毎月の売上集計、取引先リストの突き合わせ、報告用のグラフづくり。Excelの作業に毎日かなりの時間を取られているのに、関数やマクロに詳しい人は社内に一人か二人だけ、という職場は珍しくありません。AIでエクセル作業が速くなると聞いても、どのツールで、何をどう頼めばよいのかがわからない。そんな悩みを持つ担当者の方も多いでしょう。中小機構の調査では、AIを導入している中小企業は20.4%で、業務部門別の導入率は「総務・管理部門」(バックオフィスの業務)が68.3%と最も高くなっています。導入の効果としても「業務効率化/作業時間の短縮」が83.2%と突出しています(出典:中小機構『中小企業のAI等の利活用に係る実態調査』2026年3月)。毎日触るExcelは、AI活用の効果をいちばん実感しやすい場所です。
そこで本記事では、AIでエクセルを活用する方法を、関数・マクロ・集計の作業ごとに解説します。ExcelでAIを使う方法とツールの違い、Copilot in Excelの使い方と使える契約、無料でできることと有料で広がること、そのまま使える指示文の例、業務別の活用例に加えて、減らせる時間の試算、AIが作った数式やマクロの確かめ方、社内に広げる進め方、相談の前に整理しておく質問リストまでまとめました。
この記事でわかること
- 関数とマクロをAIに頼む書き方
- Copilotの使える条件と使い方
- 削減時間の試算と社内への広げ方

この記事の監修者
AIBUILDERZ編集部
AI導入支援サービス「AIBUILDERZ」を運営するチームです。AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、企業のAI導入を一気通貫で支援しています。
AIでエクセル作業はどこまで楽になるのか
AIは、関数やマクロを作る、データを整える、集計やグラフのたたき台を出す、といったExcelの作業の多くを手伝えます。一方で、業務の前提を伝えることと、結果が正しいかを決めることは人の仕事として残ります。まずは任せられる範囲と、人が持つ範囲を分けておきましょう。

AIに任せやすいExcel作業は5つ
AIのエクセル活用とは、Copilot in ExcelやChatGPTなどの生成AIに、やりたいことを日本語で伝えて、数式やコード、集計の結果を返してもらうことです。任せやすい作業は、次の5つに分けられます。
| 作業 | AIに頼めること |
|---|---|
| 関数・数式 | 条件を伝えて数式を作る、長い数式を説明する、エラーの原因を調べる |
| マクロ・自動化 | 毎月くり返す作業を自動にするVBAやOffice Scriptsのコードを書く |
| 整形・クレンジング | 表記ゆれや重複を見つける、複数の表を突き合わせる、紙やPDFの表を取り込む |
| 集計・分析 | ピボットテーブルやグラフを作る、傾向や外れ値を挙げる |
| 文章化 | 集計結果から報告用のコメントやメールの下書きを作る |
関数やマクロを自分で書く場合との違い
これまでは、やりたい処理に合う関数を調べ、引数の意味を覚え、試しながら数式を組み立てる必要がありました。AIを活用すると、この「調べて組み立てる」部分を日本語の依頼に置き換えられます。
| 比べる点 | 自分で書く場合 | AIに頼む場合 |
|---|---|---|
| 始め方 | 関数名や書き方を調べるところから | やりたいことを日本語で書くところから |
| 必要な知識 | 関数・VBAの書き方の知識 | 表の構造と条件を言葉にする力 |
| かかる時間 | 調べる時間と試す時間 | 頼む時間と確かめる時間 |
| 誤りの起き方 | 書き間違い、引数の指定ミス | 前提の取り違え、もっともらしい誤り |
表のとおり、AIを活用しても確かめる作業はなくなりません。誤りの起き方が変わるため、確かめ方も変える必要があります。具体的な手順はAIが出した数式と数値の確かめ方で紹介します。
前提・確認・判断は人の仕事として残る
AIは自社の業務のルールを知りません。「この取引先だけ締め日が違う」「この列の空白は0ではなく未入力」といった前提は、伝えなければ数式に入りません。また、見た目は整っていても中身が違う答えを返すことがあります。
そのため、業務の前提を伝えること、結果が正しいかを確かめること、数字を見て次に何をするかを決めることの3つは、人が持ちます。作業はAIに任せ、前提と確認と判断は人が持つ、という分け方が、エクセルのAI活用の基本です。
詳しい人に頼らず進められるのが一番の利点
AI活用でいちばん大きいのは、関数やVBAに詳しくない担当者でも、自分で作業を進められるようになることです。調べながら試す時間が減り、詳しい人に頼んで待つ時間もなくなります。
前の担当者が作った長い数式や、説明のないマクロを読み解けるのも利点です。社内でブラックボックスになりがちなブックの中身を、日本語で説明してもらえます。どれだけ時間が減るかの出し方は、削減できる時間の試算のしかたで紹介します。
ExcelでAIを使う方法と主なツール
ExcelでAIを活用する方法は、Excelに組み込まれたAIを使う、外の対話型AIに数式やコードを頼む、アドインや自動化ツールでつなぐ、の3つに分かれます。機能や対応する版は変わりやすいため、ここでは2026年10月時点で各社の公式ページに載っている内容をまとめます。使う前には、必ず最新の公式ページを確かめてください。

