採用の書類が山積みになり、評価の時期には面談の記録づくりに追われ、毎日のように同じ質問が人事に届く。AIを人事に活用すれば楽になりそうだと感じていても、どの業務から手をつければよいのか、社員の個人情報を扱ってよいのかがわからず、一歩を踏み出せない人事担当者や経営者は少なくありません。中小機構の調査では、AIを導入している中小企業は20.4%にとどまる一方、業務部門別に見たAIの導入率は「総務・管理部門」が68.3%で最も高く、人事を含むバックオフィスから活用が進んでいることがわかります(出典:中小機構『中小企業のAI等の利活用に係る実態調査』2026年3月)。

そこで本記事では、AI人事の活用方法を、採用・評価・育成・配置・定着・組織開発・労務・勤怠の業務ごとに整理します。あわせて、導入の進め方、個人情報や評価の公平性で気をつけたい点、ツールの選び方、企業の事例、自社の着手順を決めるセルフチェックと工数の試算の手順まで、人事でAIを使い始める前に知っておきたいことをまとめました。

この記事でわかること

  • 人事業務ごとのAIの使い道
  • 最初に試す業務の選び方
  • 個人情報と評価で守ること
AIBUILDERZ

この記事の監修者

AIBUILDERZ編集部

for,Freelance株式会社

AI導入支援サービス「AIBUILDERZ」を運営するチームです。AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、企業のAI導入を一気通貫で支援しています。

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AI人事とは何か|人事の仕事でAIが担う役割

AI人事とは何か|人事の仕事でAIが担う役割

AI人事とは、採用・評価・育成・労務といった人事の仕事に、AIを取り入れて進めることを指します。AIが得意なのは、大量の情報を読む、整理する、下書きをつくる作業です。合否や評価を決めることではありません。

AI人事の意味と対象になる業務

人事の仕事には、書類を読む、日程を調整する、文章を書く、問い合わせに答える、データを集計するといった作業が数多く含まれます。AI人事は、こうした作業の一部をAIに任せ、人事担当者が人と向き合う時間を増やす取り組みです。

対象になるのは、採用、評価、育成、配置・異動、定着、組織開発、労務・問い合わせ対応、勤怠・給与のほぼすべての領域です。ただし、どの領域でもAIは判断の材料をそろえる役、決めるのは人という分担を最初に決めておくことが、うまく使う前提になります。

人事でAIの活用が広がっている背景

背景にあるのは、人手不足と、生成AIの使いやすさです。先の中小機構の調査では、AIを導入した中小企業が感じた効果として「業務効率化/作業時間の短縮」が83.2%で最も多く、「人手不足対応」が33.9%で続いています。導入済みの企業が使っているAIは「生成AI」が82.6%と最も多く、専門の開発をしなくても、文章を扱う仕事から使い始められるようになりました。

人事の仕事は、求人票、評価コメント、研修資料、規程、社内への案内と、文章を扱う場面が特に多い仕事です。生成AIの得意分野と重なる部分が大きいことも、人事で活用が広がっている理由の1つです。

HRテックとAI人事の違い

HRテックは、勤怠管理、給与計算、採用管理、タレントマネジメントなど、人事の仕事をITで支える仕組み全体を指す言葉です。その多くは、決まった手順を正確にこなすためのシステムです。

AI人事は、その中でも「読む・考える・書く」部分にAIを使うものを指します。たとえば、採用管理システムは応募者の情報を管理しますが、応募書類を読んで要点をまとめたり、面接の質問を考えたりするのはAIの役割です。最近は、HRテックの製品の中にAIの機能が組み込まれることも増えており、両者の境目はなくなりつつあります。

生成AIと従来型AIの使い分け

人事で使うAIは、大きく生成AIと従来型AIの2つに分けられます。向いている仕事が違うため、目的に合わせて使い分けます。

種類 得意なこと 人事での使い道 気をつけたい点
生成AI
ChatGPT・Claude・Geminiなど
文章をつくる、要約する、質問に答える 求人票やスカウト文の下書き、評価コメントの下書き、面談記録の要約、社内の問い合わせへの回答 もっともらしい誤りを出すことがある。出力は必ず人が確かめる
従来型AI
予測・分類・スコアリング
過去のデータから傾向を見つけ、数値で示す 応募者と求める人物像との近さの判定、離職の兆しの把握、勤怠データの分析 学習したデータの偏りを引き継ぐ。根拠が見えにくくなりやすい

