人が足りず、経理や問い合わせ対応、データ入力に追われて本来の仕事が進まない。AIを使えば楽になりそうだと分かっていても、社内に仕組みを作れる人がいない。こうした悩みから、AI外注を検討する企業が増えています。AI外注とは、AIを使いこなす外部の会社に、業務そのものやAIの仕組みづくりを任せることです。IPA(情報処理推進機構)の調査でも、AIの導入・運用上の課題として「専門人材が不足している」と答えた企業が50.1%で最も多くなっています(出典:IPA『DX動向2026』)。
そこで本記事では、AI外注の意味とAIアウトソーシング・AI開発の外注との関係、サービスの形態、任せられる業務、メリットとデメリット、内製との使い分けと費用の試算、費用相場と工程別の目安、外注先の5つのタイプと選び方、契約の形とセキュリティ、進め方、よくある失敗までをまとめました。人手不足をAIと外部の力で補いたい方は、ぜひ参考にしてください。
この記事でわかること
- 任せられる業務と費用の目安
- 外注先5タイプの選び方
- 内製と比べる費用の試算方法

この記事の監修者
AIBUILDERZ編集部
AI導入支援サービス「AIBUILDERZ」を運営するチームです。AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、企業のAI導入を一気通貫で支援しています。
AI外注とは|業務の外注と開発の外注、2つの意味

AI外注とは、AIに詳しい外部の会社に、AIを使った業務の処理や、AIの仕組みづくりを任せることです。まずは言葉の意味と、よく似た言葉との違いを整理しておきましょう。
AI外注の意味
AI外注は「AIアウトソーシング」とも呼ばれます。AIを使いこなす外部の会社に、業務の一部またはまとまった業務を任せる形が代表的です。外部の会社がAIで処理の大部分をこなし、AIが苦手な判断や例外の対応、品質の確認を人が受け持ちます。
任せ方は会社によってさまざまです。AIを組み込んだ仕組みを作ってもらうところまでを頼む場合もあれば、作業そのものを毎月まとめて引き受けてもらう場合もあります。言葉としての定義は決まっていないため、「AI外注」という呼び方よりも、どの業務のどこまでを任せ、何が自社に残るのかを確かめることが大切です。
業務を任せる外注と、AIを作ってもらう外注
「AI外注」で調べると、2つの違う話が出てきます。1つは、AIを使った業務の代行を頼む外注です。請求書の処理や問い合わせの一次対応を、AIを使う外部の会社に毎月任せます。もう1つは、AIの開発を頼む外注です。社内で使うAIの仕組みやツールを、開発会社に作ってもらいます。
| 比べる点 | 業務の外注(AI業務代行) | 開発の外注(AI開発委託) |
|---|---|---|
| 頼むもの | 業務の処理そのもの | AIを組み込んだ仕組み・ツール |
| 費用のかかり方 | 毎月の費用が中心 | 作る費用と、その後の運用の費用 |
| 毎日の作業をするのは | 外注先 | 自社の社員(仕組みを使う) |
| 自社に残るもの | 処理の結果 | 仕組みと、使い方のノウハウ |
どちらが合うかは、手を早く空けたいのか、仕組みを自社に持ちたいのかで変わります。本記事では両方を扱い、費用や契約の話では違いが出るところを分けて説明します。
AIツールを自社で入れることとの違い
AIのツールを契約して社員が使う場合は、どの業務にどう使うか、出てきた結果をどう確かめるかを、すべて自社で考える必要があります。AI外注では、業務の流れの組み立てやAIへの指示の作り込み、結果の確認までを外部の会社が受け持つため、社内にAIに詳しい人がいなくても始めやすいのが違いです。
AI BPOとの関係
AI外注とあわせてよく使われる言葉に「AI BPO」があります。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、業務の流れをまとめて外部に任せることです。AI BPOは、そのBPOをAIで効率よく回す形を指します。
AI外注は、AI BPOのほかに、AIを使った仕組みの開発委託や運用の代行まで含めた、広い言葉として使われています。本記事でも、AI BPOを含む広い意味で説明します。
AI導入支援・AIコンサルとの違い
AIコンサルは、どの業務にAIを使うか、何から手をつけるかを一緒に考え、計画を立てる支援が中心です。AI導入支援は、計画に加えて、仕組みづくりや社員への研修、定着までを伴走します。どちらも、作業そのものを毎月引き受けるAI BPOとは役割が違います。
何を外に出すかがまだ決まっていない段階なら、AIコンサルや導入支援で整理してから、業務の外注や開発の外注に進む流れが無理のない順番です。
従来のアウトソーシング・RPAとの違い
従来のアウトソーシングや、定型作業を自動化するRPAと比べると、次のような違いがあります。
| 比べる点 | 従来のアウトソーシング | RPAによる自動化 | AI外注 |
|---|---|---|---|
| 主な担い手 | 外部の会社のスタッフ | 自社で作ったロボット | 外部の会社のAIと、確認する人 |
| 得意な業務 | 量が多く手順が決まった作業 | 画面の操作が決まった定型作業 | 文章・書類・問い合わせなど、読む・書く・判断を含む作業 |
| 量が増えたとき | 人を増やすため、費用も増えやすい | 同じ手順なら追加の費用は小さい | AIが処理するため、費用の増え方が緩やか |
| 手順が変わったとき | スタッフへの説明で対応できる | ロボットを作り直す必要がある | AIへの指示とルールを直して対応する |
AI外注は、従来のアウトソーシングの「人に任せる柔らかさ」と、自動化の「量が増えても費用が増えにくい」点を組み合わせた形といえます。
AI外注が注目されている背景

