新しい材料の開発は、配合や条件を少しずつ変えながら、試作と評価をくり返す仕事です。候補が多いほど試作の回数は増え、いつ目標の性能に届くのかも読みにくくなります。そこで素材開発AIを使いたいと考えても、製品の種類が多く、何を基準に比較すればよいのかがわからない。研究開発や技術部門の担当者から、よく聞く悩みです。

国の研究開発でも、AIで材料開発を速める取り組みが進んできました。NEDOが2016〜2022年度に進めた「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」は、計算科学・高速試作・先端計測とAIを組み合わせ、試作回数・開発期間を従来の1/20に縮めることを目標に掲げました。2022年6月の事後評価の資料では、19の個別の材料開発課題について、試作回数・開発期間の1/20を概ね実証したと報告しています(出典:NEDO『超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(事後評価)プロジェクトの概要』2022年6月)。

そこで本記事では、素材開発AIを得意なことで5つのタイプに分け、主な製品・サービスを公式サイトの情報で比べます。あわせて、自社に合う選び方、導入の進め方、導入前のセルフチェック、製品の提供会社や支援会社に聞く質問リストまで、社内の比較検討でそのまま使える形でまとめました。

この記事でわかること

  • 目的に合うAIの型がわかる
  • 主な製品・サービスを比べられる
  • 導入前の確認項目が手に入る
AIBUILDERZ

この記事の監修者

AIBUILDERZ編集部

for,Freelance株式会社

AI導入支援サービス「AIBUILDERZ」を運営するチームです。AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、企業のAI導入を一気通貫で支援しています。

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素材開発AIで何が変わるのか|試作頼みの開発からの転換

素材開発AIで何が変わるのか|試作頼みの開発からの転換

素材開発AIは、試作の前に「どれを、どの順番で試すか」を絞り込むための道具です。製品を比べる前に、AIが材料開発のどこで役に立つのかを押さえておきましょう。なお、ここでいう素材開発AIは、金属・セラミックス・高分子・化学品などの材料を開発するためのAIです。画像やイラストなどの「素材」を作る生成AIとは別のものです。

材料探索・物性予測・実験計画という3つの使いどころ

素材開発AIの使いどころは、大きく3つに分けられます。1つ目は材料探索で、膨大な候補の中から、求める性能が出そうな組成や構造を絞り込みます。2つ目は物性予測で、まだ作っていない材料の性能を、過去のデータや計算から見積もります。3つ目は実験計画で、これまでの結果をもとに、次にどの条件で試すと目標に近づきやすいかを提案します。

使いどころ AIがすること 研究の現場での使い方
材料探索 候補の組成や構造を広く探し、有望なものを絞り込む 新しい分子や配合の候補を、試作の前に選ぶ
物性予測 組成や条件から、作る前に性能を見積もる 試作する候補に優先順位をつける
実験計画 過去の結果から、次に試す条件を提案する 少ない試作で目標の性能に近づける

3つは別々のものではありません。予測で候補を絞り、実験計画で試す順番を決め、結果をまたAIに戻す、という流れでつながっています。どの使いどころから始めるかを先に決めておくと、比べるべき製品の数はぐっと減ります。

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)とは

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)は、材料の実験データや計算データ、文献の情報を機械学習などで解析し、材料開発を効率よく進める方法の総称です。素材開発AIと呼ばれる製品の多くは、このMIを研究の現場で使えるようにした道具だと考えるとわかりやすいでしょう。

似た言葉に、プロセスインフォマティクス(PI)があります。MIが「何を作るか」(組成や構造)を主に扱うのに対し、PIは「どう作るか」(温度・圧力・時間などの製造条件)を扱います。材料の性能は作り方でも変わるため、製品を比べるときは、製造条件まで扱えるかも確かめておくとよいでしょう。

従来の試行錯誤と何が違うのか

これまでの材料開発は、研究者の経験と勘で候補を選び、1つずつ作って評価する進め方が中心でした。素材開発AIを使うと、候補の選び方と試す順番が変わります。

比べる点 従来の開発 素材開発AIを使った開発
候補の選び方 研究者の経験と勘で選ぶ データと計算で有望な候補を絞る
試作の進め方 1つずつ作って評価する 予測で順番をつけ、見込みの高い条件から試す
うまくいかなかった実験 担当者の手元に記録が埋もれやすい 次の予測の材料として生かせる
ノウハウの残り方 担当者に依存しやすい データとモデルとして組織に残る