Copilot in Excel|ブックの中で頼める
Copilot in Excelは、Excelの中で動くAIです。開いているブックを読み、ワークシートの編集、データと数式の作成、グラフ・ピボットテーブル・図形の作成、データからの分析情報の抽出、並べ替えや絞り込みなどを、ブックの中で進めてくれます。Webの検索で集めたデータや、ほかのブックからのデータの取り込みも頼めます(出典:Microsoft サポート「Excel の Copilot の使用を開始する」)。ファイルをほかのサービスに上げなくてよい点が、ほかの方法との大きな違いです。必要な契約と使い方は、Copilot in Excelでできることと使い方で説明します。
ChatGPT・Claude・Gemini|データを渡さずに数式を作れる
ブラウザやアプリで使う対話型AIに、表の構造を伝えて数式やマクロを作ってもらう方法です。列の見出しと条件だけを伝えれば、実際のデータを渡さずに頼めるため、社内のデータを外に出したくない場合にも使いやすい方法です。ファイルを添付して集計やグラフを頼める機能もありますが、対応するファイルの形式や上限はサービスとプランで違うため、各公式ページで確かめてください。
返ってきた数式やコードは、自分でExcelに貼り付けて動かします。集計の結果をもとに報告文やメールを書くところまで続けて頼めるのも便利な点です。ツールそのものの違いは ChatGPT・Claude・Gemini比較|主要生成AIの選び方 で詳しく比べています。
「データの分析」|Microsoft 365のExcelに入っている分析機能
Microsoft 365のExcelには、Copilotとは別に「データの分析」という機能があります。データの範囲のセルを選び、ホームタブの「データの分析」を押すと、データの傾向やパターンを表・グラフ・ピボットテーブルの形で示してくれます。上部の欄に、知りたいことを言葉で入力して聞くこともできます。
Microsoftの案内では、Microsoft 365のサブスクライバーが日本語を含む6つの言語で使えます。150万セルを超えるデータには対応しておらず、見出しは各列で重複せず空白のない1行にすること、2行の見出しや結合したセルは避けることが求められます。古い.xls形式の互換モードでは動かないため、.xlsxなどの形式で保存します(出典:Microsoft サポート「Excel でのデータ分析」)。
Python in Excel|統計の処理をセルの中で動かす
Python in Excelは、Excelのセルの中でPythonのコードを動かせる機能です。数式タブの「Pythonの挿入」を選ぶか、セルに「=PY」と入力して使い、セルや範囲は xl("A1:C10") のように参照します(出典:Microsoft サポート「Python in Excel の概要」)。関数では書きにくい統計の処理や、細かいグラフづくりに向いています。
法人向けでは、Windows版は現在のチャネルのバージョン2408以降(チャネルによって対象のバージョンが違います)、Mac版は16.96以降、Web版のExcelで使えます。iPad・iPhone・Android版では使えません(出典:Microsoft サポート「Python in Excel の可用性」)。Pythonのコードも、対話型AIに頼めば作ってもらえます。
ChatGPT for Excel|ChatGPTをExcelの画面の中で使う
OpenAIは、ChatGPTをExcelやGoogle スプレッドシートの画面の中で使うアドイン「ChatGPT for Excel」を案内しています。ブラウザとExcelを行き来せずに、開いているブックについて質問したり、数式や表づくりを頼んだりできます。
対象のプラン、対応するExcelの版、できることの範囲は更新が続いているため、入れる前にOpenAI ヘルプセンター「ChatGPT for Excel and Google Sheets」で確かめてください。アドインのストアには名前の似た他社製のアドインもあるため、提供元がOpenAIかどうかも入れる前に見ておきましょう。会社で使う場合は、アドインの導入を管理者が許可しているか、会社が認めたChatGPTのプランのアカウントでサインインするかも先に決めておきます。
Claude for Excel|セルの場所を示しながら答える
Anthropic社のClaude for Excelは、ブックについての質問にセルの場所を示しながら答える、数式のつながりを保ったまま前提の数字を変える、エラーの原因を調べる、並べ替えや条件付き書式、ピボットテーブルの編集をする、といった作業ができるアドインです。Claudeの有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)で使え、Web版、Microsoft 365のWindows版、Mac版のExcelに対応しています。一方で、マクロ・VBAの操作には対応していません(出典:Claude ドキュメント「Use Claude for Excel」)。
引き継いだ複雑なブックの数字が、どのセルからどう計算されているのかをたどりたいときに向いています。既にあるデータを上書きする前には警告が出る仕組みです。会社で使う場合は、管理者がMicrosoft 365 管理センターからまとめて配布する方法も案内されています。
Excel Labs|試験的な機能を先に試す
Excel Labsは、Microsoft Garageの試験的なプロジェクトとして公開されているExcelのアドインです。数式やLAMBDA関数を書きやすくする「Advanced formula environment」や、セルから生成AIにプロンプトを送るLABS.GENERATIVEAI関数などが入っています(出典:Microsoft「Excel Labs, a Microsoft Garage project」)。
試験的な取り組みのため、中身は変わっていく前提で考えておきましょう。毎日の業務でそのまま使う仕組みにはせず、新しい機能を先に試す場として使うのが向いています。
Power AutomateとOffice Scripts|Excelを開かずに処理を動かす
Power Automateは、決まった時刻や出来事をきっかけに処理を動かす自動化ツールです。ExcelのOffice ScriptsはPower Automateから動かせるため、Excelを開かずにブックを更新できます。一方、VBAのマクロにはPower Automateのコネクタがありません(出典:Microsoft Learn「Office スクリプトと VBA マクロの違い」)。メールで届いたファイルを毎朝集計するような、Excelの外とつながる作業に向いています。Office Scriptsのコードも、対話型AIに頼めば作ってもらえます。
Google スプレッドシートならGeminiとAI関数
社内でGoogle Workspaceを使っているなら、Google スプレッドシートの中でGeminiを使えます。Google Workspaceの料金ページでは、スプレッドシートの中のGeminiはBusiness Standard以上のプランで使え、Business Starterでは対応していないと示されています(出典:Google Workspace「料金プラン」)。マクロを頼むときは、VBAではなくGoogle Apps Script(GAS)で書いてもらいます。
スプレッドシートには、セルに「=AI(“プロンプト”, 範囲)」と入れて、文章の生成や要約、分類をさせるAI関数もあります。Googleのヘルプでは、IF関数などほかの関数の中には入れられないこと、答えは文字だけであること、スプレッドシート全体やドライブのほかのファイルは読めないことが示されています。使える対象のプランも、同じヘルプで確かめてください(出典:Google ドキュメント エディタ ヘルプ「Google スプレッドシートで AI 関数を使用する」)。
方法ごとの向き不向きを比較表で確かめる
ここまでの活用の方法を、向いている場面で並べると次のようになります。
| 方法 | 向いている場面 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| Copilot in Excel | 社内でMicrosoft 365を使っていて、ブックの中で集計やグラフまで進めたい | 契約と管理者の設定によっては表示されない |
| 対話型AI ChatGPT・Claude・Gemini |
関数やマクロを作ってもらうだけ。データを外に出したくない | 数式やコードは自分で貼り付けて動かす |
| データの分析 | 表の傾向をまず手軽に見たい | 150万セルまで。表の形が整っていることが前提 |
| Python in Excel | 統計の処理や細かいグラフを作りたい | iPad・iPhone・Android版では使えない |
| アドイン ChatGPT for Excel・Claude for Excel |
引き継いだ複雑なブックを読み解きたい | 管理者の許可、提供元、対応する版を先に確かめる |
| Office Scripts と Power Automate | Excelを開かずに毎日決まった時刻に動かしたい | エンタープライズまたは教育機関向けのライセンスが必要 |
| スプレッドシートのGemini | 社内でGoogle Workspaceを使っている | Business Standard以上のプランが必要 |
迷ったときは、ツールを新しく契約する前に、社内ですでに契約しているサービスのAIから試すのが、いちばん早く活用を始められる方法です。
アドインや外部ツールを選ぶときの5つの観点
ここで取り上げたほかにも、数式やVBAのコードづくりに絞ったWebサービスや、Excelに入れるAIのアドインは数多くあります。便利そうに見えても、会社のデータを扱う以上、機能より先に次の5つを確かめてから選びましょう。
| 観点 | 確かめること |
|---|---|
| データの扱い | 入力したデータやブックの中身が学習に使われるか、どこに、どのくらいの期間残るか |
| 会社としての契約と管理 | 法人向けのプランがあるか、管理者がまとめて配布・停止できるか |
| 対応する版と端末 | 社内のExcel(買い切り版か、Microsoft 365か)、Web版・Mac版で動くか |
| 書き換えの範囲 | 数式を返すだけか、ブックを直接書き換えるか。書き換える前に確認を求めるか |
| 提供元と規約 | 運営する会社と問い合わせ先がはっきりしているか、利用規約で出力の扱いが決まっているか |
とくにブックを直接書き換えるアドインは、手元のファイルの中身をそのまま読みます。社内で使ってよいツールの一覧を作り、一覧にないツールは管理者に相談してから入れる、という流れにしておくと安心です。
関数をAIに作ってもらう手順
AIのエクセル活用で、いちばん効果を感じやすいのが関数づくりです。どの列に何が入っていて、どんな条件で、どこに何を出したいかを伝えれば、AIが数式を返します。活用の第一歩になる頼み方のコツと、場面別の依頼例を紹介します。

作りたい処理は「版・列・条件・出す場所」で伝える
数式を頼むときは、次の4つを書きます。1つ目は使っているソフトと版(Microsoft 365のExcel、Excel 2019、Google スプレッドシートなど)、2つ目は列の中身(A列は受注日、B列は担当者など)、3つ目は条件、4つ目は結果を出すセルと形です。
版を伝えるのは、XLOOKUPやUNIQUEのように、古い版のExcelでは使えない関数があるためです。たとえば「在庫を計算して」ではなく、「Microsoft 365のExcelです。B列が入庫数、C列が出庫数です。D列に在庫数を出し、0未満なら『要発注』と表示する数式を作ってください」と頼みます。数式と一緒に、それぞれの部分の意味も説明してもらうと、あとで直すときに困りません。
IF・SUMIFS・XLOOKUPなど場面別の依頼例
よく使う関数を、頼み方と返ってくる数式の例で整理します。シート名や列は、自社の表に合わせて読み替えてください。
| やりたいこと | 頼み方の例 | 数式の例 |
|---|---|---|
| 条件で表示を分ける(IF) | C列の入金日が空白なら「未入金」、入っていれば「済」と表示 | =IF(C2="","未入金","済") |
| 条件を段階で分ける(IFS) | B列の点数が80以上なら「A」、60以上なら「B」、それ以外は「C」 | =IFS(B2>=80,"A",B2>=60,"B",TRUE,"C") |
| 条件に合う数を合計する(SUMIFS) | B列の担当者が「田中」の売上(E列)を合計 | =SUMIFS(E:E,B:B,"田中") |
| 条件に合う件数を数える(COUNTIFS) | C列の状態が「未入金」の件数を数える | =COUNTIFS(C:C,"未入金") |
| 別の表から値を引く(XLOOKUP) | A列の商品コードで単価表シートを探し、単価を表示。見つからなければ「未登録」 | =XLOOKUP(A2,単価表!A:A,単価表!B:B,"未登録") |
| 別の表から値を引く(VLOOKUP) | 古い版のExcelでも動く形で、同じことをしたい | =IFERROR(VLOOKUP(A2,単価表!A:B,2,FALSE),"未登録") |
| 重複をなくす(UNIQUE) | A列の顧客名から、重複を除いた一覧を出す | =UNIQUE(A2:A500) |
VLOOKUPの「FALSE」は、完全に一致する値だけを探す指定です。これを付け忘れると、近い値を拾って誤った単価を返すことがあります。AIが作った数式でも、こうした引数の指定は自分の目で確かめましょう。
引き継いだ長い数式を読み解いてもらう
引き継いだブックの長い数式は、AIに貼り付けて「何をしているか、処理の順番に沿って説明してください」と頼みます。どのセルを参照しているか、どんな条件で分かれているかを、日本語で説明してくれます。
あわせて「もっと短く書ける場合は、書き直した数式も示してください」と頼むと、次の担当者が読みやすい形にできます。書き直した数式は、元の数式と同じ結果になるかを、何行かで比べてから入れ替えます。
#N/Aや#VALUE!が出たときの聞き方
#N/A、#VALUE!、#REF!などのエラーが出たら、数式、エラーの表示、参照しているセルの中身の3つをAIに伝えて、原因と直し方を聞きます。検索する値の前後に空白が入っている、数字が文字列として入っている、参照していた列を削除した、など見た目では気づきにくい原因も挙げてくれます。
原因が1つに絞れないときは、「考えられる原因を可能性の高い順に挙げ、それぞれの確かめ方を教えてください」と頼むと、自分で切り分けやすくなります。
マクロ(VBA)をAIに書いてもらう手順
毎月くり返す作業は、マクロにすると手作業がなくなります。VBAを書けなくても、対象・処理・出力の3つを伝えれば、AIが動くコードを作ります。ただし、マクロはデータを書き換えるため、作ったあとの確かめ方が関数よりも大切です。

