって変わり、とくに職員の少ない夜間は、落ち着いて対応するのが難しい場面があります。

厚生労働省の令和7年度の実証事業で、部屋の環境センサーとウェアラブル端末の情報から、AIが認知症の人の行動を予測し、ケアの方法を提案して記録も残す「DeCaAI」を試しました。同じ実証には訪問介護の事業所も参加しています。

特養では、記録や情報収集などの時間が職員1人1日あたり9.1分(事後①)減りましたが、間接業務の時間は増えています。職員からは、AIに利用者の状況を詳しく入れることで行動のパターンがつかめた、職員の少ない夜間も気持ちに余裕をもって対応できたという声が出ました。一方で、実証のあいだは行動上の問題がほとんど起きず、AIの効果はあまり感じなかったという意見もあります。

新しいAIは、減った時間だけでなく、入力などで増えた時間も一緒に測っておくと、本当に続けるべきかを判断できます。

ケアプラン作成のAI活用事例

ケアプラン作成のAI活用事例

面談の録音やアセスメントの情報から、ケアプランの下書きをAIで作る事例です。自治体や県が実証を行っています。

高知県香美市|面談の録音から、ケアプランの下書きをその日のうちに2人分つくる

会社 高知県香美市
規模 公表なし
業務 要支援者のケアプラン(基本情報・アセスメント・予防プラン)の作成
AIの種類・ツール 生成AI(面談の音声の解析。CareFran のAIケアプラン作成支援)
効果 13時30分に1人目のアセスメントを始め、16時30分に2人目まで終えた時点で、基本情報シート・アセスメントシート・予防プランの下書きが2人分できあがった(従来は翌日以降に半日以上)
発表 2025年9月
出典 CareFran ニュース

要支援の人のケアプランは、報酬が低いわりに作成に時間がかかり、ケアマネジャーや地域包括支援センターの業務を圧迫していました。

香美市は、高知県の制度をきっかけに CareFran と組み、生成AIでケアプランの作成を支える実証を始めました。担当者が利用者とケアマネジャーの面談に同席して録音し、その音声を生成AIで解析して、ケアプランの下書きをケアマネジャーに渡します。

午後1時半に始めた2人分のアセスメントが終わった午後4時半には、基本情報シート・アセスメントシート・予防プランの下書きが2人分そろっていました。従来は翌日以降に半日以上かかっていた作業です。方言の会話も、大きな手直しなしで扱えたといいます。

方言や話し言葉が多い面談でも、録音から下書きを作れるかを、まず自分たちの地域の会話で試してみる価値があります。

静岡県|県の実証で、2市町13事業所のケアマネがケアプランを支えるAIを7か月使う

会社 静岡県(裾野市・長泉町の居宅介護支援事業所・地域包括支援センター)
規模 13事業所・24アカウント
業務 アセスメント、ケアプランの作成
AIの種類・ツール ケアプラン作成支援AI(SOIN/シーディーアイ)
効果 「適切なケアマネジメント手法」に基づく業務の負担が「軽減された」「少し軽減された」と答えたケアマネジャーは53%。「改善の可能性」を意識したケアマネジメントが不十分だった人のうち71%が「変化があった」「やや変化があった」と回答
発表 2025年3月
出典 静岡県 ケアマネジメント業務AI導入支援事業の実施成果
静岡県 利用者アンケート実施結果(PDF)

静岡県は、質の高いケアプランを作れるケアマネジャーを育てることと、ケアマネジメントの業務を効率よくすることを目的に、ケアプランの作成を支えるAIの実証を行いました。

2024年9月から2025年3月までの7か月、裾野市と長泉町の13事業所のケアマネジャーと地域包括支援センターの職員が、ケアマネジメント支援システム「SOIN」を使い、使う前と後で業務がどう変わったかを調べました。

「適切なケアマネジメント手法」に沿った業務の負担が軽くなったと答えた人は53%でした。利用者の「改善の可能性」を意識したケアマネジメントが十分でなかった人のうち、71%が変化を感じています。AIが役に立つ場面としては、知識の補完やケアプランの作成、新人の教育が多く挙がりました。