導入で期待できる効果

期待できる効果は、試作の回数を減らせる、開発の期間を見通しやすくなる、過去のデータを次の開発に生かせる、の3つにまとめられます。冒頭のNEDOのプロジェクトのように、試作回数と開発期間を大きく縮めた例もあります。材料開発に限らず、検査や需要予測など製造業全体でのAIの使われ方は製造業のAI活用事例でまとめています。

ただし、効果の大きさはテーマの選び方とデータの状態で大きく変わります。製品の案内にある数字をそのまま自社に当てはめず、自社のテーマで効果を測ってから判断しましょう。

AIが向く工程と向かない工程

素材開発AIは万能ではありません。向いている工程と、まだ人の判断が欠かせない工程を分けて考えると、期待しすぎによる失敗を防げます。

向いている工程 向いていない工程
組成や条件の組み合わせが多く、人の手では試しきれない探索 目標の性能そのものがまだ決まっていないテーマ
同じ形式のデータが一定量たまっている配合や条件の最適化 データがほとんどなく、計算でも扱いにくい現象
試作の前の候補の絞り込みや、試す順番の決定 安全性の判断や、最終的な採用の決定
過去の文献・特許・社内資料からの情報の掘り起こし 測定の方法や条件がそろっていない過去データの扱い

AIの提案は、あくまで「次に試す価値が高い候補」です。実際に作って測り、その結果で判断する流れは変わりません。

素材開発AIの5つのタイプ|得意なことで分けて考える

素材開発AIの5つのタイプ|得意なことで分けて考える

素材開発AIは、得意なことで5つのタイプに分けると比べやすくなります。1つの製品が複数のタイプにまたがることもありますが、まずは「自社が解きたい課題はどのタイプか」を見当づけることから始めましょう。

物性予測型|作る前に性能を見積もる

社内の実験データから、組成や条件と性能の関係を機械学習で学び、まだ作っていない材料の性能を予測するタイプです。データの管理から予測モデルの作成までを1つの画面で扱える、プラットフォーム型の製品が多く見られます。

同じ形式の実験データがある程度たまっている企業に向いています。逆に、データが紙やばらばらの表計算に散らばっている場合は、整える作業から始めることになります。

材料探索・逆設計型|求める性能から候補を探す

「この性能がほしい」という条件から逆にたどって、候補となる分子構造や組成を提案するタイプです。物性予測型が「この材料ならこの性能」と順方向に考えるのに対し、逆設計型は「この性能ならこの材料」と逆方向に考えます。

新しい分子や材料の候補を広く探したいときに向いています。製品によっては、社内に実験データがなくても、計算化学の手法を使って候補を探せるものもあります。

実験計画・ベイズ最適化型|次に試す条件を決める

これまでの実験結果をもとに、次にどの条件で試すと目標に近づきやすいかを提案するタイプです。代表的な手法がベイズ最適化で、結果が出るたびに予測を更新しながら、試す条件を選んでいきます。

配合比や温度などの条件を少しずつ変えて最適な組み合わせを探す、配合・プロセスの最適化に向いています。少ないデータから始めて、試しながらデータを増やしていく進め方と相性のよい方法です。候補の組み合わせが極端に多い問題では、組合せ最適化に向いた専用の計算機を使う方法もあります。

原子レベルのシミュレーション型|計算で物性を確かめる

原子や分子の動きをコンピューター上で再現し、材料の性質を計算で確かめるタイプです。従来の計算化学の手法は精度が高い一方で計算に時間がかかりやすく、その部分をAIで速くした製品が出てきています。

触媒・電池材料・合金などで、原子レベルの現象から性能を見積もりたいときに向いています。実験データを集めなくても計算で候補を比べられる点が強みですが、結果を読み解くには計算化学の基本的な知識があると安心です。

文献・特許・社内資料を扱う生成AI型|知識を掘り起こす

論文・特許・社内の技術資料などの文章を読み込み、関係する化合物や過去の知見を探したり、要約したりするタイプです。特許などの公開データをもとに化合物の候補を探す専用のサービスや、社内の資料を検索して答える生成AIの仕組みがこれにあたります。

先行技術の調査や、テーマを決める前の情報集めに向いています。生成AIは文章から知識を探すのは得意ですが、物性の数値を予測する道具ではない点に注意しましょう。数値の予測は、ほかのタイプと組み合わせて使うのが基本です。