コードは「対象・処理・出力」に例外の扱いを添えて頼む
マクロを頼むときは、どのファイル・シート・範囲を対象に、どんな処理をして、結果をどこに出すかを書きます。あわせて、元のファイルを変えてよいか、データがない行はどう扱うか、途中でエラーが出たらどうするかも伝えておくと、直す往復が減ります。
| 作業 | 頼み方の例 |
|---|---|
| 複数のファイルを1つにまとめる | 指定したフォルダにあるExcelファイルをすべて開き、各ファイルの「売上」シートの2行目から最終行までを、このブックの「集計」シートの末尾に追記するVBAを書いてください。元のファイルは変更しないでください |
| 取引先ごとの帳票を作る | 「一覧」シートの1行ごとに「ひな形」シートをコピーし、シート名を取引先名にして、B2に取引先名、B5に金額を入れるVBAを書いてください |
| 帳票をPDFにする | 「請求書」で始まる名前のシートを、それぞれ別のPDFとして同じフォルダに保存するVBAを書いてください |
| 並べ替えと書式の設定 | 「データ」シートを日付の古い順に並べ替え、金額の列に3桁区切りを付け、見出しの行を固定するVBAを書いてください |
最後に「処理した件数をメッセージで表示してください」と書き足しておくと、元のデータの件数と比べて、取りこぼしがないかをすぐ確かめられます。
実行前のバックアップと動作確認
マクロは一度動かすとデータを書き換え、元に戻す操作で戻せないことがあります。必ずファイルのコピーを取り、少ない件数のテスト用データで動かしてから本番で使いましょう。動かす前には、AIに「このコードの中に、ファイルの削除や上書き保存をする処理はありますか」と聞いて確かめます。
エラーが出たら、エラーの番号とメッセージ、黄色く表示された止まった行、そのとき開いていたファイルとシートをAIに伝えて直してもらいます。「動きません」だけでは、AIは原因を推測で答えるしかありません。エラーは出ないのに結果が違う場合は、「期待した結果」と「実際の結果」を数行ずつ並べて伝えます。直したコードは、またテスト用データで試してから使います。テスト用ファイルでの試し方は、マクロをテスト用ファイルで試す手順で詳しく紹介します。
VBAを知らない人がつまずきやすい点
AIからコードを受け取っても、貼り付ける場所や保存の形式で止まる人は少なくありません。初めてのときにつまずきやすいのは、次の4つです。
| つまずく点 | どうするか |
|---|---|
| 開発タブが見当たらない | Excelのオプションのリボンのユーザー設定で「開発」に印を付けて表示する |
| 貼り付ける場所がわからない | 開発タブからVisual Basic Editorを開き、標準モジュールを挿入して貼り付ける |
| 保存したらマクロが消えた | マクロを保存できる形式(.xlsm)で保存し直す |
| コードの意味がわからない | AIに「1行ずつ、何をしているかを説明してください」と頼む |
作ったマクロは、何をするものか、どのファイルを読み、何を書き換えるかを手順書に残しておきましょう。作った人が異動しても、次の担当者が安心して使えます。社外から届いたマクロ付きのファイルは、中身がわからないまま有効にしないことも大切です。
マクロの経験がない人が最初に試す作業
初めてのマクロは、元のデータを消さず、結果を目で確かめやすい作業から選ぶと安心です。次の3つは失敗しても元に戻しやすく、結果もその場で確かめられます。
| 最初に試す作業 | 頼み方の例 | 試しやすい理由 |
|---|---|---|
| 並べ替えと書式の設定 | 「データ」シートを日付の古い順に並べ替え、金額の列に3桁区切りを付け、見出しの行を固定するVBAを書いてください | データの中身は変わらず、結果がひと目でわかる |
| シート名の一覧づくり | このブックのすべてのシート名を、新しい「目次」シートのA列に書き出すVBAを書いてください | 新しいシートに書き出すだけで、元のシートに触れない |
| 帳票のPDF保存 | 開いているシートを、シート名をファイル名にしてPDFで保存するVBAを書いてください | 元のブックを変えず、出力のファイルで確かめられる |
この3つで手順に慣れてから、複数のファイルを突き合わせる作業のように元のデータを書き換えるものへ進むと、事故が起きにくくなります。マクロが1つ増えるたびに手順書へ足していくと、担当が替わっても回ります。
Web版で動かすならOffice Scripts
Office Scriptsは、ExcelでJavaScriptを使って作業を自動にする仕組みです。VBAとの主な違いは、Microsoftの資料で次のように整理されています(出典:Microsoft Learn「Office スクリプトと VBA マクロの違い」)。
| 比べる点 | VBAマクロ | Office Scripts |
|---|---|---|
| 使えるExcel | Windows版・Mac版(Web版では動かない) | Web版・Windows版・Mac版 |
| Power Automateとの連携 | コネクタがない | Power Automateから動かせる |
| 触れる範囲 | パソコンの中まで広く触れる | ブックの中だけ |
| ライセンス | パソコン版のExcelに入っている | エンタープライズまたは教育機関向けのライセンスが必要 |
パソコンのExcelで、手元のファイルやフォルダをまとめて扱うならVBA、Web版のExcelで共有のブックを毎日決まった時刻に動かすならOffice Scripts、という分け方がわかりやすいでしょう。
なお、毎月届くCSVや複数のシートを同じ手順で取り込んで整えたいだけなら、マクロを書かずにPower Queryで足りることがあります。Power Queryは、データへの接続・変換・結合・読み込みの4つの段で取り込みの手順を組み立てる機能で、Windows版・Mac版・Web版のExcelで使え、CSV・TXT・JSON・XML・SQL Serverなどから取り込めます(出典:Microsoft サポート「Excel の Power Query について」)。手順そのものをAIに聞けば、画面の操作の順に教えてもらえます。AIに頼むときは、VBA・Office Scripts・Power Queryのどれで進めてほしいかを最初に伝えます。
Copilot in Excelでできることと使い方
Copilot in Excelは、Excelの右下のCopilotのアイコンから呼び出し、日本語で頼んで使います。ここでは、必要な契約、起動の手順、モードの選び方、頼み方、動かないときの確認点を順に説明します。