文章を扱う仕事は生成AIから、数字で傾向を見る仕事は従来型AIや、それを組み込んだ人事システムから始めるのが一般的です。

人事業務別のAI活用方法

人事業務別のAI活用方法

ここからは、人事の業務ごとに、AIをどう使えるのかを見ていきます。まずは全体を一覧にまとめました。

業務 AIに任せやすい作業 人が担う部分
採用 求人票・スカウト文の下書き、応募書類の要約、面接日程の調整、応募者からの質問への回答 合否の判断、面接での見極め、内定者との関係づくり
評価 評価コメントの下書き、目標の書き方の添削、評価のばらつきの集計 評価の決定、本人へのフィードバック
育成 研修資料の下書き、研修の候補の提案、社内ナレッジの検索 育成の方針づくり、上司との面談
配置・異動 スキル情報の整理、配置の候補の提示 本人の希望の確認、配置の決定
定着 サーベイの設問づくりと自由記述の分析、面談の準備 面談そのもの、職場の改善
組織開発 人事データとサーベイの結果の突き合わせ、課題の整理、施策の候補の提示 施策の決定、現場との合意づくり
労務・問い合わせ 社内規程にもとづく自動回答、規程や案内文の草案、議事録の作成 法令との照合、例外への対応
勤怠・給与 打刻の漏れや打ち間違いの洗い出し、計算結果の点検、改定の案内文づくり 就業規則・法令との照合、支給額の確定

採用|求人票の作成から面接の調整まで

採用は、AIを使える場面が最も多い業務です。求める人物像と仕事の内容を伝えれば、生成AIが求人票やスカウト文の下書きをつくってくれます。職種ごとに言い回しを変えたり、応募者の経歴に合わせてスカウト文を書き分けたりする手間も減らせます。

選考では、応募書類の要点を同じ形式でまとめさせると、読む時間を短くでき、担当者による読み方の差も小さくなります。面接の日程調整や、応募者からのよくある質問への回答をAIのチャットに任せる方法もあります。一方で、AIに書類の合否まで決めさせるのは避け、AIの要約は人が読むための下準備として使うのが安全です。応募書類の選考にAIを使うときの進め方と注意点は、書類選考AIの活用法で詳しくまとめています。

評価|コメントの下書きと評価のばらつきの確認

評価の時期は、上司が部下一人ひとりに評価コメントを書く負担が大きくなります。期中の記録や1on1のメモをもとに、生成AIにコメントの下書きをつくらせれば、上司は内容の確認と、自分の言葉での手直しに時間を使えます。

目標設定では、部下が書いた目標が具体的か、測れる形になっているかをAIに確かめさせる使い方があります。また、評価の結果を部署や評価者ごとに集計させ、甘い・辛いの偏りがないかを見る材料にすることもできます。評価そのものは、上司と人事が決めます。

育成|研修の個別提案と社内ナレッジの検索

育成では、研修資料やテストの下書き、ロールプレイの相手役をAIに任せられます。社員のスキルや受講の履歴をもとに、次に受けるとよい研修の候補を示す機能を持つ人事システムもあります。

社内の規程、マニュアル、過去の資料をAIに読み込ませ、社員が質問すると答えてくれる仕組みをつくれば、新人が先輩に何度も聞かなくても、自分で調べられるようになります。社員向けの研修の進め方は、法人向けのAI研修でも紹介しています。

配置・異動|スキル情報の整理と配置の候補の提示

配置や異動を考えるには、社員の経歴、資格、評価、本人の希望といった情報を並べて見る必要があります。AIを使うと、ばらばらに保存されている情報を同じ形式に整理し、ポストに求められる条件に近い社員の候補を挙げられます。

ただし、候補の挙げ方は過去のデータに引っ張られます。これまで特定の属性の人ばかりが就いていたポストでは、候補も同じ属性に偏りがちです。AIの候補は議論の出発点にとどめ、本人との面談を経て決めます。