素材開発AIの比較表|5つの軸で違いを見る

素材開発AIの比較表|5つの軸で違いを見る

タイプがわかったら、同じ物差しで製品を比べます。ここでは比較の軸、タイプ別の比較表、製品ごとの比較表の順に整理します。

比較の5つの軸

比較の軸 確かめること
対象の材料分野 無機材料・金属・高分子・有機分子など、自社の材料を扱えるか
必要なデータ 社内の実験データが要るのか、計算や公開データから始められるのか
使いやすさ 研究者がプログラムを書かずに使える画面があるか。Pythonなどからも使えるか
連携 既存の解析ソフトや計算化学のソフト、実験装置、社内のデータ基盤とつなげるか
提供形態と支援 クラウドか手元のPCか、研修や伴走の支援があるか、契約の単位はどうか

機能の一覧を並べると、どの製品も似て見えがちです。機能の多さより、自社の材料とデータでそのまま使えるかを先に確かめましょう。

タイプ別の比較表

タイプ 主にできること 主に使うデータ 向いている課題 製品・サービスの例
物性予測型 組成・条件から性能を予測 社内の実験データ 既存の材料系の改良 Citrine Platform
材料探索・逆設計型 求める性能から候補の構造を提案 計算データ・実験データ 新しい分子や材料の探索 M-EVO
実験計画・ベイズ最適化型 次に試す条件の提案 少量の実験データから始めて追加 配合・プロセス条件の最適化 miHub
原子レベルのシミュレーション型 原子レベルの現象を計算で予測 構造のデータ(計算で生成) 触媒・電池・合金などの物性評価 Matlantis
文献・特許・社内資料を扱う生成AI型 文献や特許からの候補探し・要約 特許・論文・社内資料 先行技術の調査・テーマ探し Chemicals Informatics

自社に専門の担当者がいない場合は、製品を選ぶ前に、MIの専門家が解析を引き受ける支援サービスを使う方法もあります。支援サービスの例は次の章で取り上げます。

製品ごとの比較表

製品・サービス(提供会社) タイプ 提供形態 料金
Matlantis
Matlantis株式会社
原子レベルのシミュレーション型 Webから使うクラウドサービス 記載なし(直接お問い合わせください)
Citrine Platform
SCSK株式会社
物性予測型(実験の提案も可) SaaS 記載なし(直接お問い合わせください)
miHub
MI-6株式会社
実験計画・ベイズ最適化型 クラウドサービス(1年単位の契約) 記載なし(直接お問い合わせください)
M-EVO
HPCシステムズ株式会社
材料探索・逆設計型 クラウドでの利用が可能(月極の契約が可能) 記載なし(直接お問い合わせください)
Chemicals Informatics
株式会社日立ハイテク
文献・特許を扱う型 クラウドサービス 記載なし(直接お問い合わせください)
Hands-on MI
MI-6株式会社
支援サービス型 共同開発・受託解析・技術コンサルティング・研修 記載なし(直接お問い合わせください)

掲載した製品・サービスは、いずれも公式サイトに金額の記載がなく、見積もりで決まります。料金を比べるときは、利用料のほかに、計算の資源・研修・伴走の支援がどこまで含まれているかをそろえて確かめましょう。

素材開発AIに共通する主な機能

タイプが違っても、素材開発AIの多くは次の機能の組み合わせでできています。製品の資料を読むときは、どの機能が中心で、どの機能がないのかを確かめると違いが見えやすくなります。

機能 内容
材料データの管理 実験の条件と結果、測定のデータを、AIが読める形でまとめて保管する
予測モデルの作成 データから、組成や条件と性能の関係を学ぶモデルを作る
探索・最適化 求める性能に近い候補や、次に試す条件を提案する
可視化・解析 どの要因が性能に効いているかを、グラフなどで示す
シミュレーションとの連携 計算化学などの計算結果を取り込み、予測に生かす

この5つは、各社の公式サイトを見るかぎり、ほとんどの製品が何らかの形で備えています。機能の一覧で差がつくことは少ないため、比較の重みは機能の有無ではなく、扱える材料分野・必要なデータ・連携・支援の4点に置きましょう。

逆に、優先度を下げてよいのは、対応しているアルゴリズムの数や画面の作り込みです。使うアルゴリズムは解きたい課題で決まるため、数の多さがそのまま有利になるわけではありません。画面の使いやすさは、トライアルで自社の研究者が触って判断するほうが確実です。