AI外注を検討する企業が増えている背景には、次の4つがあります。
人手不足と、AIを扱える人材の不足
IPAの『DX動向2026』では、DXを進める人材の量が「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた企業が合わせて85.5%にのぼります(出典:IPA『DX動向2026』)。日々の業務を回す人も、AIで業務を変える人も足りないなかで、社外の力を借りる選択肢が現実的になっています。
生成AIで任せられる業務が広がった
以前の自動化は、手順が完全に決まった作業に限られていました。生成AIが文章を読み、要約し、下書きを作れるようになったことで、問い合わせへの返信の下書きや書類の読み取り、議事録づくりなど、これまで人にしかできなかった作業の一部も任せられるようになっています。
中小機構の調査では、AIを導入した中小企業の82.6%が生成AIを使っており、導入の目的は「業務効率化/作業時間の短縮」が87.0%で最も多くなっています(出典:中小機構『中小企業のAI等の利活用に係る実態調査』2026年3月)。
人件費の固定費を、業務量に合わせた費用に変えたい
人を採用すると、業務が少ない月でも人件費はかかり続けます。AI外注なら、業務の量に合わせて費用を決めやすく、繁忙期と閑散期の差が大きい業務でも無理なく回せます。
自社だけでは依頼先を選びにくい
一方で、依頼先選びに悩む企業も少なくありません。同じ中小機構の調査では、「適切なベンダーや製品を選定する情報が十分にある」に当てはまらないと答えた企業が79.8%でした(出典:中小機構『中小企業のAI等の利活用に係る実態調査』2026年3月)。AIを使うと掲げる会社が増えるほど、比べ方を知っておくことが大切になります。
AI外注のサービスの形態

AI外注のサービスは、何を任せるかによって大きく4つに分かれます。
AI BPO型|業務そのものを任せる
経理の記帳や問い合わせの一次対応など、業務そのものを外部の会社に任せる形です。外部の会社がAIと人を組み合わせて作業し、自社は結果を受け取ります。仕組みを持たずにすぐ始められる一方で、業務の手順やノウハウが外部の会社に残りやすい点に注意が必要です。
運用代行型|AIの仕組みを動かしてもらう
自社で入れたAIツールやチャットボットの設定、回答の見直し、精度の確認などを任せる形です。仕組みは自社の手元にあるため、運用の手間だけを外に出したい企業に向いています。
開発委託型|AIを組み込んだ仕組みを作ってもらう
業務を自動で回す仕組みや社内ツールを作ってもらい、自社で使う形です。作ったあとの作業は自社の社員が行うため、仕組みとノウハウを手元に残しやすいのが特長です。AIを使った開発の外注については Claude Code開発の外注 でも詳しく解説しています。
導入支援・コンサル型|どこから任せるかを一緒に決める
どの業務をAIに任せ、どの業務を社内に残すかの整理から、仕組みづくり、社員への研修、定着までを伴走する形です。何から手をつければよいか分からない段階でも相談できます。
4つの形態の比較
| 形態 | 任せるもの | 自社に残るもの | 向いている企業 |
|---|---|---|---|
| AI BPO型 | 業務そのもの | 処理の結果 | すぐに手を空けたい |
| 運用代行型 | AIツールの運用・見直し | AIの仕組み | ツールは入れたが回せていない |
| 開発委託型 | 仕組みの設計と構築 | 仕組みとノウハウ | 業務を自社で回し続けたい |
| 導入支援・コンサル型 | 整理・設計・研修・定着 | 仕組み・ノウハウ・人 | 何から始めるか決めたい |
実際には、最初はAI BPO型で手を空け、そのあと仕組みを自社に移すというように、形態を組み合わせることもよくあります。
AI外注で任せられる業務

AI外注で任せやすいのは、件数が多く、手順と判断の基準を言葉にできる業務です。中小機構の調査でも、業務分野別のAI導入率は「総務・管理部門」が68.3%で最も高くなっています(出典:中小機構『中小企業のAI等の利活用に係る実態調査』2026年3月)。部門ごとに、よく任される業務を見ていきましょう。中小企業の業種別・業務別の活用例は 中小企業のAI導入事例 でも紹介しています。
経理・請求
請求書や領収書の読み取りと記帳、入金の突き合わせ、経費精算のチェック、請求書の作成と送付などです。毎月同じ流れをくり返すうえ件数も多いため、効果が出やすい業務です。
人事・採用
応募者への連絡や面接の日程調整、書類の一次仕分け、求人票の下書き、入社手続きの案内などです。採否の判断そのものは人が行い、その手前の作業をAIで減らす形が基本です。
営業・マーケティング
営業先のリストづくり、問い合わせへの初回の返信、商談のメモの整理、記事や広告の文章の下書きなどです。文章づくりの代行は AIライティング・記事作成代行、営業の自動化は AI営業自動化 で詳しく解説しています。
カスタマーサポート
よくある質問への自動回答、問い合わせの分類と担当者への振り分け、返信文の下書きなどです。チャットボットの仕組みについては AIチャットボット導入ガイド もあわせてご覧ください。
事務・データ入力
紙やPDFの書類からの転記、表の集計と整形、議事録の作成、定型のレポートづくりなどです。どの部門にもある作業のため、最初に任せる業務として選ばれやすい分野です。
AIシステム・社内ツールの開発
業務そのものではなく、AIを組み込んだ仕組みづくりを外注する場合もあります。社内の規程やマニュアルに答えるチャットボット、書類を読み取って基幹システムに入れる仕組み、問い合わせを分類して担当者に回す仕組みなどです。
開発の外注は、作ったものを自社の社員が使い続ける前提になります。だれが使い、だれが直すのかまで決めてから頼むと、作ったのに使われないという事態を防げます。
任せにくい業務
一方で、次のような業務は、AI外注に任せても期待どおりにならないことが多いため、進め方を分けて考えます。
| 任せにくい業務 | 理由 | 進め方 |
|---|---|---|
| 手順や判断の基準が人によって違う業務 | 何を任せればよいかが決まらない | 先に手順と判断の基準をそろえる |
| 誤りが大きな損害につながる判断 | AIの出力をそのまま使えない | 最終の判断は社内の人が行う |
| 会社の強みそのものになっている業務 | 外に出すと強みが社内に残らない | 社内に残し、AIで支える |
| 件数がとても少ない業務 | 仕組みを作る手間に見合わない | そのまま人が行う |
AI外注のメリット

