応募が届くたびに履歴書と職務経歴書を開き、求める経験があるかを1件ずつ確かめる。応募が重なる時期は書類選考だけで1日が終わり、返信が遅れるうちに候補者がほかの会社に決めてしまう。書類選考にAIを使えば楽になりそうだと分かっていても、どこまで任せてよいのか、応募者の個人情報を入れてよいのかが分からず、手が止まっている。採用担当者から、よく聞かれる悩みです。IPA(情報処理推進機構)の調査では、生成AIを使っている部署として「人事」を挙げた企業は56.1%にのぼる一方、AIの用途として「人事・採用・教育の支援」を挙げた企業は12.8%にとどまっています(出典:IPA『DX動向2026』図表3-7・3-9)。

そこで本記事では、書類選考にAIを使うと何が変わるのか、AIでできることと人が判断すべきこと、メリット・デメリット、個人情報保護法や職業安定法の指針など公的資料で押さえておきたい注意点、ツールの種類と選び方、導入の手順までをまとめました。評価基準をAIに伝えるプロンプトの例、自社に合う進め方のチェック、工数の削減を自社の数字で試算する方法に加え、書類選考の前後で使える人事・採用のAI活用も紹介します。応募者の信頼を損なわずに、書類選考の手間を減らしたい方は、ぜひ参考にしてください。

この記事でわかること

  • 書類選考でAIに任せる範囲
  • 評価基準とプロンプトの作り方
  • 工数削減を自社の数字で試算
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この記事の監修者

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AI導入支援サービス「AIBUILDERZ」を運営するチームです。AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、企業のAI導入を一気通貫で支援しています。

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書類選考にAIを使うと何が変わるのか

書類選考にAIを使うと何が変わるのか

書類選考にAIを使うと、書類を読んで整理する時間が減り、人は通すか見送るかの判断に集中できるようになります。まずは、いまの書類選考のどこに負担があるのか、AIに任せられるのはどこまでかを整理しておきましょう。

書類選考で採用担当者が抱えやすい負担

書類選考の負担は、読む量の多さだけではありません。履歴書や職務経歴書は応募者ごとに形式も書き方も違うため、必須の経験があるかを確かめるだけでも、全文を読み込む必要があります。応募が重なる時期には、書類の確認が終わるまで応募者への返信が止まってしまいます。

もう1つの負担は、判断のぶれです。担当者によって重く見る経験が違ったり、同じ担当者でも読む時間帯や件数で見方が変わったりします。通した理由や見送った理由が記録に残らないため、後から振り返ることも難しくなります。とくに中小企業では、採用の担当者が総務や経理と兼務していることも多く、書類選考に十分な時間を取れないことが課題になっています。

書類選考AIとは|確認の作業をAIに任せ、人は見極めに集中すること

書類選考AIとは、応募書類の読み取り、項目の整理、要約、求人の要件との照合といった書類選考の作業の一部をAIに任せる仕組みのことです。採用管理システムに付いた機能として使う方法、書類選考に特化したツールを使う方法、ChatGPTやClaudeのような生成AIを自社で使う方法があります。目的はどれも同じで、書類を読む時間を減らし、採用の担当者が面接や面談といった人にしかできない仕事に時間を使えるようにすることにあります。

AIを使える場面は書類選考だけではありません。求人票の作成、面接の記録、入社後の研修や評価、社員からの問い合わせ対応まで、人事の業務の多くにAIを活用できます。本記事では、書類選考を中心に、その前後の採用業務と人事の業務全体での活用も取り上げます。

AIに任せられる範囲と人が判断する範囲

書類選考の流れを、読む・そろえる・照らし合わせる・決める・伝えるの5つに分けると、AIに任せやすいのは前の3つです。書類から経歴や資格を抜き出して同じ形式に並べ、要約をつくり、求人の要件と照らし合わせて根拠を示すところまでは、AIが得意な作業です。

一方で、どの経験を重く見るかという評価基準を決めること、通すか見送るかを決めること、異業種からの応募や経歴の空白期間のように基準だけでは測れない応募を読み解くことは、人が担います。AIに任せるのは読む・そろえる・照らし合わせるまでとし、通すか見送るかは人が決めるのが基本です。

従来の書類選考とAI活用の違い

AIを使った書類選考は、人の判断をなくすものではなく、判断の前の作業を変えるものです。従来の進め方との違いを表にまとめました。

観点 従来の書類選考 AIを使った書類選考
書類を読む時間 1件ずつ全文を読み込む AIの要約と照合を見てから、必要な箇所を読む
基準のそろい方 担当者の経験や感覚で差が出やすい 言葉にした評価基準で、全件を同じ観点で整理する
判断の理由 担当者の頭の中に残りがち 基準ごとの整理と人の判断が記録に残る
応募者への返信 確認が終わるまで待たせやすい 案内や連絡の下書きを早く出せる
人が担うこと 読む・判断する・連絡する、のすべて 評価基準づくり、最終判断、例外への対応

書類選考で使われるAIの種類|従来型のAIと生成AI

書類選考や人事で活用されるAIは、大きく2つに分けられます。

種類 得意なこと 人事での使い方の例
従来型のAI(予測・分類) 過去のデータから傾向を見つけ、分類や予測をする 応募者と求人の条件の照合、離職の兆しの把握、勤怠の異常の検知
生成AI 文章を書く・要約する・質問に答える 求人票やスカウト文面の下書き、面接の記録の要約、社内の問い合わせへの回答

書類選考では、過去の応募者のデータから合否を予測する従来型のAIと、書類を読んで要約し、評価基準に沿って根拠を示す生成AIの両方が使われています。ChatGPTやClaudeのような生成AIが広がったことで、文章を扱う業務が多い人事でも、専用のシステムを入れずに始められるようになりました。一方で、人の評価や選考に関わる判断に活用する場合は、後で説明する注意点を押さえておく必要があります。

採用代行(RPO)・人材紹介との違い

採用の負担を減らす方法には、採用代行(RPO)や人材紹介のように業務を外部に任せる方法もあります。外部に任せる方法は、人手そのものを借りられる代わりに、採用のノウハウが社内に残りにくい面があります。AIの活用は、社内の担当者の作業を減らし、評価基準や選考の記録を社内に残していく方法です。

どちらか一方を選ぶものではありません。母集団づくりは外部に任せ、書類選考の整理や応募者への連絡はAIで効率化する、といった組み合わせも考えられます。

書類選考と人事でAI活用が進む背景と現状

AI活用が進む背景と現状

人事部門での生成AIの利用は半数を超えましたが、書類選考のように業務の流れにAIを組み込んでいる企業はまだ多くありません。背景と現状を見ていきます。

人事部門の生成AIの利用は半数を超えた

IPAの『DX動向2026』によると、AIを導入または試験利用している企業は58.0%でした(図表3-1)。生成AIを利用している部署では、「ITシステム」71.9%、「経営企画」69.0%、「総務・法務」68.4%に続き、「人事」も56.1%となっており、管理部門での利用が先に進んでいます(出典:IPA『DX動向2026』図表3-7)。

ただし、使い方の中心は文書の要約・作成や情報収集など、担当者個人の作業の効率化です。人事でAIエージェントを使っている企業は6.8%にとどまり(同 図表3-8)、AIの用途として「人事・採用・教育の支援」を挙げた企業も12.8%です(同 図表3-9)。書類選考のように、業務の流れそのものにAIを組み込んでいる企業はまだ少数です。

応募の経路が増え、書類選考と人事の仕事が増えている

採用では、求人媒体やスカウトサービス、SNSなど応募者と接する経路が増え、1人の担当者が見る応募書類の数も、送る連絡の数も増えています。人事全体でも、労働関係の法改正への対応や、社員一人ひとりの育成・面談など、求められる仕事は広がる一方です。とくに中小企業では、人事の担当者が総務や経理と兼務していることも多く、書類選考のような定型作業をどれだけ減らせるかが課題になっています。