タイプ別に見る主な素材開発AIの製品・サービス

タイプ別に見る主な素材開発AIの製品・サービス

ここからは、5つのタイプと支援サービスから1つずつ、主な製品・サービスを取り上げます。内容は各社の公式サイトに載っている情報だけで整理しています。トライアルや無料の相談を用意している会社もあるため、自社のテーマとデータを持ち込んで試せるかを、比較の早い段階で確かめるのが近道です。

PR|AIBUILDERZ AI導入支援サービス

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AIBUILDERZ|AI導入支援サービス

システム構築は成果報酬型。AI研修から導入・構築・定着まで一気通貫で支援

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AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、一気通貫で支援するサービスです。業務アプリの構築費は事前にいただかず、実際に稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。成果報酬型での対応は、当社が小規模と定義するシステムが対象です。

  • 業種・規模を問わず支援どの業務からAIやシステムに置き換えるかを一緒に決め、効果の大きい業務から順に進めます。
  • システム構築は成果報酬型業務アプリの構築費は事前にいただきません。稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。
  • AI導入の効果を可視化置き換える業務を一覧にし、導入前後の時間から、空いた時間とかからなくなった費用を毎月記録します。
  • 小さく始めて、リスクを管理影響の小さい業務から始め、AIの実行結果は担当者が確認・承認してから反映します。

Matlantis|原子レベルの現象をAIで予測するシミュレータ

Matlantisは、原子レベルの現象を予測するAIシミュレータです。公式サイトでは、自然界に存在する96元素すべてに対応し、数万原子規模の計算を扱えると説明しています。Webからアクセスして使うクラウドサービスのため、手元に計算機の環境を用意しなくても始められます。

強み 元素の種類や構造に縛られない汎用の原子レベルシミュレーション
支援の範囲 原子レベルの現象の予測
支援の形 Webから使うクラウドサービス
自社のAI製品 Matlantis(Matlantis株式会社)
使うAI 原子レベルのシミュレーションを行うAI
クラウド あり(Webからアクセス)
料金 記載なし(直接お問い合わせください)
公式サイト Matlantis

触媒や電池材料、合金などで、実験の前に計算で候補を比べたい研究チームに向いています。

Citrine Platform|社内データから性能を予測し、次の実験を提案

Citrine Platformは、材料データの管理と、材料開発に特化したAIを組み合わせたプラットフォームです。国内ではSCSKが提供しています。原料の調達から特性評価までのデータを管理し、AIで性能を予測して実験を提案します。グラフィカルなWeb画面と、Pythonのクライアントの両方から使えます。

強み データの管理とAIによる予測・実験提案を1つのプラットフォームで扱える
支援の範囲 材料データの管理、性能の予測、実験の提案
支援の形 SaaS。SCSKによるトライアル利用の対応、定期的なWebセミナー、技術相談
自社のAI製品 Citrine Platform(SCSK株式会社が提供)
使うAI 材料開発に特化したAI
クラウド あり(SaaS。公式ページに、提供元のCitrine Informatics社がISO27001を取得との記載あり)
料金 記載なし(直接お問い合わせください)
公式サイト SCSK Citrine Platform

社内に実験データがたまっていて、それを予測と次の実験の提案に生かしたい企業に向いています。

miHub|ベイズ最適化で実験計画を立てる研究開発プラットフォーム

miHubは、MI-6が提供する研究開発のプラットフォームです。実験計画の手順をワークフローの形で管理し、ベイズ最適化で次に試す条件を計画できます。因子どうしの関係の可視化や予測モデルの作成、解析の過程をチームで共有する機能もあります。専任のデータサイエンティストによる研修やセミナー、テーマごとの伴走支援を組み合わせられる点が特徴です。

強み 研究者がデータとノウハウを共有しながら、ベイズ最適化で実験計画を立てられる
支援の範囲 実験計画、因子の関係の可視化、予測モデルの作成、解析の過程の共有
支援の形 クラウドサービス(1年単位の契約)。研修・セミナー、定期ミーティングやメールでのサポート、テーマごとの伴走支援
自社のAI製品 miHub(MI-6株式会社)
使うAI ベイズ最適化・機械学習
クラウド あり(公式サイトにセキュリティポリシーとセキュリティホワイトペーパーの記載あり。MI-6はISMSの構築・運用を宣言)
料金 記載なし(直接お問い合わせください)
公式サイト miHub