ケアプランのAIは、時間を減らす道具としてだけでなく、経験の浅いケアマネジャーが考え方を学ぶ道具としても使えます。

シフト作成・送迎・書類のAI活用事例

シフト作成・送迎・書類のAI活用事例

シフトや訪問・送迎のスケジュール、書類の送付など、ケアの外側の事務でAIを使う事例です。

尾道さつき会|定員70人の特養が、毎月14〜15時間かかっていたシフト作成をAIの原案で半分に

会社 社会福祉法人尾道さつき会(特別養護老人ホーム 星の里、広島県尾道市)
規模 定員70人
業務 職員のシフト作成
AIの種類・ツール 最適化AI(シフト自動作成 miramos/コニカミノルタ)
効果 シフト作成は毎月14〜15時間→約7時間(将来は3〜4時間程度まで減らせる見込み)。勤怠管理ソフトへの入力は15分程度に
発表 2026年2月
出典 介護ニュースJoint(コニカミノルタ提供の記事)

多くの職員が交代制で働く特養では、シフトの作成がリーダー職員に偏っていました。エクセルで組むと完成までに毎月14〜15時間かかり、残業も当たり前になっていたといいます。

同施設は、人員配置基準や勤務の間隔、職員どうしの相性などの条件を踏まえて、AIがシフトの原案を作る「miramos」を入れました。トライアルで自施設の複雑な運用に合うことを確かめてから決めています。作ったシフトは、勤怠管理ソフトにCSVで取り込めます。

導入から数カ月で、シフト作成は約7時間と半分ほどになりました。勤怠管理ソフトへの入力も15分程度で済み、転記のミスもなくなりました。「AIが作った原案」というひと呼吸が入ることで、シフトへの感情的な反発も減ったといいます。

シフトのように人の不満が集まりやすい仕事は、AIの原案を土台にすると、作る人の時間だけでなく気持ちの負担も軽くなります。

いろどり福祉会|職員7名の訪問介護事業所が、週9.5時間の訪問スケジュールづくりをAIで5.8時間に

会社 社会福祉法人いろどり福祉会(ヘルパーステーション花紬、三重県津市)
規模 サービス提供責任者2名・介護職員5名(利用者46名)
業務 訪問介護の訪問スケジュールの作成と調整
AIの種類・ツール 最適化AI(訪問スケジュール作成ツール ZEST。介護記録ソフトと連携)
効果 訪問スケジュールの作成・調整の時間が週9.5時間→5.8時間(3.7時間減少)。うち調整の時間は週4.7時間→1.8時間
発表 2026年3月
出典 厚生労働省『介護テクノロジー等のパッケージ導入モデル(改訂版)〜介護テクノロジー取組事例集〜』
厚生労働省 介護テクノロジー等による生産性向上の取組に関する調査及び効果測定事業 報告書Ⅱ

訪問介護のスケジュールは、いくつもの要素を考えながら組む必要があり、時間がかかっていました。しかもスケジュールは事業所のパソコンでしか作れず、外出先では手を付けられませんでした。

同事業所は厚生労働省の事業で、AIが訪問スケジュールを作るツールを入れ、介護記録ソフトとつなぎました。これまでのやり方と並べて操作を練習し、事業所の運用に合わせて設定を直したうえで、リーダーが抜け漏れを確かめる作業をやめ、介護職員はスマートフォンで予定を見る形に変えています。

スケジュールの作成と調整にかかる時間は、週9.5時間から5.8時間になりました。とくに調整の時間が週4.7時間から1.8時間に減っています。外出先のタブレットで操作できるので、訪問のあと事業所に戻らずに直帰できるようにもなりました。

AIの導入とあわせて、人が二重に確かめていた作業をやめると、減る時間がはっきり出ます。

善光会|FAX・メール・郵送が入り混じる書類の送付を、AIの仕分けで一本化する実証

会社 社会福祉法人善光会(東京都大田区)
規模 公表なし
業務 請求書・報告書・計画書などの書類の受け取りと送付
AIの種類・ツール AIによる書類の仕分けと宛先の判別(連携ジョシュ/ジョシュ)
効果 数値の公表なし(2026年5月から実証中)
発表 2026年8月
出典 社会福祉法人善光会 ニュース

介護の現場では、請求書や報告書、計画書などを、相手に合わせて郵送・FAX・メール・チャットなどで送り分ける必要があります。アナログとデジタルが混ざった書類の扱いが、職員の事務の負担になっていました。