AI外注には、主に次の4つのメリットがあります。
業務量が増えても費用が増えにくい
人に任せるアウトソーシングでは、件数が増えると担当者も増やす必要がありました。AIが処理の大部分を受け持つため、件数が増えても費用の増え方を緩やかに抑えられます。
採用に左右されず、早く始められる
人を採用して育てるには、数か月から1年ほどかかることもあります。外部の会社に任せれば、採用の結果を待たずに業務を始められます。
処理が速く、品質がそろいやすい
AIは時間を問わず処理でき、同じルールで同じように作業します。担当者による仕上がりの差が出にくく、夜間や休日に届いた問い合わせにもすぐに対応しやすくなります。
社員が本来の仕事に集中できる
くり返しの作業を外に出すことで、社員は顧客への提案や企画など、人にしかできない仕事に時間を使えるようになります。減らした時間を何に使うかまで決めておくと、AI外注の効果が会社の成果につながりやすくなります。
AI外注のデメリットと注意点

メリットがある一方で、次の5つの点には注意が必要です。
外注先に頼りきりになりやすい
業務の手順やAIへの指示が外注先にしかない状態になると、値上げを受け入れるしかなくなったり、外注先を変えにくくなったりします。手順書や設定を自社でも持てるように、契約の段階で決めておきましょう。
情報の取り扱いに気を配る必要がある
顧客の情報や社内の数字を外部に渡すことになるため、外注先がどのAIを使い、データをどこに置き、だれが見られるのかを確かめる必要があります。IPAの『DX動向2026』でも、AIの導入・運用上の課題として「入力した情報が漏えいするリスクがある」を挙げた企業が31.0%ありました(出典:IPA『DX動向2026』)。詳しくは、この記事のセキュリティと契約の章で説明します。
業務の整理と言葉にする手間がかかる
AIに任せるには、手順や判断の基準を言葉にする必要があります。「いつもの感じで」で回っていた業務ほど、最初の整理に時間がかかります。この手間を外注先と分担できるかも、選ぶときの大切な点です。
AIだけでは精度が安定しない業務がある
AIの出力には誤りが含まれることがあります。例外の多い業務や、間違えると影響の大きい業務では、どこで人が確かめるかを決めておかないと、かえって手直しの手間が増えてしまいます。
生成AIならではの誤りと権利の問題
生成AIは、もっともらしい文章で事実と違う内容を返すことがあります。同じIPAの調査では、「誤った回答を信じて業務に利用してしまう」を課題に挙げた企業が28.9%でした(出典:IPA『DX動向2026』)。外注先が作った文章や画像を社外に出す場合は、だれが内容を確かめ、他人の権利を侵していないかをどう確かめるのかも、あらかじめ決めておきましょう。
内製・人への外注・AI外注の使い分け