定着|サーベイの分析と面談の準備

社員の定着に向けては、従業員サーベイの設問づくりや、自由記述の回答の分析にAIが役立ちます。数百件の自由記述を人が読み込むのは大変ですが、AIに不満や要望を種類ごとに分けさせれば、職場の課題をつかむまでの時間を縮められます。

勤怠の変化やサーベイの結果から、離職の兆しを早めに見つける機能を持つ人事システムもあります。兆しが見えた社員との面談の前に、これまでの面談記録をAIに要約させておけば、限られた時間で本人の話を聞くことに集中できます。

組織開発|人事データから組織の課題を見つける

組織開発は、部署や階層ごとの状態を見て、研修や制度の見直しといった打ち手を考える仕事です。評価、勤怠、サーベイ、異動の履歴といったばらばらの情報を並べて読む作業に時間がかかりますが、AIを使うと、部署ごとの傾向や、前の期からの変化を整理した形で取り出せます。

たとえば、サーベイの点数が下がった部署について、残業時間や異動の多さと合わせて見ると、何が起きているのかの仮説を立てやすくなります。AIが出した仮説は、現場の管理職への聞き取りで確かめてから施策に移します。AIが示すのは仮説までで、現場に当てはまるかを確かめるのは人の仕事です。

労務・問い合わせ対応|社内FAQと書類づくりの補助

「有給休暇は何日残っているか」「育児休業の申請に何が要るか」といった社員からの問い合わせは、同じ内容が何度も届きます。就業規則や社内規程を読み込ませたAIに一次回答を任せれば、人事担当者は個別の事情がある相談に時間を回せます。

社内規程の改定案、社内への案内文、会議の議事録の作成も、AIに下書きを任せやすい作業です。ただし、規程の草案には法令の改正や自社の事情が反映されていないことがあります。社労士や法務の確認を経てから使いましょう。

勤怠・給与|打刻の漏れの確認と計算結果の点検

勤怠と給与は、間違いが社員の不利益に直結するため、確認の手間が大きい業務です。AIの機能を持つ勤怠管理システムでは、打刻の漏れ、休憩の取り方の誤り、残業時間が上限に近づいている社員などを自動で洗い出し、担当者に知らせます。毎月の締めの前に、目で全件を追う必要が減ります。

給与計算では、前の月との差が大きい社員を抜き出させ、手当や控除の変更に理由があるかを確かめる使い方ができます。制度の改定を社員に伝える案内文の下書きも、生成AIに任せられます。ただし、支給額を決めるのは人です。計算の根拠になる就業規則や法令との照合は、担当者と社労士が行います。

AIを人事に取り入れる効果と、知っておきたいデメリット

AIを人事に取り入れる効果と、知っておきたいデメリット

AIを人事に取り入れると、作業の時間が減るだけでなく、判断のそろい方や、人と向き合う時間の使い方も変わります。一方で、導入の手間や新しいリスクもあります。両方を知ったうえで、使う範囲を決めましょう。

定型業務の工数を減らせる

求人票や案内文の下書き、書類の要約、問い合わせへの一次回答など、毎回同じ流れでくり返す作業は、AIで時間を減らしやすい作業です。1回あたりの短縮が数分でも、件数の多い業務では月に数十時間の差になることがあります。

判断のばらつきを抑えられる

書類の要約や評価コメントの下書きを同じ形式でつくると、担当者や評価者による見方の差が目に見えるようになります。評価の結果を部署ごとに並べれば、偏りに気づくきっかけにもなります。AIが判断するのではなく、人の判断をそろえるための物差しとしてAIを使うと考えるとわかりやすいでしょう。

人が向き合う時間を増やせる

書類づくりや集計の時間が減った分を、面接、1on1、キャリアの相談といった、人にしかできない仕事に回せます。人事の仕事の質を上げるという意味では、この効果が最も大きいといえます。

デメリット|導入の手間・中身の見えにくさ・社内の不安

AIの活用には、気をつけたい面もあります。主なものは次の4つです。

デメリット 起きやすいこと 対策
導入と運用の手間 ツールの利用料に加え、ルールづくり、研修、データの整理に時間がかかる 1つの業務から始め、効果を見てから広げる
中身の見えにくさ なぜその結果になったのかを説明できない(ブラックボックス化) 根拠を示せる使い方に絞り、最終判断は人が行う
社員の不安や抵抗 「AIに評価される」「監視される」と受け止められる 何に使い、何に使わないかを先に説明する
使いこなす人が足りない 指示文の書き方や出力の確かめ方がわからず、一部の人しか使わない 指示文のひな形を配り、人事の担当者向けに短い研修を行う