配合やプロセスの条件を最適化したい研究チームで、社内にMIのスキルを育てながら進めたい場合に向いています。

M-EVO|求める物性から分子構造を逆に探す

M-EVOは、HPCシステムズが提供する、AIと計算化学を組み合わせた材料開発のソフトウェアです。求める物性から分子構造を逆に探す逆問題の解析に対応し、Gaussian16などの計算化学の手法を使うことで、データベースがなくても探索できるとしています。ベイズ最適化による実験計画の支援にも対応しています。

強み データベースがなくても、計算化学で候補の分子構造を探せる
支援の範囲 逆問題の解析(物性から分子構造を探す)、ベイズ最適化による実験計画の支援
支援の形 画面で操作するソフトウェア(Python・Gaussian・Linuxの知識は不要と記載)。受託計算・開発、コンサルティング、計算化学セミナー、技術サポート
自社のAI製品 M-EVO(HPCシステムズ株式会社)
使うAI AI技術と計算化学の組み合わせ
クラウド クラウドでの利用が可能(初期投資なし・月極の契約が可能と記載)。ユーザーのデータベースは手元のPCに置く
料金 記載なし(直接お問い合わせください)。お試しプランの申請フォームあり
公式サイト M-EVO

社内に実験データが少なく、新しい分子の候補から探したい企業や、データを手元に置いておきたい企業に向いています。

Chemicals Informatics|特許などの公開データから化合物を探す

Chemicals Informaticsは、日立ハイテクが提供する化合物探索を支援するクラウドサービスです。2024年2月の日立の発表では、4,300万件の英文特許などの公開データをもとにした独自のデータベースと探索AIで、化合物の探索を支援すると説明しています。

強み 特許などの公開データをもとにした独自のデータベースと探索AI
支援の範囲 化合物の探索の支援
支援の形 クラウドサービス
自社のAI製品 Chemicals Informatics(株式会社日立ハイテク)
使うAI 探索AI
クラウド あり
料金 記載なし(直接お問い合わせください)
公式サイト 日立 ニュースリリース(2024年2月8日)

社内のデータがまだ少なく、まずは公開されている特許の情報から有望な化合物の候補を広く拾いたい場合に向いています。

Hands-on MI|MIの専門家に解析を任せる支援サービス

Hands-on MIは、MI-6が提供する支援サービスです。材料の分野に詳しいデータサイエンティストが、計算科学・機械学習・数理最適化などを使って材料開発の課題を解く手伝いをします。共同開発・受託解析、技術コンサルティング、研修プログラムの3つの形があり、無料のテーマ相談で使い方のイメージを固めてから契約に進む流れです。

強み 材料の分野に詳しいデータサイエンティストが、課題に合わせて解析する
支援の範囲 新規化合物の探索、仮想スクリーニング、組成やプロセスの最適化
支援の形 共同開発・受託解析、技術コンサルティング、研修プログラム。無料のテーマ相談から始められる
自社のAI製品 同じ会社がmiHubを提供
使うAI 計算科学・機械学習・数理最適化など
クラウド 記載なし
料金 記載なし(直接お問い合わせください)
公式サイト Hands-on MI

社内にMIの担当者がおらず、まずは1つのテーマで効果を確かめたい企業に向いています。

自社に合う素材開発AIの選び方

自社に合う素材開発AIの選び方

製品の比較で迷ったら、課題・データ・材料分野・機密の扱い・体制・運用と契約の条件の6つの順で確かめていくと、候補を絞りやすくなります。

解きたい課題から選ぶ

最初に決めるのは、AIで何を解きたいかです。新しい分子や材料の候補を探したいのか、今ある材料の性能を予測したいのか、配合や条件を詰めて試作の回数を減らしたいのか。課題が1つに決まれば、選ぶべきタイプもおのずと決まります。

解きたい課題 まず検討するタイプ
新しい候補を広く探したい 材料探索・逆設計型、文献・特許を扱う型
作る前に性能を見積もりたい 物性予測型、原子レベルのシミュレーション型
試作の回数を減らしたい 実験計画・ベイズ最適化型
先行技術を効率よく調べたい 文献・特許・社内資料を扱う生成AI型

手持ちのデータの量と質から選ぶ

次に、使えるデータを確かめます。同じ形式の実験データがたまっているなら、物性予測型やベイズ最適化型を生かせます。データがほとんどない場合は、計算でデータを作れるシミュレーション型や、公開データを使う探索型から始める方法があります。