すべての業務をAI外注に任せるのが正解とは限りません。社内で行う(内製)、人に外注する、AI外注に任せるの3つを、業務ごとに使い分けましょう。
判断の軸は「強みかどうか」と「手順が決まっているか」
使い分けは、その業務が会社の強みに直結するかどうかと、手順が決まっているかどうかの2つで考えると整理しやすくなります。
| 業務の性質 | 向いている進め方 | 例 |
|---|---|---|
| 強みに直結し、手順が決まっていない | 社内で行う(AIで支える) | 商品の企画、重要な顧客への提案 |
| 強みに直結し、手順が決まっている | 社内で行い、AIの仕組みを自社に持つ | 見積もりの作成、自社独自の検査 |
| 強みではなく、手順が決まっていない | 人に外注する | 専門家の判断が要る相談、デザイン |
| 強みではなく、手順が決まっている | AI外注に任せる | 記帳、データ入力、問い合わせの一次対応 |
3つの進め方の違い
| 比べる点 | 内製 | 人への外注 | AI外注 |
|---|---|---|---|
| 始めるまでの早さ | 人の確保と育成で時間がかかる | 早い | 早い |
| 費用の性質 | 人件費(固定費) | 作業量に応じた費用 | 業務量に応じた費用。量が増えても伸びにくい |
| ノウハウ | 社内に残る | 外注先に残りやすい | 契約次第で社内にも残せる |
| 手順が変わったとき | 社内ですぐ直せる | 依頼し直す | AIへの指示とルールを直す |
最初から全部を任せるより、外に出す業務と社内に残す業務を分けて組み合わせるほうが、長い目で見て費用を抑えやすくなります。いずれ社内でAIを扱えるようにしたい場合の進め方は AI内製化支援とは で詳しく解説しています。
AI開発は外注か内製か|3つの分かれ目
AIの仕組みを作る場合も、外注と内製のどちらがよいかは会社ごとに変わります。次の3つを順に確かめると、方向が決めやすくなります。
| 確かめること | 外注に向く場合 | 内製を考えたい場合 |
|---|---|---|
| 使うデータを社外の会社に見せられるか | 契約と設定で守れる範囲のデータ | 社外に一切出せないデータが中心 |
| 作ったあとも頻繁に直し続けるか | 一度作れば大きく変えない | 毎週のように直しや追加が出る |
| 社内にAIを扱える人がいるか | いない、または採用の見込みが立たない | すでにいる、または育てる時間がある |
すべてを外注か内製かで分ける必要はありません。最初の仕組みづくりは外注し、日々の直しは社内で担えるように引き継いでもらう進め方もよく選ばれています。
AI外注が向いている会社・向いていない会社
向いているのは、くり返しの事務作業の割合が高く残業が続いている会社、採用しても事務の担い手が集まらない会社、業務量の波が大きい会社です。反対に、業務のノウハウをすべて社内に蓄えたい会社や、扱う情報を社外に一切出せない会社では、仕組みを自社に持つ開発委託型や内製を中心に考えるほうがよいでしょう。
任せたい業務のセルフチェック
任せたい業務について、次の6つを確かめてみてください。「はい」が多いほど、AI外注で効果が出やすい業務です。
| # | 確かめること |
|---|---|
| 1 | 毎日・毎週・毎月など、決まった頻度でくり返している |
| 2 | 作業の手順を、だれかに口で説明できる |
| 3 | 月の件数と、1件あたりのおおよその時間が分かる |
| 4 | 使うデータがパソコンやクラウドの上にある |
| 5 | 間違えたときに、だれがどう直すかが決まっている |
| 6 | 会社の強みそのものではない |
「はい」が4つ以上ならAI外注の候補、2〜3つなら手順や記録を整えてから、1つ以下なら社内に残すか人への外注を考える、という目安で見てみてください。
内製と外注の費用を比べる試算
外注の費用だけを見ると高く感じても、社内で続けたときの人件費と並べると判断が変わることがあります。比べるときは、次の2つの式で月の費用を出してみましょう。
| 進め方 | 月の費用の出し方 |
|---|---|
| 社内で続ける | 月の件数 × 1件の時間 × 1時間あたりの人件費 |
| AI外注に任せる | 外注の月額 + 社内で確かめる時間 × 1時間あたりの人件費 + 初期費用 ÷ 使う月数 |
たとえば、月300件の請求書の処理に1件10分かかっている場合、社内の作業は月50時間です。1時間あたりの人件費を2,500円とすると、月12万5,000円になります。外注後に社内で確かめる時間が1件2分なら月10時間で2万5,000円です。この場合、外注の月額と初期費用の月割りを足して10万円を下回れば、費用の面でも外注が有利になります。数字はすべて説明のための仮の値です。
費用が同じくらいでも、空いた40時間を営業や顧客対応に回せるなら、外注する意味は十分にあります。人件費には給与だけでなく、社会保険料や採用・育成の費用も含めて考えると、実態に近い比べ方になります。
AI外注の費用相場と料金体系