導入にかかる費用の考え方は、AI導入の費用相場でまとめています。

人事にAIを導入する進め方

人事にAIを導入する進め方

人事でのAI活用は、いきなり全社で始めるより、業務を絞って小さく始めるほうがうまくいきます。次の4つの順で進めましょう。

01

人事業務を書き出して課題を整理する

人事の仕事を作業の単位まで書き出し、1か月にかかっている時間と、困っていることを並べます。

02

小さく始める業務を1つ選ぶ

くり返しが多く、個人情報の扱いが軽い業務から選びます。

03

効果を測る指標を決めて試す

始める前の時間や件数を測っておき、毎月同じ指標で比べます。

04

ルールを整えて現場に広げる

利用ルールと手順書を整え、使い方を社内で共有しながら対象を広げます。

人事業務の棚卸しと課題の整理

最初に、人事の仕事を「求人票を書く」「応募書類を読む」「面接の日程を調整する」のように、作業の単位まで書き出します。作業ごとに、1か月の件数、1件あたりの時間、担当者を並べると、どこに時間がかかっているかが見えてきます。

あわせて、「担当者によって書き方がばらばら」「問い合わせが特定の人に集中している」といった困りごとも書き出しておきます。時間の多さだけでなく、困りごとの大きさも、AIで変える業務を選ぶ手がかりになります。

小さく始める対象業務の選び方

最初の対象には、くり返しが多く、手順がはっきりしていて、扱う個人情報が軽い業務が向いています。求人票の下書き、社内規程にもとづく問い合わせへの回答、研修資料の下書きなどがその例です。

反対に、評価や合否のように人の処遇に直結する業務、健康情報のように慎重な扱いが必要な情報を使う業務は、ルールと体制が整ってから取り組みます。最初の1つは、失敗しても社員に不利益が出ない業務から選ぶと、社内の理解も得やすくなります。

効果を毎月見える化する指標の置き方

効果を確かめるには、始める前の数字を測っておくことが欠かせません。指標は、業務に合わせて次のように置きます。

業務 指標の例
採用 求人票1本の作成時間、書類1件を読む時間、応募から面接までの日数
評価 評価コメント1件の作成時間、評価の提出の遅れの件数
問い合わせ 人事に届く問い合わせの件数、AIが答えられた割合
定着 サーベイの集計にかかる日数、面談の実施率

指標は毎月同じ形で記録し、変化を関係者に共有します。どの数字がどこまで良くなったら次の業務に広げるかを、始める前に決めておくと、続けるか見直すかを迷わずに判断できます。

現場に定着させる運用の工夫

AIを入れても、使われなければ効果は出ません。よく使う指示文(プロンプト)をひな形として配る、使い方を短い手順書にまとめる、うまくいった使い方を社内で共有する場を設けるといった工夫で、使う人を少しずつ増やします。

AIの答えに誤りが見つかったときに、どこに報告し、誰が直すのかも決めておきましょう。読み込ませる規程やマニュアルが古いままだと、AIも古い答えを返します。元の資料を更新する担当を決めておくことが、長く使い続けるための土台になります。

人事でAIを使うときの注意点とリスク

人事でAIを使うときの注意点とリスク

人事は、社員や応募者の個人情報を扱い、人の処遇を左右する仕事です。ほかの部署以上に、AIの使い方に注意が必要です。

個人情報と要配慮個人情報の扱い

個人情報保護委員会は、事業者が生成AIサービスに個人情報を含む指示文を入力する場合、その個人情報の利用目的の範囲内かどうかを十分に確かめるよう注意を呼びかけています。また、本人の同意なく個人データを入力し、そのデータが回答の出力以外の目的で扱われると、法律に違反するおそれがあるとして、サービスの提供者が入力したデータを機械学習に使わないことなどを確かめるよう求めています(出典:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」)。