文章を扱う業務で使える精度になった

応募書類、求人票、スカウト文面、面接の記録、評価のコメント、社内規程の案内など、人事の業務は文章を書く・読む作業が大きな割合を占めます。生成AIの精度が上がったことで、こうした文章の要約や下書きをAIに任せ、人が確かめて仕上げる進め方が現実的になりました。書類選考でも、形式のそろっていない履歴書や職務経歴書から必要な情報を抜き出し、評価基準に沿って整理する使い方ができるようになっています。

書類選考AIでできること

書類選考AIでできること

書類選考AIでできることは、書類の読み取り、要件との照合、優先順位づけ、面接の準備、応募者への連絡の5つに分けられます。書類選考の流れに沿って、それぞれの使い方と気をつけたい点を見ていきます。

履歴書・職務経歴書の読み取りと項目の整理

PDFや画像で届いた履歴書・職務経歴書から、職歴、担当した業務、役職、資格、使えるツールなどを抜き出し、同じ形式の表に並べます。応募者ごとに書き方が違っても、同じ項目で見比べられるようになるため、書類選考の最初の確認が早くなります。

画像の書類や手書きの書類では、読み取りの誤りが起きることがあります。資格の名前や在籍期間など、判断に使う項目は元の書類と見比べて確かめましょう。

応募要件との合致度の確認

求人の必須要件と歓迎要件をAIに渡し、応募書類の中に、それぞれの要件を満たす記述があるかを確かめさせる使い方です。たとえば「法人営業の経験3年以上」という要件なら、書類のどの経歴がそれにあたるのかを、該当する文とあわせて示させます。

ここで大切なのは、点数だけでなく根拠を出させることです。根拠の文が示されていれば、人がその部分だけを読んで、AIの照合が正しいかをすぐに確かめられます。点数だけを見て判断すると、なぜその点数なのかを誰も説明できなくなります。

候補者の優先順位づけ

要件との照合の結果をもとに、応募者を「要件を満たしている」「一部を満たしている」「確認が必要」のような段階に分け、人が読む順番を決める使い方です。要件をよく満たしている応募者から先に確かめれば、面接の案内を早く出せます。

段階が低い応募者を、人が読まないまま見送らないようにしましょう。異業種での経験や、書き方が控えめな応募者のように、AIの照合では拾いきれない強みを持つ人もいます。優先順位は読む順番を決めるためのものと考えるのが安全です。

面接で聞く質問案の作成

書類から読み取れなかった点や、もっと詳しく聞きたい経験をAIに挙げさせ、面接で聞く質問の案をつくる使い方です。「前職で担当した顧客の規模は」「チームの中での役割は」のように、書類と評価基準の差から質問を組み立てれば、面接の準備の時間を減らしながら、確かめるべきことの漏れを防げます。

質問案は、職務に必要な適性・能力に関わるものに絞ります。家族のことや思想・信条に関わる質問がAIの案に混ざっていないかは、必ず人が確かめましょう(後の公正な採用選考も参照)。

応募者への連絡・日程調整の効率化

書類選考の結果が出たあとの、通過の連絡や面接の候補日の案内も、AIで早くできる作業です。応募者の名前や職種に合わせた連絡文の下書きをつくり、日程調整のツールと組み合わせれば、書類選考から面接までの待ち時間を短くできます。

お見送りの連絡は、応募者の受け止め方が大きく変わる場面です。文面の下書きにAIを使っても、送る前に人が目を通しましょう。日程調整や問い合わせ対応の詳しい使い方は、後の面接の日程調整・応募者からの問い合わせ対応で紹介します。

業務ごとのAIと人の役割の分け方

AIと人の役割の分け方

書類選考を含む人事の業務は、人の採用や処遇に直結します。どこまでをAIに任せ、どこを人が担うのかを、業務ごとに決めておきましょう。

10の業務の早見表

業務 AIに任せること 人が担うこと
求人票・募集文 下書き・媒体ごとの書き分け 条件と仕事内容が実態どおりかの確認
スカウト文面 経歴に合わせた文面の下書き 送る相手の選定と最終確認
書類選考 要約・基準との照合・論点の整理 選考の基準づくりと合否の判断
日程調整・問い合わせ 候補日の案内・よくある質問への回答 お見送りの連絡や個別の相談への対応
面接の記録 文字起こし・要約・項目ごとの整理 評価と合否の判断
入社手続き 案内・書類の確認・質問への回答 受け入れの体制づくり
研修・育成 資料・テストの作成・学習計画の案 育成の方針と本人との対話
評価・面談 コメントの下書き・話す点の整理 評価の決定と理由の説明
社内の問い合わせ 規程をもとにした回答 規程の更新と例外への対応
勤怠・労務・分析 異常の検知・集計・レポート 原因の確認と対策・配置の判断

人が決めるべき3つの場面

表のとおり、AIに任せやすいのは、下書き・要約・照合・案内・集計といった作業です。一方で、次の3つの場面は人が決めるようにします。

1つ目は、書類選考や面接の合否、評価、昇進、異動など、人の処遇を決める場面です。2つ目は、お見送りの連絡や退職の相談、ハラスメントの相談など、相手の気持ちへの配慮が求められる場面です。3つ目は、規程にない例外や、法令の解釈が必要になる場面です。AIに任せるのは判断の材料づくりまでとし、決めることと説明することは人に残しておくことが大切です。

書類選考AIを導入するメリット

書類選考AIを導入するメリット

書類選考にAIを導入すると、工数の削減、評価のばらつきの抑制、対応の早さ、見落としの防止、振り返りやすさの5つのメリットがあります。

書類選考の工数が減り、面接や面談に時間を回せる

書類の読み取りや要約、要件との照合をAIに任せると、担当者は要点と根拠を確かめるところから書類選考を始められます。空いた時間を、面接や面談、内定者へのフォロー、採用の進め方の見直しなど、人事の担当者にしかできない仕事に回せます。人を増やさずに、対応できる応募者の数を増やせるのが最も大きな効果です。どのくらいの時間が減りそうかは、後の工数削減の試算方法で自社の数字に当てはめて確かめられます。

評価基準のばらつきを抑えられる

言葉にした評価基準をAIに渡し、全員の書類を同じ観点で整理させると、担当者による見方の差が小さくなります。面接の記録や評価のコメントも同じ形式でまとめれば、面接官や評価者による書き方の差も小さくなります。基準を言葉にしてAIに渡す過程で、あいまいだった選考の基準を見直せることも大きな効果です。

応募者への対応が早くなる

書類選考の結果を早く出せれば、応募者を待たせる時間が短くなります。日程の案内やよくある質問への回答を自動にすると、担当者が席を外していても選考が止まりません。社員からの問い合わせにもすぐ答えられるため、人事の手続きも滞りにくくなります。

長い書類でも見落としが減る

職務経歴書が数ページにわたる応募者や、応募が集中して1件あたりにかけられる時間が短い時期には、資格や経験の記述を読み飛ばしてしまうことがあります。AIに要件ごとの該当箇所を抜き出させれば、人の読み飛ばしを補えます。AIの見落としもあるため、人とAIで互いに確かめ合う形にしておくと安心です。

記録が残り、数字で振り返れる

応募の経路ごとの数や、書類選考を通過した割合、選考の段階ごとに離れた人の数などをまとめやすくなり、採用のどこに課題があるのかを数字で振り返れます。担当者の頭の中にあった評価の観点が記録として残り、引き継ぎもしやすくなります。

書類選考AIのデメリットと注意点

デメリットと注意点

メリットがある一方で、書類選考でのAI活用には、誤り、偏り、説明のしにくさなどのデメリットがあります。どれも、使い方と体制で抑えられるものです。

もっともらしい誤りが混ざる

生成AIは、事実と違う内容を自然な文章で出力することがあります。書類にない経験を「ある」と要約したり、在籍期間を読み違えたりすれば、書類選考の判断を誤らせます。求人票の条件や、社員への手続きの案内に誤りが混ざるとトラブルにもつながります。判断に使う項目や、人に見せる文章は、必ず人が元の書類や規程と見比べる流れにしておきましょう。