AI外注の費用は、任せる業務の量と範囲、サービスの形態、業務の外注か開発の外注かによって大きく変わります。ここでは料金体系と費用の目安を整理します。AIの導入にかかる費用の全体像は AI導入の費用相場 で詳しく解説しています。
3つの料金体系
| 料金体系 | 仕組み | 向いている業務 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 月額固定型 | 毎月決まった金額を払う | 毎月の業務量が安定している | 業務が少ない月も同じ金額がかかる |
| 従量課金型 | 処理した件数や時間に応じて払う | 月によって業務量の波がある | 件数が増えた月に費用がふくらむ |
| 成果報酬型 | 減った工数や獲得した成果に応じて払う | 成果を数字で測れる | 成果の数え方を最初に決める必要がある |
月額固定に、上限を超えた分だけ従量で払う形を組み合わせるサービスも多くあります。
形態別の費用の目安
| 形態 | 費用の目安 | 主な例 |
|---|---|---|
| 作業単位の代行 | 月数万円〜 | データ入力、文章の下書き |
| AI BPO型(業務ごと) | 月10万〜50万円程度 | 経理の記帳、問い合わせの一次対応 |
| 運用代行型 | 月5万〜30万円程度 | チャットボットの回答の見直し |
| 開発委託型 | 1つの仕組みで数十万〜300万円程度 | 業務の自動化、社内ツール |
| 導入支援・コンサル型 | 月15万〜100万円程度 | 業務の整理、仕組みづくり、研修 |
いずれも目安で、件数、つなぐ外部サービスの数、人が確かめる工程の多さによって上下します。安さだけで比べるのではなく、減らせる時間を金額に換算し、費用を引いたあとに何が残るかで判断することが大切です。
AI開発を外注するときの工程別の費用と期間
AIの仕組みを一から作ってもらう場合は、工程ごとに分けて頼むのが一般的です。工程ごとの費用と期間は、次の程度を見ておくとよいでしょう。
| 工程 | 内容 | 費用の目安 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 構想・要件の整理 | 何をAIで解くか、使うデータ、目標を決める | 数十万〜200万円程度 | 2週間〜1か月程度 |
| PoC(試しの開発) | 小さく作り、狙った精度が出るかを確かめる | 100万〜500万円程度 | 1〜3か月程度 |
| 本開発(小規模) | 1つの業務で使う仕組みを本番の形に作る | 200万〜500万円程度 | 2〜4か月程度 |
| 本開発(中規模以上) | 複数の業務や基幹システムとつなぐ | 500万円〜数千万円 | 4〜8か月以上 |
| 運用・保守 | 精度の見直し、直し、問い合わせへの対応 | 規模により月数十万円〜 | 使い続けるあいだ |
既存の生成AIのサービスを組み合わせて作る場合は、AIのモデルから作る場合より費用も期間も小さく収まる傾向があります。見積もりを取るときは、PoCと本開発を分けて頼めるかを確かめておくと、途中で止める判断もしやすくなります。工程ごとの内訳と見積書の読み方はAIシステム開発の費用とPoCの相場でさらに詳しく解説しています。
人月単価と工数で決まる見積もりの読み方
開発を伴う外注の見積もりは、ほとんどが「人月単価 × 工数(人月)」で組み立てられています。人月とは、1人が1か月働く分の作業量のことです。3人月なら、1人で3か月、あるいは3人で1か月かかる仕事を指します。
AI開発を外注するときの人月単価は、1人月あたり80万〜250万円程度が目安です。担当する役割によって幅があり、要件を整理するコンサルタントや機械学習の専門家は高く、画面や周辺のシステムを作るエンジニアは低めに置かれることが一般的です。
| 見積書の項目 | 確かめること |
|---|---|
| 工程ごとの人月 | 構想・PoC・本開発・運用が、それぞれ何人月で見込まれているか |
| 役割ごとの単価 | どの役割の人が何人入るか、単価がいくらで置かれているか |
| 「一式」の項目 | 中身が書かれていない一式がないか。あれば内訳を聞く |
| 前提条件 | データの整備や社内の確認を、どちらがどこまで受け持つ前提か |
金額の総額だけでなく、何人月を何の単価で見ているかまで開示してもらうと、会社ごとの見積もりを同じ条件で比べられます。前提条件がそろっていない見積もりは、安く見えても後から追加の費用が出やすくなります。
費用に差が出る5つの要因
同じ業務を頼んでも、見積もりの金額が会社ごとに大きく違うことがあります。差が出るのは、主に次の5つです。
| 要因 | 費用が上がりやすい場合 |
|---|---|
| 業務の量 | 月の件数が多い、繁忙期の山が高い |
| 例外の多さ | 書式がばらばら、判断の分かれる案件が多い |
| データの整い方 | 紙や手書きが多い、置き場所が散らばっている |
| つなぐシステムの数 | 会計・販売管理・顧客管理など複数とつなぐ |
| 人が確かめる工程 | 全件を人が確かめる、二重の確認が要る |
見積もりの前に、この5つを自社で書き出しておくと、外注先どうしの金額を同じ条件で比べやすくなります。
見積もりに含まれるもの・含まれないもの
AI外注の見積もりでは、次の費用が別になっていることがあります。総額で比べるために、どこまでが含まれているかを確かめましょう。
| 費用 | 確かめること |
|---|---|
| 初期費用 | 業務の整理や設計、立ち上げの費用が別にかかるか |
| AIツールとサーバーの利用料 | だれの名義で契約し、だれが払うか |
| 外部サービスとの接続 | つなぐサービスが増えたときに追加の費用がかかるか |
| 件数の上限 | 上限を超えたときの単価が決まっているか |
| 仕様の変更 | 手順が変わったときの直しが月額に含まれるか |
AIBUILDERZに依頼する場合の費用の決まり方
参考として、AIBUILDERZでの費用の決め方を紹介します。業務の洗い出しと業務量の見える化から、対象業務の選定、解決策とツールの検討、社員への研修までを支援しています。
システム構築は成果報酬型です。業務アプリの構築費は、事前にはいただきません。実際に稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。なお、成果報酬型での対応は、当社が小規模と定義するシステムが対象です。
必要なツールの選定や導入の方法は当社からご提案します。
AI研修はオプションです。社員の方がAIを使いこなすための研修は、必要に応じてお受けします。対象の人数や扱う業務によって中身が変わるため、内容に応じてお見積もりします。
AI外注先の5つのタイプ

AI外注の依頼先は、大きく5つのタイプに分かれます。得意なことと、自社に残るものがタイプごとに違うため、頼みたいことに合うタイプから候補を探しましょう。会社を1社ずつ見比べたい場合は、AI導入コンサルのおすすめ会社比較で支援の範囲と料金を整理しています。
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AIBUILDERZ|AI導入支援サービス
システム構築は成果報酬型。AI研修から導入・構築・定着まで一気通貫で支援

AI研修からシステムの導入・構築・定着まで、一気通貫で支援するサービスです。業務アプリの構築費は事前にいただかず、実際に稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。成果報酬型での対応は、当社が小規模と定義するシステムが対象です。
- 業種・規模を問わず支援どの業務からAIやシステムに置き換えるかを一緒に決め、効果の大きい業務から順に進めます。
- システム構築は成果報酬型業務アプリの構築費は事前にいただきません。稼働させ、効果をご確認いただいてからお支払いが始まります。
- AI導入の効果を可視化置き換える業務を一覧にし、導入前後の時間から、空いた時間とかからなくなった費用を毎月記録します。
- 小さく始めて、リスクを管理影響の小さい業務から始め、AIの実行結果は担当者が確認・承認してから反映します。
AI BPO・業務代行会社
経理や問い合わせ対応などの業務を、AIと人を組み合わせて毎月引き受ける会社です。仕組みを用意しなくても始められ、手をすぐに空けたいときに向いています。一方で、処理の手順や設定は外注先の手元に残りやすいため、やめるときに何を受け取れるかを先に確かめておく必要があります。
AIコンサル・導入支援会社
どの業務にAIを使うかの整理から、仕組みづくり、研修、定着までを支援する会社です。何から外に出せばよいか決まっていない段階でも相談でき、計画だけで終わらず、実際に動く仕組みまで伴走してくれるかどうかが選ぶときの見どころになります。
AI開発会社(受託開発)
AIを組み込んだシステムやツールを、要件に合わせて作る会社です。基幹システムとつなぐ仕組みや、自社の業務に合わせた作り込みが必要な場合に向いています。作るものが決まっているほど力を発揮するため、何を作るかを社内で固めてから相談すると、見積もりの精度も上がります。
フリーランス
AIの開発や設定に詳しい個人に、直接仕事を頼む形です。小さな仕組みづくりや、既存のAIツールの設定などを、会社に頼むより柔軟に進めやすい面があります。ただし、担当者が1人のため、病気や契約の終了で引き継ぎが途切れやすくなります。手順書や設定の受け渡しを契約に入れておくことが欠かせません。
クラウドソーシング
仕事の募集の場を使って、データの入力や文章の下書き、簡単なツールづくりなどを単発で頼む形です。作業の範囲がはっきりしていて、1回で終わる仕事に向いています。業務の流れごと任せたり、個人情報を含むデータを預けたりする使い方には向かないため、頼む範囲を絞って使いましょう。
5つのタイプの比較
| タイプ | 頼めること | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| AI BPO・業務代行会社 | 業務の処理そのもの | すぐに手を空けたい | 手順や設定が外注先に残りやすい |
| AIコンサル・導入支援会社 | 整理・設計・構築・研修・定着 | 何から始めるか決めたい | 計画だけで終わらないか |
| AI開発会社 | AIを組み込んだ仕組みの開発 | 作りたいものが決まっている | 運用・保守まで頼めるか |
| フリーランス | 小さな開発や設定 | 範囲が小さく、柔軟に進めたい | 引き継ぎが途切れやすい |
| クラウドソーシング | 単発の作業 | 1回で終わる、範囲がはっきりした仕事 | 個人情報や業務の流れごとは預けにくい |
迷ったときは、業務を外に出したいのか、仕組みを自社に持ちたいのかを先に決めると、選ぶべきタイプが絞れます。
AI外注先の選び方