同法人は、取り込んだ書類にAIがラベルを付けて仕分けし、送るときは書類名や送り先、利用者の情報から宛先と送り方を判別して、FAX・メール・郵送に変えて届けるサービス「連携ジョシュ」の実証を、2026年5月から現場で行っています。

効果の数字はまだ公表されていませんが、送付の業務がどれだけ効率よくなるか、現場の運用に合うかを確かめています。

介護のAIはケアの記録だけではありません。毎日くり返す書類の送り分けのような事務も、AIに任せられる候補になります。

水光会|定員40名のデイサービスが、ベテラン頼みだった送迎表づくりをAIに任せ、週6.4時間を2.5時間に

会社 社会福祉法人水光会(しらぬい荘デイサービスセンター、熊本県宇城市)
規模 定員40名(送迎スケジュールの作成者2名・介護職員12名)
業務 通所介護の送迎スケジュールの作成
AIの種類・ツール 最適化AI(送迎スケジュール作成ツール DRIVEBOSS)
効果 送迎スケジュールの作成時間が週6.4時間→2.5時間(3.9時間減少)。利用者のアセスメントに関する時間は週2.0時間→2.8時間に増加
発表 2026年3月
出典 厚生労働省『介護テクノロジー等のパッケージ導入モデル(改訂版)〜介護テクノロジー取組事例集〜』
厚生労働省 介護テクノロジー等による生産性向上の取組に関する調査及び効果測定事業 報告書Ⅱ

送迎の前日の夕方に、翌日の送迎が要るかを確かめ、名札をボードに並べて送迎表を作っていました。経験をもとに組むため、作れる職員が限られ、その人たちに負担が集まっていました。

同施設は厚生労働省の事業で、AIが送迎のルートとスケジュールを組むツールを入れました。ベンダーが何度も訪れて助言し、操作には1か月ほどで慣れたといいます。これまでとは違うルートをAIが示し、新しい気づきにもつながりました。

送迎表づくりは週6.4時間から2.5時間になり、浮いた時間で利用者のアセスメントの時間を増やしました。名札の準備や紙への書き写しもなくなり、送迎表を長く担当していたベテランの職員が辞めたあとも、新しい職員が作れています。

経験のある人しかできない仕事をAIに置き換えると、時間だけでなく、その人が辞めたときに仕事が止まる心配も減らせます。

アイニコグループ|住宅と介護を営む中小企業が、送迎ルートの最適化で介護部門の年170時間を減らす

会社 アイニコグループ株式会社(奈良県・京都府南部)
規模 公表なし(中小企業。全10事業部)
業務 介護事業部門の利用者の送迎ルート(全社のAI活用プロジェクトの一部)
AIの種類・ツール 生成AI(ChatGPT など各種のAIツール)
効果 介護事業部門は、送迎ルートの最適化システムの作成などで年間170時間の削減。全10事業部の合計では年間2,247時間の削減
発表 2026年7月
出典 総務省『令和8年版 情報通信白書』アイニコグループの事例

奈良県や京都府南部で、注文住宅、リフォーム、介護、保育などを手がける中小企業です。社内で ChatGPT などは入っていたものの個人の利用にとどまり、業務全体にどう広げるかが課題でした。

支援会社と組んで全社員向けの勉強会を開いたあと、全10事業部から2名ほど、計21名が参加する1年間のAI活用プロジェクトを行いました。週1回1時間ほどの勉強会で進み具合を確かめ、3か月・6か月・12か月の節目で成果を共有しています。介護事業部門は、利用者の送迎ルートを最適にするシステムづくりに取り組みました。

介護事業部門では、送迎ルートの最適化などで年間170時間を減らしました。全社では年間2,247時間の削減です。個人情報をAIに入れないことなど、最低限のルールを決めたうえで使っています。