バイアスと公平性|過去のデータの偏りを引き継ぐ

過去の採用や評価のデータをもとに判断するAIは、そのデータに含まれる偏りも学んでしまいます。たとえば、過去の採用者が特定の学歴や性別に偏っていれば、AIも同じ傾向の人を高く評価するおそれがあります。生成AIに評価基準を渡す使い方でも、基準の言葉の選び方しだいで、特定の経歴の人が有利になることがあります。AIの判断が公平かどうかは、元になったデータと基準が公平かどうかで決まります。

判断の理由を説明できなくなる

AIが出したスコアだけで書類選考や評価を進めると、なぜその結果になったのかを、応募者や社員に説明できなくなります。処遇に関わる判断ほど、理由を説明できることが信頼の前提です。スコアではなく、要件ごとの根拠を出させる使い方を選びましょう。

人柄や職場との相性は書類だけでは測れない

書類から分かるのは、応募者が書いた経歴と言葉だけです。仕事への向き合い方や、チームの中での振る舞い、職場との相性は、AIを使っても書類だけでは測れません。文章が上手な応募者ほど高く評価されやすい点にも注意が必要です。書類選考では要件を満たしているかの確認にとどめ、人柄や相性は面接で確かめる、と役割を分けておきましょう。

生成AIで整えた応募書類が増えている

応募者の側も、生成AIを使って履歴書や職務経歴書、志望動機を書けるようになりました。文章の整い方や言葉の選び方では、応募者の差がつきにくくなっています。書類選考では、表現の上手さよりも、担当した業務、役割、期間、成果といった具体的な事実が書かれているかを見るようにします。書類の内容が具体的でない点は、面接で詳しく聞いて確かめましょう。

応募者や社員が不安に感じる

「AIに選ばれた」「AIに評価された」と受け取られると、応募をためらったり、会社への信頼が下がったりすることがあります。書類選考のどこにAIを使い、何に使わないのか、合否は誰が決めるのかを伝えることが大切です。

費用と運用の手間がかかる

ツールの利用料のほかに、評価基準や使い方のルールづくり、担当者への研修、AIの出力の確認など、運用の手間がかかります。導入しただけで使われなくなることもあるため、どの業務の何の時間を減らすのかを決めてから始めましょう。導入後に使われ続ける仕組みのつくり方は AI導入後の運用定着ガイド で解説しています。

最終判断を人が行う体制づくり

AIを使っても最終判断を人が行うには、言葉だけでなく体制として決めておく必要があります。まず、書類選考の合否を決める担当者と、迷ったときに相談する相手を決めます。次に、AIが低い段階に分けた応募書類も、一定の割合で人が読んで確かめる抜き取りの確認を入れます。

あわせて、誰がどの根拠で判断したのかを選考の記録に残し、応募者から選考について問い合わせがあったときの窓口も決めておきます。AIの出力をそのまま結果にしない仕組みがあれば、誤りや偏りに早く気づけます。

公的資料で押さえる法令上の注意点

法令上の注意点

書類選考でAIを活用するときは、応募者の個人情報を扱います。ここでは、個人情報保護委員会と厚生労働省の公的資料をもとに、押さえておきたい点を整理します。具体的な判断に迷うときは、社内の法務担当や専門家に相談しましょう。

個人情報保護法|利用目的の範囲で使い、目的を伝える

個人情報保護法では、個人情報を扱うときは利用目的をできる限り特定し(第17条)、本人の同意なく、その目的の達成に必要な範囲を超えて扱ってはならない(第18条)とされています。また、応募書類のように本人から直接書面で個人情報を受け取るときは、あらかじめ利用目的を本人に明示する必要があります(第21条)(出典:e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」)。

書類選考のために集めた情報を、AIの分析や別の目的に使う場合は、その使い方が利用目的の範囲に入っているかを確かめます。範囲に入らない使い方をするなら、利用目的を見直して応募者に示すか、本人の同意を得る必要があります。

生成AIに個人情報を入れるときの注意(個人情報保護委員会)

個人情報保護委員会は2023年6月に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を出しています。事業者が生成AIに個人情報を含む指示を入力するときは、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確かめること、本人の同意なく個人データを入力し、それが応答の出力以外の目的で扱われると法に違反する可能性があるため、入力したデータを機械学習に使わないことなどをサービス側に確かめること、とされています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。

応募書類や面接の記録を生成AIに入れる前に、使うサービスが入力した内容を学習に使わない設定になっているかを、規約と管理画面で確かめておきましょう。

職業安定法と指針|集めてはいけない情報がある

職業安定法第5条の5では、労働者の募集を行う者などは、求職者の個人情報を業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして集め、その目的の範囲内で保管・使用しなければならないとされています(出典:e-Gov法令検索「職業安定法」)。

さらに、厚生労働省の指針(平成11年労働省告示第141号)では、特別な職業上の必要性がある場合などを除き、次の情報を集めてはならないとしています(出典:厚生労働省「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者…等に関して適切に対処するための指針」)。

集めてはならない情報(指針) AIを使うときに気をつけること
人種、民族、社会的身分、門地、本籍、出生地など、社会的差別の原因となるおそれのある事項 SNSやWebから候補者の情報を自動で集める機能で、こうした情報を拾わないようにする
思想及び信条 投稿の分析などで、支持政党や宗教を推し量る使い方をしない
労働組合への加入状況 過去の経歴の要約で、組合活動に関する情報を判断の材料に入れない

指針では、個人情報は本人から直接集めるか、本人の同意のもとで本人以外から集めるなど、適法かつ公正な手段によることも求めています。AIのツールが応募者の情報をどこから集めているのかも、導入前に確かめておきましょう。

公正な採用選考|適性・能力に関係ない事項を基準にしない

厚生労働省は、採用選考の基本として、応募者の基本的人権を尊重することと、応募者の適性・能力に基づいた基準で行うことを挙げています。本籍地や家族の職業など本人に責任のない事項や、宗教や支持政党など思想・信条に関わる事項は、採用の基準にしないことが必要とされています(出典:厚生労働省「公正な採用選考の基本」)。

書類選考にAIを活用する場合も同じです。評価基準には職務に必要な適性・能力だけを入れ、関係のない事項がAIの出力や照合の根拠に混ざっていないかを確かめます。

過去の行政対応|内定辞退率の予測で勧告・指導

2019年には、就職情報サイトが学生の閲覧履歴などから内定を辞退する確率を算出し、本人の同意なく企業に提供していた件で、個人情報保護委員会が運営会社に勧告を行い、サービスを利用していた企業にも、利用目的の通知・公表を適切に行うことなどを指導しました(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律に基づく行政上の対応について(令和元年12月4日)」)。

データを提供した側だけでなく、使った企業も指導の対象になった点は見落とせません。外部のAIサービスを使う場合も、応募者の情報がどう使われるのかは自社の責任として確かめる必要があります。

海外の動き|EUでは採用のAIが「高リスク」に

EUのAI法(AI Act)では、採用での書類の選別など、雇用や労働者の管理に使うAIを「高リスク」に分類しています。高リスクの分野のうち雇用などに関するルールは、2027年12月2日から適用される予定です。また、職場や教育機関での感情の認識は、禁止されるAIの使い方に挙げられています(出典:European Commission「AI Act」)。EUで採用活動を行う企業はもちろん、国内だけで採用する企業にとっても、書類選考でどんなAIの使い方に注意が必要かを考える参考になります。

応募者への説明と同意|伝えておきたいこと

書類選考や面接でAIを活用する場合は、募集要項や応募フォーム、プライバシーポリシーなどで、次の点を応募者に伝えておくと安心です。録音や、利用目的の範囲を超える使い方をするときは、本人の了承や同意を得てから行います。

伝える項目 書き方の例
利用目的 応募書類と面接の記録は、選考と応募者への連絡のために利用します
AIを使う業務 応募書類の要約と面接の文字起こしにAIを使います
判断する人 選考の合否は、担当者が書類と面接の内容をもとに判断します
録音・録画 面接を録音する場合は、事前にお知らせし、了承を得てから行います
問い合わせ先 個人情報の扱いに関するお問い合わせは、採用担当までご連絡ください