使える契約と端末
Microsoftの案内では、Copilot in Excelは次のいずれかのサブスクリプションで使えます(出典:Microsoft サポート「Excel の Copilot に関してよく寄せられる質問」)。
| 区分 | 対象 |
|---|---|
| 法人 | Copilot Chatの対象になるMicrosoft 365・Office 365のビジネス・エンタープライズのサブスクリプション、または商用のMicrosoft Copilotのサブスクリプション |
| 個人 | AIクレジットのプランが付いたMicrosoft 365 Personal・ファミリー、またはMicrosoft 365 Premium |
有料のアドオンの料金は、有料のアドオンにかかる費用の目安にまとめています。なお、Microsoftは「Microsoft 365 Copilot」を「Microsoft Copilot」に名前を変えており、移行の期間は古い名前の表示も残ると案内しています(出典:Microsoft Learn「Microsoft Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」)。
使える端末は、Windows・Mac・Web・iPad・iPhone・Android版のExcelです。ファイルはExcel ブック(.xlsx)などの新しい形式で保存しておきます。日本語を含む40以上の言語のプロンプトに対応しているため、指示は日本語で書けます。ただしMicrosoftは、Copilotが主に英語の情報で学習しているため、英語以外の言語では精度が下がることがあると案内しています(出典:Microsoft サポート)。
起動までの4ステップ
起動そのものは、Excelの右下にあるCopilotのアイコンを選ぶだけです(出典:Microsoft サポート)。うまく使うために、起動の前後で次の順に準備しておきましょう。
会社のアカウントでサインインする
対象のライセンスが自分のアカウントに割り当てられているかも確かめます。
大事なブックはコピーで作業する
Copilotがブックを書き換えても、元のファイルが残るようにしておきます。
データの範囲をテーブルにする
1行目に重複のない見出しを付け、結合したセルをなくしておきます。
右下のアイコンから頼む
Copilotのアイコンを選び、画面の右に出る欄に日本語で頼みたいことを書きます。
編集・計画・チャットの3つのモード
Copilot in Excelには3つのモードがあります。編集モードは、データの整形やシートのまとめなど、いくつもの手順がある作業をブックの上で進めます。計画モードは、すぐに作業を始めず、進め方の計画を先に示します。チャットモードは、ブックを変えずにデータを分析し、答えだけを返します(出典:Microsoft サポート)。
3つのモードはWindows・Mac・Web版で使えます。iPadではチャットモードと計画モードが使え、iPadとiPhoneの編集モードは順に提供が広がっているところです。iPhoneとAndroidではチャットモードが使えます(出典:Microsoft サポート)。大事なブックで初めて頼むときは、チャットモードか計画モードで中身を確かめてから、編集モードに切り替えると安心です。
エージェントモードで資料づくりまで任せる
Microsoftは、Word・Excel・PowerPointのCopilotの中で内容を作り、その場で編集するエージェントとして「エージェント モード」を案内しています。財務のレポートのように、いくつもの手順を重ねて仕上げる資料づくりを、言葉で頼んで進められる機能です(出典:Microsoft Support「Get started with Agent Mode in Word, Excel, and PowerPoint」)。Excel Labsにも、Frontierプログラム向けの機能として入っていますが、こちらは今のところWeb版のExcelだけで、指示は英語のみの対応です(出典:Microsoft「Excel Labs, a Microsoft Garage project」)。
一度に多くのセルやシートを書き換えるため、使うときはブックのコピーで試し、仕上がった表の件数と合計を元のデータと比べてから使いましょう。使える契約や端末は提供が進むにつれて変わるため、自社の環境で使えるかは管理者に確かめます。
表の集計・グラフ作成・列の追加を頼む
データについて頼むときは、見たい切り口と期間をはっきり書きます。「このデータを要約して」ではなく、「2026年4月から9月の売上を、月別・商品カテゴリ別にまとめてください。前の月から大きく変わったカテゴリがあれば、考えられる理由も挙げてください」と頼みます。理由は仮説として受け取り、現場の事情と照らし合わせてから使います。
数式の列を足したいときは、計算の中身と出す場所を伝えます。「単価の列と数量の列を掛けた金額の列を、数量の右に足してください」のように頼むと、数式を入れた列を作ってくれます。グラフは、「担当者別の売上の推移がわかるグラフを作ってください」のように、推移なのか内訳なのか比較なのかを言葉にして頼むと、選び方が安定します。
数式の意味を説明してもらう
チャットモードはブックを変えずに答えを返すため、引き継いだブックの中身を聞く活用に向いています。「F列の数式が何を計算しているかを、参照しているセルと一緒に説明してください」「このシートの合計がどの列から計算されているかを教えてください」のように頼みます。
説明を受けたら、手順書や表の欄外に書き残しておくと、次の担当者も同じ説明を読めます。説明の中身が正しいかは、説明に出てきたセルを実際に開いて確かめましょう。
COPILOT関数は2026年9月14日で終了
セルに「=COPILOT(…)」と入れてAIの答えを返すCOPILOT関数は、プレビューの機能として、FrontierプログラムとMicrosoft 365 Insiderプログラムでだけ提供されていました。Microsoftは、2026年9月14日以降はExcelでCOPILOT関数を使えなくなると案内しています(出典:Microsoft サポート「COPILOT 関数」)。
計算済みの結果はセルに値として残りますが、そのセルを再計算すると関数が認識されず#NAME?エラーを返します。COPILOT関数を使ったブックが社内に残っている場合は、結果を値に置き換えて残すか、Copilotの画面での作業に置き換えておきましょう。手順書に関数の使い方を書いている場合は、あわせて直しておきます。
Copilotが出ない・動かないときの確認点
Microsoftは、Copilotが表示されない場合、サブスクリプションに含まれていないか、組織の設定で使えなくなっている可能性があると案内しています(出典:Microsoft サポート)。組織の管理者が、コンテンツを分析するコネクテッド エクスペリエンスをオフにしている場合も、ExcelでCopilotの機能を使えなくなります(出典:Microsoft Learn)。
| 症状 | 確かめること |
|---|---|
| アイコンが出ない | 対象のライセンスがあるか、会社のアカウントでサインインしているか、管理者の設定で止められていないか |
| 編集モードが選べない | iPad・iPhone・Android版で開いていないか(端末によって使えるモードが違う) |
| 答えがずれる | 表の範囲がテーブルになっているか、見出しが1行目だけか、結合したセルがないか |
| ファイルによって使えない | Strict Open XML スプレッドシートなど、対応していない形式で保存していないか |
集計・分析・グラフ作成をAIに頼む
AIを活用したデータ分析は、データを整える、取り込む、集計する、グラフにする、先を見通す、傾向を読む、の順に進めると失敗が減ります。最初の整形を飛ばすと、そのあとの集計がすべてずれるため、順番を守ることが大切です。

分析の前に、表の形を整える
AIの答えの質は、渡すExcelの表の形で大きく変わります。分析を頼む前に、次の形に整えておきましょう。
| 整えること | 理由 |
|---|---|
| 1行に1件、見出しは1行目だけ | 見出しが2段の表や小計の行がある表は、列の意味を取り違える原因になる |
| 中身がわかる列名にする | 「金額1」「金額2」ではどちらを使えばよいか判断できない |
| 1つの列のデータの型をそろえる | 日付と文字、数字と「円」が混ざると計算を誤る |
| 結合したセルと、省略の空白をなくす | 結合や空白があると、正しく読めない |
| 1つのシートに1つの表、テーブルにする | データが増えても範囲がずれない |
紙・画像・PDFの表を取り込む
紙の伝票や、PDFで届いた明細をExcelに打ち直す作業も、AIで短くできる場合があります。画像やPDFを読み取れる対話型AIに渡し、「この表を、日付・取引先・金額の3列の表にしてください」と頼む方法です。対応するファイルの形式はツールとプランで違うため、各公式ページで確かめてください。
読み取りの結果には、数字の読み違いや行のずれが起こりえます。取り込んだあとは、行の数と合計の金額を元の書類と比べてから使いましょう。個人情報が載った書類は、社内のルールで認められたツールだけで扱います。
ピボットテーブルは「見たい軸」から伝える
「月別・担当者別の売上の推移を見たい」と伝えると、AIはピボットテーブルの行・列・値に何を置くかを提案します。Copilot in Excelなら、ピボットテーブルをそのままブックに作ってもらえます。
集計ができたら、ピボットテーブルの総計が元のデータの合計と合っているかを確かめます。抜けている月や担当者がいないかも見ておきましょう。
グラフは「推移・比較・内訳」のどれかを先に決める
推移を見るなら折れ線、項目どうしを比べるなら棒、内訳を見るなら積み上げ棒、というように、伝えたいことに合うグラフをAIに選んでもらえます。報告に使うグラフは、「縦軸の単位を千円にしてください」「目標の線を足してください」のように、見せ方まで指定すると、そのまま使える形に近づきます。
売上予測と在庫のシミュレーション
過去の売上から先の数字を見通したいときは、ExcelのFORECAST.LINEARなどの関数や、Python in Excelでの予測の処理を、AIに作ってもらう方法があります。「過去24か月の月別の売上から、次の3か月の見込みを出す数式を作ってください。季節による波があることも考えてください」のように頼みます。
在庫の量を決めるような計算は、Excelのソルバーの設定をAIに聞きながら進める活用もできます。予測は過去のデータの延長でしかないため、キャンペーンや取引先の変化など、データに表れない事情は人が補います。
傾向は根拠の数字とセットで受け取る
集計やグラフができたら、「このデータから読み取れることを3つ、根拠になる数字と一緒に挙げてください」「目立つ外れ値があれば、どの行かを示してください」と頼みます。根拠の数字を必ず添えてもらうと、AIの言うことが本当かを確かめやすくなります。
AIは数字の動きを説明できても、その裏にある事情までは知りません。売上が落ちた理由が季節のためか、担当の交代のためかは、現場を知る人にしかわかりません。AIの出した傾向は仮説として受け取り、判断に使う前に人が裏付けを取りましょう。
経理・営業・人事・マーケティングの活用例
同じAIでも、業務によって効く作業が違います。経理、営業、人事・総務、マーケティング、在庫・購買の5つの業務と、部署を問わず効くデータの整理について、AI活用を始めやすいExcelの作業をまとめます。