人事が扱う情報には、病歴や健康診断の結果のような「要配慮個人情報」も含まれます。要配慮個人情報は、法律で定める場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ずに取得してはならないとされています(個人情報保護法第20条第2項。出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。入力してよい情報と、入力しない情報を、使い始める前に一覧にしておくことが基本です。

評価・選考でのバイアスと公平性

AIは、学習したデータの傾向をそのまま引き継ぎます。過去の採用や評価に性別や年齢の偏りがあれば、AIの判定も同じ偏りを持つおそれがあります。

採用では、職業安定法にもとづく厚生労働省の指針で、人種・民族・社会的身分・本籍・出生地など社会的差別の原因になるおそれのある事項、思想・信条、労働組合への加入状況は、特別な職業上の必要がある場合などを除いて集めてはならないとされています(出典:厚生労働省 平成11年労働省告示第141号)。AIに読ませるデータに、こうした情報が紛れ込んでいないかも確かめておきましょう。

最終判断は人が行う体制

合否、評価、配置、処分といった人の処遇に関わる判断は、必ず人が行います。AIの出力は参考の資料として扱い、誰が確かめ、誰が決めたのかを記録に残します。

社員や応募者から「なぜこの結果なのか」と聞かれたときに、人の言葉で理由を説明できるかどうかが目安です。理由を説明できない判断を、AIの結果だけで下さないことを社内のルールに明記しておきましょう。

関連する法令・公的ガイドラインの確認先

人事でAIを使うときに確かめておきたい主な資料は次のとおりです。法令やガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容を各機関のサイトで確認してください。

資料 確かめること
個人情報保護法とガイドライン
個人情報保護委員会
利用目的の範囲、要配慮個人情報の取得、第三者への提供
生成AIサービスの利用に関する注意喚起
個人情報保護委員会
生成AIに個人情報を入力するときの注意点
職業安定法にもとづく指針
厚生労働省
応募者の個人情報の集め方と使い方
AI事業者ガイドライン
総務省・経済産業省
AIを使う事業者に求められる考え方とリスクへの備え

AI事業者ガイドラインは、2026年10月時点で第1.2版が最新です。本編のほか、活用の手引きやチェックリストもあわせて公開されています(出典:経済産業省「AI事業者ガイドライン」)。

AI人事ツール・サービスの選び方

AI人事ツール・サービスの選び方

人事でAIを使う方法は、ChatGPTのような汎用の生成AIを使う、AIの機能を持つ人事システムを使う、自社の業務に合わせて仕組みをつくる、の3つに分かれます。汎用の生成AIの製品ごとの違いは、企業の生成AIツール一覧比較でまとめています。ここでは、人事で使う場合に確かめたい5つの観点を見ていきます。

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AIBUILDERZ|AI導入支援サービス

システム構築は成果報酬型。AI研修から導入・構築・定着まで一気通貫で支援

AIBUILDERZ

AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、一気通貫で支援するサービスです。業務アプリの構築費は事前にいただかず、実際に稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。成果報酬型での対応は、当社が小規模と定義するシステムが対象です。

  • 業種・規模を問わず支援どの業務からAIやシステムに置き換えるかを一緒に決め、効果の大きい業務から順に進めます。
  • システム構築は成果報酬型業務アプリの構築費は事前にいただきません。稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。
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  • 小さく始めて、リスクを管理影響の小さい業務から始め、AIの実行結果は担当者が確認・承認してから反映します。

人事で使われるAI機能つきシステムの種類

人事システムは、担う業務ごとに製品が分かれています。AIの機能も製品ごとに違うため、自社が困っている業務の種類から探すと、候補を絞りやすくなります。

システムの種類 よくあるAIの機能 見るときに確かめること
採用管理 応募書類の要約、スカウト文の作成、日程調整、応募者の絞り込みの支援 合否をAIが決める作りになっていないか。応募者に使い方を説明できるか
タレントマネジメント スキルや経歴の整理、配置の候補の提示、面談記録の要約 社員のデータをどこまで集める必要があるか。見られる人を役割で分けられるか
労務・勤怠・給与 打刻の漏れの検知、計算結果の点検、申請内容の確認 法令の改正に合わせて更新されるか。最終の確定を人の操作で行えるか
サーベイ・エンゲージメント 設問づくり、自由記述の分類、部署ごとの傾向の要約 社員が答えた内容がどこまで個人を特定できる形で見えるか
社内の問い合わせ対応 規程やマニュアルをもとにした一次回答、回答の履歴の分析 読み込ませる資料を誰が更新するか。答えの根拠を示せるか