外注先によって、得意な業務や任せられる範囲、何が自社に残るかが大きく違います。選ぶときに確かめたい点を整理します。導入支援の会社全体の選び方は AI導入パートナーの選び方 でも解説しています。
外注先を選ぶ7つの観点
| # | 観点 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 1 | 任せたい業務での実務の経験 | 同じ部門の業務を、どのくらいの期間受け持っているかを聞く |
| 2 | 業務の整理から入れるか | 始める前に、件数と時間を測る工程があるか |
| 3 | 人が確かめる工程 | AIの出力をだれが、どの段階で確かめるかが決まっているか |
| 4 | データの扱い | 使うAI、データの置き場所、見られる人の範囲を説明できるか |
| 5 | 効果の測り方 | 減った時間や件数を、毎月どう報告するかが決まっているか |
| 6 | 自社に残るもの | 手順書・設定・AIへの指示を受け取れるか |
| 7 | やめ方 | 解約や外注先の変更のときに、何をどう引き継ぐかが決まっているか |
生成AIを使う開発を頼む場合は、ここ1〜2年のうちに手がけた仕事があるかも聞いておきましょう。生成AIは使える技術の移り変わりが速いため、経験の新しさがそのまま提案の質に表れます。
大手のBPO会社とAIに強い会社の違い
大手のBPO会社は、多くの人員と管理の体制を持ち、大量の業務を安定して回すことを得意としています。AIに強い会社は、業務の流れそのものをAIで組み替えることを得意とし、小さな業務からでも始めやすい傾向があります。業務の量と、仕組みを自社に残したいかどうかで選び分けましょう。
自社と外注先の役割分担を決める
AI外注でもめごとが起きやすいのは、「それはそちらの仕事だと思っていた」という食い違いです。始める前に、主な作業ごとにどちらが受け持つかを表にしておきましょう。
| 作業 | 自社 | 外注先 |
|---|---|---|
| 業務の手順と判断の基準の説明 | 受け持つ | 聞き取って文書にまとめる |
| AIの設定・指示の作り込み | 内容を確かめる | 受け持つ |
| AIの出力の確認 | 最終の確認を受け持つ | 日々の確認を受け持つ |
| 例外の判断 | 受け持つ | 例外を見つけて自社に回す |
| 効果の測定と報告 | 社内の記録と照らし合わせる | 毎月まとめて報告する |
| データとアカウントの管理 | 名義と権限を持つ | 与えられた権限の範囲で使う |
表の分け方は一例です。外注先と話し合って自社に合う形に直し、契約書や発注書に添えておくと、担当が替わっても食い違いが起きにくくなります。
相談のときに聞いておきたい質問
| # | 質問 | 聞く理由 |
|---|---|---|
| 1 | この業務で、どのくらいの時間が減る見込みですか | 効果の見込みと、その根拠を確かめる |
| 2 | AIが間違えたとき、だれがどう直しますか | 品質を確かめる体制を知る |
| 3 | 預けたデータはどこに置かれ、AIの学習に使われますか | 情報の扱いを確かめる |
| 4 | 業務の手順が変わったとき、費用はかかりますか | 追加の費用の条件を知る |
| 5 | やめるとき、何を受け取れますか | 依存しない形かを確かめる |
| 6 | PoCと本開発を分けて契約できますか | 途中で止める判断ができるかを確かめる |
| 7 | 作った仕組みや設定の権利は、どちらが持ちますか | 自社で直したり使い続けたりできるかを知る |
| 8 | 納品のあと、だれが問い合わせに応じますか | 運用の体制と費用を確かめる |
見送ったほうがよい提案
業務の件数や時間を聞かずに金額だけを出す提案、AIの出力を人が確かめる工程がない提案、手順書や設定を渡さない前提の提案は、慎重に考えたほうがよいでしょう。「全部の業務をすぐにAIに置き換えられる」という説明も、どの業務でどう確かめたのかを聞いてから判断しましょう。
セキュリティと契約で決めておくこと