経理|仕訳データの集計と請求書・入金の突き合わせ
| 作業 | AIに頼めること |
|---|---|
| 請求書と入金の突き合わせ | 入金の一覧と請求の一覧を、金額と取引先名で突き合わせ、片方にしかない行を出す数式を作る |
| 仕訳データの集計 | 会計ソフトから出した仕訳データを、部門別・科目別に集計する表を作る |
| 予算と実績の比較 | 科目ごとの差と差の割合を出し、差の大きい科目を並べる |
| 経費データの整形 | 部署ごとに形の違う経費の一覧を、日付・科目・金額の列にそろえて1つの表にする |
会計の数字は、1円の誤りでも問題になります。端数の処理(切り捨てか四捨五入か)を最初に伝え、結果は会計ソフトの数字と照らし合わせてから使いましょう。
営業|売上データの集計と失注の振り返り
| 作業 | AIに頼めること |
|---|---|
| 売上の推移 | 担当者別・商品別・月別の売上をピボットテーブルとグラフにする |
| 案件の管理 | 確度や次の予定日の列を足し、期限を過ぎた案件に色を付ける |
| 失注の振り返り | 失注の理由の自由記述を、いくつかの分類に分けて件数を出す |
顧客リストの表記ゆれや重複は、営業の集計を狂わせるよくある原因です。集計の前に、表記ゆれと重複の整理で乱れを直しておきましょう。
人事・総務|勤怠の集計と名簿の整理
| 作業 | AIに頼めること |
|---|---|
| 残業時間の集計 | 部署別・月別の残業時間の推移を出し、社内の基準を超えた人を抜き出す数式を作る |
| 休暇の管理 | 入社日から有給休暇の付与日を計算する数式を作る |
| 名簿の整理 | 部署名や役職の書き方をそろえ、退職者や重複の行を見つける |
人事のデータには、氏名や給与などの個人情報が多く含まれます。数式やマクロを作るだけなら、列の見出しとダミーのデータで頼み、本物のデータは社内のファイルの中だけで扱いましょう。
マーケティング|アンケートと広告データの集計
| 作業 | AIに頼めること |
|---|---|
| アンケートの集計 | 選択式の回答を属性別にクロス集計し、自由回答を分類して件数を出す |
| 問い合わせの分類 | 問い合わせの本文を「料金」「不具合」「導入の相談」などに分け、月ごとの件数を出す |
| 広告データの集計 | 媒体ごとに書き出したCSVを1つの表にまとめ、クリック率や獲得単価の列を足す |
| 月次のレポート | 集計表から、前の月との違いをまとめた報告文の下書きを作る |
広告の管理画面から書き出したデータは、媒体によって列の名前や指標の定義が違います。まとめる前に「どの列とどの列が同じ意味か」をAIに対応表にしてもらい、定義の違いは人が確かめてから合わせましょう。自由記述の分類は、分類の名前と例を先に決めて渡すと、件数がぶれにくくなります。
在庫・購買|発注点の管理と見積もりの比較
| 作業 | AIに頼めること |
|---|---|
| 発注点の管理 | 在庫が発注点を下回った品目を抜き出し、「要発注」と表示する |
| 需要の見通し | 過去の出荷の数から、次の月の見込みを出す数式を作る |
| 見積もりの比較 | 複数の仕入れ先の見積もりを品目ごとに並べ、最も安い仕入れ先と差額を出す |
| 日報の取りまとめ | 各班から届く日報のファイルを1つの表にまとめるマクロを作る |
現場から届くファイルは、班や担当者によって列の並びや書き方が少しずつ違うことがよくあります。まとめるマクロを頼む前に、ひな形をそろえておくと、マクロが止まりにくくなります。ほかの会社のAI活用の進め方は、中小企業のAI導入事例でまとめています。
部署を問わず効く、表記ゆれと重複の整理
「株式会社」と「(株)」、全角と半角の混在、同じ取引先の重複、日付の書き方のばらつき。どの部署の表にも起きるこうした乱れは、集計の誤りのもとになります。データのクレンジングは、AI活用の効果をいちばん感じやすい作業です。
| 乱れ | AIへの頼み方 |
|---|---|
| 会社名の表記ゆれ | 同じ会社なのに書き方が違うものを挙げ、統一する案を表にしてもらう |
| 全角と半角・余分な空白 | TRIM関数やASC関数などを使って、そろえる数式を作ってもらう |
| 重複した行 | キーになる列が同じ行を探し、行の番号と件数を一覧にしてもらう |
| 日付や数字の型の混在 | 文字として入っている日付や数字を見つけ、直す手順を教えてもらう |
まず乱れの一覧と統一の案を出してもらい、どう直すかは人が決めてから、直す数式や手順を作ってもらうのが安全な順番です。
無料でできることと、有料で広がること
数式やマクロを作ってもらうだけの活用なら、無料のAIでも始められます。ブックの中で集計やグラフまで進めたい、会社のデータを扱いたい、という段階になると、会社の契約と有料のプランが必要になります。

無料のAIでできること
ChatGPT・Claude・Geminiなどの対話型AIは、無料のプランでも、表の構造を伝えて数式やVBAのコードを作ってもらう、長い数式の意味を聞く、エラーの原因を聞く、といった活用を試せます。どれもExcelのデータを渡さずに頼めるため、最初の活用はここから始めるのが手軽です。
ただし、無料のプランは使える回数や機能に上限があり、入力したデータの扱いもプランによって違います。会社のデータを扱う場合は、会社が認めた法人向けのプランを使いましょう。各プランの上限やデータの扱いは、各社の公式ページで確かめてください。
Microsoft 365・Google Workspaceの契約で使える機能
社内ですでに契約しているサービスの中にも、使えるAIの機能があります。
| 契約 | 使える主な機能 |
|---|---|
| Microsoft 365(法人) | Copilot Chatの対象のビジネス・エンタープライズのサブスクリプションで、Copilot in Excelを使える。「データの分析」、Python in Excelも使える |
| Microsoft 365(個人) | AIクレジットのプランが付いたPersonal・ファミリー、またはPremiumで、Copilot in Excelを使える |
| Google Workspace | Business Standard以上のプランで、スプレッドシートのGeminiを使える |
出典:Microsoft サポート「Excel の Copilot に関してよく寄せられる質問」、Microsoft サポート「Excel でのデータ分析」、Google Workspace「料金プラン」。契約の種類や版によって使える機能が違うため、自社の契約で何が使えるかは管理者に確かめましょう。
有料のアドオンにかかる費用の目安
Excelの中でAIを活用するための主な有料プランの料金は、各社の公式ページで次のように示されています。
| ツール・プラン | 1ユーザーあたりの料金 | 前提になる契約 |
|---|---|---|
| Microsoft 365 Copilot 法人向けのアドオン |
年払い 月4,497円相当/毎月払い(年間契約)月4,722円(税別) | 条件を満たすMicrosoft 365のプランが別に必要 |
| Microsoft 365 Copilot Business 中小企業向けのアドオン |
年払い 月3,148円相当/月払い 月3,778円(税別)。2026年7月1日から12月31日までのキャンペーンでは、年払いの初年度だけ月2,698円相当 | 対象のビジネスプランを使っている既存の顧客向け |
| Google Workspace Business Standard スプレッドシートのGeminiを含む |
月1,600円(税別) | Business Starter(月800円・税別)はスプレッドシートのGeminiに対応しない |
| Claude for Excel | Claudeの有料プランの料金(公式の料金ページで確認) | Pro・Max・Team・Enterpriseのいずれか |
出典:Microsoft「Microsoft 365 Copilot」、Microsoft「Microsoft 365 Copilot Business」、Google Workspace「料金プラン」、Claude ドキュメント。料金は改定されることがあるため、契約の前に必ず公式ページで確かめてください。
伝わる指示文(プロンプト)の書き方
AIの答えの質は、指示文で大きく変わります。伝えるべき情報をそろえ、そのまま使える例をひな形にして、うまくいかないときは直し方を決めておくと、毎回の往復が減ります。