量だけでなく質も大切です。測定の方法がそろっているか、条件が記録されているか、うまくいかなかった実験の結果も残っているか。うまくいかなかった実験のデータも、AIにとっては次の予測を良くする大切な材料です。

対応する材料分野と既存の解析ソフトとの連携を確かめる

無機材料・金属・高分子・有機分子など、製品によって得意な分野は違います。公式の資料で対応する材料や元素を確かめ、自社の材料に近い分野で使われた実績があるかを質問しましょう。

あわせて、今使っている計算化学のソフトや解析の環境、実験装置、社内のデータの保管先とつなげるかも確かめます。データの受け渡しを手作業で行う形だと、使い続けるうちに手間が積み重なります。

機密データの扱いとセキュリティを確かめる

材料の配合や実験の結果は、企業にとって最も重要な情報の1つです。クラウドに預けるのか、手元のPCに置くのか。預けたデータがAIの学習に使われるのか。情報セキュリティの認証を取っているか。契約の前に、こうした点を書面で確かめておきましょう。

共同で解析を進める場合は、作ったモデルや得られた知見の権利がどちらにあるのかも、先に決めておくと後のもめごとを防げます。

内製するか、支援会社に任せるかを決める

ツールを入れて自社の研究者が使いこなすのか、専門家に解析を任せるのかでも、選ぶ相手は変わります。社内にデータ解析の経験者がいれば、ツールを入れて内製する形が合います。いない場合は、研修や伴走の支援が付いた製品か、受託解析の支援サービスから始めると立ち上がりが早くなります。

進め方 向いている企業 注意したい点
ツールを入れて内製する データ解析の経験者が社内にいる 担当者が1人だけだと、異動や退職で止まりやすい
伴走の支援付きで内製する 研究者にスキルを身につけてほしい 支援の期間と範囲を契約で決めておく
支援会社に解析を任せる まず1つのテーマで効果を確かめたい 結果だけでなく、解析の過程を社内に残せるか

運用と契約の条件を確かめる

機能や性能の資料では見えにくいのが、使い続けるときの条件です。本記事で取り上げた製品でも、契約の形は1年単位のものから月極が選べるものまで分かれていました。契約の期間と更新の単位、料金が利用者数や計算量で変わるのか、サポートに含まれる作業の範囲はどこまでかを、見積もりと同時に確かめておきましょう。

あわせて、契約を終えたあとのことも先に聞いておきます。蓄積したデータや作った予測モデルを持ち出せるか、持ち出した形式をほかの製品で読めるか。データとモデルを引き取れる条件を契約の前に決めておくと、製品を乗り換えるときに一から作り直す事態を避けられます。

素材開発AI導入の進め方と、つまずきやすい点

素材開発AI導入の進め方と、つまずきやすい点

素材開発AIの導入は、いきなり全社の研究に広げるより、1つのテーマで小さく試してから広げるほうが失敗が少なくなります。全体の流れは次の5つのステップです。

01

テーマと目標の数字を決める

対象の材料と、狙う性能、何がどこまで良くなれば成功かを決めます。

02

使うデータを集めて形をそろえる

過去の実験の条件と結果を集め、項目の名前や単位をそろえます。

03

タイプを選び、トライアルで試す

課題とデータに合うタイプの製品を2〜3つに絞り、トライアルや相談で自社のデータを試します。

04

小さなテーマで効果を測る

AIの提案どおりに試作し、試作の回数や期間が従来と比べてどう変わったかを記録します。

05

基準どおりに判断し、広げる

先に決めた基準で、ほかのテーマに広げるか、進め方を見直すかを判断します。

データの整理と形式の統一から始める

素材開発AIの導入で最も時間がかかりやすいのが、データの準備です。実験ノート、表計算のファイル、測定装置の出力など、データの置き場所と形が人や装置ごとにばらばらになっていることは珍しくありません。

まずは対象のテーマに関わるデータだけを集め、項目の名前・単位・記録の仕方をそろえるところから始めましょう。これから取る実験データも同じ形で残すルールを決めておくと、AIに使えるデータが自然に増えていきます。

小さなテーマで試して効果を測る

最初のテーマは、成果が出たかどうかを数字で確かめやすいものを選びます。たとえば、ある配合の改良で「目標の性能に届くまでの試作の回数」を、従来の進め方と比べる形です。試験導入の設計のしかたはAIのPoCの進め方も参考になります。