書類選考と人事でAIを使うための社内ルール

活用のための社内ルール

法令上の注意点を踏まえて、採用や人事の担当者が迷わず活用できるように、社内のルールを決めておきましょう。

AIに入れてよい情報・入れない情報

区分 例 扱い
入れてよい 求人の条件、社内規程、研修資料、個人が特定されない集計 学習に使わない設定の法人向けサービスで使う
条件付きで入れる 応募書類、面接の記録、評価のコメント 利用目的の範囲内か、学習に使われないかを確かめたサービスに限る
入れない 病歴・健康診断の結果、マイナンバー、本籍、思想・信条に関わる情報 AIに入力しない。そもそも採用では集めない情報もある

病歴などは、個人情報保護法で取得に本人の同意が必要な「要配慮個人情報」にあたります。こうした情報は、AIに入れない区分にしておくのが安全です。

使うツールとアカウントを決める

担当者が個人のアカウントで思い思いのAIを使うと、どこに応募者の情報が入ったのかが分からなくなります。会社として契約したサービスとアカウントに限り、入力した内容が学習に使われない設定を管理者が確かめておきましょう。情報漏洩を防ぐ社内ルールのひな形は 生成AIの情報漏洩対策 で紹介しています。

判断の記録を残し、定期的に見直す

AIの整理を見て誰が何を判断したのかを、書類選考や評価の記録に残します。数か月ごとに、AIの出力に偏りが出ていないか、誤りが多い業務はないかを見直し、使い方とルールを直していきます。

書類選考AIの種類と選び方

書類選考AIの種類と選び方

書類選考で使うAIには、採用管理システムに付いた機能、書類選考に特化したツール、汎用の生成AI、自社に合わせて作る仕組みの4つの種類があります。自社の応募数や業務、予算に合うものを選びましょう。

PR|AIBUILDERZ AI導入支援サービス

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AIBUILDERZ|AI導入支援サービス

システム構築は成果報酬型。AI研修から導入・構築・定着まで一気通貫で支援

AIBUILDERZ

AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、一気通貫で支援するサービスです。業務アプリの構築費は事前にいただかず、実際に稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。成果報酬型での対応は、当社が小規模と定義するシステムが対象です。

  • 業種・規模を問わず支援どの業務からAIやシステムに置き換えるかを一緒に決め、効果の大きい業務から順に進めます。
  • システム構築は成果報酬型業務アプリの構築費は事前にいただきません。稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。
  • AI導入の効果を可視化置き換える業務を一覧にし、導入前後の時間から、空いた時間とかからなくなった費用を毎月記録します。
  • 小さく始めて、リスクを管理影響の小さい業務から始め、AIの実行結果は担当者が確認・承認してから反映します。

採用管理システム(ATS)搭載型

すでに使っている採用管理システム(ATS)や人事・労務のシステムに、書類の読み取りや要件との照合などのAIの機能が追加されている場合があります。応募の受付から書類選考、面接の案内までを1つの画面で進められ、データの移し替えが要らず、追加の費用も抑えやすいのが利点です。新しいツールを探す前に、今のシステムで何ができるかを確かめておきましょう。

書類スクリーニング特化型・採用に特化したAIツール

書類選考の支援、AI面接、スカウトの自動化、面接の記録など、特定の業務に絞ったツールです。書類スクリーニングに特化したものは、評価項目の設定、要件との照合、段階分け、根拠の表示といった書類選考の流れに合わせた画面がそろっており、設定すればすぐに使えます。料金は初期費用と月額費用の組み合わせが多く、応募者の数や使う機能によって変わるため、見積もりを取って比べます。

生成AIを自社で使う方法|汎用の生成AI

ChatGPT、Claude、Geminiなどの汎用の生成AIです。応募書類の要約や評価基準との照合、求人票や評価コメントの下書きなど、文章を扱う業務なら、まずはここから始められます。法人向けのプランは1人あたり月数千円程度からで、たとえばClaudeのTeamプランは、年払いで1席あたり月20ドル(月払いは25ドル)です(出典:Claude 料金ページ)。料金や条件は変わることがあるため、公式ページで確かめましょう。書類選考での具体的な使い方は、後の生成AIで書類選考を補助する進め方で紹介します。

自社の業務に合わせて作る仕組み

応募の受付から書類の整理、日程の案内までをつなぐ仕組みや、社内の規程をもとに答える問い合わせの窓口など、自社の業務に合わせてAIを組み込む方法です。市販のツールでは業務に合わない場合や、今の採用管理システムと複数のサービスをつなぎたい場合に向いています。

4つの種類の比較

種類 向いている業務 始めやすさ 注意点
汎用の生成AI 文章の下書き・要約 すぐ始められる 入力する情報のルールが要る
特化したAIツール 書類選考・面接・スカウト 設定すれば使える 判定の仕組みの説明を受けておく
今のシステムのAI機能 応募管理・労務の点検 追加の設定で使える できることが限られる
自社に合わせて作る 問い合わせ対応・業務の連携 設計と構築の期間が要る 保守の担い手を決めておく

ツールを選ぶときの7つの確認点

1つ目は、減らしたい業務と時間に合っているかです。2つ目は、入力したデータを学習に使わないか、どの国のサーバーで保管されるかなど、データの扱いです。3つ目は、AIがどんな基準で判定や並べ替えをしているのかを説明してもらえるかです。4つ目は、最終の判断を人が行える設計になっているかです。5つ目は、今の採用管理システムや人事システムとつなげられるかです。6つ目は、初期費用・月額費用・設定や研修の費用を含めた総額です。7つ目は、自社の評価基準を項目として設定でき、点数とその根拠を分けて確かめられるかです。

判定の仕組みを説明できないツールは、応募者や社員にも説明できないと考えて選びましょう。業務別のAIツールの比較は 企業向けAIツールおすすめ でも紹介しています。

書類スクリーニングに特化したAIツール3選

特化したAIツール 3選

ここからは、書類選考に使える具体的なツールを見ていきます。まずは、書類選考そのものを支える特化型のツールです。評価項目の設定、要件との照合、段階分け、根拠の表示といった画面がはじめからそろっているため、設定すればすぐに使えます。以下の機能と料金は、いずれも各社の公式サイトに載っている内容です。

01. MatchLenz|COMPASS

求人情報と自社の選考基準を読み込ませて使う、書類選考向けのクラウドサービスです。公式サイトによると、求人票から23項目を自動で抽出し、スキル・経験・カルチャー・成長性・リスクの5軸でスコアを出して、通すか見送るかの根拠を示します。採用担当者が返した判断を踏まえて重みづけを自動で調整する仕組みのため、使うほど自社の基準に近づきます。判断の履歴が残るので、担当者が替わっても基準を引き継げます。

料金は1件あたり50円の従量課金と月額固定の組み合わせで、AI評価は10件まで無料で試せると案内されています。応募の件数に応じて費用が決まるため、月によって応募数が大きく動く会社でも見通しを立てやすい形です。

強み 求人票から評価項目を自動で組み立て、5軸のスコアと根拠を示す
書類選考でできること 履歴書・職務経歴書の読み取り、要件との照合、スコアリング、判断履歴の蓄積
向いている会社 中途採用で、ポジションごとに基準が変わる会社
料金 1件あたり50円の従量課金+月額固定。AI評価は10件まで無料
公式サイト MatchLenz の公式ページ

02. プライオ|株式会社マイナビ×株式会社三菱総合研究所

プライオの公式ページの画像

新卒採用のエントリーシート選考にAIを使うツールです。公式サイトでは、選考基準を可視化してマッチングの精度を高める「優先度診断サービス」と、自社が持っているデータを分析してレポートにする「採用データAI分析サービス」の2つが案内されています。採用計画の立案から選考、振り返りまで、1シーズンを通して使う想定で作られています。

新卒採用はエントリーシートが同じ時期にまとまって届くため、読む順番をつけるだけでも担当者の負担が変わります。料金は公式サイトに記載がないため、応募数と使う機能を伝えて見積もりを取ってください。