伝えるべき4つの情報
| 情報 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 目的 | 何のための表か、だれが見るのか(例:部長向けの月次報告に使う) |
| 環境と表の構造 | ソフトと版、シート名、列ごとの中身(例:Microsoft 365のExcel、A列は受注日) |
| 条件と例外 | 計算の条件、空白や0の扱い、端数の処理(例:空白は未入力として数えない) |
| 出力の形 | 数式だけか、表か、何字以内の文か、どのセルに出すか |
とくに目的を一言添えると、AIが前提を取り違えにくくなります。下の例の[]の中を、自社の表に合わせて書き換えて使ってください。
伝わりにくい頼み方と伝わる頼み方を並べる
上の4つを入れた頼み方と、入れていない頼み方では、返ってくる答えが大きく変わります。同じ作業で並べると、その差がはっきりします。
| 作業 | 伝わりにくい頼み方 | 伝わる頼み方 |
|---|---|---|
| 関数 | 売上を担当者ごとに合計して | Microsoft 365のExcelです。B列が担当者、E列が売上です。H列の担当者名ごとに、E列の合計をI列に出す数式を作ってください |
| マクロ | ファイルをまとめるマクロを作って | [フォルダのパス]のExcelファイルの「売上」シートを、このブックの「集計」シートの末尾に追記するVBAを書いてください。元のファイルは変更しないでください |
| 集計 | このデータを分析して | 2026年4月から9月の売上を、月別・商品カテゴリ別にまとめてください。前の月から20%以上変わったカテゴリを挙げてください |
| 報告文 | いい感じにまとめて | 上の集計をもとに、部長向けの月次報告を300字以内で書いてください。数字は表にあるものだけを使ってください |
伝わりにくい頼み方に共通するのは、列の場所、条件、出力の形のどれかが抜けていることです。頼む前にこの3つがそろっているかを見直すだけで、やり直しは大きく減ります。うまくいった頼み方を社内でそろえておくと、部署をまたいだ活用にも広げやすくなります。
関数とマクロの指示文の例
| 目的 | 指示文の例 |
|---|---|
| 数式を作る | [Microsoft 365]のExcelで使う数式を作ってください。A列は[受注日]、B列は[担当者]、C列は[金額]です。[今月]かつ[担当者が田中]の[金額の合計]を[F2]に出したいです。数式と、それぞれの部分の意味を教えてください。 |
| エラーを直す | 次の数式で[#N/A]が出ます。数式は[ここに数式]、検索する値は[A2の中身]、検索する表は[単価表!A:B]です。考えられる原因を可能性の高い順に挙げ、直した数式を教えてください。 |
| 数式を読み解く | 次の数式が何をしているかを、処理の順番に沿って説明してください。もっと短く書ける場合は、書き直した数式も示してください。[ここに数式] |
| ファイルをまとめる | [フォルダのパス]にあるExcelファイルをすべて開き、各ファイルの[シート名]の[A2からF列の最終行まで]を、このブックの[集計]シートの末尾に追記するVBAを書いてください。元のファイルは変更せず、処理した件数を最後に表示してください。 |
| コードを確かめる | 次のVBAが何をするかを、1行ずつ説明してください。ファイルの削除、上書き保存、元に戻せない処理があれば、その行を示してください。[ここにコード] |
| Web版で動かす | Web版のExcelで、[D列]が「完了」になった行を[完了一覧]シートに移すOffice Scriptsを書いてください。Power Automateで毎朝動かす設定の手順も教えてください。 |
データ整理・集計・報告の指示文の例
| 目的 | 指示文の例 |
|---|---|
| 表記ゆれを探す | [取引先名]の列で、同じ会社なのに書き方が違うものをすべて挙げ、統一する案を表にしてください。まだデータは書き換えないでください。 |
| 重複を探す | [顧客コード]が同じ行を探し、重複している行の番号と件数を一覧にしてください。どちらを残すかは私が決めます。 |
| 2つの表を突き合わせる | [受注一覧]と[請求一覧]を[受注番号]で突き合わせ、片方にしかない受注番号を一覧にする方法を教えてください。 |
| 文を分類する | [C列の問い合わせ本文]を、[料金・不具合・導入の相談・その他]のどれかに分け、D列に分類名を入れる方法を教えてください。迷うものは「その他」にしてください。 |
| ピボットを考える | [月別]と[商品カテゴリ別]の売上の推移を見たいです。ピボットテーブルの行・列・値に何を置けばよいかと、見るべきポイントを教えてください。 |
| 傾向を言葉にする | この売上データから読み取れる傾向を3つ、根拠になる数字と一緒に挙げてください。外れ値があれば、どの行かも示してください。 |
| 報告文にする | 上の集計結果をもとに、[部長]向けの月次報告の文を300字以内で書いてください。数字は表にあるものだけを使い、推測で数字を足さないでください。 |
うまくいかないときの直し方
1回で思った答えが返らなくても、やり直す必要はありません。次の順に直していくと、2回目、3回目で近づきます。
| 起きたこと | 直し方 |
|---|---|
| 違う列を使っている | 列の名前と中身を、もう一度1列ずつ書いて伝える |
| 古い版で動かない | 使っているExcelの版を伝え、その版で使える関数で書き直してもらう |
| 一部の行だけ結果が違う | 結果が違う行の中身と、正しい答えを例として渡す |
| 答えが長すぎる・短すぎる | 「数式だけ」「表で」「300字以内で」のように出力の形を決め直す |
| 大きな作業で崩れる | 整形、集計、グラフのように段階に分け、1つずつ頼む |
作らせたら、確かめる指示文もセットで送る
数式や表ができたら、最後に「元のデータの件数と合計、作った表の件数と合計を並べて示してください」と送りましょう。数字が合わなければ、どこで差が出たかをさらに聞けます。作らせる指示文と確かめる指示文は、いつも組にして使うのがおすすめです。うまくいった指示文は保存し、社内で使い回せるようにしておきます。
AIが出した数式と数値の確かめ方
Microsoftも、生成AIの応答が100%事実である保証はなく、ほかの人に送る前に人が確かめる判断が必要だと説明しています(出典:Microsoft Learn)。ここでは、活用を続けるために誤りを減らす頼み方と、関数とマクロのそれぞれで確かめる手順、確認項目の表をまとめます。

計算はExcelに任せ、AIには数式を作らせる
AIに「合計はいくつですか」と数字そのものを聞くと、もっともらしい誤った数字が返ることがあります。誤りを減らすには、AIには計算の答えではなく数式や手順を作らせ、計算はExcelにさせるのが近道です。数式ならセルの中で中身を確かめられ、データが変わっても同じ式で計算し直せます。
対話型AIに集計の結果を文章で出してもらった場合も、その数字はExcelで同じ集計をして突き合わせてから使います。AIの答えの数字は、Excelで出した数字と合ってはじめて使う、と決めておくと、誤った数字が報告に紛れ込みにくくなります。
関数の結果は「件数・合計・境目」で確かめる
関数の確かめ方は、全体の数を合わせることと、何件かを手で計算することの2つです。まず、元のデータの件数と合計を出し、AIが作った数式の結果と合っているかを見ます。次に、ふつうの行、条件の境目の行(ちょうど80点、月末の日付など)、空白やエラーを含む行を2〜3件ずつ選び、電卓や手で計算した結果と比べます。
誤りが出やすいのは、ふつうの行より境目の行です。「80以上」と「80より大きい」の違いや、月末の日付の扱いは、境目の値をわざと入れて試すと、AIの数式の誤りに早く気づけます。
マクロをテスト用ファイルで試す手順
本番のファイルのコピーを作る
本番のファイルには触れず、コピーしたファイルと、まとめる対象のファイルのコピーを別のフォルダに用意します。
少ない件数のテスト用データを作る
5〜10件ほどの、結果を手で確かめられる量のデータにします。空白の行や、ふだんと違う形の行もわざと入れておきます。
動かして、件数と中身を比べる
処理した件数、書き出した行、書き換わったセルを、動かす前と比べます。元のファイルが変わっていないかも確かめます。
2回続けて動かしてみる
同じマクロを2回動かしたとき、データが二重に追記されないかを確かめます。月に一度のマクロでも、うっかり2回押すことはよく起こります。
本番で動かし、手順書に残す
問題がなければ本番のファイルで動かします。何をするマクロか、どう確かめたかを手順書に残します。
社内で使い回せる確認項目の表
確かめる項目は、その都度考えるより、表にして社内で使い回すほうが漏れが出ません。次の表を、自社の作業に合わせて書き足して使ってください。
| 対象 | 確認項目 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 関数 | 件数と合計が合っているか | 元のデータの件数・合計と、結果の件数・合計を並べる |
| 関数 | 参照する範囲は正しいか | 範囲の最初と最後の行が、データの最初と最後と合っているか見る |
| 関数 | 境目の値の扱い | ちょうど基準の値、月末、0、空白の行で結果を見る |
| 関数 | 文字として入った数字 | 左寄せの数字がないか、ISNUMBER関数で確かめる |
| 関数 | 端数の処理 | 切り捨て・四捨五入が社内のルールと合っているか見る |
| マクロ | 元のファイルを変えていないか | 動かす前後で、元のファイルの更新日時と中身を比べる |
| マクロ | 削除・上書きの処理 | AIにコードの中の削除・上書き保存の行を挙げさせる |
| マクロ | 2回動かしたときの結果 | 続けて2回動かし、二重に追記されないか見る |
| 分析 | 傾向の根拠 | AIが挙げた傾向に、元のデータの数字が添えられているか見る |
表には、確かめた日と確かめた人の欄も足しておくと、あとから「この数式はだれがいつ確かめたか」をたどれます。
業務で使う前に知っておきたい4つの注意点
ExcelでAIを活用するときに気をつけたいのは、情報の扱い、ファイルに隠れた指示、環境の違い、出力の権利と社内ルールの4つです。どれも、事前にルールと手順を決めておけば多くは防げます。