試す前に「どの数字がどこまで良くなれば広げるか」を決めておくことが、試験導入だけで終わらせないための一番の対策です。

研究者とデータ担当の役割分担

素材開発AIは、材料の知識とデータ解析の知識の両方がそろって初めて力を発揮します。研究者は、テーマの設定、データの意味の説明、AIの提案が理にかなっているかの判断を担います。データ担当は、データの整理、モデルの作成、結果の見せ方を担います。

社内にデータ担当がいない場合は、支援会社や製品の伴走支援でその役割を補い、並行して研究者の中から担当者を育てていくのが現実的です。

つまずきやすい例と避け方

つまずきやすい例 避け方
データが足りない・ばらばらのまま始める 対象のテーマのデータだけを先に集めて形をそろえる
うまくいった実験のデータしか残っていない うまくいかなかった実験も同じ形で記録するルールを作る
製品やアルゴリズムの選び方を相手に任せきりにする 課題とデータの条件を自社で決めてから、製品を比べる
研究者が使わず、一部の担当者だけの道具になる 研究者が画面で使える製品を選び、研修の場を設ける
試験導入の結果だけで向き不向きを決めてしまう テーマの選び方やデータに原因がなかったかを振り返ってから判断する

導入前のセルフチェックと相談先の選び方

導入前のセルフチェックと相談先の選び方

製品の資料を取り寄せる前に、自社の準備の状況を確かめておくと、比較の場での話が早く進みます。ここでは、そのまま使える質問リストと相談先の診断をまとめました。

自社の準備の状況を確かめる質問リスト

次の質問に「はい」「いいえ」で答えてみてください。「いいえ」が多い項目が、導入の前に手をつけるべきところです。

観点 質問
解きたい課題 対象の材料と狙う性能を、1つのテーマとして言葉にできるか
成功の基準 何がどこまで良くなれば成功かを、数字で決めているか
データの量 そのテーマに関わる過去の実験データがまとまった数あるか
データの形 条件と結果が、同じ項目・同じ単位で記録されているか
失敗のデータ うまくいかなかった実験の結果も残っているか
社内の体制 研究者の中に、データの整理や解析を担う人を決められるか
機密の扱い 実験データを社外のクラウドに置いてよいか、社内で決まっているか

製品の提供会社・支援会社に聞く質問リスト

製品の説明を受けるときや見積もりを依頼するときは、次の質問をそのまま使ってください。複数の会社に同じ質問をすると、答えの違いから各社の向き不向きが見えてきます。

聞くこと 製品の提供会社に聞く質問 支援会社に聞く質問
機密データの扱い データの保管場所はどこか。預けたデータが学習に使われるか 解析で預けたデータを、終了後にどう扱うか
精度の確かめ方 予測の精度を、自社のデータでどう確かめられるか 効果を何の数字で、どう測るか
対応する分野 自社の材料に近い分野で使われた例はあるか 自社の材料の分野に詳しい担当者はいるか
使い始めるまで トライアルはあるか。最初の結果が出るまでの期間は 最初の相談から結果が出るまでの流れと期間は
料金の体系 契約の単位、利用者数や計算量で料金が変わるか 料金に含まれる作業の範囲と、追加の費用が出る条件は
権利と引き継ぎ 作ったモデルやデータを、契約を終えたときに持ち出せるか 作ったモデルや知見の権利はどちらにあるか

相談先のタイプ診断

素材開発AIの相談先は、大きく3つのタイプに分かれます。自社の状況に近い行を探してみてください。

自社の状況 合う相談先 相談先が担うこと
課題もデータも決まっていて、解析できる人が社内にいる ツールの提供会社 製品の提供、トライアル、使い方の研修
課題は決まっているが、解析できる人がいない MIの支援サービス・コンサル テーマの設定、受託解析、社内の人材育成
社内のシステムや実験装置とつなぐ仕組みまで作りたい 受託開発の会社 データ基盤や専用の仕組みの設計と開発
材料開発に限らず、社内の業務全体でAIの使いどころを整理したい AI導入の支援会社 業務の整理、ツールの選定、研修、定着の支援

最初から1社に決めず、タイプの違う相談先に同じ質問リストで話を聞くと、自社に足りないものがはっきりします。相談先の種類と契約の注意点はAIコンサルタント導入の選び方でさらに詳しく整理しています。