AI外注では、社内の情報を外部に預けることになります。情報の守り方と、契約の形、依存しないための契約の決め方を確かめておきましょう。
個人情報を預けるときは外注先の監督が必要
顧客や社員の個人データの取り扱いを外部に任せる場合、個人情報保護法の第25条により、任せた会社にも委託先を「必要かつ適切」に監督する義務があります(出典:個人情報の保護に関する法律(e-Gov法令検索))。
個人情報保護委員会のガイドラインでは、そのための措置として、適切な委託先を選ぶこと、委託契約を結ぶこと、委託先での取り扱いの状況を把握することの3つが示されています。委託先がさらに別の会社に任せる再委託についても、事前に報告を受けるなどして確かめることが望ましいとされています(出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。
AIにデータが学習されない設定か
外注先が使うAIのサービスによっては、入力した内容がAIの学習に使われる設定になっていることがあります。法人向けのプランかどうか、学習に使わない設定になっているかを確かめましょう。社内でのルールづくりや設定の方法は 生成AIの情報漏洩対策 で詳しく解説しています。
請負と準委任|契約の形で変わること
AIの開発を外注するときは、契約の形が「請負」か「準委任」かも確かめておきましょう。民法では、請負は仕事を完成させることを約束し、その結果に対して報酬を払う契約です(第632条)。準委任は、法律行為ではない事務を任せる契約で、委任の規定が準用されます(第643条・第656条)(出典:民法(e-Gov法令検索))。
| 比べる点 | 請負 | 準委任 |
|---|---|---|
| 約束するもの | 仕事の完成 | 任された事務を行うこと |
| 報酬を払う相手の結果 | 完成した成果物 | 行った作業や期間 |
| 向いている工程 | 作るものと合格の基準を決めきれる開発 | 要件の整理やPoCなど、やってみないと結果が分からない工程 |
AIは、試してみるまでどの程度の精度が出るか分からないことが多いため、要件の整理やPoCは準委任、作るものが固まった本開発は請負というように、工程ごとに分けて考えるのが一般的です。どちらの形でも、何をもって合格とするかを契約に書いておくことが大切です。経済産業省は、AIの利用・開発に関する契約で確かめる点をまとめた「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」を公表しています。
作ったAIやデータの権利をだれが持つか
AIの開発を外注すると、作った仕組みのプログラム、AIへの指示や設定、AIに読ませるために整えたデータ、学習させたモデルなど、いくつもの成果物が生まれます。これらをだれが持ち、だれがどこまで使えるかを決めていないと、外注先を変えたときに仕組みを使い続けられなくなるおそれがあります。
特に、自社が預けたデータを外注先がほかの仕事に使ってよいかどうかは、契約で明確にしておきましょう。成果物ごとに「権利を持つ側」と「使ってよい範囲」を一覧にしておくと、話し合いが進めやすくなります。
契約で決めておく6つのこと
| # | 項目 | 決めておく内容 |
|---|---|---|
| 1 | 任せる範囲 | どの業務の、どの工程までを任せるか |
| 2 | 品質の基準 | 何をもって完了とし、誤りがあったときにどう直すか |
| 3 | データの扱い | 置き場所、見られる人、再委託の有無、契約終了後の消去 |
| 4 | 報告 | 減った時間や件数を、いつ、どの形で報告するか |
| 5 | 成果物の権利 | 手順書・設定・AIへの指示などの権利がどちらにあるか |
| 6 | やめ方と引き継ぎ | 解約の予告の期間と、終わるときに受け取るもの |
AIの利用に関する契約で確かめる点は、経済産業省の「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」も参考になります。
依存しないための「出口」を先に決める
外注先に頼りきりにならないためには、契約の最初に「出口」を決めておくことが大切です。AIツールやサーバーを自社の名義で契約しておけば、外注先を変えても仕組みは手元に残ります。始める前に、やめるときに何を受け取るかを決めておくと、外注先を見直しやすくなります。
AI外注の進め方5ステップ

AI外注は、小さく試してから広げるのが基本です。次の5つのステップで進めましょう。
業務を洗い出し、件数と時間を測る
部門ごとに業務を書き出し、月の件数と1件あたりの時間を測ります。手順と判断の基準、例外の起き方もあわせて書いておくと、任せる業務を選びやすくなります。
任せる業務を選び、目標を決める
セルフチェックで「はい」が多く、時間のかかっている業務から選びます。減らしたい時間や件数など、効果を測る目標もこの段階で決めます。
外注先を比べ、見積もりを取る
同じ前提の条件を伝えて、2〜3社から見積もりを取ります。前の章の質問を使い、含まれる範囲とやめ方をそろえて比べます。
1つの業務で試す
いきなり全部を任せず、1つの業務で1〜3か月ほど試します。目標どおりに時間が減ったか、手直しがどのくらい出たかを確かめます。試し方の設計は AI PoCの設計と進め方 も参考になります。
広げながら、毎月見直す
効果が確かめられたら、対象の業務を広げます。毎月の報告で減った時間と費用を確かめ、外に出す業務と社内に移す業務を見直していきます。
期間の目安
業務の外注では、業務の洗い出しから試しの開始までは1〜2か月程度、試しの期間は1〜3か月程度が目安です。開発の外注では、これに本開発の期間が加わります。社内での確認や、外部サービスの権限の手続きにかかる時間も見込んでおきましょう。
効果の測り方
効果は、始める前の数字と比べて測ります。毎月、次のような数字を外注先の報告と社内の記録の両方で確かめましょう。
| 測る数字 | 測り方 |
|---|---|
| 減った時間 | 1件あたりの時間の変化 × 月の件数 |
| 処理の速さ | 受け付けから完了までにかかった時間 |
| 手直しの割合 | 社内で直した件数 ÷ 処理した件数 |
| 費用の差 | 減った時間を金額に換算した額 − 外注の費用 |
PoC(試しの開発)で決めておくこと
AIの開発を外注する場合は、本開発の前にPoCで小さく試すのが一般的です。PoCを始める前に、次の3つを外注先と決めておきましょう。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 合格の基準 | 請求書の読み取りで、人が直す項目が1件あたり1つ以下 |
| 試すデータと期間 | 直近3か月分の書類を使い、2か月で確かめる |
| 結果ごとの次の一手 | 基準を満たせば本開発へ、届かなければ範囲を絞って再挑戦か中止 |
合格の基準を決めずに始めると、「それなりに動いた」で終わり、本開発に進むかどうかを決められなくなります。
発注する側が用意するもの
業務の手順と判断の基準を説明できる担当者、業務の件数と時間の記録、使うデータへのアクセスの権限、そして結果を確かめて判断する人の時間です。任せたあとも、結果を確かめて判断する役割は社内に残ります。
依頼の前にまとめておく資料
見積もりを頼む前に、次の内容を1〜2枚にまとめておくと、外注先どうしを同じ条件で比べられます。開発の外注では、提案依頼書(RFP)と呼ばれることもあります。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 目的 | 何を、どのくらい減らしたいか |
| 対象の業務 | 業務の流れ、月の件数、1件あたりの時間 |
| 使うデータ | 種類、置き場所、個人情報を含むかどうか |
| つなぐシステム | 会計・販売管理・顧客管理など、連携が必要なもの |
| 予算と時期 | おおよその予算の幅と、始めたい時期 |
| 社内の体制 | 窓口の担当者と、最終の判断をする人 |
AI外注のよくある失敗と対策