強み 新卒のエントリーシート選考に合わせた設計で、選考基準を可視化できる
書類選考でできること エントリーシートの選考、優先度の診断、採用データの分析とレポート
向いている会社 新卒採用でエントリーシートが集中する会社
料金 記載なし(直接お問い合わせください)
公式サイト プライオ の公式ページ

03. AI書類審査|HeaR株式会社

HeaR の AI書類審査の公式ページの画像

書類の読み取りから判定、人材紹介会社への返信文の作成、通知までをひとつながりで動かし、判断に迷うグレーゾーンだけを人が確かめる設計のサービスです。公式サイトでは、判定の結果だけでなく、なぜその判定になったのかという理由や評価のスコアも出力すると説明されています。

人材紹介会社からの推薦が多く、返信が遅れると候補者を逃してしまう中途採用に向いた形です。料金は公式サイトに記載がないため、問い合わせて確かめてください。

強み 判定の理由とスコアを出し、迷う案件だけを人に回す
書類選考でできること 応募書類の読み取りと判定、理由とスコアの出力、返信文の作成と通知
向いている会社 人材紹介会社からの推薦が多く、返信の速さが課題の会社
料金 記載なし(直接お問い合わせください)
公式サイト HeaR の AI書類審査の公式ページ

AI機能を備えた採用管理システム(ATS)4選

AI機能を備えたATS 4選

次に、応募の受付から選考の進行までを扱う採用管理システム(ATS)です。すでにATSを使っているなら、新しいツールを増やす前に、今のシステムで何ができるかを確かめるのが先です。AIの機能がオプションの場合は、基本プランとは別に費用がかかります。

04. HERP Hire(ハープハイアー)|HERP, Inc.

HERP Hire の公式ページの画像

応募の受付から面接、オファーまでを扱う採用管理システムに、「AIリクルーター」としてAIの機能をまとめて載せています。公式サイトでは、応募書類をAIが一次スクリーニングする「書類選考アシスト」、面接の内容を自動で書き起こして要約まで作る機能、面接の構成や質問案の設計を支援する機能、選考についてAIに相談できるチャットが案内されています。Slack連携で、現場のメンバーを選考に巻き込みやすいのも特徴です。

料金は金額の記載がありませんが、年間の応募が300名以下なら無料で始められると案内されています。書類選考のAIと採用管理をひとつで扱いたい場合の候補になります。

強み 採用管理と書類選考のAIがひとつにまとまり、Slackで現場を巻き込める
書類選考でできること 応募書類の一次スクリーニング、面接の書き起こしと要約、質問案の設計
向いている会社 現場の社員が選考に関わる中途採用の会社
料金 年間の応募が300名以下なら無料。金額は記載なし(直接お問い合わせください)
公式サイト HERP Hire の公式ページ

05. sonar ATS|Thinkings株式会社

sonar ATS の公式ページの画像

新卒・中途のどちらにも対応した採用管理システムで、応募の受付から選考の進み具合、内定者のフォローまでを1つの画面で扱います。公式サイトでは、LINE連携や適性検査とならんで「採用AI」が各種オプションとして案内されています。応募者への連絡を自動で進める設計のため、大量の応募を扱う新卒採用で選ばれやすいツールです。

料金は初期費用と基本プランの組み合わせで、採用の規模や目的に応じて提案する形です。金額は公式サイトに記載がないため、料金表を取り寄せて確かめてください。AIの機能はオプションのため、基本プランの料金とは別に費用がかかる点に注意しましょう。

強み 新卒の大量採用に向いた自動化と、オプションでの採用AI
書類選考でできること 応募者の一元管理と選考の進行、オプションの採用AI
向いている会社 新卒採用で応募が集中し、連絡の自動化を進めたい会社
料金 初期費用+基本プラン。金額は記載なし(直接お問い合わせください)
公式サイト sonar ATS の公式ページ

06. HRMOS採用|株式会社ビズリーチ

HRMOS採用 の公式ページの画像

株式会社ビズリーチが自社で開発した採用管理システムです。新卒・中途に対応し、求人ページの作成から応募者の管理、入社後の活躍の分析までを扱います。公式サイトでは、ビズリーチが持つ転職市場のデータと生成AIの技術を活かしたAI機能を「続々搭載予定」と案内しており、現時点で示されているのは求人の作成を支援する機能です。

料金は初期費用がゼロで、採用数に応じたプランが用意されています。金額は価格表の取り寄せで確かめる形です。書類選考そのものをAIに任せたい場合は、今の時点でどの機能が使えるのかを問い合わせて確かめてから決めましょう。

強み 初期費用ゼロで始められ、採用数に応じてプランを選べる
書類選考でできること 応募者の一元管理と選考の進行。AI機能は求人の作成支援が中心で、今後の搭載を案内
向いている会社 中途採用が中心で、採用管理システムをはじめて入れる会社
料金 初期費用ゼロ+採用数に応じたプラン。金額は記載なし(価格表の取り寄せ)
公式サイト HRMOS採用 の公式ページ

07. ジョブカン採用管理|株式会社DONUTS

ジョブカン採用管理 の公式ページの画像

応募者の獲得から候補者の管理までを扱う採用管理システムで、公式サイトに月8,500円からと料金が明記されています。中途・新卒の採用を一元で管理でき、画面がシンプルなため、はじめて採用管理システムを入れる会社でも扱いやすい形です。

AIに関わる機能はオプションとして用意されており、24時間365日の受け答えができる「AI面接」と、第三者の評価から仕事での成果や人となりを確かめる「リファレンスチェック」が案内されています。リファレンスチェックは初期費用が無料で、1回1,500円から始められると記載されています。書類選考そのものを任せる機能ではないため、書類選考はほかのツールや生成AIと組み合わせる形になります。

強み 月8,500円からと料金が公開されており、費用の見通しを立てやすい
書類選考でできること 応募者の一元管理と選考の進行。AIはAI面接とリファレンスチェックのオプション
向いている会社 費用を抑えて採用管理システムから始めたい会社
料金 月8,500円から。リファレンスチェックは初期費用無料・1回1,500円から
公式サイト ジョブカン採用管理 の公式ページ

7つのツールの比較

ツール 種類 書類選考でできること 料金
MatchLenz 特化型 読み取り・照合・5軸のスコアと根拠 1件50円の従量課金+月額固定
プライオ 特化型 エントリーシートの選考・優先度の診断 記載なし
AI書類審査(HeaR) 特化型 読み取り・判定・理由とスコア・返信文 記載なし
HERP Hire ATS搭載型 応募書類の一次スクリーニング 年間応募300名以下は無料。金額は記載なし
sonar ATS ATS搭載型 応募者の管理+オプションの採用AI 記載なし
HRMOS採用 ATS搭載型 応募者の管理。AI機能は今後の搭載を案内 初期費用ゼロ。金額は記載なし
ジョブカン採用管理 ATS搭載型 応募者の管理+AI面接などのオプション 月8,500円から

料金と機能は各社の公式サイトに載っている内容です。公開されていない項目は「記載なし」としています。料金も機能も変わることがあるため、契約の前に公式サイトで確かめてください。汎用の生成AIを使う方法は、前の章の生成AIを自社で使う方法をご覧ください。

書類選考AIの費用相場と料金体系

費用相場と料金体系

書類選考AIの費用は、公開されている金額が限られており、同じ機能でも会社によって課金のしかたが違います。何にいくらかかるのかを分けて見ておくと、見積もりを比べやすくなります。

料金を構成する3つの要素

1つ目は初期費用です。環境の設定、評価基準の作り込み、担当者への説明にかかる費用で、0円のサービスもあれば、設定を任せると数十万円になることもあります。2つ目は月額費用で、システムを使い続けるための固定の料金です。3つ目は従量の利用料で、評価した応募の件数や、使ったAIの量に応じてかかります。

この3つに加えて、既存の採用管理システムや求人媒体とつなぐための費用、担当者向けの研修の費用がかかる場合があります。見積もりを取るときは、どこまでが料金に含まれるのかを項目ごとに確かめましょう。