介護の部門だけで抱え込まず、会社全体のAIの取組に参加すると、ほかの部門の知恵を借りて送迎のような業務にも手を付けやすくなります。

施設の種類・職種ごとに見る、向いているAI

施設の種類・職種ごとに見る、向いているAI

同じ「介護」でも、施設の種類や職種によって、時間を取られている業務は違います。今回の事例をもとに、どこから始めると効果が見えやすいかを整理しました。

施設の種類ごとの始めどころ

施設・サービスの種類 始めやすいAI 今回の事例
居宅介護支援(ケアマネ事業所) 面談・会議の音声から記録を作るAI、ケアプランの原案を作るAI おはなリハ、青祥会、東京海上日動ベターライフサービス、香美市、静岡県
特養・有料老人ホームなどの入居施設 見守りのAI、介護記録の下書き、シフト作成 スマイルテラスきよたけ、SENSTYLE、弘陵福祉会、シーユーシー、尾道さつき会
通所介護(デイサービス) 送迎ルートとスケジュールの作成 水光会
訪問介護 訪問スケジュールの作成、手順書や記録の下書き いろどり福祉会、東京海上日動ベターライフサービス(今年度中に導入予定)
法人の本部・事務 書類の仕分けと送付、全社での生成AIの活用 善光会、アイニコグループ

職種ごとの使い方

ケアマネジャーは、記録と議事録、ケアプランの作成と、AIで減らせる書類の仕事がとくに多い職種です。介護職は、日々の介護記録の下書きと、夜間の見守りでAIの効果が出やすくなります。施設長やリーダー職員は、シフトの作成にかかる時間を減らせます。まず「誰の、どの書類に、毎月何時間かかっているか」を書き出すと、最初に入れるAIが決まります。

中小の事業所の事例から見えること

中小の事業所の事例から見えること

今回の事例のうち、職員数や床数がわかる中小規模の事業所の事例には、共通する始め方が4つあります。

いちばん時間を取られている書類から始めている

おはなリハ ケアマネステーションと青祥会は、ケアマネジャーの記録と議事録、尾道さつき会はリーダー職員のシフト作成から始めました。どれも、毎月必ず発生し、特定の人に負担が偏っていた仕事です。効果が数字で見えやすい書類の仕事を1つに絞ることが、小さな事業所の始め方の基本です。

介護に特化した既製のツールを使っている

今回の中小の事例の多くは、自分たちでシステムを作らず、介護向けの既製のツールを選んでいます。シーユーシーのように、すでにある生成AIと今の介護ソフトを組み合わせて、システム投資なしで始めた例もあります。

AIの後ろの作業まで見直している

おはなリハは、音声AIで記録を作るだけでなく、介護ソフトへの転記をRPAで自動にして、45分を5分にしました。尾道さつき会も、勤怠管理ソフトへの取り込みをCSVに変えています。AIを入れた前後の作業までつなげると、減る時間がもう一段大きくなります。

浮いた時間の使い道を決めている

青祥会は浮いた時間で新しい依頼を受け入れ、おはなリハは職員との対話や若手の育成に充てました。時間を減らすことをゴールにせず、利用者と向き合う時間や受け入れの数に変えている点が共通しています。

導入にかかる費用・期間と、使える補助金

導入にかかる費用・期間と、使える補助金

AIの導入にかかる費用は、既製のツールを月額で使うのか、機器を設置するのか、自社に合わせて作るのかで大きく変わります。今回の事例に出てきた使い方ごとに、目安をまとめました。

使い方ごとの費用の目安

使い方 主な形 費用の目安
記録・議事録の作成 介護向けの音声AIのサービスを契約する。汎用の生成AIを使う形もある 月額の利用料が中心。使う事業所の数や人数で変わる
見守り 居室にカメラやセンサーを設置し、スマートフォンで通知を受ける 機器と設置の費用に、月額の利用料が加わる形が多い。床数に比例して増える
ケアプランの作成 ケアプランの作成を支えるAIのサービスを契約する ケアマネジャー1人ごとの月額が多い
シフト作成 シフトを自動で作るサービスを契約する 月額の利用料が中心。トライアルで自施設の条件に合うかを確かめてから決める
送迎や書類など、自社の業務に合わせた仕組み 生成AIを使って自社で作るか、外部に作ってもらう 範囲によって大きく変わる。見積もりで範囲をそろえて比べる