製品ごとの機能や料金は、各社の公式サイトで確かめてください。すべてを一度に入れ替える必要はなく、困っている業務の系統から1つ試す進め方が現実的です。

自社の課題に合う機能の見極め方

機能の多さで選ぶと、使わない機能に費用を払うことになりがちです。棚卸しで見えた課題に対して、どの機能が効くのかを1つずつ対応させて確かめます。

使う方法 向いている場面 注意したい点
汎用の生成AI 文章の下書きや要約から、すぐに試したい 入力する情報のルールを自社で決める必要がある
AI機能を持つ人事システム 採用管理やタレントマネジメントのデータと一緒に使いたい 今のシステムからの乗り換えや、データの移行が必要になることがある
自社の業務に合わせた仕組み 社内規程の自動回答など、自社の資料や手順に沿って動かしたい つくる範囲と、稼働後に誰が直すかを先に決める

セキュリティとデータの取り扱いの確認項目

人事のデータを扱う以上、セキュリティの確認は欠かせません。契約の前に、少なくとも次の点を確かめましょう。

確認項目 確かめること
学習への利用 入力したデータが、AIの学習に使われない設定になっているか
保存場所と期間 データがどの国のサーバーに、いつまで保存されるか
利用者の権限 評価や給与など、見てよい人を役割ごとに分けられるか
記録 誰がいつ何を入力し、何を出力したかの記録が残るか
第三者の認証 情報セキュリティに関する認証を取得しているか

既存の人事システムとの連携

勤怠、給与、採用管理などのシステムとつなげられるかどうかで、使い勝手は大きく変わります。データを手でコピーして貼る運用は、手間がかかるうえ、誤りや情報の持ち出しの原因にもなります。今使っているシステムとどうつながるのかを、具体的な画面や手順で確かめましょう。

導入後の支援体制の確認

人事のAI活用は、入れたあとの定着で成果が分かれます。初期設定だけでなく、社員への研修や、使い方の見直しまで支援してもらえるかを確かめておくと安心です。問い合わせの窓口や、対応してもらえる時間も確認しておきましょう。

人事領域のAI活用事例

人事領域のAI活用事例

中小機構の調査では、AI・IT導入に関して不足している情報として「成功事例や活用事例などの情報」を挙げた中小企業が83.3%と最も多くなっています(出典:中小機構)。ここでは、2024年10月以降に公式に発表された人事のAI活用の事例を、領域ごとに紹介します。

会社 領域 AIに任せたこと 発表
キリンホールディングス 採用 新卒採用の一次面接 2025年1月
Ubie 評価 業務の記録の集約と評価の素案づくり 2025年12月
SmartHR 労務・問い合わせ 社員からの問い合わせへの回答 2025年11月

キリンホールディングス|新卒採用の一次面接をAI面接官で行う

キリンホールディングスは、多様な人材を公平に採用できる仕組みづくりを進めるなかで、生成AIを使った「AI面接官」を新卒採用に取り入れました。2024年10月に試験導入し、応募者の面接の録画を人事部が見て一次面接の合否を確かめ、AI面接官の評価と比べています。

開発元の発表によると、人事部の評価とAI面接官の評価の相関は、総合得点・能力得点ともに0.8以上でした。評価の基準には、経済産業省の「社会人基礎力」12項目を使っています。これを受けて本格導入を決め、人事の時間を、応募者とじっくり向き合う最終面接に振り向けるとしています(出典:株式会社VARIETAS 2025年1月23日発表)。

Ubie|業務の記録から評価の素案を生成AIでつくる

Ubieは、公平にしようとするほど運用が複雑になり、簡単にすると納得感が下がるという評価制度の悩みから、創業以来、全社での人事評価を行っていませんでした。そこで、生成AIを使った評価の仕組みを自社で開発し、2026年1月から運用を始めると発表しました。