AI外注でよく見られる失敗と、その対策をまとめます。
失敗1:目的を決めずに丸投げする
「AIで何か楽にしてほしい」とだけ伝えると、外注先も何を目指せばよいか分からず、効果が測れないまま費用だけがかかります。減らしたい時間や件数を、数字で伝えましょう。
失敗2:単価の安さだけで選ぶ
単価が安くても、人が確かめる工程がなく手直しが多ければ、社内の手間はかえって増えます。手直しにかかる時間まで含めて比べましょう。
失敗3:試しのまま止まってしまう
試しの期間の成果は出たのに、本番に移す判断の基準を決めていなかったために、そのまま止まってしまうケースです。試す前に、どうなれば本番に移すかを決めておきます。
失敗4:例外の対応を決めていない
AIが判断できない例外が起きたときに、だれに回すかを決めていないと、処理が止まったり誤ったまま進んだりします。例外の種類と、社内のだれに戻すかを最初に決めておきましょう。
失敗5:やめられない契約になっている
手順書や設定を受け取れない契約だと、値上げや品質の低下があっても外注先を変えられません。契約の前に、やめるときに受け取るものを確かめておきましょう。
失敗6:作ったのに現場で使われない
開発の外注で多いのが、仕組みは動いているのに、現場がこれまでのやり方を続けてしまうケースです。使う人の意見を聞かずに作った結果、入力の手間が増えたり、いつもの画面と離れた場所にあったりして、使われなくなります。要件を決める段階から現場の担当者に入ってもらい、PoCでも実際に使ってもらって感想を集めましょう。
失敗7:納品のあとの担当が決まっていない
納品で契約が終わり、そのあとの直しや問い合わせをだれが受けるかが決まっていないケースです。AIは、業務のルールや扱う書類が変わると精度が落ちることがあるため、作って終わりにはできません。運用・保守を外注先に頼むのか、社内で引き継ぐのかを、開発の契約と同時に決めておきましょう。
AI外注のこれから

AI外注は、AIの進化にあわせて形を変えつつあります。検討するときに知っておきたい動きを3つ紹介します。
AIエージェントが業務の流れごと受け持つ
指示を受けて調べ、判断し、ほかのツールを操作して作業を進める「AIエージェント」が使われ始めています。1つの作業ではなく、受け付けから処理、報告までの流れごとAIに任せる形が広がっていくと考えられます。
BPaaS|仕組みと業務をまとめて使う
クラウドの仕組みと業務の代行をひとまとめにして提供する「BPaaS(ビジネス・プロセス・アズ・ア・サービス)」という形も増えています。仕組みを自社で用意しなくても使える反面、仕組みが外注先のものになるため、やめるときに何が残るかを確かめる必要があります。
人の役割は「作業」から「確認と判断」へ
AIが作業の大部分を受け持つようになると、人の役割は、AIの出力を確かめ、例外を判断し、業務の流れを見直すことに移っていきます。社員がAIを使いこなせるようにする研修については 生成AIの社員教育プログラム で解説しています。
AI外注に関するよくある質問

Q. AI外注の費用はどのくらいですか?
Q. AI開発を外注すると、費用はどのくらいかかりますか?
Q. どの業務から始めるのがよいですか?
Q. AI外注と内製はどちらがよいですか?
Q. 中小企業でも利用できますか?
Q. 情報漏洩が心配です。何を確かめればよいですか?
Q. AI BPOとAI外注は何が違いますか?
Q. 社内にAIに詳しい人がいなくても大丈夫ですか?
Q. 始めてから効果が出るまで、どのくらいかかりますか?
Q. 途中で外注先を変えることはできますか?
Q. フリーランスやクラウドソーシングに頼んでも大丈夫ですか?
Q. 請負と準委任のどちらで契約すればよいですか?
Q. 契約の前に確認すべき点は何ですか?
まとめ

AI外注で押さえておきたい点を、6つにまとめます。
AI外注を考えるときは、何を外に出し、何を社内に残すかを先に決めることが、費用と効果の両方で失敗しない近道です。社内でAIを扱えるようにする進め方は AI内製化支援とは、AI導入全体の費用は AI導入の費用相場、相談先の選び方は AI導入パートナーの選び方 もあわせてご覧ください。