課金の型|定額・従量・オプション

課金の型 費用の決まり方 向いている会社 気をつけたいこと
月額の定額 応募数にかかわらず毎月同じ額 毎月の応募数が安定している会社 応募が少ない月も同じ額がかかる
応募の件数での従量 評価した応募1件ごとに加算 時期によって応募数が大きく動く会社 応募が集中した月は費用が膨らむ
採用人数・従業員数での段階 採用予定数や規模でプランが変わる 年間の採用計画が決まっている会社 計画を超えると上のプランに移る
ATSのオプション 基本プランに追加して加算 すでにATSを使っている会社 基本プランとの合計で見ないと比べられない

費用の目安

公開されている料金は限られますが、全体を見渡すと次のような幅を見ておくとよいでしょう。初期費用は0円から数十万円程度、月額は小規模の採用で1万円台から3万円台、年間で数十名以上を採用する規模では数万円から十数万円程度です。応募の件数で課金する形では、1件あたり数十円から数百円程度が目安になります。大量採用で、媒体との連携や分析、独自の設定を重ねると、年間で100万円を超えることもあります。

汎用の生成AIを使う方法なら、法人向けのプランが1人あたり月数千円程度からで、書類選考の要約と照合だけなら、ここから始めても効果を確かめられます。たとえばClaudeのTeamプランは、年払いで1席あたり月20ドル(月払いは25ドル)です(出典:Claude 料金ページ)。

総額で比べるときの確認点

見積もりを比べるときは、初期費用・月額費用・従量の利用料・連携の費用・研修の費用を足して、1年分の総額に直します。応募が集中する月の件数でも試算し、上限に達したときにどうなるのかを確かめておきましょう。最低の契約期間、途中で解約したときの扱い、応募数が計画を超えたときの追加の料金も、契約の前に聞いておきたい項目です。

費用に見合うかどうかは、次の章の書類選考AIの工数削減の試算方法で、自社の応募数と作業時間を当てはめて確かめられます。AI導入全体の費用の考え方は AI導入の費用相場 でも紹介しています。

書類選考AIの導入手順

書類選考AIの導入手順

書類選考AIは、次の5つのステップで進めると失敗しにくくなります。まず全体の流れを示し、そのあとで1つずつ詳しく見ていきます。

01

今の選考フローを棚卸しし、時間のかかる作業を測る

応募の受付から書類選考、面接の案内までの作業を書き出し、1件あたりの時間と月の件数を測ります。時間がかかっていて、手順が決まっている作業が最初の候補です。

02

評価基準を言葉にし、AIに任せる範囲を決める

必須・歓迎の要件と見る観点を、誰が読んでも同じ意味になる言葉にそろえます。そのうえで、AIに任せることと人が担うことを決めます。

03

社内ルールを決め、ツールを選んで小さく試す

入力してよい情報、使うサービスとアカウント、応募者への伝え方を決め、7つの確認点でツールを選びます。最初は1つの職種に絞って試します。

04

人の判断と照らして、効果と誤りを確かめる

1〜2か月ほど試し、減った時間と、AIの出力の誤りや偏り、人の判断との食い違いを記録します。担当者が使いにくいと感じた点も集めておきます。

05

運用ルールを文書にし、ほかの職種に広げる

効果が確かめられたら、運用ルールを文書にしてほかの職種に広げます。数か月ごとに、使い方とルール、AIの出力の偏りを見直します。

現在の選考フローを棚卸しする

最初に、応募の受付から書類選考、面接の案内までに、誰がどんな作業をしているのかを書き出します。応募書類のダウンロード、書類の確認、合否の相談、結果の入力、応募者への連絡など、細かい作業まで並べるのがコツです。

あわせて、月の応募数と、1件の書類選考にかかっている時間を測っておきます。この数字が、AIを入れたあとに効果を確かめるときの比べる前の数字になります。

評価基準を言葉にそろえる

AIは渡された基準のとおりにしか照合できません。「コミュニケーション力がある人」のようなあいまいな基準のままでは、AIの出力も担当者によって読み方が変わってしまいます。次のような評価基準シートを職種ごとにつくり、書類のどこで何を確かめるのかを言葉にしておきましょう。

項目 区分 書類で確かめること 判断の目安
法人営業の経験 必須 職務経歴書に法人を相手にした営業の経歴があるか 通算3年以上で満たす
新規開拓の経験 歓迎 新しい取引先を開拓した記述があるか 担当した件数や期間が書かれていれば確認済み
顧客の業種 歓迎 製造業など、自社の顧客に近い業種を担当したか 該当があれば面接で詳しく聞く
使えるツール 歓迎 顧客管理や表計算のツールを使った記述があるか なくても見送りの理由にはしない
基準に入れないこと − 本籍地、家族、思想・信条など職務に関係のない事項 照合の根拠に使わない

表は法人営業職を例にした書き方の見本です。必須と歓迎を分け、書類のどこで何を確かめるかまで言葉にしておくと、AIの照合も人の判断もぶれにくくなります。

対象を絞って小さく試す

最初から全職種で使うのではなく、応募が多く、評価基準を言葉にしやすい職種を1つ選んで試します。はじめの数週間は、AIの整理と人の書類選考を並行して行い、同じ書類を両方で見比べる形にすると、AIをどこまで信頼してよいかが分かります。

試す期間は、1〜2か月を目安にします。この間は、AIの出力だけで合否を決めることはせず、すべての書類を人が確かめます。

結果を人の判断と照らして検証する

試した結果は、次の4つの観点で確かめます。1つ目は、AIの照合と人の判断がどのくらい一致したか、食い違った書類は何が原因だったかです。2つ目は、AIが要件を満たす経験を見落としていないかです。3つ目は、職務に関係のない事項に結果が引っ張られていないかです。4つ目は、1件あたりの書類選考の時間がどれだけ減ったかです。

続けて運用するなら、書類選考を通過した人の面接の結果や、入社後の活躍とも照らし合わせ、評価基準そのものを見直していきます。書類選考の基準が入社後の活躍とずれていれば、AIを使っても採用の質は上がらないためです。

運用ルールを文書にする

効果が確かめられたら、担当者が替わっても同じように使えるように、運用ルールを文書にします。書いておきたい項目は次のとおりです。

項目 決めておくこと
対象 AIを使う職種と、書類選考のどの作業に使うか
入力する情報 AIに入れる書類の範囲と、入力の前に外す情報
使うツール 会社として契約したサービスとアカウント、学習に使わない設定
判断する人 合否を決める担当者と、迷ったときの相談先
抜き取りの確認 AIが低い段階に分けた書類を人が読む割合と頻度
記録 誰がどの根拠で判断したかを残す場所
見直し 評価基準とAIの出力の偏りを見直す時期
応募者への説明 募集要項やプライバシーポリシーに書く内容

始める前のセルフチェック

次の6つのうち、当てはまらないものが多いほど、AIを入れる前の準備に時間をかけたほうがよいでしょう。減らしたい業務と、その時間が分かっている。書類選考や評価の基準が言葉になっている。応募者や社員の情報をどこに保管しているかが分かっている。AIの出力を確かめる担当者を決められる。応募者への利用目的の伝え方を決めている。法務や情報システムの担当と相談できる。

よくある失敗と対策

よくある失敗 対策
ツールを入れたが、何の時間を減らすかが決まっていない 導入前に業務と時間を測り、目標を決める
基準があいまいなまま、AIに選考をさせた 先に基準を言葉にし、AIは要約と整理にとどめる
担当者が個人のアカウントで応募書類を入力した 使うサービスとアカウントを会社で決める
応募者にAIの利用を伝えていなかった 募集要項やプライバシーポリシーで利用目的を示す
一度決めたルールを見直さなかった 数か月ごとに出力の偏りと誤りを確かめる

AI導入全体の進め方は 中小企業のAI導入ガイド、費用の考え方は AI導入の費用相場 で詳しく解説しています。

生成AIで書類選考を補助する進め方

生成AIで書類選考を補助する

専用のツールを入れる前に、会社で契約した生成AIで書類選考の補助を試すこともできます。うまく使うには、評価基準の伝え方と、個人情報の扱い方の2つを押さえておくことが大切です。