生成AIは、SlackやJira、Notionなどの業務の記録から実績を集め、事実にもとづく評価の素案をつくります。最終的な評価を決めるのは人で、AIの提案を確かめて直し、数字に表れにくい貢献を書き足すのも人の役割です(出典:Ubie株式会社 2025年12月25日発表)。

SmartHR|社内の問い合わせにAIアシスタントで答える

SmartHRの社内では、マニュアルや資料の種類と数が多く、置き場所も分かれていたため、社員が情報を探すのに時間がかかり、人事・労務の担当者が同じ回答をくり返していました。人材育成部が中心となり、自社の「AIアシスタント」を社内で使い始めています。

人事・労務の資料86件を読み込ませて始め、その後、経理や情報システムの資料も加えて200件以上に広げました。2025年8月からの1か月で、社員からの問い合わせ対応は全体で約10%、総務・情報システムで約20%減り、AIアシスタントの回答成功率は82%だったと報告しています(出典:株式会社SmartHR 自社での取り組みの公開 2025年11月19日)。

事例から他社が真似できる要点

3つの事例に共通するのは、AIの役割と人の役割を分けたうえで始めていることです。キリンホールディングスは人の評価と比べて確かめてから本格導入し、Ubieは最終的な評価を人が決める形にしています。SmartHRは、回答の元になる資料をそろえるところから始め、範囲を少しずつ広げました。

事例 他社が真似できる要点
採用 本格導入の前に、AIの判定と人の判定を同じ応募者で比べて確かめる
評価 AIには事実の集約と素案づくりを任せ、評価の決定と加筆は人が行う
問い合わせ 回答の元になる資料を先に集めて整え、対象の分野を段階的に広げる

自社はどの人事業務から始めるか|セルフチェックと試算

自社はどの人事業務から始めるか|セルフチェックと試算

ここまでの内容をもとに、自社でどの業務から始めるかを決めましょう。セルフチェックで着手の順番をつけ、時間の削減を自社の数字で試算し、利用ルールに入れる項目を確かめる流れです。

業務別の着手順を決めるセルフチェック

棚卸しで書き出した業務ごとに、次の5つの観点で1〜3点をつけてみてください。

観点 3点 2点 1点
くり返しの多さ 毎日ある 毎週ある 月に数回まで
手順のはっきりさ 手順書がある 一部が担当者の頭の中 ほぼ担当者の頭の中
個人情報の軽さ 個人情報を使わない 氏名や所属程度 評価・健康・家族などを使う
処遇への影響の小ささ 処遇に関わらない 判断の参考になる 合否や評価を直接左右する
資料の整い方 規程や資料が電子データでそろっている 一部が紙や古い版 資料がない、または散らばっている

5つの点数を足すと、合計は5〜15点になります。合計点で、着手の順番の目安がわかります。

合計点 着手の順番 業務の例
12〜15点 最初に試す 求人票の下書き、社内規程にもとづく問い合わせへの回答
8〜11点 ルールを整えてから試す 応募書類の要約、評価コメントの下書き、サーベイの自由記述の分析
5〜7点 体制が整うまで待つ 離職の兆しの判定、配置の決定の支援

業務の例は、一般的な条件での目安です。資料の整い方などによって、同じ業務でも点数は変わります。

工数削減の試算の考え方と計算例

着手する業務が決まったら、AIでどれだけ時間を減らせるかを試算します。手順は次の3つです。

手順 計算 計算例
1. 今の時間を出す 1件あたりの時間 × 月の件数 問い合わせ1件10分 × 月150件 = 月1,500分(25時間)
2. AIに任せられる割合を置く 今の時間 × AIで済む割合 25時間 × 4割 = 月10時間
3. 確認の時間を引く 減る時間 − AIの答えを確かめる時間 10時間 − 2時間 = 月8時間

表の数字は、計算の流れを示すための仮の数字です。「AIで済む割合」は、最初は低めに置き、試した結果を見て直していきます。AIの答えを人が確かめる時間を引き忘れると、効果を大きく見積もってしまいます。確認にかかる時間まで含めて、実際に減る時間を見積もることが大切です。