素材開発AIの比較でよくある質問

素材開発AIの比較でよくある質問
Q. 素材開発AIは少ないデータでも使えますか?
使えます。ベイズ最適化のように、少ないデータから始めて試しながらデータを増やしていく方法があります。また、計算化学で候補を探すタイプの製品には、データベースがなくても探索できるとしているものもあります。データの量より、測定の方法や条件がそろっているかのほうが結果に効くことも多いため、まずは手持ちのデータの形を確かめましょう。
Q. 費用はどのくらいを見込めばよいですか?
本記事で取り上げた製品・サービスは、いずれも公式サイトに金額の記載がなく、見積もりで決まります。契約の形は、1年単位の契約や月極の契約などがあります。見積もりを比べるときは、利用料のほかに、計算の資源、研修、伴走の支援がどこまで含まれているかをそろえて確かめてください。
Q. 研究者の経験や勘はどう活かせばよいですか?
経験や勘は、AIを使う場面でも欠かせません。どの要因が性能に効きそうかという見立ては、AIに読ませるデータの項目を決めるときに生きます。また、AIの提案が化学的に理にかなっているかを判断するのも研究者の役割です。AIは研究者の代わりではなく、試す候補を絞り込む相棒と考えるとよいでしょう。
Q. まず何から始めればよいですか?
解きたい課題を1つのテーマに絞り、成功の基準を数字で決めることから始めましょう。次に、そのテーマに関わる過去の実験データを集めて形をそろえます。そのうえで、本記事のセルフチェックと質問リストを使い、トライアルや無料の相談で自社のデータを試すのが近道です。
Q. AIや統計の専門知識はどのくらい必要ですか?
研究者がプログラムを書かずに画面で使える製品も増えているため、最初から高度な専門知識が必要なわけではありません。ただし、結果を正しく読むには、予測の精度の見方など基本的な知識はあったほうが安心です。研修や伴走の支援が付いた製品やサービスを選べば、使いながら身につけられます。
Q. 既存のシミュレーション(計算化学やCAE)とは何が違いますか?
従来のシミュレーションは、物理の法則に基づいて計算で性質を求めます。素材開発AIは、データから関係を学んで予測したり、AIで計算そのものを速くしたりします。対立するものではなく、計算の結果をAIの学習に使うなど、組み合わせて使う場面が多くあります。
Q. ChatGPTのような生成AIとは何が違いますか?
ChatGPTのような生成AIは、文章を読んで情報を探したり要約したりするのが得意です。文献や特許の調査、社内資料の検索には役立ちますが、物性の数値を予測する道具ではありません。物性の予測や実験計画には、材料のデータを扱う専用の製品を使い、生成AIは調査の場面で組み合わせるのが基本です。
Q. 実験データを社外のクラウドに預けても大丈夫ですか?
製品によって、データの保管場所やセキュリティの体制は違います。情報セキュリティの認証の有無、データの保管場所、預けたデータが学習に使われるかを、契約の前に書面で確かめましょう。データを手元のPCに置いたまま使える製品もあります。
Q. 画像やイラストの「素材」を作るAIとは違うのですか?
違います。本記事の素材開発AIは、金属・セラミックス・高分子・化学品などの材料の研究開発に使うAIです。デザインに使う画像やイラストなどの素材を作る生成AIとは、目的も仕組みも異なります。

まとめ

まとめ

素材開発AIは、試作の前に「何を、どの順番で試すか」を絞り込むための道具です。製品の比較は、機能の一覧から入るより、自社の課題とデータから入るほうが迷いません。最後に、本記事のポイントを振り返ります。

01
素材開発AIの使いどころは、材料探索・物性予測・実験計画の3つ。どこから始めるかを先に決める
02
製品は、物性予測型・材料探索と逆設計型・実験計画型・原子レベルのシミュレーション型・文献や特許を扱う生成AI型の5つのタイプに分けると比べやすい
03
比較の軸は、対象の材料分野・必要なデータ・使いやすさ・連携・提供形態と支援の5つ
04
主な製品は公式サイトに金額の記載がなく見積もりになる。利用料・計算の資源・支援の範囲をそろえて比べる
05
導入は1つのテーマで小さく試し、先に決めた数字で判断してから広げる。準備の状況はセルフチェックと質問リストで確かめる

まずは解きたい課題を1つに絞り、手持ちのデータを確かめるところから始めてみてください。