見積もりの内訳や比べ方は、AI導入の費用相場とAI開発・PoCの費用相場で詳しく説明しています。

事例に見る、試し始めてから広げるまでの期間

今回の事例のうち、試し始めた時期とその後がわかるものを並べました。多くの法人が、1つの事業所や数か月の試行で効果を確かめてから、ほかの事業所へ広げています。

事業者 試し始め その後
おはなリハ ケアマネステーション 2024年12月に音声入力AIとRPAを導入 1年後の2025年12月に記録入力が1件5分に
東京海上日動ベターライフサービス 2025年8月に居宅介護支援で先行導入 居宅介護支援と施設の全事業所へ。訪問介護へも今年度中に導入予定
SOMPOケア 公表なし 2026年3月までに全約1,100拠点へ。ケアプランのAIは実証中
静岡県 2024年9月から7か月の実証 2025年3月に結果を公表
シーユーシー ReHOPE 2拠点・27名で実証 全59拠点に広げた場合の効果を試算

介護のAI導入で使える主な補助金

介護事業所がAIや見守り機器、介護ソフトを入れるときは、次の2つの補助金が代表的です(2026年10月時点)。

補助金 向いている使い方 補助の上限 補助率
介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金。都道府県が実施) 見守り機器などの介護テクノロジー、介護ソフトなどの介護業務支援、複数を組み合わせたパッケージ型の導入 移乗支援・入浴支援は1機器100万円、それ以外の機器は1機器30万円。介護業務支援は職員数に応じて100万〜250万円。パッケージ型は400万〜1,000万円 要件を満たすと3/4を下限、それ以外は1/2を下限(都道府県で異なる)
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) AIの機能を持つソフトウェアやクラウドのサービスを入れる。介護のサービス業や社会福祉法人(従業員300人以下)も対象 通常枠で5万円以上450万円以下 1/2以内(条件を満たすと2/3以内)

介護テクノロジー導入支援事業は、国の示す枠の中で都道府県が要件と上限を決めます。たとえば宮城県の2026年度の案内では、補助率は5分の4、パッケージ型の上限は1事業所750万円で、IT導入補助金などほかの補助金と重ねて受けることはできません(出典:宮城県「令和8年度介護テクノロジー導入支援事業補助金の概要」)。申請の前に、事業所のある都道府県の最新の案内を確かめることが欠かせません。補助金の全体像は、AI導入に使える補助金でまとめています。

補助金とあわせて確かめたい加算

入所・泊まり・居住系などのサービスでは、見守り機器などのテクノロジーを入れ、委員会を開いて業務の改善を続けると、生産性向上推進体制加算を算定できます。(Ⅱ)は月10単位、(Ⅰ)は月100単位で、どちらも1年以内ごとに1回、業務改善の取組の効果を示すデータを提供することが条件です(出典:厚生労働省「生産性向上推進体制加算について」)。補助金で機器を入れるときに、加算の要件もあわせて満たせるかを確かめておくとよいでしょう。

AIに任せられないこと・導入の注意点

AIに任せられないこと・導入の注意点

ケアの判断と記録の最終確認は人が持つ

今回の事例では、AIが作った記録やケアプランの下書きを、職員やケアマネジャーが確かめて直してから使っています。体調の変化を知らせるAIも、病気の診断ではなく観察の参考という位置づけです。AIは判断の材料と下書きを早く出す道具と考え、ケアの判断と責任は人が持つ形にしておくことが大切です。

利用者の情報とカメラの映像の扱いを決めておく

介護の記録には、病気や生活のこと、家族のことなど、とくに配慮が要る個人の情報が多く含まれます。生成AIに記録を入れるなら、入力した情報がAIの学習に使われない法人向けのサービスを選ぶことが前提です。アイニコグループのように、使ってよい情報とそうでない情報を最低限のルールとして決めておきましょう。見守りのカメラは、入居者と家族に目的と映像の扱いを説明し、了解を得たうえで使います。

減った時間だけでなく、増えた手間も測る

弘陵福祉会の実証では、記録などの時間が減った一方で、間接業務の時間は増えました。AIに情報を入れる作業や、新しい機器の扱いに慣れるまでの手間は、導入の前には見えにくいものです。試すときは、減った時間と増えた時間の両方を記録しておきましょう。