評価基準を伝えるプロンプトの例

生成AIへの指示(プロンプト)には、AIの役割、評価基準、出力の形、してはいけないことの4つを入れます。前の章の評価基準シートをそのまま貼り付ければ、AIは同じ観点で書類を整理できます。

入れる要素 書き方の例
AIの役割 あなたは採用担当者の書類選考を補助します。合否は判断せず、評価基準ごとの整理だけを行ってください。
評価基準 次の評価基準シートの項目ごとに、応募書類に該当する記述があるかを確かめてください。(評価基準シートを貼り付ける)
出力の形 項目ごとに「満たす・一部満たす・記述なし」のいずれかと、根拠となる書類の文をそのまま引用して示してください。最後に、面接で確かめたい点を3つ挙げてください。
してはいけないこと 書類に書かれていない経験を推測で補わないでください。本籍地、家族、思想・信条など、職務に関係のない事項は評価に使わないでください。

根拠の文を引用させておけば、担当者はその部分だけを元の書類で確かめられます。出力の形を毎回そろえると、応募者どうしの比較もしやすくなります。同じプロンプトを社内で共有し、使った結果をもとに少しずつ直していきましょう。

個人情報を入力する際の注意

応募書類を生成AIに入力する前に、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、生年月日、顔写真など、書類選考の照合に使わない情報を外しておきます。応募者は番号で呼び分け、番号と氏名の対応表は社内で管理します。

使うのは、会社として契約し、入力した内容を学習に使わない設定を確かめたサービスに限ります。病歴など要配慮個人情報にあたる情報は入力しません。利用目的の範囲内か、学習に使われないかを確かめる考え方は、前の章の生成AIに個人情報を入れるときの注意も参考にしてください。

自社に合う書類選考AIの進め方チェック

自社に合う進め方チェック

書類選考AIの進め方は、応募の数と、いまの採用管理のやり方で変わります。2つの表で、自社がどこから始めるとよいかを確かめてみてください。表の区切りは、進め方を考えるための目安です。

応募数と選考工数から見る導入の優先度

自社の状況 導入の優先度 始め方の目安
応募が多く、書類選考のために面接や連絡が後回しになっている 高い 評価基準シートをつくり、特化型のツールやATSのAI機能を比べる
応募の多い時期だけ、書類選考が追いつかなくなる 中くらい 会社で契約した生成AIで、要約と照合から試す
応募が少なく、1件ずつ読む時間を取れている 低い 評価基準を言葉にし、求人票や連絡文の下書きからAIを使う
担当者ごとに書類選考の判断がばらついている 応募数にかかわらず高い 評価基準シートづくりを先に行い、AIで同じ観点の整理をそろえる

応募数が少なくても、判断のばらつきが課題なら、評価基準を言葉にする作業だけで効果が出ることがあります。

いまの採用管理の状況から見る進め方

いまの採用管理 おすすめの進め方 気をつけたいこと
メールや表計算で応募を管理している 生成AIで要約と照合を試し、効果が見えたらATSの導入もあわせて考える 応募書類の保管場所と、AIに入れる範囲を先に決める
ATSを使っているが、AIの機能はない・使っていない 今のATSに追加できるAI機能があるかを確かめる 追加の費用と、評価基準を設定できるかを確かめる
ATSのAI機能をすでに使っている 評価基準と抜き取りの確認を整え、人の判断との一致を見直す 判定の仕組みの説明を受けておく
求人媒体ごとに応募がばらばらに届く 応募の受付から書類の整理までをつなぐ仕組みを検討する つなぐサービスの数が増えるほど設計と保守の手間が増える

書類選考AIの工数削減の試算方法

工数削減の試算方法

書類選考AIでどのくらいの時間が減りそうかは、応募数と1件あたりの時間から試算できます。ツールを比べる前に自社の数字で計算しておくと、費用と見比べて判断しやすくなります。

削減できる時間の計算式

書類選考で減らせる時間は、次の3つの手順で出せます。表の例は、計算の流れを示すための仮の数字です。

手順 計算 例
1. いまの時間を出す 月の応募数 × 1件の書類選考の時間 月120件 × 15分 = 月1,800分(30時間)
2. AIを使ったあとの時間を出す 月の応募数 × AIの整理を確かめて判断する時間 + 抜き取りの確認の時間 月120件 × 5分 + 月120分 = 月720分(12時間)
3. 差を出す いまの時間 − AIを使ったあとの時間 月30時間 − 月12時間 = 月18時間

減った時間をお金に置き換えるなら、1時間あたりの人件費を掛けます。たとえば1時間3,000円とすると、月18時間で月5万4,000円分の時間が空く計算です。この金額と、ツールの利用料や設定・運用の手間を見比べて判断します。

試算に使う前提の置き方

試算の精度は、前提の数字で決まります。1件の書類選考の時間は、担当者の感覚ではなく、数日分の実際の作業を測って出しましょう。AIを使ったあとの時間は、小さく試した期間の実際の数字に置き換えていきます。

見落としやすいのは、AIの出力を確かめる時間と、抜き取りの確認の時間です。ここを入れずに計算すると、効果を大きく見積もってしまいます。試算はAIの出力を確かめる時間まで含め、試した期間の実際の数字で置き直すことが大切です。

書類選考の前後で使える採用業務のAI活用5選

採用業務でのAI活用5選

AIを使えるのは書類選考だけではありません。ここからは、書類選考以外に人事・採用でAIを使える業務を紹介します。まずは、採用の流れに沿って、AIを活用できる5つの業務です。

1. 求人票・募集文の作成

職種、仕事内容、求める経験、働き方などの条件を伝えると、生成AIが求人票や募集ページの文章を下書きします。媒体ごとの文字数に合わせた書き分けや、応募者に伝わりにくい社内用語の言い換えにも向いています。求める経験をはっきり書いておくと、書類選考で照らし合わせる評価基準もそろえやすくなります。

注意したいのは、AIが実態と違う魅力的な言葉を足してしまうことです。職業安定法第5条の4では、募集の情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁じ、正確かつ最新の内容に保つことを求めています。下書きはAIに任せても、条件と仕事内容が実態どおりかは人が必ず確かめましょう。

2. スカウト文面の作成と母集団づくり

スカウトサービスで候補者に送る文面を、候補者の経歴に合わせてAIに書き分けてもらう使い方です。同じ文面を一斉に送るより、経歴のどこに興味を持ったのかが伝わる文面のほうが、候補者に読んでもらいやすくなります。採用管理システムやスカウトサービスの中には、求人の条件に合う候補者を探したり、並べ替えたりするAIの機能を持つものもあります。

候補者の経歴を外部の生成AIに入力する場合は、個人情報の扱いになります。どの情報を入れてよいかは、前の章で説明した社内ルールで決めておきましょう。

3. 書類選考の要約・論点の整理

応募書類の要点をAIにまとめさせ、求める経験との一致点や、面接で確かめたい点を整理する使い方です。応募が多い職種ほど、書類を読む時間を減らせます。具体的な使い方は、書類選考AIでできることと生成AIで書類選考を補助する進め方で詳しく紹介しました。

始めるときは、AIに合否を決めさせるのではなく、「要約と論点の整理」までを任せるのがおすすめです。どの経験を重く見るのかという選考の基準を先に言葉にしておき、AIの整理を見ながら人が判断します。基準があいまいなままAIに選ばせると、なぜその人が通ったのか、落ちたのかを説明できなくなります。

4. 面接の日程調整・応募者からの問い合わせ対応

面接の候補日の案内や確定の連絡、前日の案内、よくある質問への回答など、応募者とのやり取りを自動化する使い方です。チャットボットや日程調整のツールと組み合わせると、夜間や休日でも応募者を待たせずに済みます。返信が早いことは、応募者の不安を減らし、選考の途中で離れてしまうのを防ぐことにもつながります。