機密情報・個人情報は、構造だけを渡す
Excelのファイルには、顧客の情報や売上、給与など、外に出せない情報が多く含まれます。Microsoftは、Microsoft Graph経由で扱うプロンプト・応答・データを、Copilotで使う基礎の大規模言語モデルの学習には使わないと説明しています(出典:Microsoft Learn「Microsoft Copilot のデータ、プライバシー、セキュリティ」)。ほかのツールでも、法人向けのプランか、入力したデータが学習に使われない設定になっているか、データがどのくらいの期間残るかを、使う前に確かめましょう。
数式やマクロを作ってもらうだけなら、実際のデータを渡す必要はありません。列の見出しと数件のダミーデータだけを渡し、できた数式やマクロを社内のファイルで動かすのが安全な活用のしかたです。社内ルールのひな形は 生成AIの情報漏洩対策|原因・社内ルールのひな形・学習させない設定 にまとめています。
社外から届いたファイルに隠れた指示
AIがブックを読んで作業する活用では、ファイルの中に書かれた文が、AIへの指示として読まれてしまうおそれがあります。Anthropic社は、Claude for Excelを信頼できるファイルだけで使うよう案内しています。ダウンロードしたひな形や取引先から届いたファイルには、データを抜き出させたり書き換えさせたりする隠れた指示が入っていることがあり、危ない操作の前には確認を求める仕組みになっています(出典:Claude ドキュメント「Use Claude for Excel」)。
社外から届いたファイルをAIに編集させるときは、コピーで作業し、AIが確認を求めてきた操作は中身を読んでから許可しましょう。
版や端末によって使える機能が違う
同じExcelでも、版や端末で使える機能が違います。XLOOKUPやUNIQUEは古い版のExcelでは使えません。VBAはWeb版のExcelでは動かず、Copilotの編集モードは端末によって使えないことがあります。Claude for Excelは、Excel 2016・2019の買い切り版やボリュームライセンス版、iPad・Android版のExcelでは動きません(出典:Claude ドキュメント)。
社内で使っている版がそろっていない場合は、いちばん古い版でも動く数式を頼むか、ファイルを開く人の環境を最初にAIに伝えましょう。AIのツールは機能の追加や終了が早いため、手順書で使っている機能がいまも使えるかを、定期的に見直すことも大切です。
出力の権利と社内ルールを確かめる
Microsoftは、Copilotの出力の所有権を主張しないとしたうえで、出力が著作権で守られるかどうかの判断はしないと説明しています。生成AIは、ほかの利用者にも似た答えを返すことがあるためです(出典:Microsoft Learn)。AIが作った数式やマクロを社外に納める資料や製品に入れる場合は、使っているツールの利用規約で、出力の扱いと商用での利用の条件を確かめておきましょう。
あわせて、自社にAIの利用ルールがあるかを確かめます。総務省の調査では、生成AIのリスク対策として全社的な指針やガイドラインを整備している日本の企業は41.1%でした(出典:総務省『令和8年版 情報通信白書』懸念されるリスク及びリスク対策のための取組状況)。使ってよいツール、入力してよい情報、確かめる手順が決まっていなければ、次の章の進め方の中で決めておきましょう。
自社のExcel業務に取り入れる進め方
エクセルでのAI活用を個人の工夫で終わらせず、社内の仕事のやり方にするには、向く作業を選び、効果を見積もり、ルールと手順と研修を順に整えます。中小機構の調査では、「成功事例や活用事例などの情報」を十分に入手できていないと答えた中小企業が83.3%にのぼりました(出典:中小機構『中小企業のAI等の利活用に係る実態調査』2026年3月)。社内で小さな成功を作り、うまくいったやり方を共有するところから始めましょう。