社内AI利用ルールで決めておく項目

人事でAIを使い始める前に、利用ルールとして次の項目を決めておきましょう。

分類 決めておく項目
使ってよいツール 会社が認めたツールと設定。個人のアカウントで業務の情報を扱わないこと
個人情報 入力してよい情報と入力しない情報の一覧。氏名を伏せるなどの加工の方法
評価・選考 AIを使ってよい作業の範囲。合否や評価をAIの結果だけで決めないこと
確認と記録 AIの出力を誰が確かめるか。判断の記録の残し方
説明責任 社員や応募者にAIの利用をどう伝えるか。問い合わせを受ける窓口
見直し ルールを見直す時期と担当者。誤りが見つかったときの報告先

AI人事の活用でよくある質問

AI人事の活用でよくある質問
Q. 中小企業でも人事にAIを使えますか?
使えます。ChatGPTのような汎用の生成AIなら、専用のシステムがなくても、求人票の下書きや社内向けの案内文づくりから始められます。中小機構の調査でも、業務部門別のAIの導入率は総務・管理部門が68.3%で最も高くなっています。まずは個人情報を使わない業務から試すと安全です。
Q. AIに人事評価を任せても問題ありませんか?
評価そのものをAIに任せるのは避けましょう。AIには、業務の記録の集約や評価コメントの下書き、評価のばらつきの集計といった、判断の材料をそろえる作業を任せ、評価の決定とフィードバックは上司と人事が行います。
Q. 何から始めるのがよいですか?
くり返しが多く、手順がはっきりしていて、個人情報の扱いが軽い業務から始めるのがおすすめです。求人票の下書きや、社内規程にもとづく問い合わせへの回答がその例です。本記事のセルフチェックで、業務ごとの着手順を確かめてみてください。
Q. 従業員への説明はどうすればよいですか?
何にAIを使い、何には使わないのか、AIの出力を誰が確かめるのか、個人情報をどう扱うのかを、使い始める前に伝えます。評価や選考にAIを使う場合は、最終判断は人が行うことも明確にしておくと、不安を和らげられます。
Q. 応募者の履歴書を生成AIに入力してもよいですか?
入力する前に、利用目的の範囲内かどうか、サービスの提供者が入力したデータを学習に使わない設定になっているかを確かめる必要があります。氏名などを伏せて入力する、会社が認めたツールだけを使うといったルールを決めてから扱いましょう。
Q. AIの答えが間違っていたらどうなりますか?
生成AIは、もっともらしい誤りを出すことがあります。社員への回答や規程の草案は、人が確かめてから使いましょう。誤りを見つけたときの報告先と、元の資料を直す担当を決めておくと、同じ誤りのくり返しを防げます。
Q. 人事の仕事にAIエージェントは使えますか?
使い方は広がっています。AIエージェントは、指示を受けて複数の手順を自分で進めるAIで、人事では、応募者への返信と日程の調整、問い合わせへの回答と担当者への引き継ぎといった、決まった流れの作業に向きます。ただし、社員のデータを扱う操作まで任せると、取り消しの効かない処理が自動で走るおそれがあります。読む・下書きをつくるところまでをAIに任せ、登録や送信は人の操作で行う形から始めるのが安全です。
Q. AIを入れると人事担当者の仕事はなくなりますか?
なくなるのは主に、書類づくりや集計といった作業の部分です。面接、面談、制度づくり、社員の相談への対応など、人と向き合う仕事はむしろ大切になります。AIで減った時間を、こうした仕事に回すことが活用の目的です。

まとめ

まとめ

AI人事の活用は、採用・評価・育成・配置・定着・組織開発・労務・勤怠のどの業務でも始められます。大切なのは、AIに任せる作業と人が決めることを分け、小さく始めて効果を毎月確かめることです。最後に、本記事のポイントを振り返ります。

01
AIは、読む・整理する・下書きをつくる作業を担う。合否や評価を決めるのは人
02
文章を扱う仕事は生成AI、数字で傾向を見る仕事は従来型AIや人事システムから始める
03
最初の1つは、くり返しが多く、個人情報の扱いが軽い業務をセルフチェックで選ぶ
04
個人情報は利用目的の範囲で扱い、入力してよい情報としない情報を先に決める
05
確認の時間まで含めて削減時間を試算し、毎月同じ指標で効果を見える化する

まずは、人事の仕事を作業の単位まで書き出し、セルフチェックで最初の1つを選ぶところから始めてみてください。