お見送りの連絡や、選考の結果に関する問い合わせへの返答は、応募者の受け止め方が大きく変わる場面です。文面の下書きにAIを使っても、送る前に人が目を通しましょう。

5. 面接の記録・評価のそろえ方

面接の録音や録画をもとに、AIが文字起こしと要約をつくり、評価の項目ごとに発言を整理します。面接官はメモを取ることに気を取られず、応募者との対話に集中できます。複数の面接官の記録を同じ形式でそろえられるため、評価のばらつきを話し合うときの材料にもなります。書類選考の評価基準と面接の評価項目をそろえておくと、書類で確かめきれなかった点を面接で確かめる流れもつくりやすくなります。

録音や録画をする場合は、事前に応募者へ目的を伝えて了承を得ます。また、表情や声の調子から感情や性格を読み取るような機能は、評価の根拠を説明しにくく、海外では規制の対象にもなっています。採用の判断の材料にするのは、発言の内容と、職務に必要な適性・能力に関わる点にとどめましょう。

採用以外の人事業務でのAI活用5選

人事業務でのAI活用5選

採用のあと、入社してからの人事の業務でも、AIを活用できる場面は多くあります。内定者や新入社員へのフォロー、研修の設計、配置の検討まで、5つを紹介します。

6. 入社手続き・オンボーディング

内定者への入社前の案内や、提出書類の確認、入社後の最初の数週間で読む資料づくりに活用できます。社内の規程やマニュアルをもとに、新しく入った社員が自分で調べられる質問の窓口をつくれば、配属先の上司や人事の担当者が同じ質問に何度も答える手間を減らせます。

7. 研修・人材育成

研修の資料や確認テストの作成、社員の役割に合わせた学習の計画づくりに活用できます。研修のあとに、受講者がAIに質問しながら復習できるようにする使い方もあります。社員がAIを使いこなすための研修の組み立て方は 生成AIの社員教育プログラム で詳しく解説しています。

8. 人事評価・面談の準備

目標や日々の記録をもとに、評価のコメントの下書きや、面談で話したい点の整理をAIに任せる使い方です。評価者ごとの書き方の差を小さくし、根拠となる事実を書き漏らさないようにするのに役立ちます。

評価や昇進の判断そのものは、社員の処遇を左右します。AIはあくまで材料の整理役とし、最後は評価者が自分の言葉で理由を説明できる形にしておきましょう。

9. 社内からの問い合わせ対応

「有給休暇の残りは何日か」「住所が変わったときの手続きは」といった社員からの問い合わせに、就業規則や社内の手続きの案内をもとにAIが答える仕組みです。人事の担当者が受ける問い合わせのうち、規程を見れば答えられるものを減らせます。答えの元になる規程や案内を最新に保つことが、正しく答えさせるための前提です。社内の質問に答える仕組みのつくり方は AIチャットボット導入ガイド も参考になります。

10. 勤怠・労務のチェックと人事データの分析

勤怠の記録から長時間の残業や打刻漏れを見つけて知らせる、手続きの書類の不備を確かめる、といった労務の点検に活用できます。また、採用の経路ごとの応募数や書類選考の通過の割合、部署ごとの離職の状況などをまとめ、傾向を読み取るレポートづくりにも向いています。

配置や異動の候補をAIに挙げさせる使い方もありますが、本人の希望やキャリア、職場の事情など、データに表れない要素が大きい判断です。データで分かることと、本人と話さなければ分からないことを分けて使うことが大切です。

書類選考AIに関するよくある質問

よくある質問
Q. AIに書類選考の合否を決めさせても大丈夫ですか?
おすすめしません。AIには要約と基準との照合までを任せ、合否は人が判断しましょう。合否の理由を説明できなくなるうえ、過去のデータの偏りを引き継ぐおそれがあります。
Q. 応募書類を生成AIに入力してもよいですか?
利用目的の範囲内であること、入力した内容が学習に使われない設定のサービスであることを確かめたうえで、会社が決めたサービスとアカウントに限って入力しましょう。氏名や連絡先など照合に使わない情報は外してから入力します。個人情報保護委員会も、生成AIに個人情報を入力するときの注意点を示しています。
Q. 採用でAIを使っていることを応募者に伝えるべきですか?
伝えておくことをおすすめします。利用目的、AIを使う業務、合否を判断するのは人であることを、募集要項やプライバシーポリシーで示しておくと、応募者の不安を減らせます。
Q. 中小企業でも書類選考や人事にAIを導入できますか?
できます。汎用の生成AIなら1人あたり月数千円程度の法人向けプランから始められ、専用のシステムを入れなくても、書類選考の要約や求人票の下書き、問い合わせ対応などに活用できます。まずは1つの職種や業務で試し、効果を確かめてから広げましょう。
Q. 書類選考AIの導入後は、どのように効果を確かめればよいですか?
導入前に測った1件あたりの書類選考の時間と比べて、どれだけ減ったかを見ます。あわせて、AIの照合と人の判断の一致の度合い、見落としの有無、職務に関係のない事項に結果が引っ張られていないかも確かめます。続けて運用するなら、書類選考を通過した人の面接の結果や入社後の活躍とも照らし合わせましょう。
Q. 書類選考AIの精度はどのくらいですか?
ツールの仕組み、評価基準の書き方、職種によって変わるため、一律には言えません。自社の過去の応募書類を使って、AIの照合と担当者の判断がどのくらい一致するかを試して確かめるのが確実です。
Q. 生成AIで書かれた応募書類はどう見ればよいですか?
文章の整い方では差がつきにくくなっているため、担当した業務、役割、期間、成果などの具体的な事実が書かれているかを見ます。具体的でない点は面接で詳しく聞いて確かめましょう。
Q. 人事・採用でAIを活用するなら、どの業務から始めるのがよいですか?
求人票やスカウト文面の下書き、書類選考の要約、面接の記録の要約、社内からの問い合わせ対応など、応募者や社員の処遇を直接決めない作業から始めるのがおすすめです。効果が確かめやすく、誤りがあっても人が確かめて直せます。
Q. 面接をAIだけで行うことはできますか?
AIが質問をして回答を記録するAI面接のツールもありますが、合否の判断や、応募者からの質問への対応は人が担うのが安全です。面接の文字起こしや要約から始め、面接官が対話に集中できる形にするのがおすすめです。
Q. AIで人事評価をしてもよいですか?
評価のコメントの下書きや、目標と記録の整理に活用するのは有効です。ただし、評価の決定と理由の説明は評価者が行い、社員に説明できる形にしておきましょう。
Q. 書類選考や人事でのAI活用で、法令上とくに注意することは何ですか?
個人情報保護法の利用目的の特定と明示、職業安定法と指針による求職者の個人情報の収集の制限、厚生労働省の公正な採用選考の考え方の3つです。適性・能力に関係のない情報をAIの判断の材料に入れないようにしましょう。

まとめ

まとめ

書類選考AIは、書類を読んで整理する時間を減らし、人が見極めに集中するための道具です。押さえておきたい点を、5つにまとめます。

01
人事部門の生成AIの利用は半数を超えたが、書類選考のように業務の流れにAIを組み込んでいる企業はまだ少ない
02
書類選考では、読み取り・要約・要件との照合・質問案・連絡の下書きをAIに任せやすい
03
合否・評価・異動など人の処遇は、AIの整理と根拠を材料に人が決めて説明する
04
個人情報保護法・職業安定法の指針・公正な採用選考の考え方に沿って、評価基準と入力する情報、応募者への伝え方を決める
05
1つの職種で小さく試し、人の判断と照らして効果と偏りを確かめてから広げ、定期的に見直す

書類選考AIを始める前に決めておくこと

書類選考AIを始める前に、少なくとも次の4つを決めておきましょう。1つ目は、どの職種の書類選考で、どの作業の時間を減らすかです。2つ目は、必須と歓迎を分けた評価基準シートです。3つ目は、AIに入れる情報の範囲と、使うサービスとアカウントです。4つ目は、合否を決める担当者と、応募者への伝え方です。この4つが決まっていれば、どのツールを選んでも、書類選考AIを安心して試せます。

社員がAIを使えるようにする研修は 生成AIの社員教育プログラム、AI導入全体の進め方は 中小企業のAI導入ガイド もあわせてご覧ください。