その作業はAI向き?6つの問いで棚卸しする
最初にAIを活用する作業は、効果が出やすく、誤りに気づきやすいものを選ぶのが近道です。気になっているExcelの作業を1つ思い浮かべ、次の6つの問いに「はい」か「いいえ」で答えてみてください。
| 問い | 「はい」の目安 |
|---|---|
| 1. 毎月や毎週、同じ形でくり返しているか | 表の形と手順がほぼ毎回同じ |
| 2. 手順を言葉で説明できるか | 「どの列を見て、何を出すか」を人に説明できる |
| 3. 表の形が整っているか | 見出しが1行で、結合したセルや小計の行がない |
| 4. 結果の正しさを確かめやすいか | 件数や合計を、元のデータや別の資料と比べられる |
| 5. 構造だけで頼めるか | 個人情報や機密を渡さず、列の見出しとダミーのデータで頼める |
| 6. Excelの中で完結しているか | ほかのシステムやメールとのやり取りが少ない |
「はい」の数で、次のように活用の進め方の目安がわかります。
| 「はい」の数 | 向き・不向き | 進め方 |
|---|---|---|
| 5〜6個 | AIに向いている | この記事の指示文の例で、すぐに試す |
| 3〜4個 | 準備をすれば向く | 「いいえ」の項目から先に整える。多いのは表の形と手順を言葉にする作業 |
| 0〜2個 | Excelの中のAIだけでは効果が出にくい | 手順の整理から始めるか、Excelの外の仕組みを考える |
問い6が「いいえ」の作業は、AIで数式やマクロを作っても、前後の手作業が残りやすくなります。この場合は、このあとのExcelの外の仕組みを考える目安も参考にしてください。
削減できる時間の試算のしかた
AIを活用すると、作る時間は短くなりますが、頼む時間と確かめる時間が新しく加わります。社内で試す作業を選ぶときや、上司に活用の効果を説明するときは、次の式で前後の時間を数字にしておくと、思ったより時間が減らなかったという見誤りを防げます。
| 項目 | 計算 |
|---|---|
| 今の作業時間 | 1回の作業時間 × 月の回数 × 担当する人数 |
| AIを使ったあとの作業時間 | (AIに頼む時間 + 確かめる時間 + 直す時間) × 月の回数 × 人数 |
| 毎月減る時間 | 今の作業時間 − AIを使ったあとの作業時間 |
| 取り戻せるまでの月数 | 最初に作る時間 ÷ 毎月減る時間 |
1回の作業時間は、感覚ではなく、次の1回をストップウォッチで測るのが確実です。数式やマクロを最初に作って試す時間は初回だけかかるため、毎月の時間とは分けて書きます。活用の効果を見るときは、最初に作る時間と毎回の確かめる時間を引いてから比べることが大切です。
3つの作業で試算した例
式に数字を入れると、次のようになります。数字はすべて計算の流れを示すための仮の数字です。自社の作業は、測った時間に置き換えてください。
| 作業 | 今の作業時間(月) | AIを使ったあと(月) | 毎月減る時間 | 最初に作る時間 |
|---|---|---|---|---|
| 月次の売上集計 数式を使い回す |
60分 × 月1回 × 3人 = 180分 | 20分 × 月1回 × 3人 = 60分 | 120分 | 120分 |
| 入金の消し込み 突き合わせの数式 |
30分 × 月20日 × 1人 = 600分 | 10分 × 月20日 × 1人 = 200分 | 400分 | 120分 |
| 取引先ごとの帳票づくり マクロにする |
90分 × 月1回 × 2人 = 180分 | 15分 × 月1回 × 2人 = 30分 | 150分 | 180分 |
| 合計 | 960分 | 290分 | 670分(11時間10分) | 420分 |
この例では、最初に作る時間の合計420分を、毎月減る670分で1か月目のうちに取り戻せる計算です。毎日くり返す入金の消し込みは、月に1回の作業より毎月減る時間が大きくなります。逆に、毎回条件が変わる1回きりの作業は、頼む時間と確かめる時間がかかるぶん、活用の効果が小さくなりがちです。減った時間に1時間あたりの人件費を掛ければ、金額に直して比べることもできます。
入力してよい情報を3段階で決める
Excelの作業でAIを活用するルールには、使ってよいツール、入力してよい情報、確かめる手順、マクロを動かす前の手順、作ったものの残し方の5つを入れておくと安心です。入力してよい情報は、次のように3つに分けると、担当者が迷わずに判断できます。
| 区分 | 例 | 扱い方 |
|---|---|---|
| 入力してよい | 列の見出し・表の構造、ダミーのデータ、公開済みの情報 | 認められたツールなら、そのまま使ってよい |
| 条件つきで入力してよい | 社内の集計データ、取引先名を含まない数字 | 会社が認めた法人向けのツールで、学習に使われない設定のときだけ |
| 入力しない | 個人情報、給与、未公開の決算の数字、契約の条件 | 名前を記号に置き換えるか、構造だけを伝えて数式やマクロを作らせる |
迷う情報が出てきたら、だれに相談するかも決めておきます。区分の表は、社内の共有フォルダなど、担当者がすぐ見られる場所に置いておきましょう。
1つの作業から小さく始める5ステップ
棚卸しで「はい」の多かった作業を1つ選び、次の順に活用を進めます。
対象の作業を1つ選び、今の時間を測る
1回にかかる時間と月の回数を記録しておくと、あとで活用の効果を比べられます。
使うツールと入力してよい情報を決める
社内で契約しているサービスのAIを中心に、3つの区分で線を引きます。
データを整え、指示文を作る
表をテーブルにして見出しを整え、作業に合わせた指示文を作ります。うまくいった指示文は保存しておきます。
小さく試し、確かめる手順を決める
少ない件数で試し、確認項目の表で確かめます。作業時間が本当に減ったかも測ります。
手順書に残し、ほかの作業に広げる
指示文、数式やマクロの説明、確かめる手順を残してから、次の作業へ活用を広げます。
研修では、頼み方と確かめ方を教える
研修では、ツールの操作よりも、頼み方と確かめ方を中心に教えます。実際の業務のファイル(個人情報を消したもの)を使い、指示文を書く、結果を確認項目の表で確かめる、手順書に残す、までを一度通して体験してもらうと、職場に戻ってすぐ使えます。
研修のあとは、うまくいった指示文と確認項目の表を、社内の共有フォルダやチャットで集める場所を作りましょう。活用のしかたを共有する場所があると、詳しい一人に頼る状態から抜け出しやすくなります。社員向けの研修の選び方は 企業向けAI研修おすすめ15選 も参考にしてください。
全社に広げるときにつまずきやすいところ
1つの部署で活用がうまくいっても、ほかの部署に広げる段階で止まることがあります。よく起きるのは次の4つです。どれも、広げる前に決めておけば避けられます。
| つまずくところ | 起きること | 先に決めておくこと |
|---|---|---|
| 社内のExcelの版がそろっていない | ある部署で動いた数式やマクロが、別の部署の版では動かない | いちばん古い版でも動く形で作るか、版をそろえる時期を決める |
| ライセンスと管理者の設定 | Copilotやアドインが、人によって出たり出なかったりする | だれに何のライセンスを割り当てるか、どのアドインを許可するかを管理者と決める |
| 指示文と確かめ方が人ごとにばらつく | 同じ作業なのに、頼み方と確かめ方が担当者ごとに違い、結果もそろわない | うまくいった指示文と確認項目の表を、共有の場所に集めて使い回す |
| マクロの持ち主がいなくなる | 作った人の異動のあと、だれも中身を直せなくなる | マクロごとに担当者と手順書を決め、ブックと一緒に残す |
広げるときは、活用の効果を測れた作業から1つずつ、手順書と一緒に渡していくのが確実です。部署ごとに一から試し直すより、うまくいった活用の形を写すほうが早く定着します。
Excelの外の仕組みを考える目安
Excelの中でAIを活用しても、手作業が残る場合があります。毎月の作業が会計ソフトや販売管理のシステム、メールとつながっている場合や、扱うデータが増えてファイルが重くなってきた場合、いくつもの部署が同じファイルを同時に直す場合です。
こうしたときは、Power Automateでの自動化や、業務のシステムとの連携を考える目安になります。どこまでをExcelで続け、どこからを仕組みにするかは、作業の量と、確かめる手間の大きさで決めましょう。AI導入の全体の費用の目安は AI導入の費用相場 でまとめています。
自社だけで進めるか、外部に相談するかの判断軸
では、どこまでを自社だけで進められるのでしょうか。エクセルの中で完結する作業なら、この記事の手順で自社だけでも十分に始められます。迷ったときは、次の4つの軸で今の状況を当てはめてみてください。
| 見る軸 | 自社で進めやすい | 外部への相談を考えたい |
|---|---|---|
| 作業の範囲 | エクセルの中で完結している | ほかのシステムやメールとのやり取りが多い |
| 社内の人 | 依頼文を書いて確かめる時間を取れる人がいる | 担当者が通常業務で手いっぱいで、試す時間が取れない |
| データの量と形 | 表の形が整っていて、ファイルが重くない | いくつもの部署が同じファイルを同時に直す、データが紙や画像に散らばっている |
| 広げ方 | 1つの部署の中で活用する | 全社でルール・研修・ライセンスの管理までそろえたい |
右の列が2つ以上当てはまるなら、Excelの使い方を変えるだけでは足りず、仕組みのほうを変える段階です。その場合も、先に自社でAI活用を小さく試しておくと、何を頼みたいのかがはっきりし、相談も進みやすくなります。
相談の前に整理しておく質問リスト
外部に相談すると決めたら、次の6つを社内で整理してから臨みましょう。左の列を埋めておくと、相談の場で右の列の質問に時間を使えます。棚卸しの答えと試算の表を一緒に渡すと、話が早く進みます。
| 項目 | 社内で整理しておくこと | 相談先に聞くこと |
|---|---|---|
| 対象の作業 | 作業の名前、担当者、1回の時間と月の回数 | その作業はExcelの中で済むか、仕組みにしたほうがよいか |
| 環境と契約 | 社内のExcelの版、Microsoft 365・Google Workspaceの契約の種類 | 今の契約のまま使える機能はどれか、新しく何が要るか |
| データ | データのある場所と形、3段階の区分で「入力しない」に当たる情報 | 入力しない情報を外に出さずに、どう進めるか |
| 前後のつながり | 会計・販売管理のシステム、メール、紙の書類とのやり取り | どこまで自動にでき、何が手作業で残るか |
| ゴール | 減らしたい時間、なくしたいミス、判断の時期 | 効果をどう測り、どの時点で続けるかを決めるか |
| 社内の体制 | 手を動かせる人と時間、研修が必要な人数 | 支援の範囲はどこまでか、終わったあと社内に何が残るか |
とくに最後の「終わったあと社内に何が残るか」は、指示文や手順書、確かめ方が自社の手元に残るかどうかで、その後の広げやすさが変わる大事な問いです。
AIのエクセル活用に関するよくある質問

Q. ExcelでAIは無料で使えますか?
Q. CopilotとChatGPTはどちらを選べばよいですか?
Q. Copilot in Excelを使うには何が必要ですか?
Q. 日本語で頼んでも正しく動きますか?
Q. マクロの知識がなくても使えますか?
Q. AIが作ったマクロは安全ですか?
Q. 会社のデータをAIに入れても問題ありませんか?
Q. 社内で使うときに許可は必要ですか?
Q. 大量のデータを分析したいときはどうすればよいですか?
Q. 古いバージョンのExcelでも使えますか?
Q. COPILOT関数はまだ使えますか?
Q. AIが作った関数の結果は信頼できますか?
Q. VBAとOffice Scripts、どちらで頼めばよいですか?
Q. ExcelとGoogle スプレッドシート、どちらがAIを使いやすいですか?
まとめ
AIでエクセルを活用すると、関数やマクロに詳しくない担当者でも、集計や分析の作業を自分で速く進められるようになります。一方で、前提を伝えることと結果を確かめることは人の仕事として残ります。最後に、AIのエクセル活用のポイントを振り返ります。

生成AIのツールの違いは ChatGPT・Claude・Gemini比較、情報の扱いのルールは 生成AIの情報漏洩対策 もあわせてご覧ください。