現場が使い続けられる形にする

SOMPOケアは帳票の書式に出力を合わせ、SENSTYLE は管理者が先に使いこなしてから全員に広げました。東京海上日動ベターライフサービスは、いつ使うかの手引きを作っています。年配の職員がスマートフォンの操作に慣れるまで時間がかかったという声もあります。精度だけでなく、現場が毎日使い続けられるかどうかも、導入の前に確かめておきたい点です。

介護でAIを導入する進め方

介護でAIを導入する進め方

今回の事例に共通する流れを、5つのステップにまとめました。

01

AIに任せたい業務を1つ決め、今の時間を測る

記録、議事録、ケアプラン、シフト、夜間の見守りなど、毎日・毎月くり返していて時間のかかる業務を1つ選びます。誰が、1件あたり・1か月あたり何分かけているのかを、導入の前に測っておきます。

02

使うルールを決める

AIに入れてよい情報、記録を保存する前に誰が確かめるか、カメラの映像を誰が見られるかを決めます。利用者や家族への説明が要るものは、ここで準備します。

03

1つの事業所で期間を区切って試す

トライアルを使い、1つの事業所やフロアで数か月試します。リーダーや管理者が先に使いこなし、つまずいた点を運用のルールに足していきます。

04

効果を数字で確かめる

1件あたりの時間、残業、担当件数、転倒の件数などを、試す前と比べます。減った時間だけでなく、入力などで増えた手間も確かめます。

05

ほかの事業所に広げ、浮いた時間の使い道を決める

うまくいった使い方を手引きにして、ほかの事業所やサービスに広げます。浮いた時間を、利用者と向き合う時間、新しい受け入れ、職員の育成のどれに回すのかも決めておきます。

よくある質問

よくある質問
Q. 小さな介護事業所でもAIを導入できますか?
できます。本記事でも、ケアマネジャー21名の居宅介護支援事業所や、33床の施設、定員70人の特養の事例を紹介しました。介護向けの音声AIやシフト作成のサービスは月額で使えるものが多く、すでにある生成AIと今の介護ソフトを組み合わせて、システム投資なしで始めた例もあります。
Q. 介護でAIの効果が出やすいのはどの業務ですか?
今回の事例では、記録と議事録の作成で時間の削減が数字で示されているものが多く、1件45分が5分、1件22.7分が12.2分などの例があります。ほかに、シフト作成(毎月14〜15時間が約7時間)や、見守りによる転倒の減少(約70%減)も報告されています。
Q. 介護のAI導入に使える補助金はありますか?
介護テクノロジー導入支援事業(都道府県が実施)が代表的です。見守りなどの介護テクノロジーや、介護ソフトなどの介護業務支援が対象になります。補助の上限や率、申請の時期は都道府県ごとに違うため、事業所のある都道府県の案内を確かめてください。くわしくは本記事の補助金の章で説明しています。
Q. 利用者の記録を生成AIに入れても大丈夫ですか?
入力した情報がAIの学習に使われない、法人向けや介護向けのサービスを選ぶことが前提です。そのうえで、どの情報を入れてよいか、保存の前に誰が確かめるかを、事業所のルールとして決めておきましょう。
Q. AIを入れると介護職の仕事はなくなりますか?
今回の事例では、AIは記録や書類、見守りの通知など、ケアの周りの仕事を減らす役割を担っています。浮いた時間は、利用者との対話や新しい受け入れ、職員の育成に回されています。ケアそのものや、ケアの判断は人が担っています。

まとめ

まとめ
01
介護のAI活用は、記録・議事録、見守り・転倒予防、ケアプラン、シフトや送迎などの事務の4つの業務で事例が多い
02
いちばん多いのは、面談や会議の音声から記録の下書きを作るAIで、1件の記録が数分になった事業所もある
03
中小の事業所は、負担の大きい書類を1つ選び、介護向けの既製のツールで始めている
04
介護テクノロジー導入支援事業などの補助金と、生産性向上推進体制加算をあわせて確かめておく
05
ケアの判断と記録の最終確認は人が持ち、利用者の情報と映像の扱いを先に決めることが導入の前提になる

ほかの業界の事例や、AI導入の全体の流れは、製造業のAI活用事例と中小企業のAI導入もあわせてご覧ください。

出典一覧

出典一覧

本記事の事例と数字の出典です。事例は発表の新しい順に並べています。

事例の出典